761 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:27:43
英国海軍が目指す先は史実海自?
1944年初頭のサンタモニカ会談後、単独で枢軸海軍と対抗することとなった英国海軍であるが、その戦力は、『現状では』なんとか対応出来るというレベルであった。
将来の枢軸海軍の戦力向上を考慮すると、このままでは危うくなるのは確実だったため、早急な戦力の復旧と拡充が求められていたのである。
しかし、津波による直接の被害や、予定されているインド独立、その他権益を手放すことによる国力の低下により、維持費の割りに戦力にならないR級を含む旧式戦艦は解体せざるを得なかった。
かつてビック7の一角を担ったネルソン、ロドニーも、その砲をドーバー沿岸防衛のための要塞砲として供出した後に退役、解体された。そのため、英国の保有する戦艦は従来のKGV型2隻と、対ビスマルク用に改設計された3番艦であるKGV改型のみとなった。
KGV改型をベースにした新型戦艦を建造することが既に決定していたのであるが、計画は2隻のみであり、しかも予算と資材の問題から建造さえ手付かずの状態だった。さらに、情報部が入手した日米戦争の詳細、特にハワイ沖海戦の状況を分析した結果、戦艦の建造順位はさらに下げられてしまうことになるのである。
戦艦に戦艦で対抗出来ない以上、別の手段で対抗する必要があった。
現状で取りえる手段は、航空機か艦船による魚雷攻撃であった。
ちなみに、空軍では従来のグランドスラムに、熱源探知誘導システムを組み込んだ対戦艦用決戦兵器を後に実用化するのであるが、これはまた別の話である。
航空機による雷撃であるが、これは真っ先に却下された。さすがに低速のソードフィッシュでの雷撃は無謀と判断されたからである。
もちろん、航空雷撃そのものを諦めたわけではなく、海軍はソードフィッシュの後継機の開発を進めていた。
しかし、開発が迷走しまくったあげくに、日本海軍から艦載機『烈風』を高い金を出して買うハメになっただけであった。
英国海軍で運用出来るように改装された烈風は、ペレグリンの名で制式採用された。
ちなみに、ペレグリンには英語で外来や異国といった意味があり、そのものズバりな命名であった。
762 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:33:01
ペレグリンを運用する英国海軍の空母は、防御力重視で艦載スペースが狭いため、数少ない機体を柔軟に運用する必要があった。
そのためには単機で対地対艦対空と、あらゆる状況に対応する必要があった。いわゆる史実のマルチロール機である。
英国海軍の事情により、マルチロール化された本機であるが、良好な運用実績を残したため、以後採用される艦載機もあらゆる状況に対応出来る汎用性の高さが求められることになる。
マルチロール化に対応するために、滑空魚雷『トラプレーン』、空対空ロケット弾『ヘミエキヌス』も新たに開発された。
トラプレーンは戦前から研究されていた、滑空魚雷である。
DMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development:多種兵器研究開発部)で開発されたこの兵器は、戦艦の対空砲火圏外から安全に雷撃することを目的にしていた。
試作段階では完全に新規設計だったのであるが、実際に生産されたモデルは、アタッチメント形式になっており、既存の航空魚雷(18inch MarkXVII)に取り付ける形となっていた。
この兵器の運用にはジャイロを組み込んだ専用の照準装置が必要であり、1945年に実用化された時点ではペレグリンの専用武装となっていた。
元々は攻撃機用に開発されたシステムであり、それなりに大型なシステムだったのを、苦心の末に小型化して搭載したのであるが、パイロットは操縦と攻撃を兼用せねばならなかったため、操作にはかなりの熟練が必要であった。
後にロケットブースターを追加して、射程距離を延伸したモデル(トラプレーンMK-Ⅱ)が採用されることになるのであるが、航空機に装備可能な対艦ミサイルが実用化されたため、少数生産に終わっている。
763 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:36:41
トラプレーンと同時期にDMWDで開発されたヘミエキヌスであるが、開発の背景には、高速化する戦闘機に攻撃を命中させる困難さがあった。
