798 :フォレストン:2015/02/24(火) 17:58:10
英国流大海獣の退散方法とは…?
「…その情報は事実かね?」
「駐日大使館からの情報です。現在、情報部でも確認中とのことですが、可能性は極めて高いとのことです」
「あの日本が無意味なことをやるとは到底思えん。何らかの裏があると見るべきだろうが…」
部下からの報告にアンドリュー・カニンガム第一海軍卿は頬の筋肉を引き攣らせた。
彼は報告を持ってきた部下を退室させると、広い執務室でポツリと独りごちた。
「彼女達の時代は終焉を迎えようとしている。その幕引きをしたのは他ならぬ日本だというのに、いったい何を考えているのか…」
799 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:11:28
1946年初頭。
英国はロンドン市内に存在する海軍本部の大会議室では、とある議題で会議が進行中であった。
肝心の議題であるが、会議室の黒板にチョークで大書されていた。
『日本が建造中の新型戦艦に対する考察』(英文)
文字が震えて見えるのは気のせいであろうか。
文字の中に不自然に点状の形跡が多数確認出来るのは、勢い余ってチョークを折ったのか。
いずれにしろ、これを書いた人間は心穏やかでは無かったことであろう。
閑話休題。
今回の会議には、海軍上層部はもちろん、戦後になって急速に発言力を増している航空決戦主義派(いわゆる空母マフィア)や、未だに根強い信奉者が存在する戦艦派、その他にもオブザーバーとして情報部その他の人間も参加していた。
派閥や組織の垣根を越えた幅広い意見交換をすることで、今回の事態に対処しようというのである。
「日本が戦艦を建造しているのは確実です。戦艦と明言こそされていませんが、日本の海軍関係者たちの間では公然の秘密となっています」
「日本のクレ、ナガサキ両ドッグでは大規模な資材の搬入、工員の動員が確認されております」
情報部からの報告に、参加者からは、どよめきとも呻きともつかぬ押し殺した声が広がった。同時に疑問の声も出されたが。
「日本が大型艦を建造しているというだけで、戦艦と断じるのは尚早ではありませんか?」
「日本にはナガトタイプを筆頭にした有力な戦艦部隊が存在しております。新たに戦艦を作る理由がありません」
「戦艦を過去の遺物と化させたのは、他ならぬ日本海軍です。その日本が、今更戦艦を作るとは思えません」
「例のタイホウクラスの後継艦では?それならば納得がいきます」
明らかに空母マフィアと思われる将官たちの発言に、戦艦派の人間たちはムッとしたが、情報部の担当者は構わず続けた。
「駐日大使館の協力で日本の企業の株価をチェックしたのですが、造船関連が軒並み値上がりしております」
「その中でもさらに特定の企業の株価が、激しく値上がりしており、これは過去のイブキタイプやナガトタイプ戦艦の建造時の状況と極めて一致しています」
情報部からの反論に面白くなさそうな顔をする空母マフィア達であるが、反論する材料が無いので沈黙した。それを見て戦艦派の人間が巻き返しを開始する。
「確かに戦艦の時代は終わりつつあります。しかし、戦艦の価値が完全に無くなったわけではありません。戦艦の主砲は上陸支援に極めて威力を発揮します」
「航空機の攻撃力と足の長さは確かに強力ですが、夜間や悪天候時には実現出来ません。戦艦ならば天候を気にすることなく、砲撃支援を行えます」
日本の新型戦艦をダシにして、あわよくば戦艦の建造枠を勝ち取ろうとした戦艦派であったが、限られた予算と資材を分捕られては堪らないと、会議に居合わせていた他の派閥の人間が阻止にかかる。
「改KGV級の建造は順調です。これ以上の戦艦が早急に必要とは思えませんが…?」
「将来的には16インチ砲戦艦を4隻持つことになるのです。抑止力としては十分でしょう」
英国ではKGV型以外の戦艦を全て退役させる予定であり、代艦として既に改KGV型戦艦の建造に取り掛かっていた。
ロンドン条約が履行された結果、当初KGV型戦艦は14インチ砲10門を搭載した戦艦として完成したのであるが、当時欧州列強では条約明けを見越した15インチ砲搭載艦の建造が進められており、危機感を抱いた英国もそれに追随する形となった。
そのため、14インチ砲を搭載したKGV型戦艦の建造は2隻のみで終了したのである。
3番艦以降は15インチ連装砲塔4基8門を搭載することとなったのであるが、ドイツの新型戦艦(ビスマルク)が16インチ砲を搭載する計画があることを知った海軍上層部では、対抗するために16インチ砲搭載を計画。
結果、3番艦以降は砲塔を1基減らして16インチ3連装3基9門の戦艦として完成させることになったのである。
そのため、KGV型戦艦は同一クラスであるのにも関わらず、主砲と排水量に変化が生じることとなり、現在では2番艦までをKGV型、16インチ砲を搭載した3番艦以降を改KGV型として区別している。
英国海軍ではこの改KGV型を2隻建造し、その運用実績を踏まえて従来のKGV型2隻を16インチ連装砲塔4基8門搭載に改装する計画(KGV改型)であった。
もっとも、実際に改装するとなると装甲配置の変更や、ボイラーの交換その他諸々の変更が必要となり、結果的に新規建造に近いくらいの予算と工数が必要になるので、実現するかはかなり微妙であったが。
800 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:16:02
戦艦派からしてみれば枢軸海軍に睨みを利かせるには、改KGV型とKGV改型が計画通りで建造されたとしてもギリギリな数であった。
彼らはこの機会を逃してなるものかと必死に反論した。
「日本の新型戦艦が既存の16インチ砲搭載艦なら問題無い。しかし、それ以上の大口径砲を搭載する可能性も捨て切れん!」
「日本が新型戦艦を建造していることが、世界に公表されたらドイツとフランスが黙っていないでしょう。間違いなく対抗する戦艦を建造するはずです!」
「いや、日本には16インチ砲搭載艦はナガト、イブキ両タイプ合わせても4隻しかない。艦隊運用を前提にするならば、16インチ以上の大口径砲は意味が無い!速力も既存の戦艦群に準じるはずだ!」
「結局のところ、ナガトタイプを強化した程度の性能に落ち着くはずで、それならば改KGV型戦艦と海軍航空隊で対処出来る!」
