30 :826:2015/01/22(木) 02:10:01
火星に突如として転移した日本。
気候の大変動に大いに苦しみながらも、江戸幕府中枢にいた夢幻会は未知の状況の中でも必死に原因の究明にあたっていた。
彼らは地球にまだ日本が存在した時から大いに疑問だったのだ。
前世と違う点として火星が二つもあり、片方が地球と紛うごとき青い星であったことが。
一体どうして、あるいは一体誰がこのような第二の地球とも呼べる水星が生まれたのか。
そして、自分たちが二つの火星のうちの一つ、水星と呼ばれていたこの大地へと日本列島ごと転移したのかを。

その答えは、水星の開拓が進んでから200年近く経過してからようやく判明することになる。
火星の北極。
まるで蟻の巣のように地下深くまで続く巨大な遺跡がひっそりと点在していたのを、北極圏の探検隊が発見したのだ。
そして、すぐさま調査が行われそこに秘められたモノを目撃することになった。

「こちらの水星、いや火星に遺跡があったということは、やはり向こうの火星にも同じものがあるかもしれないな……」
「アルドノア……失われた古代文明の遺産か」

後に、水星北極圏樹冠遺跡と呼ばれることになる巨大な遺跡は、静かに日本の民を受け入れた。




惑星日本ネタSS 『アルドノア・メビウス』





一通りの調査が終わった段階で、夢幻会はすぐに会合を開いた。

「やはりあの遺跡の中にあったハイパーゲートの発生装置が日本を転移させたようだ」
「あの遺跡そのものが使い手を求めた結果というべきか……」

とはいえ、無事に遺跡の中身を確保できたのでさっそく使い道などについて相談することにした。

「原作通りの展開ならば、この水星も火星も放っておくと空気や水はどんどん枯渇してしまうな……」
「幸い、こちらのテラフォーミングはあちらよりもマシなようだ」
「食料も資源も原作ではお寒い限りだ。まだこちらの火星は余裕があるが、胡坐をかいてはいられない」

原作を知るが故の未来知識を持つ夢幻会は、転移直後のように混乱の中にあった。
このままいけば火星が地球との滅ぼすか滅ぼされるかの殲滅戦争に全速力で突入してしまう。
勿論、水星も無関係ではいられないだろう。
しかも戦争に突入する段階では食糧事情や資源不足、環境問題などが起こり、せっかく積み上げてきたものが失われる可能性があるのだ。
主に二次元の嫁的な意味や自分の趣味的な意味で。どうにかしてこれを回避するしかない。彼らはそう決心した。

31 :826:2015/01/22(木) 02:11:06
まず始めたのは、遺跡の研究である。
ハイパーゲートの暴走による月の崩壊「ヘヴンズ・フォール」を可能な限り抑えるためには、やはりハイパーゲートを知らなくてはならなかった。
ゲートの暴走を防げればそもそも月が崩壊しなくて済む。
止められなくても、ゲートを使えばその後のヴァース帝国の侵攻も含めて地球人口の半分が死亡する事態を防げる、あるいはその数を減らせるはずなのだ。
例えば、地球に水星からハイパーゲートで食料や医薬品を一気に運ぶことができれば、ヘヴンズ・フォール後に激変する地球でも餓死者を減らせる。


並行する形で、この水星をテラフォーミングしてのけた技術の解析を進め、将来的な環境問題に対処できるように手を打った。
発見された遺跡は、どうやら古代文明の遺産がかなり残されているらしく、すでに多くの発見があるという。
そこから得られる知識があれば、テラフォーミングをより完全なものにできると考えていた。
またその研究の副産物としてドーム状の食物生産プラントの建造が始まった。外界に影響されることなく、主食となるコメなどの栽培を可能とするためだ。
将来的には火星か地球に売り込みをかけることができる。


そして、最終的に武力での介入も想定してカタクラフトの研究もおこなわれた。
夢幻会が持つ知識とは別の、アルドノア技術。それは古代文明の遺産であり完全な未知のものだ。
だが原作で大いに発揮された力の一端を夢幻会はよく理解していた。工夫次第で何とかなると言っても、やはり脅威であることに変わりはない。
余談だが、水星のカタクラフトが〇ンダムやマ〇ロス、あるいは〇ームスレイブなどに酷似していたのは、やはりどこでも夢幻会は夢幻会らしいというべきか。
大型のカタクラフトではMSやAC、VF、ゾイド派が派閥に別れ開発において激しい争いを起こした。
なお、小型のカタクラフト枠ではAS、レイバー、ボトムズ派がしのぎを削るのだがそこは割愛する。