既にレシプロ機でさえも最高速度は700キロを超えており、ジェット戦闘機が主力となるころには、さらに高速化することは眼に見えていた。
射撃のタイミングがよりシビアに、射撃に取れる時間もより短くなり、従来の機関砲では撃墜が難しくなると考えられたのである。
なお、同様の問題を抱える英国空軍は、海軍とは全く違った道を爆走しており、空対空114mm無反動砲なんてキワモノに手を出したあげくに、最終的に電動式チェーンガンを採用することになるのであるが、それはまた別の話である。
ちなみに同時期のドイツ空軍-ルフトバッフェでは、この問題に対して、より大口径の砲弾を短時間に大量に叩き込むことで解決しようとしていた。
そのためにリボルバーカノンやガスト式機関砲を実用化したのである。
特に20mmリボルバーカノンであるマウザー MG 213Cは、銃口初速1050m/sで毎分1500発を実現しており、20mm弾を毎秒25発という凄まじい性能を誇っていた。
対爆撃機用に、口径を30mmに拡大したマウザー MK 213C/30でも、威力重視で弾頭重量が増加した悪影響か、銃口初速は530m/sと大幅に低下したものの、毎分1200発を実現していたのである。
さらに、対富嶽用として開発されたマウザー MK 214Aに至っては、50×420弾を毎分150発で発射するという、このサイズの大口径砲としては有り得ない発射速度を有していたのである。こんなのをまともにぶつけられた敵機の運命は押して知るべしだろう。
結論から言うと、この問題に対する正しい解答は、戦闘機に搭載出来るレーダーもしくは赤外線誘導が可能な空対空ミサイルの開発であった。
英国もドイツも後にそのことに気付き、開発に血道をあげるわけであるが、両国が盛大な回り道をしている間に、極東の島国がサイドワインダーを実用化していたことは言うまでも無いことである。
764 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:43:19
ヘミエキヌスはRP-3(Rocket Projectile 3 inch:ロケット発射体3インチ)がベースとなっている。
より安価に大量生産出来るように、構造が簡略化されたほか、史実のような全鋼製の発射レールに搭載することによる重量増大と空気抵抗の増大を防ぐために、パイロンで直付け出来るようにアタッチメントが改良されていた。
運用自体は単発ではなく、角度を微妙にずらして装備された多数のロケット弾を同時発射することにより、いわゆるロケット弾の投網の中に敵機を追い込むことによって撃墜することを狙っていた。
信管は通常の着発信管と音響信管の2つが内蔵されており、直撃すれば着発信管が作動し、直撃しなかった場合は、音響信管が作動して至近距離で炸裂するようになっていた。
音響信管は音の振動感知にプラスチックの薄膜を使用していた。
接近するに従って増大する音響感知レベルが、減少に転じた瞬間に作動するようになっており、概ね、対象の数メートル前後で炸裂するように調整されていた。
1発でも敵機に直撃、もしくは至近距離で爆発すると、その爆発音を音響信管で感知して、残りのロケット弾も信管が作動して誘爆する仕様になっていた。
目標となった敵機は、発射した弾体の炸裂に包まれることになるため、総合的な命中率が高くなることが期待されていたのである。
発想的には対潜兵器ヘッジホッグと同様であり、名前がヘミエキヌス(Hemiechinus:オオハリネズミ)なのもそれに起因している。
しかし、水中に比べて雑音が激しい空中では、特定の周波数(エンジン音、爆発音)をピックアップすることは困難であった。ノイズを除去するフィルターを付けていても、酷いときには母機から発射直後に信管が作動して主翼を吹き飛ばすこともあったという。
この問題は、最終的に信管の安全装置を2重にしたうえで、最低射程距離を設けることにより解決されたのであるが、開発部隊からは『ウィドウ・メーカー』、『スーサイド・ロケット』などと散々な言われようであった。
実際の運用であるが、ロケット弾ゆえに発射母機にかかるGによって弾道がぶれるので、激しい機動をする戦闘機相手には、ほとんど役立たずであった。
戦闘機に対しては、役立たずでも大型機には充分な効果が見込めたため、対爆撃機用としてそれなりの数が量産された。
対空ミサイルが実用化されると速やかに置き換えられたために、本来の目的で活躍出来た期間は短かったのであるが、その後は信管を対地攻撃用に換装して対地ロケット弾として運用されることになるのである。
