863 :フォレストン:2015/09/30(水) 07:48:39
インド洋演習直前の英国海軍。この後悲劇が…!

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱英国海軍事情2

対独戦後、英国海軍では将来を見据えた艦載機の開発と運用の研究が行われていた。より大出力、より大型化していく艦載機を運用するために何が必要かを模索していたのである。

最初に開発されたのはフレクシブル・デッキという航空甲板である。これは甲板にクッションを敷き詰めたものであり、着艦する機体を受け止めるものであった。このクッション甲板に胴体着陸するという物凄く乱暴な手段なのであるが、グロスター E.28/39を用いた実験は一応成功した。しかし機体は車輪が出ていないため、すぐ移動できずに甲板を塞いでしまうので実用には程遠い状況であった。

そんな中、D.R.F.キャンベル海軍大佐がアングルド・デッキのアイデアを出したのである。当時は一笑に付されたのであるが、その正しさは後に証明されることになる。他ならぬ日本海軍の手によって。

1944年1月。
カリフォルニア共和国ロサンゼルスに大日本帝国、大英帝国、ドイツ第三帝国という世界を事実上 支配する国々の首脳が集まった。
サンフランシスコに姿を現した日本海軍の超大型空母『大鳳』であるが、特に英国海軍関係者の目をひいたのが、舷側に突き出したアングルド・デッキであった。

その巨大な艦容は余すことなく撮影されて本国に急送された。キャンベル大佐を笑っていた連中の顔色とSAN値がヤバいことになったのは言うまでもない。事の重大性を理解した海軍上層部は、キャンベル大佐にアングルド・デッキの実用化と運用研究を命じたのである。

864 :フォレストン:2015/09/30(水) 07:51:35
1945年になると日本から(友好価格で)購入した艦上戦闘機『烈風』を改造したマルチロール機である『ブラックバーン ペレグリン』の数が揃ってきたため、早速飛行隊が編成された。対地対空対艦と任務に応じて武装を変更して対応出来るペレグリンは、戦闘機と雷撃機を統合出来る画期的な機体であった。

英国海軍の空母は日本海軍の同クラスの空母に比べて重装甲な分、格納庫のスペースにしわ寄せがきていた。搭載機数が少なくなりがちなため、多目的な運用が可能なペレグリンは大変ありがたい機体だったのである。その分機体単価が鰻上りとなり、パイロットにも訓練を追加しないといけないわけで、関係者の苦労は並大抵のものでは済まなかったのであるが。

「すげぇ!こんなにも着陸が楽な機体はストリングバグ以来だぜ!」
「この機体なら目を瞑ってでも着陸できるな!」
「頑丈そうな脚が素敵過ぎる!」

ペレグリンは、その低速安定性と着陸の容易さをパイロットに絶賛された。機体のベースとなった烈風の素性の良さもあるが、空軍から使い物にならない艦上機(スーパーマリン シーファイア)を押し付けられてきた彼らからすれば天の恵みのような機体だったのである。

英国海軍の主力艦戦であるシーファイアは、元々空軍機であるスピットファイアを艦載機化した機体であった。しかし運用面で様々な問題が生じていた。スピットファイア自体はレシプロ戦闘機の傑作であることは疑いようの無い事実であるが、それを艦載化するのはいろいろと無理がありすぎたのである。

シーファイアの問題点を挙げるとキリが無いのであるが、具体的には以下の点が運用上の問題であった。

  • 速度最優先で機首の細長い液冷機であるため、着艦時の視界が劣悪。
  • 液冷機であるため、ラジエータへの被弾1発でエンジン停止の危険性がある。
  • ベースとなったスピットファイアの主脚が脆弱。
  • 主脚の外側折り畳み構造からくる狭いトレッドによる発着艦時の不安定さ。

艦上で運用するには致命的なものばかりである。当然配備されてから着艦事故が続出した。もちろん海軍側も手をこまねいていたわけではなかった。機体の構造強化はもちろん、着艦事故の主な原因が着艦フックが前過ぎるということで垂直尾翼から後方へ伸びるスティンガーフックを採用したりと様々な改良を行った。それでも多少は減ったとはいえ着艦事故は後を絶たなかったのである。グリフォンを搭載したシーファイア最終型に至っては機体重量の増大が想定を超えており、着艦の衝撃に機体と脚が耐えかねて機体ごと潰れてしまう致命的問題を起こしていたのである。

艦載機としては落第としか思えない機体を押し付けられた海軍が空軍に対して不信感を増大させたのは言うまでもない。その不信感は同年5月の英日合同インド洋演習において頂点に達し、海軍にある決断をさせることになる。

865 :フォレストン:2015/09/30(水) 07:55:05
1945年2月。
英国はアイリッシュ海、マン島付近の海域を2隻の空母が航行していた。イラストリアス型装甲空母のネームシップである『イラストリアス』と3番艦の『ヴィクトリアス』である。横からみると特におかしな点は無いのであるが、上空から見ると違和感を感じることであろう。当時の常識であった直線式飛行甲板に、斜めにラインがひかれているからである。そんな奇妙な艦隊の上空を従来の英軍機とは明らかに違うシルエットを持った機体が飛行していた。

