151 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:28:19
ネタSS「
憂鬱日本欧州大戦 -ちょび髭のいないバルバロッサ③-」
「まさかこんなに上手くいくとは・・・。」
アレキサンドリアでの会議から2日後、狭い艦橋から暗闇に包まれた海原を見渡しながら、フランス海軍の機雷敷設潜水艦ル・ディアマンの艦長は呟いた。周りに艦影は無く、レーダーやソナーでも敵の存在は確認できていなかった。
「しかし、最初命令を聞いた時は耳を疑いましたよ。まさか潜水艦で黒海に進出しようとは・・・。」
艦長の呟きに副長が答えた、
そう、連合軍は潜水艦でダーダネルス海峡とボスポラス海峡を突破しようとしたのだ。それはかなり厳しい賭けであったが、連合軍はその賭けに勝利した。
「やはりソ連は潜水艦で機雷を放出していたと言う訳か。」
「我々が無事に黒海に進出できた以上、それが正解なのでしょう。。
しかし、ソ連の機雷が触発機雷のみだったのは幸運でした。ドイツみたいに磁気機雷や音響信管を実用化されていたらと思うとゾッとします。」
「ドイツの技術も馬鹿にはできないと言うことだ。例え、主砲を撃ったら爆発する戦艦を作っていたとしても。」
艦長のジョークに副長は小さく笑い声を上げた。
ドイツ海軍の酷さはこの頃には連合軍全体に広まっており、「ドイツ海軍の主力は全て海中にある。」とすら言われているほどだった、実際、ドイツ海軍は潜水艦だけは大量に保有しており、クロンシュタット・レニングラード奇襲でのビスマルクの醜態とは対照的に、地味ながらも活躍していた。
そして、ビスマルクに続いて戦艦シュレンジェンの砲身が破裂してしまったのがドイツ海軍にとって致命的だった。
開戦時から東プロイセン防衛のため、他の艦と共に対地砲撃を繰り返していたが、度重なる射撃による砲身交換によって砲身の在庫が少なくなってしまい、砲身の節約から命数ギリギリまで使い続けていた。
その為、ドイツは兵器生産のリソースを陸軍に注ぎ込んでおり、海軍向けの砲身の生産が低調だったが故に起きた悲劇だった。
「何にしても、我々は無事に黒海へと進出できた。後は出来るだけの事をやるだけだ。」
艦長の言葉に副長は力強く頷いた。
152 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:29:05
機雷敷設潜水艦ル・ディアマンを始めとする連合軍潜水艦20隻は、黒海に進出するとすぐさま活動を始めた。ソ連海軍は対潜戦闘能力は低いらしく、連合軍の潜水艦隊は発見されることもなく順調に活動した。
まず行ったのは、セヴァストポリからコーカサス地方に避難したソ連海軍艦艇の停泊する港への機雷敷設だった。連合軍は機雷敷設潜水艦をこの作戦に3隻投入しており、ソ連海軍は知らない間に機雷で閉塞される事になった。
港が機雷で封鎖された事を知ったソ連海軍は、当初は味方の機雷が何らかの原因で偶然港に入り込んだと考えていた。。だが、ノヴォロシースクを始めとするコーカサスの主要な港に機雷が存在していたのだ。この時になって、ようやくソ連海軍はこの機雷が連合軍による攻撃だと理解した。
しかも、機雷の中には接近しただけで爆発する物もあり、その掃海にはかなりの労力と時間が必要だった。
各地の港にある機雷は連合軍の潜水艦が敷設したのだとようやく理解したソ連海軍は、対潜作戦能力のある艦艇を総動員して連合軍の潜水艦の掃討を開始した。
対潜水艦戦と言うことで、駆逐艦以下全ての艦艇を動かしたものの、触雷して損傷したり、味方の潜水艦を攻撃したり、味方と誤認して撃沈されたりと、損害ばかりが増えていた。
一方連合軍は、ソ連海軍の醜態を他所に活発に動いていた。
あるイギリスの潜水艦はクリミア半島の連合軍を砲撃していた艦隊を雷撃し、巡洋艦モロトフ他駆逐艦1隻を撃沈した。
また、あるフランス潜水艦は危険を承知でケルチ海峡に侵入し、自身の撃沈と引き換えに機雷をばら撒き海峡を封鎖し、ケルチ半島への補給を数日に渡って滞らせた。
だが、連合軍にも損害が生まれ始めた。あるイタリア潜水艦は、機関が故障し漂流していた小型貨物船と浮上中に衝突してしまい、損傷の為潜行不能になった。