765 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:47:02
戦艦に対抗するもう一つの手段である水上艦による魚雷攻撃であるが、史実のような水雷戦隊による飽和魚雷戦術が出来るのは帝国海軍くらいのものである。
だいぶ縮小したとはいえ、未だ広大な植民地を持つ英国は、航路防衛に手一杯であり、艦隊型駆逐艦などという贅沢品を集中運用する余裕など無かったのである。
そこで考案されたのが重雷装艦である。
ハワイ沖海戦で重雷装艦が大戦果を挙げたことを知った英国海軍上層部では、戦力として整備することが有効と判断したのである。
紆余曲折の末に、アリアドニ型重雷装艦として完成することになるのであるが、原案となった軽巡『大井』よりも小型な艦体だったこと、従来の魚雷よりも大型な日本海軍の酸素魚雷を搭載したことにより、5連装3基15射線分しか搭載出来なかった。
それでも従来型の駆逐艦よりも遥かに重武装だったりするのであるが。
日本海軍から(高い金を出して)購入した酸素魚雷の運用の困難さも問題だった。
酸素魚雷を運用するために、艦内設備に酸素発生器を追加する必要があったのである。
そのため、被弾時に延焼、最悪の場合爆発のリスクが高まってしまったのである。
魚雷内部の脱脂作業も面倒と困難を伴うものであった。
空気配管の内部にわずかでも油分が残っていると簡単に爆発事故をおこしてしまうのである。
事前の整備でバルブと空気配管から油分を完全に除去するには4~5日を必要としたのである。
酸素魚雷の射程と威力は大変魅力的であったが、その運用の困難さは、海軍関係者の想像を超えていた。
また、広大な太平洋戦域とは違い、北海では比較的近距離での戦闘が想定されていたため、威力はともかく、長大な射程は持て余し気味であった。
そのため、酸素魚雷はあくまでも決戦用として温存されることになり、運用を前提にした重雷装艦は2隻のみで取りやめとなった。
従来型の魚雷が装備可能で、より簡易で大量生産が可能なMTBが主力となっていったのである。
766 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:50:07
MTB(Motor Torpedo Boat)
日本語だと高速魚雷艇である。
極端な話、モーターボートに魚雷を載せたシロモノであるので、安価に大量に建造することが可能であり、短期間で戦力化することが可能なメリットがあった。
しかし、それは敵対する枢軸海軍側も条件は同じであり、単に安価で大量生産向きな魚雷艇を作っても、それ以上の数で対抗される恐れがあった。
要するに、数を揃えやすいというメリットを殺さずに、枢軸側が真似出来ない要素を盛り込む必要があったのである。
枢軸海軍が真似出来ない技術。それはレーダー技術であった。
(チートを除けば)レーダー先進国である英国は、生産したMTB全てにレーダーを搭載したのである。
主敵であるドイツ海軍の魚雷艇であるSボートに比べて、10ノット近い速度差があったものの、レーダーのおかげで、闇夜や濃霧であっても待ち伏せ・警戒が可能となり、速度差を埋めることが出来たのである。
レーダー装備は少ない戦力を有効に生かす点でも優位に働いた。
相手が劣勢なら仕掛け、優勢なら逃げることが出来るからである。
艦載用レーダーは、元々航空機用に開発されたものを改良したものであったため、空軍と取り合いになることもあったが、1946年になると、ほぼ全艇にレーダー、IFF(敵味方識別装置)、逆探知機が装備されることになる。
767 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:53:17
このように、枢軸側に比べて優位に立つことが出来た英国海軍のMTBであるが、弱点もあった。
木製船体にガソリンエンジンを搭載していたため、被弾に極めて弱かったのである。
高速を発揮するために搭載した小型大出力エンジンは、航空機のエンジンを転用しているため、生産割り当てで空軍と取り合いになることが多く、空軍と海軍の対立の原因になることもしばしばだった。
生産だけでなく燃料の面でも、問題があった。
ハイオク使用が前提なので、ハイオクの在庫が逼迫すると満足な作戦行動が取れなくなる恐れがあったのである。ハイオクも、空軍と取り合いになり、これまた対立の原因となったのである。
この問題は従来より海軍側も憂慮しており、1943年に英国海軍本部が、高速魚雷艇で使用する高出力軽量ディーゼルエンジン開発のための委員会を発足させていた。
