- 965. earth 2011/01/22(土) 01:28:03
- ※疲れたときに思いついた提督たちの憂鬱のネタのネタです。
クラウド大陸。そこは10を超える王国がひしめく一大文明圏であった。
大陸に存在する諸王国は南部のフォレスト王国を盟主とした秩序の中で、一定の安定を得ていた。
だがその安定は1年前に崩壊し、大陸は混沌の中にあった。
「またアルザスに攻め込むって?」
「どうやって攻め込むんだ? この前、攻め込んだ軍隊は皆帰ってこなかったって話じゃないか」
「魔王軍の防衛線を全く突破できなかって話だぞ」
数年前までクラウド大陸北部の寒村に過ぎなかった村アルザス。大陸北部の各国の人間の大半が名前すら知らなかった
その村は今や、誰もが知らぬ地名となっていた。そう、西から突如として押し寄せた魔王軍の一大拠点として。
魔王軍は人類側の必死の抵抗もあり、辛うじて大陸北部で食い止めているが、それも何時破られるか判らない状態だった。
最前線に近い村々や都市では誰もが眠れぬ夜を過ごしている。
大陸の宗教である精霊教の信者である老人が窓の外を眺めつつ嘆いた。
「ああ、何でこんなことになってしまったのだ……」
数年前まで貧しくとも平和だったこの世界は魔王軍の出現によって一変した。
ダークエルフやサキュバス、獣人、ドワーフといった亜人たちを尖兵に東の海から現れた魔王軍と王国軍は瞬く間に
戦端を開いた。
当初は誰もが人類の勝利で終ると思っていた。自分達には精霊の加護がある。そう思って彼らは亜人たちを率いる
魔王軍に戦いを挑んだのだ。だがその結果は惨憺たるものであった。
精霊の加護を受けることなく動き回り、周囲に破壊を振りまく鉄の車の前に、多くの剣士や魔道士が倒れた。
竜騎士たちは鉄の槍や、強力な銃を抱える鉄の鳥達の前に次々に葬り去られた。
地上戦での相次ぐ敗戦に焦った諸王国はアルザスを海から攻略しようと、数百隻の大艦隊が海から進撃させた。
しかしながらその大艦隊は、目を疑うような巨大な鉄の船によって成す術も無く葬り去られた。
陸で、空で、海で負け続ける王国連合軍は北部の防衛を放棄し、中部地方に絶対防衛線を敷いて徹底抗戦の構えを
見せた。特にフォレスト王国は、盟主としての面子を保つために属国の正規軍を総動員した。
人類軍の必死の抵抗もあってか、魔王軍はそれ以上の南下をすることなく、前線はこう着状態になっていた。
しかしそれは残された諸王国に莫大な負担を強いるものであった。各国では戦争を遂行するために莫大な税金が
平民に課せられた。これによって経済活動は低迷し、平民達は貧困に喘ぐことになった。
さらに続く戦争によって多くの男がその命を落すようになると、男の妻や、その家族の中には路頭に迷い、農奴に
転落する者も増え、世相は荒んだ様相になっている。
だがそれでも多くの平民は「北部に取り残された人間よりはマシ」と言って自分を慰めた。
何しろ北部では魔王軍の圧政によって虐げられ、多くの住民が今日食う物にも欠き、好色な魔王によって、多くの
若き乙女が魔王領に連れ去られ、言葉にするのも憚れる辱めを受けていると聞いていたのだ。
「精霊よ、どうか我々にご加護を」
信心深い老人はそういって遥か天上から自分達を見守っているであろう精霊たちに祈りを捧げた。
- 966. earth 2011/01/22(土) 01:28:57
- 老人が祈りを捧げている頃、大日本帝国帝都東京では夢幻会のおなじみの面々が集まり、現状の確認を行っていた。
「クラウド大陸はとりあえず資源地帯を守るのに終始しています。現状ではさらに内陸に侵攻するのは困難なので」
陸軍参謀総長杉山の言葉に出席者達は同意する。
何しろ日本帝国軍にこれ以上内陸に侵攻する余力はなかった。何しろ大日本帝国は現在、生存圏確保のために
全方位に進出している。
日本は東方の大和大陸で開発を進める傍ら、南方のメガラニカ大陸ではデオン帝国と対峙し、全面戦争を繰り広げ
ている。戦争そのものは日本の優位に進めているが、8000キロもの彼方の敵本土に大軍を派遣し続けることは
容易ではなく、国内の財政と経済を司る辻の血圧を上昇させつづけている。
「勝ち目が無いのに戦い続けるとは、宗教というのは面倒ですね」
辻は思わずため息をついた。
「情報や資源を得るためにダークエルフやドワーフなどを保護せざるを得なかったとは言え、代償は高いものに
なりました」
1942年8月15日、米国に宣戦布告を実施する直前に大日本帝国は勢力圏(海外領土含む)と海外に居た邦人
や軍隊ごとこの異世界に転移した。
混乱する中、日本帝国は各地で虐げられていた亜人たちと接触。彼らを自国に組み込むことでこの世界の
情報網と資源情報を手に入れたのだ。