しかも、運が悪い事に貨物船からの連絡で警備艇が駆けつけて来た事から、抵抗したものの警備艇の砲弾が潜水艦の艦橋に直撃し艦長以下数名が死亡、結局このイタリア潜水艦は降伏し乗員は捕虜となった。
ソ連軍は捕虜達を尋問しようとしたものの、尋問するまでも無くイタリア兵達は作戦内容を喋ってしまい、ソ連軍は連合軍の作戦を大まかにだが把握する事に成功した。
153 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:30:07
連合軍の潜水艦が黒海で活躍する一方で、航空攻撃の準備も整いつつあった。
時間はアレキサンドリアの会議直後に戻る。会議で古賀は黒海艦隊及びセヴァストポリ要塞を航空攻撃で撃破する方針を示し、早速第3次遣欧艦隊にエーゲ海進出の命令が伝えられた。
「我々の出番が来たと言うのは嬉しいですが、思っていた以上に状況が悪いようです。潜水艦を黒海に進出させて時間を稼ぐようですが、クリミア半島の英独陸軍は黒海艦隊や各地で逆上陸したソ連陸軍によって補給が苦しく、更にはケルチ半島に上陸したソ連陸軍相手にかなり苦戦しているようです。」
第3次遣欧艦隊旗艦の重巡洋艦那智の艦橋で、第3次遣欧艦隊参謀長の大西少将はセヴァストポリを巡る攻防戦は連合国が圧倒的に不利であり、一刻も早く救援に向かうべきだと主張した。
「しかし、現在私達は北海にいるのですよ。エーゲ海に到着するのは早くても2週間後です。」
「今必要なのは艦ではなく飛行機だ。そうだな参謀長?」
「はい。」
作戦参謀の言葉に、第3次遣欧艦隊司令山本五十六大将は艦上機のみをトルコに送ろうと言い、大西も同意した。艦艇ならば2週間はかかる距離も、航空機ならば精々2日ほどで着く事が出来る。
「トルコへの輸送に時間はかかりますが、アレキサンドリアには魚雷や爆弾が残っています。それに、バルカン半島の陸軍航空隊の爆弾も融通できるかもしれません。」
兵站参謀は、アレキサンドリアには第2次遣欧艦隊向けに集積していた物資が残されており、ブルガリアでソ連軍と戦っている日本陸軍の航空爆弾も融通できる可能性を指摘し、山本たちの案に賛成した。
なお、ブルガリア戦で主力を成すイタリア軍は士気練度装備共に酷く、少数の日英独軍の支援を受けつつ何とか北上していた。
一方で、ルーマニアから南下したドイツ軍はソ連軍を次々と撃破し、9月上旬になるとソ連軍が支配しているのは僅かにヴァルナ程度となっていた。
兵站参謀の言葉に山本は頷き、すぐさまエーゲ海へ航空隊を派遣できるよう具体案を練り始めた。
また、遣欧軍司令部へ連絡を取り中継の空港や燃料等の手配、トルコでの航空隊の受け入れ態勢の構築などを協議した。
英仏独も第3次遣欧艦隊に助力を惜しまず、派遣計画は何と2日で出来上がった。元々古賀や杉山たちが保険として根回しをしていた事もあったし、山本たちもいざという時の備えとして黒海への進出計画を秘密裏に策定していたが故の、驚異的な速度での計画作成だった。
後に、作戦案を2日で練り上げ3日目には実行に移し、しかも成功させた事から山本は”作戦の神様”と呼ばれるようになるのだが、それを知った辻は複雑な心境になったと言う。
154 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:31:12
連合軍潜水艦隊進出から3日目、ケルチ半島沖約5kmに1隻の潜水艦が浮上した。潜望鏡と電探で周囲を見渡し敵影が無い事を確認してから浮上した潜水艦は、甲板上を水兵達が慌しく駆け回っていた。
クリミア半島の連合軍を砲撃していた黒海艦隊は、モロトフ等を撃沈されたため根拠地に引き上げていた。
「防水装備解除完了しました。」
「主砲発射準備よし!」
浮上してからおよそ3分経ち、不釣合いな巨砲を持つフランス潜水艦スルクフは主砲発射準備を終えた。
「よろしい。」
スルクフ艦長は主砲発射準備が整った事に頷き、砲撃開始を指示した。既に主砲は事前に伝えられた座標に指向していた。
そして、スルクフの誇る50口径20.3cm砲が初の実戦で吼えた。
「次弾装填!もたもたするな!」
すぐさま主砲へ次弾が装填され発射準備が整ったが発射するにはまだ時間がかかった。3000トン程度の小さな艦体では、発射後の動揺が激しく安定するまで時間がかかるためであった。