なお、火星の方にあるであろうアルドノアに関してだが、流石に太陽を挟んで反対側にある火星への到達が時間がかかり過ぎることなどを理由に諦めることになった。
もし仮に原作のとおりであるならば、火星のそれは水星のそれとは異なる軌道因子が必要となる可能性が高い。
仮に手に入れたとしても、水星にあるそれと同じように制御できるとは限らないのである。

32 :826:2015/01/22(木) 02:13:04

そして、地球と水星のコンタクトが起きてから十数年後の1972年。地球のアポロ計画の中でハイパーゲートが発見。
地球は水星から遅れながらも、火星に眠る古代文明のオーパーツ『アルドノア』へと到達した。
火星の軌道をめぐる二つの惑星とその一つ内側の軌道をめぐる地球との間に、いよいよ動乱が訪れようとしていた。
その動きを受けて、水星も表だってアルドノアの技術を使い始め、地球もそれを求めて火星へと手を伸ばし始めた。
原作の流れを踏襲し、レイレガリア博士を中心とした開拓団が火星入りし、アルドノアの研究を始めた。
水星は後に起こる悲劇を回避すべく、ヴァース帝国を作ることとなるレイレガリア博士に接触し、様々な手を打った。
まだ完全な状況とは言えなかったがハイパーゲートを使って地球や火星に赴き、最初のフラグを折らんとしたのだ。
さらに、自分たちが既に実用化したアルドノアやハイパーゲートの技術をめぐる問題において火星と地球の間に立ち、トラブルが起きないように調整役を担った。
だが、夢幻会が必死に努力しても、地理的な距離や政治事情の違いなどが影響し、そう簡単にうまくはいかない。
日本が地球から転移したことによって白人主義が広まっていた地球の国家では、黄色人種の水星を軽んじる動きがあったのだ。
もっと支援したいところではあるが太陽の反対側にある火星への支援はどうやっても難しいものがあり、介入の機会はあまりにも少なかった。
そして流れに抗った者の完全に食い止めることは叶わず、1985年、火星開発の中心であったレイレガリア博士は自らを皇帝と称し、ヴァース帝国を建国した。

だが、夢幻会はめげることなく次の手を打った。
建国されたのはしょうがないとしても、要するに地球との戦端を開かせなければ問題ないのだ。
幸いにして、転移直後から必死に研究してきたテラフォーミング技術は、ついに輸出できる段階にまで完成していた。
これをハイパーゲートを通じて火星に輸出し、使用することで火星環境はかなり改善される見通しが立つのだ。
そもそも火星が地球へと戦争を吹っ掛ける原因の一つが、火星の劣悪な環境にある。
食料となるものがクロレラやオキアミばかりであり、中世の武断政治寄りの思想が根付いたことで文化の振興もかなり遅れていた。
さらに言えば、アルドノア以外の産業は置いてけぼりの状況であり、アルドノアありきの国家運営といえた。
そういう経緯で水星は火星に対し、アルドノア技術の交流と引き換えに自国の食料や文化の発信を持ち掛けた。
この動きは皇帝のレイレガリアも歓迎の意向を示した。何しろ建国前にはそれなりに交流し、支援をしてくれた星である。
少なくとも、火星を植民地のように見下してくる地球とは違うのだから、その価値も信用性も十分にあった。

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だが、いつの時代にも極端な考えに走る人間はいるものである。ことに、過酷な火星においては。

「我々は負けてはならない、屈してはならない。あの水星のように」

水星の存在が火星の人々の、より正確に言えば選民思想の走りに染まった火星貴族やタカ派に危機感を抱かせていたのだった。
恵まれた水星と、過酷な環境下にある火星。技術的にも先行し、文明を発展させている水星への劣等感というべきであろうか。
このままでは水星の言いなりとなり、自分たちはやがては飲み込まれるのではないか?
未知への恐怖だった。自分たちの常識の外にある水星への、必然的なおそれだった。
潜在的な恐怖につけ込んだこの動きは、密かに、しかし着実にその影響力を拡大していった。
拡大した影響力はやがて政治や世論にも浮き彫りとなっていく。
地球との争いを避ける方針の水星とは逆に、メディアは穏健な水星を「地球に屈した臆病者」と罵倒しながら、地球に対してより強気であるべきと述べ始めた。
さらには火星・水星間の貿易でもたらされる文化を「地球の下等なる文化に染まった遺物」と断じて検閲を入れるようになった。
規制を受けようがあまり水星としては問題なかったのだが、アルドノア技術の国外輸出の出し渋りや、脅迫まがいの火星の態度に、いよいよ水星側も不快感を持ち始めた。