『収容準備完了。1番機降りてこい!』
『了解!』

着艦信号士官(LSO)の指示に従ってイラストリアスへ着艦体勢に入ったペレグリンは安定したアプローチで着艦する。機体が静止したのを見計らい、クルーがすぐさま駐機位置へ機体を退避させる。同時に2番機の着艦が始まった。こちらも見事なアプローチで着艦して駐機場所へ移動された。

『3番機!?』
『!?』

最後に着艦しようとした3番機は直前に横風に煽られ、機体バランスを崩した。しかし、そのままタッチアンドゴーで離脱。再度のアプローチで無事に着艦した。この様子をアイランドから眺めている男達がいた。一人はイラストリアスの艦長、そしてもう一人の男はキャンベル海軍大佐であった。

「キャンベル大佐、あなたの発案したアングルド・デッキは素晴らしいですな」
「ありがとう艦長。もっとも、日本はとっくに実用化してしまっているのだけどね」
「それはあなたの責任では無い。あなたのアイデアを無視し続けていた上層部こそ責任を取るべきだろう」

英国におけるアングルド・デッキの実験は空母『ハーミズ』を改修して行われた。着艦試験に使用した機体は着艦安定性に欠けるシーファイアであったが、アングルド・デッキのおかげで着陸のやり直しが容易であったため良好な成績を収めることが出来たのである。

その後、ラインの角度を10°にして駐留機の待機スペースを避けて斜めに着艦する実験を行い成功したのであるが、角度を強めると着艦に取れる甲板の長さが減少するために、アングルド・デッキの拡張が必要と判断された。しかし、必要な甲板長を確保するとアングルド・デッキが舷側に突き出す形となり、かなりの大工事となるため予算とドッグの確保が出来次第、順次行うものとされた。結局のところ、日本海軍のアングルド・デッキの追認に過ぎなかったのではあるが。

なお、アングルド・デッキの運用試験終了後、ハーミズは海軍からDMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development:多種兵器研究開発部)へ移管されて新兵器のテスト艦として再就役することになる。艦齢は古いものの酷使されていなかったため、コンディションは良好であり、衝号発動時にはインド洋へ進出していたため巨大津波の被害を受けずに済んでいたためである。空母故に兵装の搭載スペースに余裕があり、艦体に比して巨大なアイランドは計測機器や器材を搭載するのに都合が良かったのである。

もちろん、海軍としては数少ない実働する大型艦を、それも貴重な空母を手放したくなかったのであるが、ハーミズの艦齢が古いことと、それによる設計思想の古さからくる格納庫のスペースの狭さによる運用の難しさなどもあり、しぶしぶながら手放すことになる。ハーミズはDMWDの技術マッド共の手により弄くられまくり、艦対艦ミサイルのプラットフォームになったり、新型レーダーや対潜兵器の搭載、果ては大型艦用の大出力ディーゼル機関を搭載したりと、年月を重ねるごとに変貌を遂げていくのである。

866 :フォレストン:2015/09/30(水) 07:58:45
1ヶ月に渡るペレグリンの艦上運用試験は滞りなく進み、その結果は海軍上層部を満足させるものであった。訓練プログラムを終了したイラストリアスは母港へ進路を取った。しかしヴィクトリアスだけは引き続き海域に留まった。数ヵ月後に迫ったインド洋演習でお披露目する新型機のテストのためである。

甲板クルーの動きが慌しくなり、ヴィクトリアスの甲板上に機体が引き出される。その機体にはあるはずのプロペラが存在せず、従来のレシプロ機とは一線を画するシルエットをしていた。前年10月に生産が開始された英国初のジェット戦闘機『グロスター ミーティア』を艦載機化した『シー・ミーティア』である。ヴィクトリアスは、この機体を運用するために突貫作業で設備が追加されていた。

『機体固定完了。カタパルト接続確認』
『ジェット・プラストディフレクター、アップ!』

甲板に引き出されたシー・ミーティアはカタパルトに接続された。搭載されたロールスロイス ダーウェントが唸りを上げ、合計で2トン近い推力を叩き出す。

『アキュムレータ圧力正常。射出準備完了!』
『射出っ!』

油圧カタパルトが作動し、シー・ミーティアを加速させる。時速120マイルまで加速された機体は艦外に放り出されて一瞬沈み込むが、そのまま緩やかに上昇していく。

1機目のシー・ミーティアが発艦した後、2機目のシー・ミーティアが準備された。こちらはカタパルトに接続されず、代わりに主翼下に筒を束ねたような器材が搭載された。

『ブリッジより2番機へ。進路クリアー、離陸を許可する』
『了解。2番機、これより離陸する』

エンジン出力を最大にしても、初期ジェットゆえに加速は鈍かった。しかし…。

『RATOG、スイッチオン!』

パイロットがスイッチを入れた瞬間、主翼下からロケットが噴射されて機体が急加速する。ほどなく離陸速度に到達し、甲板に余裕を残して2番機は発艦に成功する。離陸直後、燃焼が終了したRATOGは投棄されて海中に没していった。