もう少し穏便な方法を探ろうとする動きもあったが、資源輸入国である日本にとって時間は味方ではなく敵であった。
このため彼らは強引と知りつつも、強硬姿勢をもって異世界へ押し入って行った。
そしてはや3年。日本は異世界において強大な勢力と化していた。しかし亜人たちを重く用いたこと、さらに
日本が出現した日が丁度、日食の日であり、それがこの世界において魔王の復活を告げるものであったことが
日本の外交に痛手を与えていた。
この世界の国々の多くが日本軍を復活した伝説の魔王軍と勘違いして徹底抗戦の構えを見せていたのだ。
「各地では勇者を名乗る団体が現れて、前線部隊と交戦しています。大半は簡単に討ち取れますが、中にはかなりの
猛者がおり、梃子摺る場合もあります」
大陸派遣軍司令官の東条の言葉に出席者達は眉を顰めた。
かつてドラ○エなどのRPGをプレイした出席者の大半は勇者というものに、ある程度の憧れを抱いたことがあるのだ。
「やれやれ、まさか我々が魔族扱いされるとは。全く。さしずめ私は魔王軍を束ねる大将軍といったところでしょうね」
現首相である嶋田はそういって苦笑した。
「笑っている場合ではないですよ。嶋田さん。この外交上の手詰まりは何とかしないと」
近衛の言葉に嶋田は頷くものの、渋い顔のままだ。
「判っています。ですが宗教の問題となるとそうそう簡単にはいきません。我々はある意味、中東の某過激派と戦って
いるようなものです。和解の余地はないでしょう」
「ふむ」
「とりあえず、目の前の対デオン帝国戦に全力を注ぎましょう。あの帝国を潰せば南方の諸国も降伏するでしょう」
- 967. earth 2011/01/22(土) 01:29:27
- この言葉に出席者達は頷かざるを得なかった。そんな中、杉山が思い出したかのように発言する。
「そういえば、最近、クラウド大陸北部の我が軍の占領地では魔王軍に若い娘を捧げて街や村の安全を確保しようと
する動きが広まっています」
この報告に嶋田は眉を顰める。
「……つまり、生贄ですか?」
「ええ。現地では魔王は好色で、後宮に各地からさらってきた美姫を揃えていたとの伝承があるようで」
「……陛下にあわせるわけにはいきませんよ?」
「判っています。正直言って扱いに困っています。送り返そうとしても、もう村には戻れないと言って聞きません。
それに村の人間も生贄の娘を戻そうとしたら『何か粗相でもありましたか?!』と言って血相を変えますし」
「………それは面倒ですね」
日本はクラウド大陸北部の占領地では比較的温和な占領政策をとっていた。日本は最低限の衣食住を住民に
保障し、治安を回復させた。加えて公共事業も行い、最低限のインフラを整備すると同時に、ある程度の雇用も
確保した。
このせいで北部の占領地の住民達のほうが、南部の農奴や平民よりマシな生活を送れるようになっていた。
このような政策がとれたのは、他の地域よりゲリラ活動が低調だからだ。何しろこの地方は国王や領主の無能の
せいで政治が乱れていた。それに加え最近は飢饉が続き、国内が荒れ放題の状態だった。
このため、飢えて死ぬよりは、最低限の食糧を配給してくれる魔王軍に靡く動きがあった。いくら宗教でも
飢えには勝てなかったのだ。おまけに国王や領主がわれ先に逃亡したことも追い討ちをかけた。
しかしかと言って怯えがなくなったわけではない。占領地の住民は魔王軍がいつ手のひらを返すかと怯えて
魔王軍のご機嫌取りに必死だった。
「どうしたものやら」
嶋田がため息をつく。そんな中、辻がよいことをひらめいたとばかりに提案する。
「いっそ、彼らをあつめて教育を施すというのはどうでしょう?」
「は?」
「彼女達を洗の、げふんげふん。教育するのですよ。そして我が国に忠実な現地住民として、再度現地に派遣し
占領地の行政の補助を行わせるのです」
「なるほどって、辻さん、あなた女子高を作りたいだけじゃないんですか?」
「まさか」
辻は口では否定するものの、その場のだれもがそれを信用しなかった。
だが辻の提案は合理的でもあり、有効でもあった。
かくして異世界にも関わらず、MMJは活動を活発化させ、異世界に新たな女子学校を作ることになる。
そして彼らが作り上げた女子学校には、後にエルフ、サキュバス、ドワーフもぞくぞく入るようになり、
MMJにとっては至福の光景が広がることとなる。
あとがき
ネタのネタです。憂鬱日本が異世界に召喚された場合について書いてみました。
オチ的には、変態はどこまでも変態だったということで。
思いついたままに書いたネタ、というかIF話なので、多分続きませんけど(爆)。
それでは失礼します。
最終更新:2012年01月02日 05:59