口から泡を飛ばさんばかりな戦艦派であったが、他の派閥も負けてなるものかと対抗して舌戦の様相を呈していた。
「というか戦艦よりも艦載機を、ペレグリンの後継機の開発を至急!!」
「紅茶の供給を安定させるためにも、戦艦なんかよりも護衛型駆逐艦の量産をだな…」
ここまでくると、もはや討論というより罵り合いであるが。
それでも、各方面からの情報を統合し、さらにリアル殴り愛にまで発展した喧々諤々なディスカッションの結果…。
- 完成は1950年以降。
- 建造数は2隻。
- 排水量は6~7万トン程度。
- 搭載砲は16インチ9~12門、速力は30ノット以下。
以上の項目を日本の新型戦艦が満たしていると結論付けられたのである。
後に、MI6が入手した新型戦艦(大和型戦艦)のスペックを知った彼らは、卒倒することになるのであるが、それはまた別の話である。
801 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:19:32
「またフィッシュアンドチップスのランチか。いい加減食べ飽きたぜ…」
「紅茶以外は未だに配給制だからな。しょうがない」
「このポテト、ジャガイモが糞過ぎるぞ。保存がなってない」
「マズいポテトはともかく、紅茶はいけるな。確かセイロン産だったか?」
「あぁ、インド情勢がヤバいってんで、最優先で代替生産地の策定と輸入手続きが行われたらしい」
「紅茶が尽きたら我々英国人は戦えないからな。それは正しいことだと思うのだが…うん、何も間違っていないな」
1945年初頭の大寒波の影響で配給の対象となったジャガイモは、1946年になっても配給制限を受けていた。
新たに獲得した植民地ブリティッシュコロンビアでは、大豆、牛、サトウキビ、家禽及び鶏卵、乳製品の輸出が有望視されていたが、成果が出るのには今しばらくの期間が必要であった。
なお余談であるが、旧ルイジアナ州を含むこの地域は、世界最大のザリガニ生産地であった。そのためか、後に英国にザリガニ食が普及することになる。
「ポテトよりもこのフライ…なんだっけ、鯨カツだっけ?これは美味いな!魚臭いけど」
「スコッチエッグも良いぞ!魚くさいけどな」
不足しがちな蛋白源を補うために、ドイツとの停戦が実現してからは英国では捕鯨が積極的に行われていた。そのため、鯨肉が当時の英国人の食卓にあがることが非常に多くなっていた。
鯨肉だけでなく、鯨油も積極的に食用加工されており、鯨油マーガリンが料理に多用されたのである。
このように、戦後の英国人の胃袋を大いに満たした鯨肉であったが、最初は忌避されてなかなか定着せず、飢えるよりはマシだから食べるといった程度であった。
この状況を変えたのが、駐日英国大使館である。日本の鯨肉料理を積極的に本国に紹介することにより、鯨肉文化を英国に定着させることに成功したのである。
その過程で様々な苦労や魔改造があったりするのであるが、それはまた別の話である。
802 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:22:52
昼食休憩を挟んで午後からは、新型戦艦への具体的な対処方法についての会議となった。
もちろん英国としては、日本と敵対する気は無いのであるが、写真のみでイマイチ実感が湧きづらい核兵器と違い、より直接的に多大な威圧感を大衆に与える戦艦の存在は脅威であった。
日本の新型戦艦の存在が公にされたときに、大衆がパニックにならないよう、英国側としては対抗手段を用意しておく必要があったのである。
「仮に16インチ砲搭載艦と仮定した場合、手持ちのKGV型を全部ぶつければ確実に勝てると思われますが…?」
「おそらく、接近する前に日本海軍の航空隊に沈められるだろうな」
「ならばこちらも航空戦力で…!」
「インド洋演習のレポートは見ただろう?あの『ハヤテ』相手に叩き落されるのがオチだ」
「仮にハヤテの迎撃を潜り抜けたとしても、日本の戦艦がハワイ沖海戦で見せた対空砲火の前には、ペレグリンでも全機未帰還になりかねない」
「ならば、潜水艦による待ち伏せを…!」
「それも無理だ。Uボート対策で対潜フリゲートの量産が優先されたせいで、今使える潜水艦は戦前からのボロ船ばかりだ…」
はっきり言って絶望的であったが、ここで諦めるジョンブルでは無かった。否、諦めるようであればジョンブルではなく、英国軍人失格である。故に彼らはあがき続けるのであった。
「ちょっと待って欲しい。我々の目的は日本の新型戦艦の撃退が目的であって、撃沈することが主目的ではない」
「問題はそのための手段がこちらに欠けているということだ。仮に撃退出来てもこちらが壊滅してしまっては意味が無い」
「つまりは反撃されずに一方的にアウトレンジ出来る兵器が望ましいということか。そんな便利なものがあれば苦労は…」
「戦艦の主砲の射程外から攻撃出来る兵器は開発済みです」
「「「え?」」」
落ち着いた声音で発せられた意見に、会議場全ての将官達が声の持ち主に注目した。
オブザーバー側に座っているこの士官の名はネビル・シュートという男だった。
803 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:38:29
「DMWDのネビル・シュートです。我々は今回の事態に際し、ロケット兵器の使用を進言致します」
DMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development:多種兵器研究開発部)は、元々は海軍省の管轄だったのであるが、陸海空軍の新兵器開発に関与するために、戦後再編されて国防省の直轄機関となっていた。
3軍のみならず民間からも変態…もとい、優秀な研究者や技術者が集められており、独創的で奇抜な発想で数々の(駄作も数あるが)新兵器を開発していたのである。
ネビル・シュート自身は歴とした海軍中佐なのであるが、オブザーバー側で参加していたのはそのためである。
「元々はフェアリー社で開発されていたのをこちらで引き継ぎました。戦艦に対しても十分な威力が見込めます」
史実と同様に英国海軍は、艦対空ミサイルのパイオニア(チートは除く)であり、1944年に艦対空ミサイルであるストゥッジ (Stooge) を開発していた。これはフェアリー社製で無線指令誘導、液体燃料のロケットモーターにより、射程は12.8kmであった。
