393 :第三帝国:2015/09/20(日) 00:10:01
「状況的にゲートなのは分かっていた。
けどまさか門の向こうをこえて見れば、門が2つ並んで鎮座しているとは思わなかった」
ため息混じりに嶋田が呟いた。
1945年8月のコミケが開催しているだろう時期に突如銀座に出現した門。
そこから出現した怪異に鎧姿の軍勢は周囲にいた人々に対して無差別に攻撃を開始。
世界大戦下でも戦火に晒されなかった帝都東京は混乱状態に陥った。
首都のど真ん中からの攻撃に対応が追いつかず、警察機構が各個撃破される形で壊滅。
軍の出動命令は出せたが官庁街に押し寄せた軍勢に逃げ遅れた多くの官僚が殺害され指揮系統が混乱する。
官邸も襲われ総理大臣である嶋田も一時期危ぶまれてたが、
この国で最も尊き方が自ら近衛師団を率いて軍勢に対して対峙。
通称「皇居前攻防戦」が発生する。
民間人を追う形で皇居を取り囲んだ軍勢は二重橋前を筆頭に一部迂回して大手門、
平川門と三箇所から攻め込むが江戸城の城として堅牢さと銃火器を前に損害が積もる。
やがて横須賀から急行した海軍陸戦隊など到着した援軍を前に撤退を開始。
だがその隙を逃さず近衛師団が銃剣突撃を敢行したことで撤退が敗走へ変わり近衛師団は銀座を奪還。
そのままの勢いで銀座の門の向こうを占領した近衛師団の兵士が見たものは真横に並んだ同じ門。
そして、同じ日本語を操る日本人と自衛隊であった。
「片方は我々の東京銀座、もう片方は「原作」の東京銀座に繋がっているそうです」
「そこまでは原作どおりだな」
辻の言葉に伏見宮親王が頷き言葉を続ける。
「しかし、問題は日本政府の対応だ。
原作どおりなら一歩間違えれば安保理にゲートを丸投げされた挙句、
向こうの
アメリカや中国、それにロシアが大挙して門を超えてやってくるだろう」
原作の日本政府の弱腰な態度を思い出した一堂がうへぇ、と嫌な表情を浮かべた。
「おまけに中国のせいで門は一度閉まるし、放置すればすれば問題があるし…」
「だが、もう接触してしまった以上嫌でも付き合いしなきゃならん!」
くそ、と罵倒する。
「まあ、愚痴った所で何も始まらない。
皆、何らかの意見があってここに集ったのだろ?」
嶋田が周囲に発言を促す。
「総理、陸軍としては早急に自衛隊との連携を深めるべきだと考えるべきかと。
最悪向こう側から赤旗や赤熊が攻めて来る可能性から是非とも陸軍のさらなる派兵を考慮していただけたい」
「外務省としては向こうの日本、通称日本国との首脳会談を提案します。
現在現場で軍と交えて特地での行動について話し合いを進めていますがより深く話を深めるために是非とも」
チラリ、と国家の財布を預かる辻を見る。
「大蔵省は予算については優先的に配分することを約束しますよ。
今の所ゲートは一度閉じてしまうのは確実ですが、確保できる利権は確保したいですね。
それにこれは一過性のものではなく今後とも長い付き合いになりそうなので、投資に値すると思います」
茶を啜りながら辻が言葉を綴り周囲がどよめく。
何せあの辻が財布の紐を緩めたのだから。
「うん、結構。
では各省庁に戻り予算案を纏めて次の会に提出するように!
あの辻が財布を緩めとはいえいい加減な見積もりだけは出すなよ!」
嶋田の冗談に「そんなこと、するもんか!」と笑い声混じりに答えた。
かくして夢幻会は21世紀の日本と門を超えた交流と交渉を重ね、異世界で自衛隊と共同戦線を張ることになる。
しかし、大日本帝国という存在が気に食わない諸勢力のせいで、
原作以上に困難極まりないイベントが発生し、振り回されることになる……。
最終更新:2016年10月26日 11:19