ヴィクトリアスの甲板長と合成風力があればレシプロ機の発艦は問題無いのであるが、レシプロ機に比べて初期加速とレスポンスに劣る初期ジェットであるシー・ミーティアはそのままでは発艦するのは難しかった。全速発揮状態で甲板を全て使えば辛うじて発艦可能であったが、それでは部隊運用に支障をきたす恐れがあった。そのため、英国海軍ではシー・ミーティアを運用するにあたって、油圧カタパルトとRATOGを使用することで運用上の問題の解決を図ったのである。

油圧カタパルトであるが、7トンの機体を120マイル(194km/h)まで加速させる力量があった。これはフル装備のシー・ミーティアを射出するのには充分な能力であった。しかし油圧カタパルトは重く、設置にかなりのスペースが必要となるので、正規空母への搭載ならともかく、軽空母や護衛空母に搭載するのは難しかった。そのため、油圧カタパルトの設置が出来ない軽空母や護衛空母でのジェット艦戦の運用にはRATOG(Rocket-Assisted Take Off Gear:ロケット補助推進離陸器材)使用が前提とされたのである。

RATOGは航空機用の空対地ロケット弾であるRP-3の弾体を流用して開発された。極論するとRP-3の弾頭を外して束ねたものである。その構造はシンプルかつ非常にローコストであり、使い捨てが前提であったが回収出来れば推進剤(コルダイト)を充填して再利用が可能になっていた。RATOGは取り付けが簡単で使い勝手が良いため、海軍のみならず空軍でも使用されることになる。

867 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:00:50
シー・ミーティアは来るべき英日インド洋合同演習において英国海軍の威信を示すべく開発された機体であり、当然のことながら最大の機密事項であった。当時、立場的に危うい状況であった英国情報部はその面子にかけて情報戦を行い、欧州の情報機関はもちろんのこと、インド洋演習のもう一方の当事者である日本の情報機関にも直前まで察知させない見事な手腕を発揮したのである。しかし、防諜を重視するあまり肝心の日本のジェット艦戦である疾風の情報を完全に掴むことは出来ず、この点は後に非難の対象となる。

インド洋演習は英国海軍と日本海軍の合同演習であるが、英国空軍にとっても決して無関係なイベントではなかった。演習において、コロンボ基地所属の新型スピットファイア(スピットファイア Mk.ⅳ)のお披露目を予定していたこともあるが、なによりもシー・ミーティアは空軍期待のジェット戦闘機ミーティアを艦載化した機体だからである。シー・ミーティアが日本海軍の疾風を相手にどの程度戦えるのかは空軍において最大の関心事であった。そのため、空軍は海軍に協力を惜しむことなく人材や器材を提供していた。今回の運用試験においても周辺海域の対空、洋上監視は空軍の協力の下に行われたのである。

先年のバトル・オブ・ブリテンでルフトバッフェの猛攻で機能損失に至った反省を活かし、英国空軍ではレーダーサイトを全土に分散させて被害の局限化を図っている最中であった。防空レーダー自体も日本から購入した真空管式レーダーを参考にして性能を向上させており、今回の運用試験では万全とは言えないまでも、過去に例を見ないレベルで厳重な対空監視が行われていた。レーダーだけでなく目視による洋上監視も併用して行われており、沿岸基地から飛び立った『ショート サンダーランド』飛行艇が海上の不審船に目を光らせていたのである。

868 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:03:17
対空と洋上監視を空軍に任せることが出来た海軍はUボート対策に専念していた。英国の聖域とも言えるウェスタンアプローチ管区と言えども、何時Uボートが潜入してくるか分かったものでないのである。情報部でも新型Uボートの実戦配備が近いことを掴んでおり、最大限の警戒をもって今回の演習に望んでいたのである。

『こちら2番機!該当海域で潜望鏡らしきものは発見出来ず。引き続き哨戒を続行する』
『こちら5番機、そろそろ燃料が心細くなってきた。交代はまだか?』
『CDCより5番機へ。そちらの空域に交代のため7番機が向かっている。10分後に合流予定』
『フライトデッキよりCDCへ。3番機の補給完了。発艦許可を求む』

ヴィクトリアスから10kmほど距離をあけて航行する対潜空母『プレトリア・キャッスル』の艦内に設けられたCDC(Combat Direction Center:戦闘指揮所)は喧騒に包まれていた。CDC中央部に設けられた巨大なクリアボードには僚艦と哨戒機の現在位置とUボートらしき不審物の目撃情報が刻々と書き込まれていく。

「ふむ、今のところ問題は無さそうだな」
「はい、司令。現状では特に異常は見受けられません」
「結構。だが彼らを、Uボート乗りを侮ってはいかん。彼らは異常なほど粘り強く執念深い。そのことは私が一番良く知っている」

CDCの奥まった場所で副官と会話しているのは、新設された対潜部隊の司令官であるフレデリック・ジョン・ウォーカー准将である。
史実では最も成功した対潜戦闘指揮官と評価されている彼であるが、早期停戦に至ったこの世界でも短期間に多数のUボートを撃沈していた。これは対独戦争で成し得た数少ない英国海軍の戦果であった。それだけに戦後になってから彼の功績は大きく評価されることになった。