当時としては画期的な性能であったが、本来の目的である艦対空ミサイルとしては性能不足であったため、海軍からの支援も打ち切られて開発中止となった。しかし、対艦攻撃兵器として転用可能であるとしてDMWDが、フェアリー社から研究データを引き継いで開発を続けていたのである。
804 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:49:36
ストゥッジ改め、シー・ドッグと名づけられた艦対艦ミサイルであるが、戦艦の主砲射程外から攻撃する必要があるため、射程と威力の確保のために原型から大幅に大型化していた。
全長5m弱、直径60cm超、重量3トン弱の本体に、高度制御用に翼幅4m程度の主翼と、それよりも小ぶりな垂直尾翼、水平尾翼が設置されていた。
本体後部には、ダブルベース火薬を使用した固体式ロケットモーターが6基搭載されていた。これは、発射時に必要な初期推力を稼ぐためである。
弾体に内蔵された液体燃料を使用するロケットモーターは、取り扱い簡易なヒドラジンを使用した1液式に変更された。
ロケットの噴射時間は10分間であり、時速900km/hで最大射程は80kmであった。
「この新型ロケット…我々はミサイルと呼称していますが、こいつの弾頭は300kgあります。命中すれば戦艦相手でもダメージが期待できます」
「しかし、これだけの図体だと対空砲火に撃ち落されないか?」
主翼を除いた本体だけでも、駆逐艦用の重魚雷並みのサイズがあるのである。このような大型な飛翔体は、日本海軍の対空砲火の格好の的になる危険性があった。
この疑問にシュートはニヤリを笑う。
「このミサイルは、従来のロケット兵器のように高空を飛行しません。」
「それはどういうことだ?」
「こいつは海面上を飛行します。飛行する魚雷と思ってもらえれば結構です。方位さえ合っていれば、魚雷と同等かそれ以上の命中率が期待出来ます」
新型ミサイルは海面スレスレを飛行することで、航空機による迎撃と対空砲火をかわすことを狙っていた。(チートを除けば)世界初のシースキミング機能付きの対艦ミサイルであった。
ちなみに、高度を制御する手段は電波高度計ではなく、フラッシュライトと光電管を使用していた。海面上に反射したライトの光の強弱を光電管が検知して、エルロンが連動するようになっており、海面高度5mを維持する仕掛けになっていた。
電波高度計の信頼性は既に確立されているのに、わざわざこんな手段を用いたのは、もちろん貧乏神の呪いのためである。
「もちろん問題が無いわけではありません。精密誘導が可能なのはレーダーの範囲内のみです。それ以降は慣性誘導になり、至近距離になると艦が放出する熱線を探知して命中します」
「それって、レーダー圏外だと実質無誘導ってことじゃないのか…?」
「レーダーの射程を向上させれば問題無いですよ。レーダーは高いところに設置すれば射程が伸びますし。日本海軍みたいに航空機にレーダーを搭載することが出来れば良いのですが…」
誘導はセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式であり、レーダーレンジ外では慣性誘導、終末誘導ではボロメーターと熱電堆による発生電流を周波数選択継電器で断続増幅し、艦船の熱源に向かって誘導する方式が取られていた。
誘導用のレーダーは、最近実用化されたタイプ293火器管制レーダーを改造したものであり、出力は500kwで戦艦クラスだと30km程度まで誘導可能であった。
この方式の問題点は、レーダーレンジ内でしか誘導が行えないことである。慣性誘導と熱線検知だけでは命中率が大幅に低下してしまうのである。それでも無誘導魚雷よりは高い命中率が期待出来るのであるが。
絶えずレーダーによって目標を捕捉し続ける必要があるために、発射母体の機動が制限されるのも問題であった。
仮に艦船に搭載した場合、ミサイルが命中するまでロクに回避行動を取れずに殴られ続けるハメになるのである。
この問題を解決するための手段として、フェアリー・ガネットが開発中であった。
元々は艦載対潜哨戒機として開発が始まっていたのであるが、インド用演習で日本海軍がお披露目した四式艦上警戒機『旭光』を参考にして、早期警戒機仕様も同時進行で開発されていた。この機体に対艦ミサイルの誘導も任せようというのである。
しかし、新機軸が多いためか開発が難航しており、実用化には今しばらくの時間が必要であった。
上記の問題は確かに深刻であったが、あくまでも撃沈ではなく撃退が主目的であり、16インチ砲の想定砲戦距離が2~3万mであるため射程ギリギリで日本の新型戦艦を牽制可能とされたのである。
805 :フォレストン:2015/02/24(火) 18:57:14
「弾頭を燃料気化爆弾にするプランもあります。効果範囲が広いので命中率の悪さも補えますよ」
「あの秘匿兵器か。確かにあれならば対空砲火潰しにはもってこいだな!」
「本来は対地攻撃用に開発された兵器なのですが、運用を工夫すれば問題は無いでしょう」
英国は対ドイツ戦直後に燃料気化爆弾の実用化に成功していた。
もっとも、使いどころが難しすぎて今のところ正式配備するつもりは無かったのであるが。
燃料気化爆弾は、酸化エチレン、酸化プロピレンなどの燃料を一次爆薬で加圧沸騰させ、BLEVE(沸騰液膨張蒸気爆発)現象を起こすことで空中に散布、起爆することにより従来型の爆弾よりも広範囲に影響を及ぼすことが出来るのが特長である。
燃料の散布はポンプなどによるものではなく、燃料自身の急激な相変化によって行われるため、秒速2kmもの速度で拡散する。このため、数百kgの燃料であっても放出に要する時間は100ミリ秒に満たなかった。
燃料の散布が完了して燃料の蒸気雲が形成されると着火して自由空間蒸気雲爆発をおこさせることで爆弾としての破壊力を発揮するのである。
燃料気化爆弾の破壊力の秘訣は、爆轟圧力の正圧保持時間の長さである。
通常の固体爆薬だと一瞬でしかない爆風が、長時間連続して全方位からから襲ってくるのである。
その結果、通常の爆弾に比べて破片による被害は少ないが、急激な気圧の変化による内臓破裂などを引き起こすのである。
人体は1kgf/cm2 程度の爆風でも急性無気肺や肺充血を起こす。それに加えて一酸化炭素を大量に含んだ酸素バランスが悪いガスが襲い掛かってくるため、酸欠と一酸化炭素中毒と呼吸困難を同時におこすことになり、窒息死したような死体ができ上がるためである。