実際、水星国内においても火星への反感や反発感情がくすぶっていたのだった。
名指しでの罵倒があまりないためにまだ国民はおとなしかったのだが、それでも少なくない人間は火星側の実態を知っていた。
基本的に地球や火星の内政にまで干渉するのを避ける方針だった水星では、表立って話題とはならなかった。
だが、火星の住人がこちらに無礼極まりない要求を突き付け、侵略的な意思を見せているとあれば、少なからず市民に不安が広がるのも当然の帰結だった。
そして大日本帝国も、万が一に備えて軍事的な行動も視野に準備を始めた。




勿論レイレガリアも、その子供であるギルゼリアもそういった意見を必死になだめていた。国力においては水星と火星ではかなりの差がある。
如何に火星騎士たちや揚陸城、そしてアルドノアの技術を詰め込んだカタクラフトもあってもかなり厳しいと考えていたのだ。
今の状況すら何とか体裁を保っているというのに、戦争へと突入すればどうなるか?それを想像できないほど、彼らはおろかではなかった。

だが、強硬派は日を追うごとにその規模が拡大し、世論を味方につけつつあった。
そもそもが開拓のために火星へと降り立った人々の集まりである。政治や国際感覚、あるいは星間感覚に優れた人間はごく一握りしかいなかった。
刻々と苦しくなる生活。地球でのうのうと暮らし技術を奪っていく地球人への反感。さらには水星への劣等感。
そんな状況のなかでは過激な意見も熱狂的な支持を受けやすい。いや、過激だからこそ受け入れられる。
火星のテラフォーミングは水星の支援を蹴ったことでまだ未熟であるために、もはや地球から収奪するしか一時的にでも国家を救う手立てが消滅していた。
彼らが強気であったのはアルドノアの技術において地球と、水星や火星との間にはかなりの差があったことが原因だった。
水星はアルドノア以外の技術も含めて地球へとやり取りし、火星への政治的な圧力を弱めようとしていた。
だが、これがある意味裏目となり、地球側が通常技術にリソースを割いた分、原作以上にアルドノアの開発が遅れる兆しが見えたのだ。
そして、この地球の動きを知ったヴァース帝国内には「アルドノアのない地球の下等民族など恐れるに足らず!」という意見が吹き上がってしまう。
市民はそれを支持した、もはや盲目的に。
建国されてからまだ時間をおかず、軍備も政治もまだまだ弱く、社会そのものが軋みを挙げている中でブレーキのない車は谷底へと一気に加速し始めた。




そして運命の1999年。
ヴァース帝国第二代皇帝 ギルゼリアが地球に対して宣戦布告。各地で戦端が開かれた。

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ヴァース帝国の宣戦布告の報は、当然水星にももたらされた。

「止められなかったか……」
「もうこうなっては仕方がない。ヴァース帝国を止め、起こるであろうあらゆる悲劇を今度こそ止めねばならない」
「宇宙機動艦隊も動かします、これまで我々が磨いてきた力を使うときです」
「……やるならば、徹底的にやりましょう。地球での惨劇を止め、さらにヴァース帝国内の動きも止める」

夢幻会の意思は、ついに固まった。










1999年。ヴァース帝国の宣戦布告から間をおかず、地球と水星に水星の大日本帝国から国営放送が流れた。
地球、水星、火星、宇宙。あらゆる場所にいた人間は、その宣言を耳にした。
全権を持つやんごとなき御方は、静かに宣言する。

「朕茲ニ戦ヲ宣ス」

それは、地球と火星間における戦争への水星の介入宣言。
数百年かけて磨き上げられた日本の刃がついに引き抜かれた合図だった。
これをきっかけに、地球圏は地球・火星・水星の三つ巴の動乱に巻き込まれていくことになる。






To be continue........

35 :826:2015/01/22(木) 02:21:55
言い訳がましい後付設定

  • 火星の軌道には史実火星と惑星日本における水星がある。片方はその見た目から火星、片方は水星と呼ばれている。
  • 両方の火星は古代文明の手によってテラフォーミングがなされていたが、水星の方がより完成度が高い(テラフォーミングのための技術を遺跡から得ることができた)
  • アルドノアの技術差は 水星>火星>地球
  • 流石に太陽を挟んだ反対側に行くのは大変でした
  • 地球はひゅうが氏の世界とほぼ同じで白人主義に染まってます。なので水星の警告は無視される傾向にあったため、原作よりも遅れがち。
  • アルドノアそのものは火星と水星で別系統。よって火星の皇帝一族は水星のアルドノアに干渉できません。
 水星においてはやんごとない御方の血筋が干渉可能。
  • タイトルのメビウスは、『ゼロ』と反対の意味を持つ『メビウスの輪』から命名。
 メビウスの輪に終わりはなく無限。同音異義語で無限は夢幻であり、暗黙裡に夢幻会のこともあらわしている。


正直やっつけです。独自解釈なところもありますし、矛盾もあるかもしれません。

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最終更新:2015年02月01日 18:58