停戦直前に大佐に昇進、戦後まもなく准将に昇進したウォーカーは、ウェスタンアプローチ管区司令長官であり、良き理解者でもあるマックス・ホートン大将の強力な後援を受けて対潜部隊の刷新に乗り出した。新たな対潜戦術の構築や、ヘッジホッグの進化型であるスキッド、その後継であるリンボーの開発に関わったりと、後に英国海軍対潜戦術の父と称えられることになる。

869 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:06:02

『3番機の発艦準備完了』
『CDCより3番機。発艦を許可する』

プレトリア・キャッスルのフライトデッキでは補給を終えた3番機が今まさに発艦するところであった。低速航行中で舳先を風上に向けていないため合成風力による離陸促進も期待出来ない状況であったが、この機体はそれこそ無風状態からでも離陸が可能なので問題は無かった。プレトリア・キャッスルの甲板を半分ほど余裕を残して発艦した3番機は複葉機-フェアリー ソードフィッシュだったからである。

ソードフィッシュを対潜哨戒機として使用すること自体は以前から行われていた。荒れ狂う時化の中でも飛べる複葉機ならではの離着陸性能に加えて、低速・低負荷・低難度操縦性という3拍子揃った性能は哨戒機としてうってつけだったのである。既に海軍ではUボート対策としてMACシップ(Merchant aircraft carrier:商船改造空母)を多数就役させていた。その大半は本国とブリティッシュコロンビア間の航路に投入していたのであるが、MACシップはソードフィッシュを4機しか搭載出来ず、その哨戒範囲はあくまでも航路上の狭い範囲に限定されていた。

しかし最近のUボートの性能向上は目覚しいものがあり、情報部が掴んだ情報によると現在開発中のXXI型Uボートは全没状態からソナーのみで雷撃出来る性能を持つとされていた。仮にXXI型が戦力化された場合、従来のようなごく狭い範囲の対潜哨戒は無力化される可能性が高かったのである。そのため、より遠く、より広い範囲を対潜哨戒する必要が生じたのである。

プレトリア・キャッスルは元々豪華客船であったが、第二次大戦勃発と共に国防省が特設巡洋艦として使用するため徴発し、その後海軍が買い取って空母への改造を施された。しかし元が客船のため足が遅く、当初海軍が予定していたシーファイアの運用には制限があったため、上記の理由により戦後になってから対潜空母として再度改装を受けたのである。満載時で2万トンを超える巨体は英国の商船改造空母としては随一の大きさであり、ソードフィッシュを常用と予備を合わせて40機運用することが可能であった。搭載されたソードフィッシュは主翼の折り畳みが可能であり、積載するだけなら50機積んでも余裕があるくらいなのであるが、管制能力の限界から搭載数は抑えられたのである。

870 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:09:03
管制能力の限界からくる搭載数の制限であるが、これは当時の戦闘指揮システムの抱える問題であった。英国空軍では、レーダー技術の発達にともない、これを活用するためにフィルター・ルーム・コンセプトを開発していた。これは各レーダーサイトが得た目標情報を集中処理して、要撃機に対する管制に活用するものであった。結果的にルフトバッフェの飽和攻撃に潰されたものの、先年のバトル・オブ・ブリテンにおいて、このコンセプトは極めて大きな効果を上げていた。ウォーカーは、このフィルター・ルーム・コンセプトをCDC(Combat Direction Center:戦闘指揮所)としてそっくりそのまま海上に持ち込んだのである。そこには哨戒機と僚艦の目撃情報を集中して、より効率的、効果的に運用する狙いがあった。

当時のCDC内での情報処理は、わずかに計算尺が使われている程度で、ほとんど全てが紙と人と声に頼っていた。CDCの中央部には、自艦を中心にして目標情報をプロットするためのクリアボード(レーダー画面を巨大化したような文字通りの透明黒板)が配置され、ここに手で書き込むことで情報を集約していたのである。僚艦との情報伝達も、発光信号や手旗信号、初歩的な無線機であった。

CDCによる集中情報処理は、当時考えられる最良の方式であることは疑い無かったのであるが、ウルフ・パック (Wolf Pack:郡狼戦術) を想定したシミュレーションで、この方式の限界点が明らかになった。熟練のオペレーターを配したにもかかわらず、他数のUボートが殺到してくる状態で情報処理が破綻してしまったのである。なお、英国海軍では艦隊防空に関しても同様のシュミレーションを行ったのであるが、こちらも同時に処理できる目標はせいぜい12機程度が限界で、20機の目標に対しては、完全に破綻してしまっていた。

情報処理が破綻した最大の原因は、刻々と変化する戦況に対応する情報処理速度の不足であった。シュミレーションの結果、紙と人と声-いわゆる人力に頼っている限り、これ以上の対応速度の向上は困難であり情報処理に自動化を導入する必要性が明らかになったのである。情報処理を自動化するには信頼性の高いデジタルコンピュータが必要不可欠であったが、幸いにして英国ではパラメトロン・コンピュータが実用化されたため、そちらを使用した管制システムが研究されていくことになる。

要するに現状で同時管制する数に限界があるならば格納スペース限界まで搭載しても無駄ということなのである。そのためプレトリア・キャッスルでは、常用30機(+保用10機)と運用数は抑えられたのであるが、その分航空燃料や弾薬を多めに搭載出来たため、外洋に進出して長期間の作戦に従事することが可能であった。