そのため、気密構造でない粗末な壕や一般建築物に避難/隠匿された兵士や車両の破壊には非常に有効であった。
DMWDの試算では、戦艦のバイタルパートの外に設置されている対空砲火群の無力化も可能とされていたのである。
ただし、燃料気化爆弾は燃料と空気が最適な濃度で混合されないと最大効果は発揮できないという弱点があった。
燃料散布しても風が強かったり、気温が低かったりすると、一部だけ着火して効果が激減する恐れがあったのである。
最悪の場合、燃料散布しても着火出来ずにミスファイアしてしまう可能性があった。
この問題は気化爆弾の開発段階で既に判明しており、確実な起爆をするために信管を多重化し、さらに格納容器の強度と形状を工夫するなどして、理想的な混合比率で爆発するように改良が加えられたのであるが、それは自由落下型の気化爆弾の話である。
806 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:00:07
ミサイルの弾頭として、燃料気化爆弾を使用する場合に問題となるのは、その初速と高度である。シー・ドッグ対艦ミサイルは、突入段階で900km/hもの速度が出ているため、風圧で気体の拡散がうまくいかない可能性が高かったのである。
炸裂する高度も問題であった。燃料気化爆弾の理想的な炸裂高度はターゲットのレーダーや対空砲火の無力化を考慮すると、高度30m前後が望ましいのであるが、突入段階では海面高度5mを維持しているため、そのままでは不可能であった。ならば、最初から高度30mで突入すれば良いじゃないかという話なのであるが、重魚雷並みの図体の対艦ミサイルが、亜音速でノコノコ突っ込んでいっても、対空砲火で撃ち落されるだけである。
そのため、燃料気化爆弾弾頭搭載のシー・ドッグ対艦ミサイルは、一定距離まで接近すると上昇する仕様になっていた。これは(チートを除けば)世界初のホップアップ機能であった。もっとも、史実のホップアップ機能のように急上昇してから突入というほどのものではないので、ホップアップ機能に分類してよいかは微妙なのであるが。
シー・ドッグ対艦ミサイル(燃料気化爆弾弾頭)の行動シーケンスは以下のとおりとなる。
1.レーダーにより目標まで誘導。(飛行高度シーレベル)
2.目標接近を感知するとエレベーターが上げ舵になる。同時に燃料カット。
3.上昇しながら急減速し、気化爆弾が炸裂。
誘導精度が甘いが、多少の照準のズレは妥協された。必要ならば数を撃てば良いのである。
807 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:07:37
「この仕様ならば、空母にも打撃を与えられるのではないか?」
「えぇ、空母は開口部が多い。エレベーターから爆風が進入して、人員はもちろん、機体にも損傷を与えることが出来るでしょう。飛行中の機体もただでは済まないでしょうね」
「対空砲火と迎撃機さえ黙らせることが出来たら、あとは我ら海軍航空隊の出番だな」
「ようやく数がそろってきたペレグリンで撃沈出来る!」
この時期になると、海軍期待のマルチロール機であるペレグリンも、ようやく定数を満たしつつあった。
どちらかというと、機体よりもパイロットの育成に手間がかかり、この時期にまでずれこんだのであるが。
ペレグリン自体は、日本から購入した艦上戦闘機『烈風』の改造機であり、バカ高い金額を支払うハメになったとはいえ、機体そのものは問題なく確保されていた。
機体の数が多かったため、時期によって細部が異なり、後期ロットからは対空砲火の射程外から攻撃出来る滑空魚雷トラプレーン(Toraplane)の運用能力が追加されていた。
トラプレーンは、通常の航空魚雷に滑空用の翼を取り付けたものであり、着脱可能なアタッチメント形式となっていた。
運用するためには、ジャイロを組み込んだ照準装置が必要であり、装置には風向などの各種条件を計算する初歩的なコンピューターが内蔵されていた。
元々、雷撃機用として開発されていたため、装置自体はそれなりの大きさだったのであるが、苦心の末に小型化に成功し、ペレグリンに搭載することが可能になった。
ただし、雷撃機の場合は専門の操作員が操作するところを、ペレグリンの場合はパイロットが全てやらないといけないため、とてつもない負担となった。取り扱い教育のために、パイロット育成がさらに遅れたのは言うまでもないことである。
なお、烈風を改造する際に得られたノウハウを活かして、現在ペレグリンの後継機が開発中であった。
コンペ形式となった結果、英国面…もとい、独自色溢れる機体がトライアルを受けることになるのであるが、それはまた別の話である。
「トラプレーン滑空魚雷を用いれば、対空砲火の射程圏外から攻撃出来ますな」
「ただ、トラプレーンは射程は長い分、通常魚雷に比べて命中精度が低下する。対空砲火を無力化出来ても、機関が無事ならかわされてしまう可能性が高い。」
「大量投射で逃げ場を無くすのが定石であるが、それだけの数を用意出来るのか?」
いつの間にかに『撃退』から『撃沈』に目的がシフトしているのであるが、そんなニーズに応えるのもDMWDのお仕事である。
ネビル・シュートはニヤりと笑って言い放つ。
「撃沈するだけなら手段はありますよ」
「「「!?」」」
驚愕する高官達の前に、彼は模型と概略図を提示する。
それは従来型の爆弾とは比較にならないほどの超大型爆弾であった。
「グランドスラムを改造した対艦用熱線吸着爆弾です。シー・ドッグと同様に探知した熱線を検知して目標まで誘導されます」
対艦用グランドスラムは、その名のとおり超大型爆弾グランドスラムを流用して開発された赤外線追尾型誘導爆弾である。
弾頭の先端にシードッグ対艦ミサイルと同様の赤外線検知システムを内蔵し、赤外線の強弱により動翼を動かして、目標に命中するシステムになっていた。
動翼を動かして軌道を変更する必要があるので、原型となったグランドスラムとは違い、ライフルのように回転して安定を保つことが不可能であった。そのためフィン形状と胴体形状に変更が加えられており、外観はグランドスラムとは異なるものと化していた。いずれにせよ、命中すれば確実に戦艦を轟沈することが可能な必殺兵器であった。
808 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:18:21