その結果が、ネイピア&サンの変態エンジンとして結実するのであるが、完成には今しばらくの時間が必要であった。
MTBよりも、さらに小型で大量生産に適した兵器も考案されたが、こちらは図面のみで生産されることは無かった。
爆薬を満載して敵艦に突入する、文字通りの特攻兵器だったからである。
さすがに脱出装置はついていたが、まともに動作するか怪しいシロモノであったし、仮に脱出に成功したとしても、敵艦の激しい迎撃火力に晒される海面で生存出来るのか疑問であった。
こんなものに資材を浪費するくらいなら、もっと他に作るものがあるだろうというのが、当時の海軍上層部の総意であったという。
768 :フォレストン:2014/11/24(月) 10:58:32
英国海軍の仮想敵は枢軸海軍であったが、その中にも当然ではあるが優先順位が存在した。
そのリストのトップに君臨するのは、ドイツ海軍のUボートであった。島国である英国故に、海上交易を遮断されて干上がらせられる恐怖は骨身に染みていたのである。
もちろん、ドイツ海軍にはUボート以外にも有力な水上戦力は存在するのであるが、Uボート部隊以外はロクな実戦経験もなく、錬度に不安があった。
なによりも、造船技術が第1次大戦で断絶しているドイツ海軍は軍艦作りのノウハウが不足していた。
ノウハウ不足と伍長閣下のわがままを受け入れた結果が、戦艦ビスマルクなのである。
日本と同様にビスマルクの内情を知っていた英国海軍では、日本ほど楽観はしていないものの、そこまで脅威とは思っていなかったのである。
ちなみに、同じ枢軸海軍であるフランス海軍とイタリア海軍であるが、フランスは国内事情により、海軍の対英強硬派が抑え込まれ、内政に力を入れざるを得ない状況であった。
イタリアは地中海の覇者を気取っていて、地中海より出てこなかったため、これまた当面の脅威とはなり得なかった。
しかし、ドイツの力を借りて機動艦隊の整備を進めていたため、将来的には脅威となると海軍と情報部は分析していた。
それに備えるべく、英国海軍も戦力整備を進めていくのであるが、それはまた後の話である。
769 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:03:07
肝心のUボート対策であるが、概ね史実に則っていた。
沿岸部ではフラワー型コルベットの大量運用、遠洋航路では船団にリバー型フリゲートとMACシップを同航させたのである。
フラワー型コルベットは、コストを抑えるために商船構造となっており、全長は短く全幅のあるズングリとした船体に4インチ砲や対空機関砲、ヘッジホッグなどを少数積み込んだ艦となっている。
これはキャッチャーボートの設計を流用したためであり、有事以外は武装を下ろして、南極海で捕鯨に従事するためであった。
逼迫した食糧事情を改善するためにも、捕鯨によるタンパク源確保が至上命題だったのである。
リバー型フリゲートは、フラワー型が元々沿岸警備用で航洋能力が低く、外洋での護衛任務に無理があったために、新たに建造された2軸推進の航洋護衛艦である。
短期間に数を揃えるために、船体は商船構造基準が用いられており、また機関も旧式なレシプロ機関が搭載されたが、ヘッジホッグや爆雷投射機などの対潜兵装は護衛駆逐艦並みの数が搭載されていた。
フラワー型もリバー型も、1944年頃から順次就役しているが、運用実績から後の艦になるほど、対潜・対空兵装などが強化されており、また後期建造型では航続距離が延伸されている。
MACシップは、商船の船体上部に全通飛行甲板を設置して航空艤装はなされてはいるものの、商船として運用され、貨物や油の運搬能力も残されていた。
運航は民間の船員によって行われ、航空関係者だけが軍人であった。
MACシップに搭載された機体は、雷撃任務から外されたソードフィッシュが充てられた。というより、MACシップはソードフィッシュが無ければ成立し得なかったいえる。
旧式な複葉機だからこそ、カタパルト無しでも短い飛行甲板から離着陸が可能だったからである。
低速過ぎて、雷撃に不向きとされたソードフィッシュであったが、対潜哨戒ではむしろプラスに働いた。
複葉機であるゆえに飛行時の安全性も高く、低速で長時間飛行するのに適していたからである。
ソードフィッシュに対潜レーダーにロケット弾、さらに母船にHF/DF(無線方位探知機)を搭載することにより、一時期は完全にUボートを抑え込むことに成功するのであるが、ドイツ海軍も新型Uボートや新兵器で対抗したため、文字通りの水面下の争いは激化していくことになるのである。