暫くして動揺が収まると再び主砲が吼えた。夜の闇の中で、陸地に着弾音と煙が上がっているのがかすかに見て取れた。作戦は順調に推移している。艦長がそう考えていた時、艦橋要員が声を荒げて報告してきた。
「ちゅ、注水音確認!近くに潜水艦がいます!」
「何っ!」
艦長は慌ててソナー要員に質した。すぐさま、北方4kmから注水音が聞こえたと報告があった。だが、報告はそれだけではなかった。
「それ以外にも多数の推進音!複数の潜水艦がいる模様です!」
「レーダーに2時の方向に反応!数およそ10、速力約40ノット!」
この時、ソ連海軍に待ち伏せされていたとスルクフ艦長は気付いた。電探に反応しないようにケルチ半島に隠れていた事といい、海底に潜水艦が潜んでいた事といい、余りにも出来すぎていたからだった。
スルクフ艦長の推測どおり、ソ連海軍はイタリア人捕虜から得た情報を元にスルクフを待ち伏せしていた。この20.3cm砲を搭載するスルクフさえ叩けばクリミアのソ連軍を脅かす存在は英独陸軍のみとなる。
連合軍の潜水艦がいくら優秀だとしても、黒海にあるソ連海軍の艦艇は大小合わせて実に数百、潜水艦だけに限っても100隻以上も存在するのだ。
今回の待ち伏せに限って見ても、潜水艦(艇)や魚雷艇等を合計30隻以上も投入していた。質がいくら良かろうが、量で磨り潰せるとソ連海軍上層部は判断していた。
そして、それは現実になりつつあった。
「砲撃中止!最大戦速、潜行用意!この海域を離脱する!!」
「右舷に雷跡2!」
左舷に回頭していたスルクフに魚雷が襲い掛かったが、すんでの所で回避に成功した。
「後方の敵は魚雷艇の模様!距離約5000!」
「まだ潜行できないのか!?」
「後3分は必要です!」
刻々と状況が悪化していく中、艦長は中々潜行準備が出来ないことに声を荒げた。スルクフは20.3cm砲を搭載している関係から、防水装備は巨大かつ複雑で、潜水するにはかなりの時間が必要だった。そして、その時間がスルクフの命運を決定した。
「右舷及び後方から雷跡それぞれ4!避け切れません!!」
そしてこの日、フランスは1隻の大型潜水艦を失う事になった。
155 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:33:39
最終的に、連合軍は黒海へ合計35隻にも及ぶ潜水艦を進出させたが、その約4割が未帰還となる大損害を受ける事となった。とにかく黒海は狭く隠れられるところが少ない上に、黒海艦隊は小型艦艇も含め数だけはあるので、同士討ちで多数の損害を出しながらも、連合軍の潜水艦に打撃を与えていたのだ。
だからと言って、潜水艦部隊が役に立たなかったわけではない。
ケルチ半島のソ連軍への補給や補充を2~3日不可能にしたため、劣勢だった連合軍は体勢を建て直すことに成功していた。
また黒海艦隊の動きがそれまでと比べて、非常に鈍くなったためにクリミアへの補給が少しばかり改善し、砲撃も止んだ事から連合軍は息を吹き返しつつあった。
そして、第3次遣欧艦隊の母艦航空隊がトルコへ到着し、連合軍とソ連軍の戦力バランスは連合軍有利に傾いた。
ただし、装備類は未だアレクサンドリアから運ばれている途中だった。大西はそれを見越した上で、航空隊全てにロケット弾を搭載して送り出していた。
このロケット弾は、中部地中海海戦の戦訓から開発されたものだった。同海戦で赤城は、のべ120機に及ぶ航空攻撃が行われたが、10機の艦攻は半数が、110機の艦爆・艦戦はその3割が撃墜か修復不能で廃棄されていた。その為、ロケット弾で遠距離から対空砲を潰し被害を減らそうとしていた。
また、上空援護機がない状態でこれほどの被害を受けた事に海軍上層部は衝撃を受けていた。その為、新型機の配備は急ピッチで行われ、第3次遣欧艦隊はその全てを新型機にできていた。
「奴らまだ湾内にいるぞ!」
ノヴォロシースク上空で祥鳳航空隊の烈風搭乗員は、のろのろと動いている黒海艦隊を見て歓声を上げた。湾がいに出ていれば、索敵からやり直しになる。狭い黒海なのですぐ見つかるだろうが、その時間で敵の航空隊がやってきては厄介だった。
「敵の戦闘機はまだ上がってきていない。やるなら今だ!」
そして、烈風と流星は機体に抱えたロケット弾を雨霰とソ連の艦艇へと撃ち込んだ。