871 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:11:18
哨戒機の大量運用による広範囲対潜哨戒によるUボート無力化が半ば頓挫した以上、単機辺りの性能威力を向上させる必要があった。この場合、一番手っ取り早い方法は新型機の導入である。しかし、ソードフィッシュの後継機であるアルバコアは性能的に大差無いうえに使い勝手に劣り、バラクーダはエンジン選定に手間取ったうえに不可解な事故が多発するなどパイロットからの評価は非常に悪かった。そのため改良による性能向上しか選択肢が残っていなかったのである。

手始めに行われたのがレーダーの搭載であった。最初に搭載されたASV Mark.1レーダーは艦船を18kmで探知可能であった。しかし、肝心の潜水艦の探知が難しかったためにほどなくサイド・ルッキング機能を付与されたMark.2レーダーに換装された。こちらは潜水艦を数kmから50kmの範囲で探知可能でありUボート発見に威力を発揮した。しかし、Uボート側も電波探知機METOXを実用化してソードフィッシュからのレーダー波を逆探知して逃げるようになった。その対策としてHF/DF(短波方向探知機)が搭載された。Uボートの無線の発信方位を測定することで攻撃方位を推定することが出来るようになったのである。

HF/DF搭載機が複数いれば三角測量でUボートが潜んでいると思われる場所の座標が算出可能であり、ソードフィッシュのASVレーダーと併用することでUボートの発見率は再び向上した。1946年に改良されたASV Mark.3が搭載され始めると更に探知距離と精度が向上してUボートの昼間浮上は危険なものとなったのである。

この問題に対するドイツ海軍の解答はXXI型をはじめとする新型Uボート群であった。従来潜よりも長大な水中航続力、画期的な水中速度に加えて、ソナーからの情報のみで魚雷攻撃を行うことが可能であった。水上に潜望鏡を出す機会が減少したため上空からレーダーで探知することが極めて困難なものとなった。運良く探知に成功しても潜行されると搭載しているロケット弾では攻撃出来ず、付近の友軍艦艇に通報することくらいしか出来なかった。せっかく通報しても水中速度に優れる新型Uボートは低速なコルベットやスループが現場に到着するまでに大きく位置を変えており、逃走されることが多かったのである。

872 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:14:06
新型Uボート対策としてレーダーに代わる水中に潜む潜水艦を探知出来る技術を当時の英国海軍は切望していたのであるが、意外なところからその技術が手に入ることになった。今は亡きアメリカで研究されていたMAD(magnetic anomaly detector:磁気探知機)である。MADは地表の磁場の僅かな乱れを探知する装置であり、大量の強磁性材料の塊である潜水艦を探知するのに有効であった。

MADは航空機の胴体の金属や電気器材からの干渉を減らすために、ブームの先端に置くか、あるいは空中で曳航する必要があった。ソードフィッシュの降着装置は尾車式のため、尾翼からブームを伸ばすと着陸時に悪影響が出るので、胴体下に装備して飛行中にワイヤーを伸ばして曳航する方式となった。

MADを搭載することにより、潜航中のUボートの追跡も可能となったソードフィッシュであるが、ASVレーダーにMADまで搭載すると重量的にかなり厳しいことになった。複葉機であるため出力の割りにペイロードに余裕はあったが、それでもこれだけの装備を積むと飛行するのがやっとの状態だったのである。これに加えて、潜航中のUボートを攻撃するための武器を搭載することも求められていたのである。

1949年の時点でソードフィッシュの性能向上は既に限界に達しており、今度こそ新型機の導入になるはずだったのであるが、そうは問屋がおろさなかった。予定では既に飛行しているはずの後継機のフェアリー ガネットは設計の大幅変更のために製作作業が遅れており、未だに試作機すら完成していない状態であった。そのため、ソードフィッシュの延命が施されることになるのである。

873 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:17:33
航空機の性能を上げるにはエンジンの馬力向上が一番手っ取り早い手段である。単純に大馬力は正義であり、速度にも装甲にも武装にも変換出来るのである。もちろん、ただ馬力を上げれば良いというものではない。馬力を支えられるだけの機体強度が無いと意味が無いのである。

ソードフィッシュ自体は枯れた技術で作られた機体であり、機体構造も鋼管フレーム帆布張りという化石のような構造であった。応力外皮構造(モノコック)に比べれば重量が嵩む欠点があるが、鋼管フレーム自体が機体強度を受け持つので機体の補強が簡単に行えるメリットが存在したのである。

仮に応力外皮構造の機体に、より大出力の発動機を載せるとなると機体外板の圧板化やフレーム桁構造の補強、その他細かく煩雑な設計変更が必要になるのであるが、ソードフィッシュの場合は鋼管フレームに補強を入れるだけで済んだ。この特異な構造故に、比較的簡単に大出力発動機に対応出来たのである。

