287 :フィー:2014/12/05(金) 01:19:07
こそこそ書いてたのでちょっと投下。
何年ぶりだろう。
「転移の日」
戦国の世が終わり十数年。
これからは太平の世が来るのだと希望に満ちていた時代。
この世に再び生を受けた
夢幻会の面々も江戸の世の時間を使い、趣味に走りつつもいずれ来る欧州列強との戦いに優位に立つための準備を整える〈つもり〉だった。
全ての前提が脆くも崩れ落ちたのは、ごく普通の日の事だった。
昨日と同じ様な今日が来て、明日もまた同じ様な日が来るのだと誰もが疑わない。
そんな当たり前の日のはずだった。
その日、日本全国で微細な地震が発生した。
揺れたことに気が付かない者もいるような弱い地震だった。
しかし、それこそが日本という国家の運命を左右する重大なトリガーだったのだ。
はじめに異常に気が付いたのは屋外にいた人々だった。
急に日が陰った様に思い、ふと空を見上げると明らかな異常がそこにはあった。
―――太陽が小さい!―――
この経験したこともない天変地異に人々は恐れ慄いた。
跪いて祈る者、お天道様がお怒りだと隣人と話す者、我関せずと家に籠る者。
一部では混乱から暴徒化する者まで出る始末だった。
幕府や各大名家は自分たちも混乱しながらも治安維持に全力をあげ日が暮れる頃には一応混乱は収束していく。
多くの者が不安を飲み込んで沈みゆく太陽を見ながら明日には元通りの太陽が昇ることを心から祈っていた。
そんな中夢幻会の面々はおおよそ何が起きたか理解しつつも今後の事を思い頭を抱えていた。
何が起こるか分かっている史実と違い何処とも知れぬ世界に来てしまったのだから当然である。
もっとも、極々一部の者は「異世界転移キタコレ!」とか「やった!これで煩わしい連中と縁が切れる!」とか喜んでいたのだが。
その日はごく普通の日ではなかった。
しかし、明日からはごく普通の日になるだろう。
今日は昨日と同じ様な日は来なかった。
しかし、明日からは昨日と同じ様な日が来るだろう。
その後太陽が元の大きさを取り戻すことはなく、小さな太陽があることが〈普通〉の日常になっていくのだから。
最終更新:2015年01月17日 17:30