156 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:34:36
「もっと対空攻撃を激しくしろ!敵機を全然撃墜できていないじゃないか!」
戦艦パリジスカヤ・コンムナの艦橋では政治将校(委員)が喚いていた。この男は親の七光りで政治将校となっていたが、軍事知識は殆ど持ち合わせていなかった。男は兵站や腐敗の摘発などには熱心で、将兵からは一定の支持を受けていたため、無能であるとは言えなかった。最も、時々こうして戦闘に口出しするのが玉に傷ではあったが。
政治将校の言葉に従い、艦長は対空射撃を密にするよう指示を出したが、それでどうにかできるわけでもなかった。パリジスカヤ・コンムナは1914年に竣工し、クールベ級戦艦と同世代の戦艦ではあるため、その防空能力は低かった。日本の金剛型戦艦が魔改造されて対空火器が所狭しと並べたのと比べると余りにその火線は頼りなかった。
「駆逐艦タシュケント大破!」
「巡洋艦ヴィロシーロフ被弾多数、炎上しています!」
烈風や流星が発射したロケット弾が次々と黒海艦隊の艦艇に降り注ぐが、駆逐艦以下の艦艇は兎も角、巡洋艦以上の大型艦にはそれほど被害は出なかった。しかし、対空火器は次々と破壊され、艦隊は一方的に嬲られる事になった。
「助かった・・・のか?
「今の内に修理を進めろ!それと被害はどうなっている?」
そうする内に、ロケット弾が無くなったのか航空隊は引き返して行った。すぐさま応急修理と被害状況の確認を行ったが、駆逐艦以下はかなりの被害を受けていた。一方で戦艦と巡洋艦も損害を受けていた。
パリジスカヤ・コンムナは主要区画や主砲こそ無事だったものの、対空火器の殆どを失い後部マストは激しく破壊された。前部マストも艦橋基部にロケット弾が命中し多数の死傷者を出していた。
巡洋艦ヴィロシーロフは今だ火災が収まらなかったが、弾薬庫への誘爆などは避けられていた。
「これでは次の空襲に耐えられない。」
パリジスカヤ・コンムナの艦橋には悲観的な空気が漂っていた。今回は幸運にもロケット弾のみによる攻撃だったが、それによって最早抵抗する手段を無くしてしまったのだ。
「味方の航空隊が到着しました。」
「何と遅い・・・。だが、2次攻撃は何とか凌げそうだ。」
味方の戦闘機隊が到着した事と、応急修理も順調に進んでいたこともあって、何とか次の攻撃を凌げそうだと希望が生まれた。
そうして、何とか防衛体制を整えたノヴォロシースクの艦隊だったが、その日に再び日本軍による空襲はとうとう無かった。
157 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:35:09
第2次攻撃が無かったことに安堵していた黒海艦隊だったが、再攻撃を諦めたわけではなかった。だが、手持ちのロケット弾を全て使ってしまったために再攻撃をしたくても出来なかったのだ。
しかし、翌日になりバルカン半島から鉄道を使って陸軍から融通された爆弾が届いた事から、航空隊は再出撃した。
今回の空襲では、流石に150機もの戦闘機がいたものの、60機ほどの烈風にあっさりと撃退されてしまっていた。
「何だ、噂に聞いたキチガイ染みた大軍じゃないのかよ!」
ある烈風の搭乗員はそう言って、噂も当てにならないと愚痴を言った。
第8艦隊の母艦航空隊が雲霞の如き数のソ連空軍に(連日の出撃による疲労で)潰滅させられたのは、帝国海軍では有名な話だった。(その代わりキルレシオは6倍以上だったが)
当事のフィンランドにソ連軍は約10000機もの航空機を投入しており、対して連合軍は2000機しか投入できなかった為、数の上で圧倒されていた。
そして、当事の英仏の航空機が酷かった事もあり、母艦航空隊は場合によっては10倍のソ連軍機を相手にする事もあり、それと戦い続けてきた赤城と天城の搭乗員は今や伝説となっていた。
だが、1942年後半になるとソ連軍と連合軍の航空兵力比は1:3までに縮まっており、この搭乗員が期待するような雲霞のごときソ連空軍は最早過去の物となっていた。
「昨日はロケット弾だけだったが、今回は陸用とは言え爆弾もあるからな。今度こそ戦艦を撃沈してやる!」
帝国陸海軍では共通の機体を使用している事から、搭載する爆弾も同一規格を採用していた。
