244 :earth:2014/12/11(木) 21:42:05

惑星日本』ネタ

 日本列島が火星に転移してから300年あまり、日本人は未知の大地や激変した環境に苦戦し、数多の犠牲を支払いながらも
その生存圏を拡大させた。これは本来、死の星であったはずの火星が地球型の惑星で、人類の生存が可能であったからに他ならない。
 しかしそれは本来はあり得ないことであることを、夢幻会の面々は理解していた。

「なぜ、火星が1Gの上、人類の生存が可能な惑星になっているのだろうか?」

 それは転生者の間で長らく疑問であった。
 だがその疑問は、火星極冠部の調査によって解決されることとなった。

「まさか、異星人が本当に存在したとは……」

 国家再編が行われ、江戸から東京と名を変えた大都市の一角。
 政府高官御用達の料亭の一室で開かれた夢幻会の会合では、報告された内容に出席者全員が絶句していた。
 何しろ彼らが持つ資料には、明らかに地球人類以外の存在が建造したと思われる地下構造物の存在が記されていたからだ。

「だが、これで全て納得がいく。『彼ら』は長い時間をかけてこの火星を生存に適した惑星にするつもりだったのだろう」
「しかしそれなら、なぜ地球に殖民しなかったのでしょうか? 少なくとも火星を改造するよりは楽なはずですが」
「……何かしらの理由で地球には住めなかったのだろう。たとえば細菌やウイルス。人類にとっては致命傷にならなくとも、彼らには
 致命傷になるものだったとしたら?」
「なるほど……」

 そして彼らは憐みの感情を含んだ視線を極秘資料に移す。

「そして長い間、冷凍睡眠でテラフォーミングの完了を待っていた彼らは、何かしらの事故によって施設の中で全滅。
 残されたシステムだけが、命令を忠実に守って火星の環境を改造していた、と」
「何のお伽噺ですか」
「ネタだったら、ここでシステムを統括するAIが美少女とかで、お色気展開があるんだろうが……」
「ないですね。むしろ、うすら寒いものがありますよ」
「ははは。悪魔が美女に化けて人間を誘惑するなんて話はよくありますからね」
「むしろ、冥府の使いじゃないですかね、遺跡の様子を見る限り……」

 多数のカプセルの中に入っている多数のミイラ化した遺骸を見る限り、楽観的なことを彼らは言えなかった。

「まさに『根の国』だな」
「死者の国、と?」
「その意味もある。だが別に正の意味もある」
「?」
「根の国は生命や富の根源、という考えもある」
「……なるほど、確かに我々にとって、かの遺跡は『根の国』という訳ですか。我々が火星で生きていられるのは、あの遺跡のおかげですから」
「そういうことだ。まぁ、この話題はこのあたりで切り上げよう。我々にとって重要なのは、この遺産をどう扱うか、だ」
「確かに」

 『軍神』の星の地下に存在した『根の国』。
 人知の及ばぬ叡智の詰まった『ソレ』が日本人にとっての福音となるか、それとも火星に住まう日本人を破滅に誘うものになるか……
その時点では誰も分からなかった。

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最終更新:2015年01月17日 16:58