この時期になると航空レシプロよりもはるかに軽量で大出力のターボプロップエンジンが実用化されており、エンジンの選定で悩む必要が無かったのも幸いと言えた。ブリストル ペガサスから倍近い大出力かつ半分の重量で済むアームストロング・シドレー マンバに換装した結果、ペイロードに大幅に余裕が出来たうえに飛行性能も軒並み向上した。ターボプロップに換装したソードフィッシュはMk.5として1950年に制式採用されたのである。

ペイロードに余裕が出来たことにより潜航中の潜水艦を攻撃するための武装を積むことが可能になったのであるが、浮上しているUボートならともかく、潜航中のUボートを沈めるのはかなりの難題であった。しかし、こんなこともあろうかと、と言わんばかりにDMWDのマッド共がキワモノを押し付けてきた。元々は装甲車搭載用の速射砲として開発され、ドイツ戦車の重装甲化に伴ってお蔵入りした後で航空用に転用されるという異色の経歴を持つモリンズM型57mm自動砲である。

自重は816kg、弾頭重量は3170gであり、作動は反動利用のロングリコイル方式。発砲時に砲身は80cmも後退し、電動ラック式の弾倉には22発が搭載可能な化け物砲である。本来はUボート狩り用にモスキートに搭載する予定だったのであるが、対独戦の早期停戦が実現したことで宙に浮いてしまっていたのを流用したのである。計算上では57mm徹甲弾は水中数メートルでもUボートの圧力殻を貫通可能であり、浅深度潜航中及び浮上及び潜航中のUボートにダメージを与えることを期待されていた。その高い貫通力はUボートだけでなく水上艦艇にも有効であり、不審船舶に対する警告や撃沈にも使用された。

潜航中のUボートに有効な装備として開発されたもう一つの装備が対潜ロケットである。こちらはヘッジホッグをそのまま流用していた。信管は二重構造となっており、着水時の衝撃によってまず一段目の信管が作動して爆発可能状態となり、着水後沈下する弾体が1発でも水中目標に命中すると、その爆発に寄って生じた水中衝撃波によって残りの弾体も信管が作動して投射した弾体全てが誘爆するようになっていた。

この対潜ロケットランチャーにはヘッジホッグが12発装填されており、ソードフィッシュは両翼に1基ずつ搭載することが可能であった。本家のヘッジホッグに比べると散布界は狭く、MADによる照準も艦載ソナーに比べると精度は低かったが、その分至近距離から投下するのでUボートに回避の時間を与えることなく攻撃することが可能であった。

ソードフィッシュが最終的に退役したのは1950年代末になってからのことであった。その大半は払い下げられたのであるが、一部の機体はアフリカの植民地に流れて80年代まで哨戒機として運用された。鋼管フレーム帆布張りの構造は、極論すると鋼管を繋ぎなおして布を張り替えるだけというテント張りにお手軽極まる整備製であり、民間はもちろんのこと、過酷なアフリカの大地でも高い稼働率を維持し続けたのである。

874 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:24:05
あとがき
というわけで、憂鬱英国海軍その2です。
今回はインド用演習直前までを描写してみました。それにプラスしてソードフィッシュ魔改造描写も追加ですw

フレクシブル・デッキですが、史実では1947年に英国のファーンボローでシーヴァンパイアを使って試験しています。試験結果は実用に耐えないとのことでした。これが実用化されていれば、常に胴体着陸をしなければならないわけで、命がけってレベルじゃないような気が…:(;゙゚'ω゚'):

ペレグリンのベースとなった烈風の着陸性能は、日本海軍からすれば標準レベルなのでしょうが、英国海軍からしてみれば驚愕ものでしょう。史実米軍がゼロ戦の離着陸性能に仰天するような感じなのでしょうねぇ。なお、ストリングバグはソードフィッシュの愛称です。おかんの買い物籠のごとく何でも入るから、要はそれくらい使い勝手が良いというのが、命名理由です。

シーファイアの酷さについてはこちらが分かりやすいです。スティンガーフックの画像もあります。
史実でロイヤルネイビーがF4Uを普通に運用出来たのは、自分のところの機体が論外に酷かったからとの意見がありますが反論出来ない…(´;ω;`)
h ttp://togetter.com/li/276414

憂鬱世界では日本が先駆けですが、史実ではアングルド・デッキ、ミラー着艦支援装置、蒸気カタパルトは英国が発明しています。日本のを見て開発が早まることでしょう。アングルド・デッキはサンタモニカ会談の大鳳を見てから実験してもインド用演習には十分間に合うでしょう。ミラー着艦支援装置と蒸気カタパルトは、インド洋演習で実際に動いているのを見てからでないと実用化は無理でしょうね。問題は枢軸側なのですが、空母機動部隊を整備することが出来そうなイタリアはサンタモニカ会談には顔を出していませんし、インド洋演習にも艦船を派遣したか明確な描写もありませんので、当分実用化は無理かと思われます。英国の後追いになりそうですね。ドイツから情報をもらっていれば多少は開発も早くなるかもしれませんが。

憂鬱世界のハーミズは衝号発動時にインド洋にいたので、損傷を免れたという設定です。貴重な大型艦ですが、正直使い道に困るのでDMWDのマッド共のおもちゃ…もとい、テスト艦として頑張ってもらうことにしました。拙作SSにはこれからもちょくちょく出演してもらう予定です。