770 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:06:31
Uボートと同様に英国海軍が恐れていたものが機雷である。
Uボートと機雷で海上封鎖されて干上がるのが、英国の描いた最悪のシナリオだった。
ドイツ海軍では、沈底式感応機雷を第2次大戦末期に実用化しており、従来の掃海具では対応不可能であった。
沈底式感応機雷は、船の磁気を感知する磁気機雷、スクリューの音響を感知する音響機雷、水圧を感知する感圧機雷に大別される。
これらがさらに改良されて、後の戦争、紛争で猛威を振るうことになるのである。
ドイツとの早期停戦のおかげで、Uボートと同じく、機雷敷設も低調だったために実質的な被害は少なかったのであるが、英国海軍では将来を見据えて掃海艇と掃海具の開発にも力を入れていた。
従来の掃海具では、確実性に欠けるため、英国海軍における掃海技術は、爆発物処理の手法により機雷を一個一個確実に無力化していくという、機雷掃討にシフトしていくことになるのである。
磁気機雷に対する触雷を避けるため、以後、掃海艇の建材は非磁性化が求められることになり、さらに、船体だけでなく、搭載するエンジンそのものにも非磁性化が求められたのである。
なお、余談であるが、非磁性化エンジンには、ネイピア&サンの変態ディーゼルが深く関わってくるのであるが、これはまた後の話である。
重要性は理解していたとはいえ、リソースが限られているうえに、他に優先すべきものはいくらでもあったため、新型の掃海艇の実用化は後回しにされてしまった。
そのため、当面は現用のアルジェリン級掃海艇でしのぎつつ、不足する分は一部のフリゲートやコルベットに掃海具を載せて対応していたのである。
感応機雷に本格的に対応した、新型の掃海艇が完成するのには、まだしばらくの時間が必要だったのである。
771 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:12:07
戦後の英国海軍で、正面戦力で最も不足している艦は巡洋艦であった。
早急に拡充したいところなのであるが、本国の造船所は、津波被害を受けた損傷艦の修理のために、大半が塞がってしまい、新規で建造する余裕が無かったのである。
そのため、それほど技術的な難易度が高くないコルベットやMTBなどはカナダや豪州、南アフリカの連邦諸国で建造して、造船所を確保したのであるが、それでも数が足りず、さらに日本から阿賀野型軽巡や、戦時量産型の駆逐艦、海防艦などを輸入して海軍の再建を進めたのである。
阿賀野型を含めた旧日本海軍の艦艇は、英国海軍の命名基準に従って、改名されて直ちに運用を開始…とはならなかった。
いくら
夢幻会の意向といっても、未だ反英感情の高い日本から英国に表立って艦船の輸出が出来なかったのである。
そのため、電子装備はもちろん、主兵装や対空砲などのいっさいを取っ払ったドンガラ状態にしたうえで、クズ鉄名目で、第三国経由で英国に輸出されたのである。
ドンガラ状態といっても、レーダーと兵装以外は全て備わっていたので、その構造、技術は大いに参考になった。
特に、機関のシフト配置は被弾時の生存性を高めるものとして、以後の英国海軍艦艇に積極的に採用されることになる。
兵装と電子装備などの艤装は、英国本国内の造船所で行われた。
まず兵装であるが、砲塔を含む砲架が、そっくりそのまま残されていたので、英国海軍で採用されている近似した口径の砲を搭載出来るように、一部の部品を新造してフィッティングしたのである。
レーダーを含む電子装備も同様であり、英国海軍が採用しているレーダーに換装された。
英国の規格とは違う艦に搭載するのは、困難かと思われたのであるが、日本から輸入された艦は、全てレーダー装備を前提とした設計がされており、レーダーの設置箇所や電路その他が余裕も持って設定されていたのである。
そのため、ドンガラ状態から、わずか数ヶ月で改装することが出来たのである。
旧日本海軍艦艇は、改装が終了した艦から再就役していったのであるが、これらの艦はテストベッドとしての性格も帯びていたため、当時の最新の装備が搭載された。
船体そのものが、戦時急造とは思えないほどしっかり作ってあり、使い勝手が良かったために、英国海軍に長く使い倒されることになる。
ドイツとの停戦後、必死に海軍の建て直しを図った英国海軍であったが、1945年の5月に、インド洋でお披露目する機会が訪れることになる。
そこで得られた教訓を元に、さらなる戦力の拡大を目指すジョンブル達であったが、彼らのSAN値がいつまで持つのかは、神のみぞ知ることである。