「シュート中佐、君も人が悪いな。こんな凄いものがあるなら最初から出すべきだろうに」
「あ、いや、隠していたわけでは無いのですよ?こいつには問題がありまして…」
「…あぁ、なるほど。運搬手段の問題か」
「そうです。この爆弾の運用投下高度は4万フィートですが、現状では2万フィートが限界です」
対艦用グランドスラムの重量サイズは、グランドスラムとほぼ同一であったため、ランカスター爆撃機で運搬可能であった。
しかし、事実上のグランドスラム運用専用機であるランカスター改造機(B.3スペシャル)でも限界投下高度は22000フィート(約6700m)であり、現状では想定した威力を発揮出来なかったのである。
「誘導爆弾といっても、爆弾である以上はターゲットの真上から投下する必要があるのですが、現状では不可能です。高度もですが、誘導時間も足りません」
「さすがに、あの日本艦隊に2万フィートそこそこで接近するのは自殺行為だな…」
対艦用グランドスラムの投下高度がグランドスラムよりも高く設定されているのは、日本艦隊の迎撃を避けるためであったが、それだけではなく誘導時間を稼ぐためでもあった。投下高度が高いほど、誘導時間を稼ぐことが可能であり、それは命中の確実化につながるのである。もちろん、終末速度増大による迎撃難易度の上昇と威力の増大もである。
「ランカスターをジェット化すれば良いのではないか?」
「迎撃を想定しているカナリア諸島の周辺は枢軸の影響下です。最も近いアフリカのガンビアから爆撃するとなると、沿岸迂回とターゲットの探索時間を考慮すると往復で3000マイルは必要になります」
カナリア諸島は、日本が大西洋海域に保有する唯一の領土であり、日本の新型戦艦が大西洋で活動拠点にするならばここしか無いと思われた。
特にグランカナリア島にあるラスパルマス港、テネリフェ島にあるサンタクルス・デ・テネリフェ港は、古くから船舶の補給・修理基地として栄えており、手を加えれば戦艦の整備補修をするための施設にすることが可能と見積もられていた。
そして、そのカナリア諸島から最も近い英国領土がガンビアなのであった。
「ふむ、日本がカナリア諸島周辺を厳重な監視下においているのは新型戦艦の拠点作りのためかもしれんな」
「さすがにそれはどうかと思いますが?そんなことをしたら枢軸側を強く刺激することになりますし。有り得そうな話ではありますけど」
「そうだな。仮に枢軸側を刺激するならば、極秘裏に建造を進めたりはせんだろう」
「…っと、話がそれましたね。問題は足の長さと高高度飛行能力です。現状では条件を満たせるジェットエンジンが存在しません」
英国では遠心式ジェットエンジンの技術は既に完成されていたのであるが、より高性能化が可能な軸流式ジェットエンジンに開発の主眼は移っていた。
こちらはドイツ側に先行されており、スパイ活動による技術奪取などにより、差を縮めることに成功はしているものの、未だにドイツの後塵を拝していたのである。
現状で信頼性の確保されている遠心式ジェットエンジンでは、推力はともかく航続距離が確保出来なかったため、ランカスターのジェット化は見送られていた。
後にターボプロップエンジンに換装されることになるのであるが、そのころには性能的には時代遅れとなっており、その大半は輸出用に回されることになる。
809 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:40:43
「…要は燃費と高高度性能を確保出来れば良いのですね?それならばちょうど良いエンジンがあります」
ここで手を上げたのが、シュート中佐と同じくオブザーバー側で参加していた、ネイピア&サン社の技術者であった。
「航空用ディーゼル、ノーマッド2。こいつなら高高度性能と燃費を両立出来ますっ!」
ネイピア社が開発した航空用ディーゼルエンジンであるノーマッド2は、敵の防空網を突破して敵空軍基地を叩くことで彼我の戦力差を縮める戦略が検討された際に、それを実現出来る高性能爆撃機用のエンジンとして、1944年に開発がスタートしていた。
当時のジェットエンジンは開発途上であり、高高度性能と燃費を両立出来る航空用ディーゼルは、爆撃機のエンジンとして現実的な選択肢だったのである。
史実での初飛行は1950年であるが、この世界では円卓による強制措置により、遠心式ジェットエンジンの開発データとノウハウを各エンジンメーカーが共有化していた。その結果、エンジン開発が促進されたのである。
しかし、同様のことはジェットエンジン開発にも言えることであり、実用的なジェットエンジンの登場が早まったことにより、航空用ディーゼルエンジンは早くも無かったことにされかけていたのである。
航空用ディーゼルエンジンのメリットは、なんといっても高高度性能と燃費である。反面、ジェットエンジンに比べると重量出力比が大幅に劣っていた。
ちなみに、液冷レシプロの最高峰であるマーリンの乾燥重量は630kg、ターボプロップエンジンであるダートの乾燥重量は550kg、航空用ディーゼルであるノーマッド2の乾燥重量は1.6トンである。なんというか、比較するだけでも圧倒的な重量差である。
さらにディーゼルエンジン特有の問題として、スロットルレスポンスの悪さも欠点であった。これは初期ジェットにも見られた問題であったが、ノーマッド2自体が気性の荒いエンジンであり、操作の難しさに拍車をかけていたのである。
高高度性能と低燃費性能は、他のレシプロエンジンやジェットエンジンでは追随出来ないほど優れており、さらにジェットエンジンの技術ノウハウを導入した結果、ブースト圧をあげることにより4000馬力以上の出力を発生する目処も立っていた。
しかし、それ以上に実用的なジェットエンジンとターボプロップエンジンが戦力化されたために、開発が中断していたのである。
「燃費と高高度性能はともかく、重過ぎだろこのエンジン!?」
「これ4発積んだら思いっきりペイロードを圧迫しないか?」
「確かに重いですが、それ以上に低燃費なので問題ありません!」
「出力向上の見込みがあるので、エンジンの重さは相殺されます!」
さすがに反対意見も出たものの、開発費を少しでも回収したいネイピア社側の鬼気迫る説得と、他に適当な代案も無かったので、搭載エンジンをノーマッド2に換装したランカスターの改造機は1947年に初飛行に成功している。
改造といっても、激増したエンジン重量を支えるために、主翼はほぼ新規設計といっても良いものとなった。
