773 :ナイ神父MK-2:2015/09/04(金) 23:30:42
欧州出兵と幕府
享和四年
「どうしたものか、
夢幻会※1の用意していた水軍が役に立ち隣国の危機を救うことが出来たのは
幸いだが、オランダ以外の黄色人種の扱いが是ほど酷いとは思わなかった。」
時の将軍である家斉は薩摩藩から欧州遠征の記録、通称島津見聞録※2に悩まされていた。
見聞録の中には、現地での戦闘記録や戦果だけでなく、現地の文化や兵器または人々の
様子など当時としては最新の欧州の様子を描いた書物である。
それだけに、欧州での黄色人種への扱いや他国の植民地の扱い方などは、幕府に欧州の
太平洋進出を警戒させるには十分であった。
「やはり、今回も知恵を借りるしかないか・・・」
しばらく自室で悩んだ後、家斉は自室を出て夢幻会のメンバーを呼び今後の幕府の動きを
相談するべく会合専用に作られた間へと入室した。
部屋の中には、すでに複数の人間が入室しており、中には公家や商家の人間も見られる。
「家斉様、よく御出でになられました。私たちを呼んだ理由はやはりフランス革命の件についてですね。」
型道理の挨拶を済ませ、口を開いたのは元老中田沼意次だ、彼も転生者であり罷免という
形で老中の役こそ解かれていたが、その後は夢幻会のに戻り家斉に影からサポートしていた。
「そうだ、オランダを助けることには成功したが、この後どうする?」
「少なくとも史実道理であればしばらく国周辺は大きな問題は起きないでしょう。
その間に国全体の基礎技術を向上、特に外洋航海と火砲を初めとした欧州の海洋進出に
目を向けたものに注力すればいかがでしょう?」
「うむ、他の家臣には島津が書いたものを見せ納得させよう。
其方は技術のほうを頼むぞ。」
「承知いたしました。」
家斉退室後、夢幻会メンバーは今後の予定を話し合った。
「まさかオランダがオーストラリアや周辺諸島に入植して一大帝国を築いているなんて
予想外でしたね。しかし、おかげで労せずして外洋航海可能な船舶が手に入ったことは幸いでしたね。」
「そうですね、蒸気機関などはこれからになりますが、幕府が海外に目を向けてくれたことで、
海外技術にも興味を持ったようですし、このまま行けば比較的早い段階で蒸気船なども配備できるでしょう。」
「私たちの代では無理でしょうが、後続の転生者たちが少しでも活動しやすくなる土台はこれで整いました。
後は待つだけですね。」
翌享和五年
家斉主導により新型船の開発やオランダへの使節団の編成が行われ、幕府の海外へ目を向けた取り組みが加速して
いき、後の開国までの混乱減少や素早い軍の近代化に繋がっていくことは夢幻会メンバー以外知る由も無いことだった。
※1:当時の夢幻会は、将軍家専属のアドバイザー的な存在として、存在し幕府の重要役職の人間へ転生した、転生者
たちによって運営されており、明治維新の際、皇族や薩摩・長州の転生者へ受け継がれ、運営されていく。
※2:この書物は派兵された島津家家臣が書いたもので、中には一般人から聴取したものや捕虜にした敵兵からの言葉
を翻訳したもの、オランダ王族と謁見した際み見聞きした他の欧州の国についてのなどの情報が何冊もの書物として
まとめられている。
最終更新:2015年09月09日 21:00