拙作『憂鬱英国空軍事情1』と本編では扱いの酷いシー・ミーティアですが、かわいそうすぎるので花道を用意しました。上げて落とす?なんのことやら。

油圧カタパルトは米軍のH-8(全長63m)準拠です。史実ではエセックス級のSCBー27A近代化改修を受けた艦が装備しています。年代的に少々早いかなと思いましたが、油圧カタパルトの構造は基本的に変わらないので問題無いでしょう。油圧カタパルトの力量を増大させると圧力を確保するアキュムレータ(蓄圧器)の大型化は避けられず、ストロークを確保するための動滑車と定滑車の組み合わせる必要があるので、ますます嵩張ることに。そりゃ蒸気カタパルトに走りますよねぇ。イタ公は旧アメリカ人技術者の力を借りてカタパルトを開発するでしょうが、彼らは油圧式とフライホイール式は作れるでしょうがスチームカタパルトは…やっぱり英国の後追いになりそうですw

RATOG(Rocket-Assisted Take Off Gear:ロケット補助推進離陸器材)は英国空軍側の呼称です。史実のJATOやRATOと同じです。

この時期、英国空軍はレーダーサイトの復旧中です。本編16話で日本からレーダーを購入しているので、英国の技術者は特にアンテナ構造を参考にするでしょう。チェインホームのタワー型アンテナから回転式アンテナへ切り替わることでしょうね。

ショート サンダーランド飛行艇は高性能(史実の極東のチート機体は除く)なので活用したいところなのですが、飛行艇ゆえに使いづらいです。いっそ払い下げて民間機として運用すればと思いますが、離島航路に就役させるのがせいぜいでしょうねぇ…。

フレデリック・ジョン・ウォーカー(史実中佐)は史実で最も成功した対潜戦闘指揮官です。まさに対潜戦闘の鬼でありUボートの天敵と言っても良い人物です。大戦中の激務で早逝してしまいましたが、この世界では存分に活躍してもらおうと思っています。

マックス・ホートン(史実大将)は史実ではウェスタン・アプローチ管区の司令長官でした。憂鬱世界では第2次大戦後も司令長官の地位に留まっているという設定です。対潜戦闘に理解があり、リーダーシップを発揮出来る軍人とのことなので、ウォーカーともうまくやっていけると思います。

875 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:26:49
磁気探知は史実では日本とアメリカで研究されており、戦前における日本側の呼称はKMXでした。戦後もアメリカは研究を続けてMADとして現在も使用されています。

MADは本体の騒音や磁気の影響を避けるために機体から離れた場所に設置する必要があるのですが、ソードフィッシュの降着装置は尾輪式なので、尾翼からブームを伸ばすと着陸時に悪影響が出てしまいます。なので胴体下部に装備して史実SH-60JのMADバードのように使用時にはワイヤーを伸ばして曳航する形式にしています。

ソードフィッシュの後継機になるはずだった後継機のアルバコアは性能的に大差無いうえに使い勝手に劣り、バラクーダはエンジン選定に手間取ったうえに油圧システムの液漏れが顔面に直撃するとパイロットが気絶して事故が多発という殺人機なのでソードフィッシュを延命するしか手はありません。なお、フェアリー ガネットは疾風ショックやら大和ショックの影響で仕様が二転三転したので実用化が遅れています。ますますソードフィッシュの魔改造が止まらなくなりました(オイ

ASVレーダーは史実では1937年に実用化されています。サイド・ルッキング機能を搭載した潜水艦探知能力を持つASV Mk.2も1940年に開発されてソードフィッシュに搭載されています。ASV Mk.3から発展してセンチ波(3GHz)を使用するパラボラアンテナ型レーダーも1941年に完成しています。本来の用途は夜間戦闘用ですが、英国海軍もType271型艦船用レーダーとして実用化してほとんどの艦船に搭載されています。この世界でもほぼ同様と思われますが、憂鬱日本はこれ以上にチートなんですよね…( ´Д`)=3

モリンズM型57mm自動砲は史実ではモスキートに搭載されてUボート狩りに猛威を振るいました。史実よりも早く戦争が終わってしまって作ったのは良いけど、使い道が無いので押し付けたという設定です。かなりのデカブツですが、出力強化したソードフィッシュならなんとかなるでしょう。弾倉が干渉する?鋼管フレーム帆布張り構造なのだから、邪魔な帆布を切り裂けば胴体に収まりますよ!

対潜ロケット弾ですが、ヘッジホッグをそのまま流用しています。本家ヘッジホッグは24連装ですが、これを12連装にして両翼に装備。1基辺り砲弾重量30kgとしてランチャーの重量込みで400kg弱といったところでしょうか。2基合わせて800kgですが、出力強化したソードフィッシュなら問題無いでしょう。MADで探知して付近にばら撒くのが基本的な運用方法です。

876 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:28:58
以下、登場兵器のスペックです。

グロスター ミーティア F.2(初期生産型 史実F.3相当)

乗員数:1名
全長:12.57m
全幅:13.11m
全高:3.96m
自重:2690kg(最大6260kg)
発動機:ロールスロイス ダーウェントMk.Ⅰ 推力920kg×2基
最高速度:780km/h
上昇限度:12700m
航続距離:770km
武装:AN-M3 20mm機関砲×4