反面、機体は可能な限りの軽量化が求められ、武装と防弾装甲は全て撤去された。高高度飛行に必須の与圧装備すら撤去されており、パイロットは宇宙服のような完全機密型のパイロットスーツを着用する必要があった。
ランカスター爆撃機自体が、既に枯れた技術で作られていたことと、ノーマッド2自体も制御性はともかく、信頼性自体は確立されていたので問題なく性能を発揮、航続距離はもちろんのこと、後の試験では高度15000mから、対艦用グランドスラムの投下に成功している。
投下された対艦用グランドスラムは、ターゲットである地上の篝火を貫通して、地下50mにまで到達して炸裂。上部の構築物の基礎を揺るがしてターゲット周辺の構造物を全て崩壊させたのである。
810 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:48:49
対艦用グランドスラムの運用が可能になったことにより、日本の新型戦艦に対する戦術にも変更が加えられた。
当時の英国海軍の戦術は以下のとおりとなる。
1.射程ギリギリからシー・ドッグ対艦ミサイルで攻撃。
2.1で撤退しない場合、シー・ドッグ対艦ミサイル(気化爆弾)で飽和攻撃。
3.燃料気化爆弾の熱衝撃波で、対空砲及び護衛の航空戦力を無力化。
4.ランカスター改造機による対艦用グランドスラム投下。
5.4で沈められなかった場合に限り、海軍航空隊による雷撃。
1の射程というのは、ミサイルではなく誘導レーダーの有効レンジのことである。
シードッグ対艦ミサイルの最大射程は80kmほどであり、それこそロケットアシストでも用いない限り、戦艦の主砲では対抗出来ないのであるが、誘導レーダーの範囲内しか精密誘導出来ないため、命中させるには危険を冒して接近する必要があったのである。
この問題に対しては、誘導レーダーの大出力化や、レーダーマストの延長などの処置を講じているものの、根本的な解決に至ったのは、艦上警戒兼ミサイル誘導機であるフェアリー・ガネットの実用化後となる。
3で対空砲火を無力化した後に即座に航空攻撃をしないのは、燃料気化爆弾の熱風で艦体を熱せられた状態にすることによって、対艦グランドスラムの赤外線誘導精度を上げるためである。もちろん、対空砲火が生き残っていた場合に無駄な犠牲を出さないためでもある。
1~4を経てもさらに進撃してくる場合のみ、英国海軍航空隊の総力をあげた迎撃を行うこととなっていた。
結論として、英国は日本の新型戦艦に対して対艦ミサイルと航空攻撃で対抗することになった。
これは日本側の思惑どおりであった。事実、大和型戦艦は対艦ミサイルに対応した装甲を持っており、対艦ミサイルの飽和攻撃に対して高い抗堪性を発揮することが期待されていた。
しかし、英国が対艦用グランドスラムを投入することを知ると、日本側は神経を尖らせることになるのである。
シー・ドッグ対艦ミサイルであるが、初期型ミサイル故に運用に手間がかかった。
取り扱いが簡単で、事実上固体火薬ロケットと同等と言ってもよい1液式ヒドラジンロケットであるが、ヒドラジン自体が猛毒であったため、運用管理に細心の注意が必要だったからである。
シー・ドッグ自体は、あくまでも日本の新型戦艦に対する対抗手段であったため、少数生産に終わっている。
実際の運用は、旧アメリカ軍から接収した重巡を改装して行っており、以後のミサイル開発に貴重なデータを提供したのである。このデータを元にして、KGV型を改装したミサイル運用艦(名目はミサイル運搬艦)が誕生することになる。
英国初となる対艦スタンドオフ兵器となったトラプレーンであるが、こちらは炸薬量の増大とロケットモータ追加による威力と射程距離の延伸が図られた。
航空魚雷としてのトラプレーンの寿命は短かったものの、後の空対艦ミサイル開発のための叩き台となった。
対大和用決戦兵器とも言える対艦用グランドスラムは、威力はともかくコスト高のために少量生産にとどまった。その威力によりコンセプトの正しさを証明したこの超重爆弾は、後に誘導システムを改良されて、レーザー誘導方式のスマート爆弾となり現在も現役である。
811 :フォレストン:2015/02/24(火) 19:53:20
あとがき
というわけで、改訂版です。弄り過ぎてだいぶ内容が変わってしまいました(汗
英国は事前に察知出来たので、早めに対応が可能だったわけですが、日本における諜報網を
ロクに持たない枢軸側は、いきなり存在を公表された大和型戦艦に対して、どんな過剰反応をするのか楽しみです。
いや、あるいは英国側から枢軸側へリークするという手も…w
KGV型戦艦については、完全に見せ駒と化してしまいました。
KGV型3隻建造については、本編15話の…
KGV級戦艦は完成が遅れ気味であり、2番艦であるプリンス・オブ・ウェールズが海に浮かぶのは当分先。
ドイツのビスマルクに対抗するために設計を変更した3番艦は、設計変更の影響で建造がさらに遅れていた。
…を参考にしています。
通常KGV型(史実準拠。14インチ砲10門搭載)2隻と戦後完成する3番艦以降の改KGV型(ビスマルク対抗。16インチ3連装3基9門搭載)というわけです。
改KGV型は頑張っても2隻が限界と思われるのでKGV型は合計4隻ですね。さすがに史実のように5隻建造は不可能でしょう。
ドイツ単体ならともかく、フランスにイタリアを加えるとギリギリな数かと思われます。おまけに北米にも派遣をしないと…あ、カリブ海域限定で高速戦艦(ノースカロライナ型?)が1隻使えるから、そっちは問題無さそうです。
本文で描写していますが、改KGV型はともかく、改装前のKGV型をミサイル運用艦にするのは有りかな思ってます。
高いレーダーマストを設置出来るので、レーダーレンジが伸びて長距離誘導が可能ですし。主砲は砲塔ごと全部取っ払ってバーベッドを発射スペースにすればよいかと。弾薬庫はそのままミサイル保管庫に出来ますし。どうせ戦艦はいらなくなるのだから、(予算が許す限り)思い切って弄くるべし!(マテ
間にランチタイムの描写がありますが、これもネタの仕込みゆえ致し方なし(マテ
ブリティッシュコロンビアは旧ルイジアナ州…昔、ルイジアナって名前のポテチがあったので、ジャガイモの増産を期待していたのですが、そっちはあまりパッとせず、ザリガニ食のインパクトが大きかったので、そっちを採用しました。ザリガニは貴重なタンパク源ですよ!
