762 :Monolith兵:2014/11/12(水) 02:47:32
ネタSS「大逆転!合衆国海軍奮闘す」
1942年8月16日に起きた大西洋大津波によって東海岸が潰滅した結果、
アメリカは日本との戦争で常に後手後手に回るしかなかった。中華大陸で中米連合軍は敗北し、
アジア艦隊も潰滅した。防衛線はハワイまで後退し、乾坤一擲の艦隊決戦を挑んだもののアメリカ海軍は敗北した。
そんな中、ウィリアム・ハルゼー提督は残存艦をまとめてノーフォークに帰還していたが、最早アメリカ海軍に往時の面影は無かった。
「だが、それでも。それでも俺達はアメリカを守るために戦わなければならない!」
ハルゼーはそう言って自身を鼓舞した。アメリカ海軍はモラルハザードを起こし、乗組員の不足から動かせる艦艇も少なくなり戦力としてまともに運用出来そうに無かった。
だが、最早失うものが何も無い東海岸出身者達のやる気は天井知らずだった。そんな時に、海軍内で特攻攻撃で日本海軍を迎え撃とうという話が持ち上がった。
「お前らは何を考えている!圧倒的に不利だとしても、部下に死ね等と命令できるか!!」
ハルゼーは全身全霊を賭けて、この外道な戦法に反対した。そんなハルゼーに対して特攻を提案した士官は、他に方策はあるのかと問うた。彼とてこんな戦法は取りたくなかったが、他に方法が無かったのだ。
「確かに戦力は少ない。だが、やる事をやらずして部下に死を強要するなどという事は出来ん!」
ハルゼーは件の士官を睨みつけ、まだ出来る事はあると主張した。
「まだ・・・まだ奴らと戦う方法があると言うのか?」
マーク・ミッチャー少将はハルゼーの言葉に、まだ日本軍相手に戦うための方策があるのかと驚いた。
「戦力の補充は最早不可能だろう。兵員の補充もだ。ならば、現在の戦力と編成上は存在しない戦力を有効扱いするしかない!」
「編成上存在しない戦力だと?」
「そうだ。既に編成上から削除され倉庫に眠る旧式兵器や試作兵器に改造兵器、それに企業等が持つ研究開発中のプロトタイプなどを使う。」
そこでハルゼーが述べた計画は荒唐無稽なものだった。試作兵器や改造兵器というのは、性能が安定せず、そもそも非武装な物も多かった。それを接収して対日戦に投入しようと言うのだ。
763 :Monolith兵:2014/11/12(水) 02:48:04
「そんな無茶だ!」
「無茶でもやるんだ!既に一部の試作兵器はカリフォルニアに送るよう手筈は整えてある。これらと既存の兵器を組み合わせてジャップを叩きのめす!」
この時、会議室にいる誰もがハルゼーは過酷な現実から狂ってしまったのだと思った。だが、ハルゼーは正気だった。
ハルゼーは手元にあった書類を取り上げ、数々の試作兵器や改造兵器を読み上げた。
「新開発のF6Fは時速600kmを超える艦載戦闘機で、XF4Uは時速650kmを超える高速戦闘機だ。烈風相手にも互角の戦いを出来るだろう。
また、陸軍のケタリング・バグは速度こそ遅いが、無人で目標に向かって飛行する空中魚雷だ。威力が低いから敵の駆逐艦を狙う事になるだろう。
そして、極めつけはコイツだ。SWODは自ら敵艦へ向かっていく飛行爆弾だ。こいつを使えば高高度の敵艦の射程距離外から攻撃できる!
他にもあるが、これらを有効に使えば日本海軍相手に負けない戦いをする事も不可能ではない!」
なお、資金と資材不足からSWODは数多くある誘導方式の内、鳩を用いた誘導方式で開発が進められていた。しかし、そこまで知らないハルゼーはこれらの試作兵器の数々と現行の兵器を上手く組み合わせて使えば、日本海軍相手にも勝利できる可能性はゼロではないと主張した。
そして、ハルゼーの熱に浮かされたのか、会議室に詰める士官将官達はハルゼーの提案に賛成した。
「部下に外道作戦を強要するくらいなら、勝つ見込みは低くとも出来るだけの事をして戦おう。」
「そうだ、やってやろう!奴らにアメリカ海軍は未だ健在だと知らしめてやろう!!」
そうして、ハルゼーを筆頭とするアメリカ海軍は、低い士気や少ない兵員で非力な旧式兵器や現行兵器、更には海の物とも山の物ともつかない試作兵器の数々を使い、不屈のヤンキースピリットで日本軍相手に戦い続ける事を決意した。
結局、日米講和で日本軍相手にこれらの試作兵器を使う事は無かったが、続くメキシコ継続戦争ではこれらの試作兵器(変態兵器)の数々が活躍し、日本にアメリカの底力を知らしめる事となる。特に、色々と突っ込みどころが多いものの、誘導爆弾が投入された事は日本軍の心胆を寒からしめた。
なお、日本の中枢にいる転生者(変態)達は、鳩が誘導する飛行爆弾や無人複葉特攻機(空中魚雷)などの変態兵器の数々に狂喜したが。
だが、アメリカ海軍が最後まで諦めずに戦おうとしていたことは、アメリカが崩壊した後でも語り継がれる事になる。
そう、不屈のヤンキーは決して死ぬ瞬間まで諦めない。日本は最後までアメリカ海軍の心を折る事が出来なかったと。
おわり
最終更新:2015年07月14日 18:06