188 :トゥ!ヘァ!:2015/01/01(木) 22:47:47
水星日本世界での映画事情
当たり前かもしれないが水星と地球では映画の歴史というのは違う。
特に比較的近現代での双方の映画は互いの星や国の事情や国民性が反映されたものが多い。
ただ比較的初期の映画史は似通っている点も多い。
これは同じように映画と言う未知の業界を手探りで開拓していったからであろう。
違う点は地球側と比べ水星側では映像技術や撮影技術諸々が異常ともいえるスピードで進歩していったことだろうか。
話を戻そう。
水星側の映画は主にラブロマンスや痛快娯楽劇、架空の戦記映画、ノンフィクションドキュメンタリー映画などが多く、純粋なノンフィクション戦争物などは少ない。
これは外敵のいない状況化の水星では大規模な戦いがここ数百年起こっていないからであろう。
しかし、それとは逆に架空の秘密結社や侵略者などと軍やヒーローが戦う映画はそのような平和な歴史に反して極めて多い。
これは人々が内心では目にしてことも聞いたこともない大きな戦いというものに何か惹かれるものがあったからだと言われている。
これ大規模な戦争というものは既に歴史上のものであり、水星の人々にとっては非日常と呼べるものだったのだ。
つまりは戦争が完全な空想上の代物としか存在しない程に平和だったのである。
そしてこのような映画に出て来る悪役と言えば大抵は前時代に跋扈していた海賊やその残党、一時期問題となっていた財閥や企業などであった。
これらは改革が行われるまで一部で問題となっていたブラックぎりぎりのグレーやブラックそのものな事業を行っていた財閥群とそれと癒着し利益を啜っていた鉄砲玉や裏稼業の暴虐の歴史や事情を反映したもの故にと言えるだろう。
その他にも政府が主導して宇宙へ積極的な進出を図っていた時代では宇宙飛行士や月や木星圏、蒼星(地球)を課題とした映画が多く撮られた。
190 :トゥ!ヘァ!:2015/01/01(木) 22:48:24
このように基本的にどこか平和な題材が多かった水星の映画事情であったが、
蒼星に知的生命体の文明が存在し、それらが長らく争い続けていることが発覚すると今までにない映画が多く表れて来ることとなった。
即ち蒼星からの侵略者といった題材が多くの映画で取り扱われた。
それ以前の映画でも何度か蒼星からの知的生命体を題材に取りあつかった映画はあったが、
その多くが平和な交流やどこかコミカルな雰囲気を残していたのに対して、
この時期の蒼星を扱った映画には今までにない雰囲気・・・あえて言うのならばリアルがあったのだ。
自分達と同じような姿かたちの蒼星人がどこかで見たことのあるような武器を手に持ち、圧倒的な数で押し寄せて襲い掛かってくる。
そんな映画が駄作良作問わず多く生まれた。
無論中には平和的な接触から始まる交流劇を描いた作品もあったが、全体の流れとしては少数であった。
そして多くの人々はこれに違和感を持たなかった。
それ程までに政府の発表した内容はショッキングなものだった。
このブームともいえる流れはそれなりに長く続いたがそれも数年もしないうちに落ち着いてきた。
蒼星から侵略者が来て、勇敢な日本の軍やヒーローがこれを撃退する。
この流れにいい加減人々も飽きたからだ。
となると今までの流れに戻るのは必然。
人々は今まで見てきたラブロマンスやコメディものなどの作品に人気が戻っていった。
誰しもが永遠と危機感を積もらせたままでは気も滅入るからだろう。
濃い味のものを食べた後には薄味や別の味のものが食べたくなる心理と同じであろうか。
兎も角にも、過激な蒼星人との戦争物映画は常に一定の人気を保ちつつも、全盛期ほどの盛り上がりは見せなくなっていった。
時は進み本格的に蒼星(地球)との(表立っては)平和的な交流が始まった時期。
人々が政府からの発表でこのことを知らされた時にはある種の熱狂があった。
それは不安であり希望であり興味ともいえる幾つもの感情が混ざり合ったものである。
この当時には以前の戦争物ブームとは真逆の蒼星人との平和的な交流を描いた映画が多く出てきた。
つまりは過去の多数派少数派の逆転が起きたのである。
人々はこれらの映画を見ながら想像力豊かに様々な夢を見ていた。
彼らの肌の色は何色だろう?どんな国が存在しているのだろう?っと様々な話題が飛び交った。
無論その中には軍事力に関する話題も上がっており、一時期の危機感に触れるものもあったが、映画の中とは違い向こうもいきなり戦争を仕掛けてくる無法者ではないと判明し、人々は当時よりも余程理性的に物事を考えるようになっていた。
少なくとも日本の人々はかつてのような破滅的なまでの危機感は抱かず、流行の映画の影響もあってか新しい友人との平和的で希望と夢に溢れた未来を望むようになっていったのである。
地球側の映画事情に続く。
最終更新:2015年01月17日 15:35