- 959. earth 2011/06/05(日) 17:57:05
- ※ネタです。戦後世界を妄想した結果できたネタです。
本編がこうなるかは保障できません。
西暦195×年。かつてカリフォルニア州と呼ばれたアメリカの有力州は大日本帝国カリフォルニア特別自治区として
生きながらえていた。白人達は黄色人種に支配されるという事態に恐怖したが、疫病、戦争から逃れるためには日本の統治
を受け入れるしかないと判断して、条件付ながら日本の支配下に入ることを受け入れた。
日本もまた欧州諸国に配慮するためにも、カリフォルニアの統治には神経を使っていた。また今村元帥が総司令官を務める
北米方面軍、草鹿大将が司令長官を務める北米方面艦隊(第7艦隊)による睨みもあって日本企業も安心して進出した。
これによってカリフォルニア経済は安定していた。
西海岸のほかの二州もカリフォルニアほどではないが、日本のバックアップによって北米のほかの地域に比べれば安定し
ており、この三州は地獄とも言ってよい旧アメリカ合衆国領内では天国と言っても良かった。
だが天国があるとなれば、そこに難民が殺到するのは当然の流れであった。
「今日も旧アメリカ合衆国からの難民が流れ込んでくるか」
サンフランシスコに置かれた北米方面軍司令部では、夢幻会派の軍人達、自治政府顧問の高給官僚が憂鬱そうな顔で
話し合っていた。
「ああ。やせ衰えたご婦人、子供が多数だそうだ。アメリカ風邪にやられている人間もいるらしい」
「どうする?」
「難民キャンプにも限度がある。それに自治政府の連中は、かつての同胞をさっさと放り出せと煩い」
「……やってられないな。史実を知っていると」
「全くだ。あのアメリカがまるで第三世界みたいになるとは」
「それを言ったら世界中がそうだ。欧州列強はアフリカの植民地、アメリカ南部各州を搾取している。世界でまともな
地域のほうが少ない」
「内地の連中は、日本を新たな超大国だの何だのと持ち上げている。全くお目出度い連中だ。瓦礫と死体が積み重なった
世界で王様気取りなんて」
「まぁ夢幻会会合は現実的に物事を考えているから、何とかなるだろう。国民の暴走も辛うじて抑えられている」
「そうあって欲しいよ。威勢のいい政治家、自分本位なら良心から日本文化を押し付ける馬鹿が上層部なんて目もてられん」
「本格的に政治家に統帥権を渡して、帝国が帝国でなくなるのは何時の日になることやら」
「いや夢幻会内部でも馬鹿は居る。まぁ前の粛清のせいで組織の腐敗は抑えられているが……我々が率先してモラルと規律を
守らなければならない」
「判っている」
世界の三大国の一角、それも三大国の中で最も強力な軍事力と最高の科学力を持ち、今後、世界をリードするといわれる
大日本帝国。その帝国を支配するエリート達の悩みは尽きない。
だが外から見れば、そんなエリート達の悩みなどわかるはずがなかった。
羽振りのよさそうな日本人のエリート軍人、官僚を見て、カリフォルニア自治区市民は何でこんなことになったのかと自問自答
する日々だった。
- 960. earth 2011/06/05(日) 17:58:03
- 酒場では大勢の男が不平と不満を漏らしていた。
「黄色い猿に支配されるとはね。堕ちたもんだ」
「そういうな。日本企業に雇ってもらっているんだ。彼らがいなかったら嫁と息子を養えん」
「ふん」
「しかし何で、こんなことになってしまったんだろうな……」
「連邦政府と連邦軍の無能のせいだろう。知ってるだろう、ハワイ沖じゃあ日本の駆逐艦4隻沈めるのに、戦艦が9隻も
必要だったんだぜ。俺達納税者を馬鹿にしているにも程がある」
近くにいた旧米海軍関係者は首をすくめ、肩身が狭そうにする。だが男達は気にも留めない。
「おまけにジャップの飛行機なんてすぐに落せるなんて大言壮語しておいて、一方的にやられてる。
戦車だって同じだ。日本の戦車に良いようにやられて……情けない限りさ」
「それにジャップは俺達がレシプロ機を必死に作っているころに、ジェット機を作っていたんだ。あの津波がなくても
負けていた可能性があるだろう」
「俺達白人が後進国の黄色人種の国に技術力で負ける。全く信じがたいよ」
「だが、不平と不満ばかり言っていても仕方ないだろう。俺は息子を日本の大学に留学させるぞ。いつまでもカリフォルニアが
日本人の後塵を仰いでいていいわけがない。俺達は負けた。だが次の世代、いや次の世代で何とか逆転するんだ。
そのためには勝者から学ぶ必要がある」
「日本人から学ぶと?」
「そうだ。日本の大学は世界でも最高学府となっている。かつてのマサチューセッツにも劣りはしないだろう。
ここで学ばせるのは十分に価値があることだ。いや技術だけじゃない。政治、経済構造、優れた点を学ぶべきだ」
「お前は前向きだな」
「当たり前だ。昔の栄光に縋りつくのは欧州の人間だけだ。俺達はフロンティア精神を持ったアメリカ人だ。
国は滅んだ。だが俺はその誇りと精神まで失うつもりは無い」
しかし『アメリカ』と言う言葉に男達は顔を顰める。
彼らにとってアメリカ合衆国など、過去の遺物であり、今の事態を引き起こした元凶でしかない。
忌々しいことに彼らがまともに生活し、欧州人に露骨に白眼視されないのは『日本人』になっているからだった。ペストの亜種とも
いうべきものを兵器にしていたという事実は、旧アメリカ人を排斥するには十分な理由だった。
「……でも国が滅んでなければ、俺達も日本人に支配されるなんて惨めな思いをしなくて済んだかもな」
「だな。はぁ、日本人は有頂天で、俺達みたいな悩みとは無縁だろうな」
「ああ。間違いない」
だが彼らは知らない。アメリカを滅ぼしたことで、逆に大きな負担を強要された日本帝国の指導部も頭を抱えていることを。
世の中、そんなに単純ではないことを。アメリカが滅んだこの世界では、誰もが頭を抱えつつも、より良い明日を求めてもがいていた。
あとがき
妄想と電波の神が降りてきたので書いてみました。
本編ではカリフォルニアを併合するとは限りません。まぁ無いとも言い切れませんが(爆)。
一種のIF世界と考えてください。
さて何とか本編を進めないと……。それでは失礼します。
最終更新:2012年01月02日 04:55