772 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:18:03
あとがき
というわけで、ドイツ停戦後からインド洋演習直前の英国海軍の現状について書いてみました。
本編をざっとなぞって、設定を拾っていったのですが、戦艦がKGV3隻のみで代艦建造もままならず、戦力的には辛うじて枢軸海軍と互角。
助力を頼むべき空軍もグリフォンスピットの生産は低調で、しかもハイオクが確保出来ずに性能低下とか、難易度高すぎませんか!?(悲鳴
こうなると、戦艦を主力としない戦力構築をする必要が出てくるわけですが、海上封鎖されて干上がるのを避けるために、正面戦力よりも掃海と対潜能力の強化が最優先でしょう。
コルベットとフリゲートの大量生産とMACシップの配備で、シーレーンを確保します。ますます戦艦がいらない子に…。
掃海部隊の充実も必要になってくるのですが、憂鬱ドイツのことだから、間違いなく沈底式感応機雷を実用化しているでしょうねぇ…。
あれを大々的に使用されると、従来型の掃海具では対処不可能です。
当時の掃海艇は外洋を高速航行する目的で鋼製の船体が多かったので、磁気機雷で根こそぎやられる可能性があります。
さすがに表立ってやることは無いでしょうが、嫌がらせ目的でやられるかも…(汗
それにしても、掃海能力と対潜能力特化で、シーレーン防衛最優先の戦力整備って…これどこの海自?(オイ
では、最後に登場させた兵器の紹介です。
オリジナル以外は、ほぼ事実準拠のスペックです。
773 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:23:51
トラプレーン滑空魚雷(18inch MarkXVII装着時)
直径:450mm
全高:450mm+90mm(主翼部)
主翼幅:900mm(折りたたみ時) 2700mm(展開時)
全長:5.26m
重量:780kg
炸薬:270kg(トーペックス)
1945年にDMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development:多種兵器研究開発部)で開発された滑空魚雷。
戦前より開発が進められた兵器であり、対空砲火圏外から安全に雷撃することを目的としていた。
プロトタイプでは、完全な新規設計だったのであるが、そこで得られたデータを生かし、既存の魚雷に装着可能なアタッチメント形式となった。
性能は優れていたが、操作が難しかったため、対艦ミサイルの発達と共に置き換えられていった。
後部に固体式ロケットブースターを装着して、射程距離を延伸したMk2タイプも少量生産されている。
ヘミエキヌス空対空ロケット弾
口径:76mm
全長:1400mm
重量:21kg(弾体)+11kg(炸裂弾頭:着発&音響信管付き)
銃口初速:480m/s
有効射程:1600m
トラプレーンと同時期に開発された空対空ロケット弾。
単発では無く、複数同時に発射してロケット弾の投網を作り、その中に飛び込んだ敵機を破壊する兵器である。
構造そのものは、RP-3ロケット弾と大差無いが、従来の着発信管に加えて、音響信管が追加されている。
音響信管は音の振動感知にプラスチックの薄膜が使用されている。それに加えて、発射母機からのノイズとロケット飛翔時の風切音をカットするためと、特定の周波数(敵機のエンジン音、爆発音)をピックアップしやすくするために、ノイズ除去フィルターを装着している。
接近するに従って増大する音響感知レベルが、減少に転じた瞬間に、音響信管が作動するようになっており、概ね対象の数メートル前後で作動するように調整されていた。
1発でも敵機に直撃、もしくは至近距離で爆発すると、その爆発音を音響信管で感知して、残りのロケット弾の信管も作動して誘爆する仕様になっていた。
目標となった敵機は、発射した弾体の炸裂に包まれることになるため、総合的な命中率が高くなっている。
対地攻撃用のRP-3がベースになっているため炸薬量も多く、多少範囲を外れても広範囲な爆風と衝撃波で対象を撃墜、損傷させる効果があったが、初速が遅く、戦闘機相手だと戦闘機動で振り切られてしまう恐れがあった。
しかし、構造が簡単で生産が容易であり、数を揃えやすかったことと、大型で鈍重な爆撃機相手には有効と判断され、対爆撃機用としてそれなりの数が量産された。
マウザー MG 213C
口径:20mm
全長:1930mm
銃身長:1600mm
重量:75kg
砲弾:20×146mm
作動方式:ガス圧作動方式