改訂版では鯨料理の描写も追加していますが、史実でも戦後しばらくの間、英国は鯨肉が食卓に上っていたので問題なっしんぐです。別の拙作SSでも捕鯨の描写してますしw
問題は、日本の鯨料理がどのように英国面で魔改造されるかですね。日本人が知ったら驚愕しそうなレベルでヤバくなるのは確実でしょうね…(gkbr
812 :フォレストン:2015/02/24(火) 20:02:59
DMWD(多種兵器研究開発部)ですが、史実でも存在した組織です。
海軍省の研究機関でしたが、戦後になって3軍合同の研究施設と化したのは拙作オリジナルの設定です。
ヘッジホッグの開発などで有名ですが、奇人変人の巣窟としても別の意味で有名だったりします。
おいらのイメージでは、憂鬱DMWDはスパ○ボのテ○ラ研ですね。今後もビックリドッキリメカを作り出してくれることでしょうw
ストゥッジ (Stooge)ですが、史実では1944年に開発されております。ただし艦対空ミサイルとしてですが。
元は特攻機に対抗する手段だったのですが、性能不足で開発が打ち切られています。この世界では、高射砲に代替手段として研究されていたということで。
性能不足で開発が打ち切られるのは同じなのですが、それを対艦攻撃手段として、DMWDが拾い上げたわけです。
シー・ドッグ対艦ミサイルですが、ストゥッジを単純に縦横高さを2倍サイズにしています。
結果的に重魚雷並みのサイズになってしまいましたが、シー・スパローをはじめとした対艦ミサイルもサイズだけなら似たようなものですよね。よってノープロブレムです!
ジェット推進が多い艦対艦ミサイルに比べて、重量が嵩むのはロケット推進ゆえです。
ヒドラジンロケットは扱いが簡単で、それこそロケット開発黎明期から使用されているのですが、ヒドラジン自体は猛毒だったりします。
工場で燃料タンクに密閉してしまえば、ポンプも点火装置もいらない1液式ヒドラジンロケットは、事実上固体式ロケットと同列に扱えるのですが、被弾時のリスクが半端無いですね…))ガクガクブルブル
ミサイルの構造ですが、主翼があるので推力よりも噴射時間を重視しています。
噴射時間の10分は長めですが、あのワルターロケットでさえ6分間噴射可能なのですから、ヒドラジンロケットなら余裕でしょう。
高度維持に使用しているフラッシュライトと光電管…はい、この時点で気が付いている方もおられると思われますが、これは旧軍が開発していた有眼信管です。
空中から投下して、内蔵されたライトの地面からの反射光を光電管が拾って、一定以上の反応を超えると起爆する仕様です。拙作のシードッグでは、これを高度維持に使用しています。
ボロメーターと熱電堆による誘導は、これまた旧軍が開発していた熱線吸着爆弾です。
両方とも、史実日本で曲りなりにも実用化されていた技術なので、英国が実用化するのに問題は無いでしょう。
ミサイルの弾頭は通常弾頭と気化爆弾です。改訂前はHESHでしたが、戦艦相手には無効とコメントで指摘されたので変更しています。ご指摘感謝ですm(__)m
とはいえ、通常弾頭300kgで史実大和以上と思われる舷側装甲を抜けるかは、かなり微妙というか無理ゲーというか…。通常弾頭で憂鬱大和の舷側装甲を抜くなら史実のP-800のような超音速対艦ミサイルをぶつけるしかないでしょうね。
燃料気化爆弾は、拙作SS『貧者の核-ヘルインフェルノ ( Hell Inferno )』から設定を流用しています。
気化爆弾は非装甲区画を効果的に破壊出来るので、対空砲火潰しには有効と思ったのですが、大和型戦艦は核戦争対応型なので、事前に備えられたら無力化するかもしれません。
燃料気化爆弾も起爆が難しいとのご指摘があったので、設定を弄くりました。一定距離から燃料カットして高度30mまで上昇するので、最終速度はだいぶ落ちてるはず。これなら信管を多重化すれば確爆出来るでしょう。
欲を言えば、サーモバリック弾頭を実用化したいのですが、あれって研究開発が70年代以降なんですよねぇ。あれが実用出来ると大幅な軽量化と確爆化が実現出来るのですが。
813 :フォレストン:2015/02/24(火) 20:16:42
トラプレーンは史実で開発された滑空魚雷です。
ちなみに同様のことは史実日本海軍でもやっておりまして、空技廠が高度1000mから投下出来るグライダー魚雷を作っていたりします。
散布界が広すぎて採用はされなかったのですけどね。こちらはアタッチメント形式になっており、拙作SSのトラプレーンもこちらに準じております。
烈風の改造機であるペレグリンはライセンス生産という記述が本編に無かったので、購入後に改造という描写にしました。
ライセンスなら技術吸収も楽なんですけどねぇ。
改訂版で追加された、対大和用決戦兵器(笑)である対艦用グランドスラムですが、掲示板からネタをもらいました。掲示板の皆様感謝感激雨あられですよっ!m(__)m
んで、威力のほどですが、これは申し分無いでしょう。命中さえすれば憂鬱大和にも致命傷を与えられるはずです。日本海軍がまともに投下させてくれればという前提がつきますけどね。
さすがに、どこかの3流海軍と違って、戦艦を単艦運用なんて愚は犯さないでしょうし、そもそも大和が大西洋に来るという想定自体が、最悪の最悪を想定したものですし。