初期生産タイプの運用結果を反映させた本格量産型。
黎明期のジェット戦闘機としては例外的に信頼性の高い(チートは除く)機体となった。空軍だけでなく海軍も脚部延長とアレスティング・フックを装備したうえで『シー・ミーティア』として実用試験を行っており、インド洋演習後に制式採用される予定だったのであるが、最終的にキャンセルされている。

この機体は1945年の5月に開催された英日合同によるインド洋演習にも密かに持ち込まれていたのであるが、日本海軍の新型艦載機の性能に衝撃を受けた関係者が、お披露目せずに終わらせてしまったため、『戦わずして負けた戦闘機』という不名誉な渾名を戴くことになった。恥をかかかされるところだった海軍が、日ごろの空軍の航空行政(欠陥機押し付け)の鬱憤も相まって激怒したことは言うまでも無い。この事件以後、海軍は空軍の押し付けを拒否して独自の戦闘機開発を目指すことになる。


ショート サンダーランド飛行艇

乗員数:13名
全長:26.00m
全幅:34.39m
全高:10.00m
全備重量:22700kg
発動機:ブリストル ペガサス22 空冷9気筒 1010馬力×4
最高速度:336km/h
上昇限度:5500m
航続距離:4640km
武装:7.7mm 機関銃×8 爆弾907kg

史実のショートランド飛行艇。頑丈で信頼性が高く、防御武装も強力なのであるが史実極東のチート機体とは比較してはいけないのである。ジャイロダインやロートダインに押される形で戦後になってから退役した。民間に払い下げられた機体は戦後しばらくは離島間航路に就役していた。


プレトリア・キャッスル型対潜空母(1945年)

全長:181.05m
全幅:23.32m
喫水:8.76m
排水量:23450t(満載)
最大速力:18.0kt
主機:船舶用ディーゼル×2基、2軸推進 11350馬力
航続距離:34232浬(12kt)
乗員定数:1100名(司令部要員含む)
武装:50口径4インチ高角砲2基 4単装ポンポン砲4基

元々は豪華客船だが、戦中に特設巡洋艦として徴発された後に海軍に買い取られて空母として改造された。足が遅かったため、本来の用途であるシーファイア運用には制限があった。対独戦後に対潜空母として再度改装を受け、1945年に再就役している。

出自が豪華客船のため船内儀装が充実しており、長期間の作戦に適した艦であった。ジェット機運用のためにカタパルトの設置も考慮されたのであるが、運用する機体がソードフィッシュであったことと、対潜ヘリとして実用化されたジャイロダインやロートダインの運用には不必要なので最終的にキャンセルされている。

877 :フォレストン:2015/09/30(水) 08:30:43
フェアリー ソードフィッシュ MK.5

全長: 11.22m
翼幅: 13.9m
全高: 3.8m
空虚重量: 2030kg
最大離陸重量: 4410kg
エンジン:アームストロング・シドレー マンバ 軸出力1320馬力+排気推力
最大速度: 272km/h
巡航速度: 230km/h
航続距離: 2780km(増槽込み)
実用上昇限度: 7500m
乗員: 3名
搭載量: 1500kg
武装 7.7mm 機関銃 2門
航空魚雷 or 250ポンド爆弾4発 or 500ポンド爆弾4発 or RP-3ロケット弾16発 or 対潜ロケット弾発射

機×2 or モリンズM型57mm自動砲

史実のソードフィッシュMk.2のエンジンをターボプロップに換装し、大出力に対応すべく機体の補強を実施した機体。

Uボート探知用にASVレーダーとHF/DF(短波方向探知機)、さらにMAD(磁気探知機)まで装備しており、複葉機ながらUボート探知に猛威を振るった。Mk.5になってから潜航中の新型Uボートを撃沈するために対潜ロケット弾発射機とモリンズM型57mm自動砲の運用能力が追加されている。


モリンズM型57mm自動砲

口径:57mm
全長:3600mm
重量:816kg
砲弾:57×441R 3170g
作動方式:ロングリコイル
発射速度:毎分60発
銃口初速:790m/s

史実ではモスキートに搭載されてビスケー湾のUボート狩りに猛威を振るった自動砲。その破壊力は強烈で、水面下数mのUボートの船殻を貫通してしまうほどの威力があった。憂鬱世界では対独戦の早期停戦により、使われることなく倉庫で眠っていたのをDMWD(多種兵器研究開発部)の技術マッド共が発見し、改良整備して対潜部隊に押し付けたキワモノ砲扱いである。


対潜ロケット弾発射機

口径:178mm
銃砲身:12連装
砲弾重量:29kg×12
沈降速度:6.7〜7.2m/s
最大射程:200m~259m
弾頭:13.7kg(TNT火薬) または 16kg(トーペックス)
信管:着発信管

ヘッジホッグをコンテナに収納して航空機から発射出来るようにしたものである。照準は機体のMADによって行うが、艦載ソナーに比べて精度が甘く命中率はそれほど高くなかった。それでもUボートにとっては頭上の脅威以外の何者でもなかった。

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最終更新:2015年10月04日 21:10