発射速度:毎分1500発
銃口初速:1050m/s
史実では開発中に終戦となってしまったリボルバーカノン。
従来の20mm機関砲に比べると、明らかに大型で重いが、それを遥かに上回る圧倒的な発射速度を実現している。
マウザー MK 213C/30
口径:30mm
全長:1630mm
銃身長:1300mm
重量:75kg
砲弾:30×146mm
作動方式:ガス圧作動方式
発射速度:毎分1200発
銃口初速:530m/s
MG 213Cの口径を30mmに拡大したリボルバーカノン。大口径化したが、毎分1200発の発射速度が確保されている。
対大型機用に開発され、威力を上げるために弾頭重量を増した結果、銃口初速が大幅に低下した。
その結果、命中率に悪影響が出たが、大型機相手だと問題無いと判断され、対爆撃機用として量産された。
774 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:35:47
マウザー MK 214A
口径:50mm
全長:4160mm
銃身長:2825mm
重量:490kg
砲弾:50×420mm
作動方式:ガス圧作動方式
発射速度:毎分150発
銃口初速:920m/s
史実では、BK5機関砲の影に隠れてしまった50mm機関砲。
爆撃機の防御火力の射程圏外からの攻撃が可能な長射程と、一撃必殺の威力を有している。
この世界では、対富嶽用として開発されており、Me262の改造機に搭載された。
ヴォスパー 72フィート6インチ魚雷艇
全長:22.10m
全幅:5.94m
排水量:49t(最大)
最大速力:40kt
発動機:ロールス・ロイス マーリン66 1350馬力×3
武装:533mm魚雷発射管×2 20mm単装機関砲
第2次大戦開始時の英国海軍の主力魚雷艇。
速度はともかく、武装の面でドイツのSボートに負けており、不利な戦いを強いられた。
後期型では20mm機関砲をさらに追加搭載するか、6ポンド砲を載せたが、それでも火力的劣勢は覆せず、フェアミルD型MTBが戦力化されると、代替されていった。
アメリカからM2の供与を受けられず、マーリンをパッカード社がライセンス生産しなかったため、後述のフェアミルD型共々、史実とは若干の差異が生じている。
フェアミルD型 MTB
全長:34.50m
全幅:6.40m
排水量:105t
最大速力:30kt
発動機:ロールス・ロイス マーリン66 1350馬力×4
武装:533mm魚雷発射管×2 単装40mm砲×1 連装20mm機関砲×2 57mm砲×1
第2次大戦末期に開発されたMTB(Motor Torpedo Boat:高速魚雷艇)
ヴォスパー魚雷艇に比べて大幅に大型化した船体は、航洋性能の向上と武装の搭載に有利となったが、その反面で主機がアンダーパワー気味であり、ライバルのSボートに比べて10ノットもの差をつけられている。
Sボートと違い、最初からレーダーが標準搭載されており、1946年になると、ほぼ全艇にレーダー、IFF(敵味方識別装置)、逆探知機が装備された。レーダーのおかげで、闇夜や濃霧といった悪天候でも警戒・待ち伏せが可能となり、速度の差を埋めることが出来たのである。
しかし、低速で木製船体、さらにガソリンエンジン搭載と、被弾時の生存性に問題があったため、このクラス以降のMTBは大出力ディーゼル搭載の高速魚雷艇となっている。
フラワー型 コルベット艦
全長:62.48m
全幅:10.06m
喫水:3.5m
排水量:940t(基準)
最大速力:16.0kt
主機:三段膨張式往復動蒸気機械×1基 1軸推進 2750馬力
航続距離:3500浬(12kt)
乗員定数:85名
武装:45口径4インチ単装砲1基 40mm単装ポンポン砲1基
20mm機銃 7.7mm機銃複数搭載 爆雷40個搭載(投射機2、投下軌条2)
(後期型は対空機銃の増設とヘッジホッグ投射機1基を追加搭載)
武装が若干変化しているが、史実のフラワー型コルベットとほぼ同じである。
設備の乏しい造船所でも建造できるよう簡易化した商船構造とされ、性能も妥協したものとなっている。
捕鯨船(キャッチャーボート)の設計を流用しているため、全長は短く全幅のあるズングリとした船体に4インチ砲や対空機関砲、対潜兵装などを少数積み込んだ艦として設計されているが、推進軸が1つであるため航洋性は乏しく大洋横断の護衛任務には不向きであった。
後期に建造された艦は戦訓や運用実績を盛り込んだ改良が加えられており、船首楼の延長やマスト位置の変更が行われている。