対艦版グランドスラムを運用するために、ネイピア ノーマッド2を4発搭載したランカスターの改造機を出しましたが、なんでこんなキワモノを出したかというと、使いたかったからです…では、さすがにアカンので、建前という言い訳をさせてもらいますと…。
まず、仮に日本が戦艦を大西洋で活動させる場合には拠点が必要となります。その場合、カナリア諸島しか有り得ません。
大西洋で憂鬱日本が領有する唯一の領土であり、良港でもあります。史実では古くから港湾設備が整備され、現在ではカナリア諸島クルーズで大型船が入港出来るだけの設備と水深があります。日本がその気になれば憂鬱大和の運用は不可能では無いでしょう。
となると迎撃するには最悪カナリア諸島近海まで足を伸ばす必要があるわけです。
艦隊ならともかく、航空機だとさすがに英本土からは遠すぎるので、最寄の勢力圏から発進する必要があるのですが、それに当てはまるのは、英領ガンビアとなります。
史実のガンビア共和国はアフリカ大陸最小の国で、ガンビア川の両側に国土を持ち、その最大幅は50km弱という極小領土なのですが、ユンダン国際空港(滑走路全長3600m、幅45m)を作れるだけの敷地はあるので、重爆の運用も安心です。
ガンビアからカナリア諸島までは直線距離で1700km弱。周辺は欧州枢軸の勢力化なので、迂回経路を取らざるを得ないので飛行距離は伸びます。周辺海域を捜索する余裕も欲しいので、ここは2000kmとしましょう。なので、往復で4000km必要となります。
ランカスター爆撃機は標準爆装で航続距離4300kmですが、最大ペイロードだと当然航続距離は低下します。新型爆撃機はいつ完成するか分からない→ならばジェット化だ!…と
いうのが本文の流れですが、初期ジェットは燃費が悪いのでボツ。求められるのは対艦グラ
ンドスラム運用に必要な高高度性能と長距離飛行を実現出来る燃費性能です。速度は必要あ
りません。まさにノーマッド2にはうってつけではないですか!(笑
ノーマッド2自体は史実では1950年に初飛行に成功していますが、ここはジェットエンジン開発が加速した恩恵を受けたということで(汗
ジェットエンジン開発技術のノウハウが手に入ったことと、準戦時状態なので技術開発が加速したと思えば大丈夫…多分…きっと…めいびー。
というわけで、今回はここまで。
KGVの設定は海軍事情2で書けると良いなぁ。
その前に艦船板に書くかもしれませんけどw
814 :フォレストン:2015/02/24(火) 20:20:34
以下、登場させた兵器です。
シー・ドッグ艦対艦ミサイル
全長:4.54m
直径:0.64m
翼幅:4.16m
重量:2680kg
速度:900km/h
射程:80km
弾頭:318kg(通常弾頭 or 燃料気化爆弾)
エンジン:1液式ヒドラジンロケット×1
火薬式ロケットモーター×6
英国が開発した第1世代の艦対艦ミサイル。
誘導はセミ・アクティブ・ホーミング+慣性誘導、終末誘導は熱線検知で行われる。
(チートを除けば)シースキミング&ホップアップ機能を実現した世界初のミサイルでもある。
通常はシースキミング機能のみであり、本体内のスイッチを切り替えることでホップアップ機能が有効になる仕様となっていた。
生産数自体は多くなかったが、そのデータは後の艦対艦ミサイルの開発に役立てられた。
トラプレーン滑空魚雷(18inch MarkXVII 航空魚雷装着時)
全長:4.95m
直径:0.45m
翼幅:1.40m
重量:730kg
射程:2500m(投下高度500m)+1400m(40ノット)
弾頭:176kg(TNT)
トラプレーン滑空魚雷は正確には魚雷ではなく、魚雷に取り付けるアタッチメントとジャイロを利用した照準装置一式のことである。
後期型ではロケットモーターが追加されて射程が延伸されている。
実戦での活躍機会は無かったものの、その運用データはシー・ドッグ対艦ミサイルと同様に空対艦ミサイルの叩き台となった。
対艦用グランドスラム
全長:7.70m
尾部:4.11m
直径:1.17m
弾頭:4144kg
炸薬:トーペックス
運用投下高度:12192m(40000ft)
超重爆弾グランドスラムをベースに開発された、赤外線誘導爆弾。
弾頭先端部に追加された赤外線検出装置と尾部の可動する動翼が外見上の特徴である。
弾頭先端部の赤外線検出装置が検知した、赤外線の強弱によって動翼が可動して目標に命中するシステムである。
後に誘導装置を換装してレーザー誘導方式のスマート爆弾となり、現在も少数であるが配備が続けられている。
オリジナルはフィン形状により、落下中に本体が回転することで安定を保つのであるが、回転すると赤外線検出に悪影響が出るので、対艦用は本体が回転しないように空力的整形が加えられている。
その重量と形状ゆえに、運搬にはランカスター爆撃機を改造した専用機が必要となる。
ランカスターが半世紀以上未だ現役でいられるのは、この爆弾のおかげである。その威力は驚異的であり通常兵器としては世界最強と称されている。
最終更新:2015年02月26日 12:14