288 :トゥ!ヘァ!:2015/01/02(金) 20:04:09
水星日本世界での映画事情 地球の場合
さて、そんな地球側の映画事情が水星側と大きく違う点がある。
それは水星側では映画が純粋な娯楽として広まったのに対し地球側は多分に政治的な事情も含まれた作品が多く作られた点であろう。
有り体に言えばプロパガンダ映画が多かったのだ。
特に第一次大戦、第二次大戦期には多くのプロパガンダ映画が撮られた。
これらは戦争中という状況も合わせ多分に過激で排他的な表現が数多く含まれた映画である。
無論それ以外の映画も数多く作られてはいる。
その中で有名なのは喜劇王チャップリンがフランスの独裁者ド・ゴールを演じた社会風刺映画「独裁者」であろうか。
これと同じように当時の社会情勢を皮肉った風刺映画がプロパガンダ映画に劣らず多く撮られていた。
このような映画が多数撮られヒットを記録したのは地球では戦争とは空想上の代物ではなく身近で起こっている悲劇的事実だということを大多数の人々が感じ取っていたからであろう。
戦争がほぼ完全に空想上の物になっていた水星側とは対照的である。
そして、それと同時にプロパガンダ映画が多いのは戦争と言う時代の背景もあるが、
地球の映画とは民衆への啓蒙と宣伝のために政治的な内容とは切っても切り離せない代物だったという生臭い理由がある。
そして水星側と最も違うとされているのは多くの映画の中で主流では無い人種に対しての差別や皮肉が多かったことだろうか。
これはほぼ単一の民族で構成されている水星側と多数の民族が跋扈する地球側との違いを端的に表したものの一つである。
この人種差別的な映画としてある種有名なのは猿の惑星であろうか。
これは当時列強が分割していた旧清地域で起きた過激な新華運動を元ネタとして作られたという話がある。
この映画には当時の白人優位な人種差別的発想の他に一時期東南アジアまで占領した黄色人種である新華勢力に対し内心では抱えていた恐怖心という事実をわかりやすく表したものであった。
米英ソの三極冷戦時代に入ってもそれは変わらず。
ハリウッドなどでは新華の残党という名の秘密結社と戦うヒーローなどの映画が作られ、
英国やソ連でも娯楽映画では新華系の配役はその後も長らく映画史におけるテンプレ的な悪役として根付いていった。
289 :トゥ!ヘァ!:2015/01/02(金) 20:04:49
時代が進み世界が安定し出した頃では地球でも純粋な娯楽映画が増えていった。
技術の進歩と民間への普及が映画をより一般的な存在へ広めたのだ。
そうなれば必然今までとは違ったタイプの映画も数多くでてきた。
その中でどの時代でも一定の人気を誇っていたのが水星関連である。
米英ソの宇宙進出競争時代では特に人気のあったジャンルだ。
そしてもっぱらこのジャンルで人気なのは地球へ侵略しに来る水星人と正義の地球連合軍が戦う戦争物もしくはコメディ物であった。
この水星からの侵略者というジャンル自体は昔から存在していたものである。
1938年
アメリカで起きたオーソン・ウェルズの宇宙戦争事件などが有名だろうか。
水星の状況がよく知られていなかった当時だが、それでも人々は想像力豊かにあの手この手で作品を生み出していった。
幾度となくリメイクされることとなる宇宙戦争
シリーズを始めとした様々な娯楽映画が誕生していった。
当時の人々は政府が進める宇宙進出競争の熱気と合わさりそれらの映画に対して白熱していたと言ってもいいだろう。
しかし同じようなものが長く続いていけば人間は飽きるもので、時が経つにつれ徐々にだが宇宙物映画のブームはこれまた水星の蒼星ブームと同じく一定の人気を維持しながらも落ち着きを見せていった。
だがこの宇宙ブームはそう時をおかずに思いにもよらぬ形で再燃するのであった。
時は進み、1979年。NASAが水星には文明を持った知的生命が存在すると発表するや否や世界中である種の水星ブームと呼べるものが巻き起こった。
この点は水星側と似たり寄ったりである。
民衆というものはインパクトのある情報に弱いのだ。
人々が様々な想像を膨らませ、希望に満ちた未来を思い描いているところまで同じであった。
そして映画業界でもこのブームのもとで水星を題材として映画が数多く製作されたのは必然であろうか。
内容は従来の宇宙戦争のような戦争物からラブロマンスに冒険活劇まで様々だ。
お国ごとの特色も見れた。
アメリカは正義と自由のもとアメコミヒーローたちが太陽系の外から来る侵略者を水星人と手を合わせ撃退するような映画。
英国は水星に不時着してしまった宇宙飛行士が現地の水星人女性と恋に落ちるラブロマンス。
ソ連では一部の上流階級に抑圧された水星の民衆を水星に降り立ったソ連大使と共に解放する映画など・・・
無論これらがこの時期に作られた映画の全てではないし、上にあげたものが必ずしもヒットしたというわけでもないが。
このように第二次宇宙ブームともいえる熱狂が世界を包み込んでいった。
そしてそれは正式に水星の日本政権と国交が樹立された頃には絶頂期と迎えていた。
かつて人々が空想の中で思い描いていた水星人との交流が現実のものとなったからだろう。
人というのは夢と思っていたものが現実になる程、嬉しいことはないのだから。
今回はこれにて終幕としよう。
願わくば二つの星に明るい未来のあらんことを。
最終更新:2015年01月17日 15:39