徹甲爆弾ではなかったものの、800kg爆弾が少数あった事から戦艦にも打撃を与えられる可能性はあった。そうで無くても、艦上構造物を破壊できるだろうから、撃沈は無理でも無力化は不可能ではなかった。
「今更逃げようとしても遅い!」
8機の流星は800kg爆弾をそれぞれ2発ずつ合計16発、のろのろと動き出しているパリジスカヤ・コンムナ目掛けて投下した。
それは、逃げ場所が無くノヴォロシースクに留まる他無かった哀れな戦艦に6発が命中し、大爆発を引き起こした。戦艦とは言えユトランド以前の代物だったが故に、水平防御が低い事が災いし、陸用爆弾で撃沈されてしまったのだ。
結局、この日に行われた日本海軍による空襲で黒海艦隊は主力艦の殆ど喪失し、その勢力を大きく現ずる事になる。
そして、10月に入ると100式地中貫通爆弾を搭載した連山がセヴァストポリ要塞を空襲し、同要塞を破壊した。要塞に据付が完了していた30.5cm砲も一度も砲撃することなく破壊され、英独陸軍はセヴァストポリの残敵を掃討し、クリミア半島は完全に連合国の手に落ちる事になった。
また10月下旬には、ボスポラス海峡までの掃海が完了し、艦船が黒海へ進出することが可能となった。この時までに、母艦航空隊は各地のソ連湾岸施設を破壊して回り、生き残っていた小型艦艇の維持すらソ連海軍は不可能になりつつあった。
進出してきた連合国艦隊に黒海艦隊は主に魚雷艇や潜水艦などで挑んだが、殆どが抵抗空しく撃沈される事になる。
黒海の制海権が連合国の物となると、続々と輸送船が大量の物資を運び込んできた事で、ウクライナの連合軍は息を吹き返し始めた。
この頃になると
アメリカからも多数の物資が届き始め、特にトラックやジープは兵站に問題を抱える欧州連合軍に喜ばれた。
158 :Monolith兵:2014/10/30(木) 02:36:03
そして、強力な支援を受けて連合軍は勝利を重ねていた。10月にはミンスクを陥落させ、キエフでは未だソ連軍が抵抗を続けていたが、陥落も時間の問題だった。
また、レニングラードでは独仏波軍が主力となり、粘り強く戦うソ連軍相手に梃子摺っていた。そこでレニングラードを包囲し持久戦へと移っていたが、補給が途絶しても尚抵抗を続けていた。
そんな中、ロシア帝国亡命政府及び亡命政府軍が10月にロンドンで発足し、ソ連に向けて調略放送を開始していた。
ソ連政府は調略放送を聞く事を厳禁とし、ラジオの取締りや航空機や諜報員等が配布したビラの回収などを進めていたが、人の口に戸は立てられなかった。その上に、対ソ調略組織オリガは正教教会や白軍残党を通じて、ロマノフ王朝の復活を盛んに宣伝していた。
無論、これには秘密警察や軍からの激しい弾圧が加えられたが、日に日に苦しくなる生活や悪化する戦況から、彼らの言葉に耳を傾ける者は増えていた。
そして、レニングラードでも動揺する市民が目立ち始めていた。軍や秘密警察は必死にそれを抑え込もうとしたが、厳しい食糧事情や燃料の不足から餓死者や凍死者が出始めている中では、それも難しくなりつつあった。
そんな中、オリガは教会や協力者を通じて食料や燃料を配布していた為、王党派は密かに増え続けていた。
11月が終わる頃には、増え続ける王党派に対して疑心暗鬼になった当局が激しい弾圧が行うようになり、無関係の市民までもが巻き添えになる事があった。
それを知った連合軍は、王党派や巻き添えになった市民を積極的に迎え入れ、その他の市民に対しても投降を呼びかけていた。
このように、レニングラードのみならず戦況は連合国有利に働いていた。このまま行けば来年にはモスクワに辿り着けるかもしれない。誰もがそう思いながらも、間近に迫った歴史上最大最強の将軍へと備えていた。
特にフランス将兵達は過去の経緯から、厳しい冬に慣れたフィンランド人ですら呆れるほどの厳重な冬季戦装備を持ち込んでおり、その恐れ様は各国の笑いの種になっていたが、同時にフランス人達の準備が杞憂で終わらない可能性を考える者も少なくなかった。史実から冬将軍の凄まじい威力を知る帝国陸軍は、遣欧軍へフランス並の冬季戦装備を送り込んでおり、英独陸軍も遅まきながらも冬季戦装備の拡充に着手し始めていた。
そして、とうとう連合軍はロシア最強の敵、冬将軍を迎え撃つ事になる。
おわり
最終更新:2014年11月07日 12:53