775 :フォレストン:2014/11/24(月) 11:41:32
リバー型 フリゲート艦
全長:91.74m
全幅:11.27m
喫水:3.96m
排水量:1370t(基準)
最大速力:20.0kt 20.5kt(タービン搭載艦)
主機:三段膨張式往復動蒸気機械×2基 2軸推進 5500馬力 or
パーソンズ式ギヤードタービン×2基 2軸推進 6500馬力
航続距離:7200浬(12kt) 7500浬(15kt タービン搭載艦)
乗員定数:140名
武装:4インチ単装高角砲1基(後に2基に増設) 20mm連装機関砲2基 同単装機関砲6基 ヘッジホッグ投射機1基 爆雷126個搭載(投射機8、投下軌条2)
史実のリバー型フリゲートである。
上述のフラワー型コルベットと共に、計画そのものは戦前より存在していたのであるが、史実よりもUボートの活動が比較的低調だったことと、津波被害の復旧でそれどころではなくなってしまったため、本格的な就役はドイツとの停戦後となった。
フラワー型コルベッが、元々沿岸警備用の艦艇であるため航洋能力が低く、外洋での護衛任務に無理があったため新たに建造された2軸推進の航洋護衛艦である。
戦訓や運用実績から後の艦になるほど対空兵装などが強化されており、後期建造型では航続距離が延伸されている。
一部の艦はレシプロ機関ではなく、ギヤードタービンが搭載されている。
MAC船 ラパナ型
全長:146.61m
全幅:18.29m
喫水:8.38m
排水量:16000t(満載)
最大速力:11.5kt
主機:メーカー不明ディーゼル機関×1基 1軸推進 4000馬力
航続距離:不明
乗員定数:118名
武装:4インチ単装高角砲1基 ボフォース40mm機関砲2基 ソードフィッシュ4機搭載
史実のMAC(Merchant Aircraft Carrier:商船空母)シップである。
ラパナ型はタンカーがベースとなっており、上部甲板に全通式の飛行甲板を備えているが、格納庫などは無いため搭載機は露天係止となっている。
飛行甲板は140mしかなかったのであるが、ソードフィッシュの運用には充分であり、本土と植民地を往復する遠洋航路には上述のリバー型といっしょに必ず配備されていた。
フェアリー ソードフィッシュ Mk2,Mk3
乗員数:2~3名
全長:11.12m
全幅:13.92m
全高:3.93m
自重:2359kg(最大4196kg)
発動機:ブリストル ペガサス MkXXX 空冷星型レシプロエンジン 750馬力×1基
最高速度:222km/h
上昇限度:3260m
航続距離:1658km
武装:7.7mm機関銃×2(前方固定、後方旋回各1)
18インチ航空魚雷or爆弾最大680kg RP-3ロケット弾(Mk3)
史実のソードフィッシュである。
抜群の操縦安定性は、長時間の低速飛行が必要となる対潜哨戒にはうってつけであり、雷撃任務から外されてから、その真価を発揮した。
時代遅れの複葉機故に、技術的には既に枯れていたため、信頼性、稼働率共に非常に高かった。
MACシップはこの機体無しでは成り立たなかったと言っても過言ではない。
Mk3はASVレーダーを装備しており、RP-3ロケット弾の搭載も可能であった。ロケット弾でUボートを撃沈出来ることが判明すると、Mk2は全てMk3仕様に改修されることになる。
鋼管骨組み羽布張りという、制式化された時点で既に時代遅れな構造であったが、応力外皮構造に比べて、機体強度の強化が行いやすいというメリットがあった。
これは、機体重量の増加に眼をつぶれば、大出力の発動機に対応することが可能であることを意味していた。後年、Uボートの高性能化に対応するために、前代未聞のエンジン換装に対応出来たのも、その機体構造に起因していたのである。
アルジェリン型 掃海艇
全長:69.0m
全幅:10.82m
喫水:2.59m
排水量:1162t
最大速力:16.5kt
主機:艦船用レシプロエンジン×1基 2軸推進 2000馬力
乗員定数:85名
武装:4インチ単装高角砲1基 20mm機関砲×4基
史実のアルジェリン型掃海艇そのもの。
史実とは異なり、ドイツとの早期停戦が実現したため、活躍の場は少なかったのであるが、大戦末期にドイツ海軍が実用化した沈底式感応機雷に歯が立たなかった。
新型掃海艇が戦力化され次第、退役することになっていたのであるが、配備されるまでに時間がかかることが予想されたため、英国海軍では新たな機雷除去の方法として、空中からの機雷除去の可能性について検討することになる。
最終更新:2014年12月02日 23:11