106 :第三帝国:2015/10/04(日) 21:30:53
続いたネタ7 GATE~
夢幻会、彼の地にて戦いけり
アメリカがそんな決意を改めていた時、夢幻会では。
姿勢を正し、これ以上ないほど真剣な表情を浮かべていた。
対象は液晶テレビ、それも21世紀の日本から参考として送られた物で、
本日はその性能の実証を行うという口実で、
『あなたには理解できるはずもないわね、インキュベーター。
これこそが、人間の感情の極み、希望よりも熱く、絶望よりも深いもの……愛よ!』
「お、おう…」
ぶっちゃけアニメを見ていた。
具体的には「魔法少女まどか☆マギカ」で、
その劇場版を総理大臣やら親王殿下に大蔵大臣とかこの国の偉いさんが雁首そろえて鑑賞していた。
そして、事前前世でまど☆マギの劇場版を見ることなく転生した嶋田は最後のシーンにおける明美ほむらのガチレズ発言に思わず呻き声を漏らした。
「うーむ、流石ウロブチ。
この展開は流石だ!こっちも負けていられないな!」
「もう二度と見ることはないと思っていたから思わず涙が出てしまった!」
鑑賞を終えた後、久々に触れた嘗ての世界のアニメの近衛が賞賛し伏見宮が感歎の涙を流す。
「まったく、向こうで赴任した武官に言い聞かせておいて大正解だったな!
まだまだあるぞ、けいおんにモン娘、古典のジブリ、文学のFateもみんな見れるぞ!!」
「パーフェクトだ、東条!
これは功一級金鵄勲章に匹敵する戦果だ!」
「感謝の極み」
伏見宮親王の賞賛に一時帰国している東条が恭しく頭を下げた。
その光景にアニメが理由で勲章を与えるのかよ、と嶋田が頭を抱えた。
「意外と面白かったな」
「ふむ、偶にはこういうのも悪くない」
しかもこの場には非転生者の山本五十六、
陸軍からは永田鉄山も一緒に観賞していた、
なお反応は悪くなく順調に洗脳…もとい教化も進んでいるようであった。
(火葬戦記でも定番の山本五十六がまどか☆マギカを観賞した、なんて向こうの日本が知ったらどんな反応をするのやら?)
嶋田が2人の反応に現実逃避と同時にそんな感想を抱いた。
「まったく素晴らしいです。次は是非ともお嬢様系を仕入れて頂きたいものです。
ところで、ゲートに関して今日は阿部内相から報告があると聞いていましたが…?」
辻の催促にその場にいたメンバーが姿勢を再度正す。
「この前英国からドイツが大規模な諜報部隊を編成している。
という警告を受けたので手始めに国内の不穏分子の調査をした所、
石原莞爾から最近国内の右派が妙な連中とつるんでいると報告してきました」
「石原?たしか変な事を起こさないように戦時中は国内で飼い殺して、今はたしか予備役だったな?」
嶋田の問いかけに陸軍の親玉である永田が頷く。
何せ史実では満州事変を引き起こし、陸軍暴走の引き金を引いた1人の問題児。
戦車や航空機の運用を早期から思いつく点は軍人として優秀であるが、思想的にはアジア主義者。
と、曲者揃いの夢幻会でも扱いづらい人間で陸軍で夢幻会派が主流を占めた後は予備役に左遷させていた。
「その通りです閣下、思想的に問題がありますが奴は愛国者です。
表向きは右派のアジア主義者、そして反夢幻会派ですが、逆にその人脈を利用して我々に情報を流しているのです」
「つまり二重スパイみたいなものか」
まさか尾崎のようにキャラが変化してないよな、と嶋田が内心で思ってしまう。
「はい、彼のお陰で我々は随分助かっています。
そして国内の右派が接触している具体的な相手はアジア人ですが、
その身分はドイツ、または中華系の影響下にある商社の社員、新聞記者です」
「商社に新聞記者なんてスパイの典型的な身分隠しの例じゃないか」
「そこに映画撮影団体も入れば完璧だな」
阿部の報告に東条、近衛が口を開く。
108 :第三帝国:2015/10/04(日) 21:31:25
「つまりもうドイツは仕掛けてきている、というわけか」
嶋田の言葉に阿部が頷く。
武器を使用しない戦争、情報戦が始まった事実に緊張が走る。
「はい、資金面での援助に門に関する情報を国内の右派を通じて集めているようです。
同時に買収したメディアを通じて門を広く開放するように世論操作を図っております、
具体的には困窮に喘いでいるアジア人民のための新たな入植地として門を開放すべき、と言う名目で。
石原の方も国内の右派から大学の公演でそう訴えるように頼まれたとぼやいていました」
「原作で門に移民1000万人計画をぶち上げた革新派政党かよ!?」
まんま原作、というか現実の革新派の主張そのままで夢幻会の面々は頭を抱える。
「また海外でも活動が見られるそうで、
その件に付きましては中央情報局の堀局長が報告します」
「中央情報局の堀です。
朝鮮でも白人ではない妙な人間が現地の高官と接触を重ねているとの報告が上がっています。
こちらもやはり表向きは新聞記者、商社の社員、貿易会社と身分を偽っているアジア人ですが、
全てダミー会社の類であるのが判明しており、現在は現地の貴族階級に賄賂攻勢をしかけています」
「賄賂攻勢ですか、あの半島の貴族に効果覿面ですね…で、それだけでは無いのでは?」
次の展開が予想できたのか疲れたように辻が催促する。
「はい、宮廷内で反日派が勢いづいています。
ドイツ資本の受け入れ、さらに日本に対抗する兵器の輸入を企んでいる模様です。
一部では高句麗復興、満州奪還を叫んでいるグループもおり、最低でも満州国境での紛争は避けれないかと…」
「あ、あの半島はどこまで日本の疫病神になるつもりなんだ!?」
嶋田の罵倒に一斉に罵り言葉が出る。
戦前はアメリカ側に寄ろうと裏切りを試み一度締め上げたが、
性懲りも無く今度はドイツに寄ろうとする態度に激怒の感情以外なかった。
「……こうなったら、例の甲案。
本気でしなくてはならないかもしれませんね」
「この前は4、5年先の話と言っていたが、
言った矢先にこれなんてあの半島はどうして、こう」
辻の言葉に嶋田が諦め気味に愚痴る。
現在のまま半島を『間接統治に徹する』丙案。
統治しつつも配慮する『帝国が期間限定で直接統治する』乙案。
そしてこれまで『配慮をなくし帝国の本土と裏庭の安定化のみに徹する』甲案。
甲案は万が一の保険であったが、現状は甲案になる可能性が非常に高かった。
「あー嶋田、まあなんだ?
そう悲観することも無いと思うぞ。
これまでの実績から見て案外自爆するだけで済むと思うぞ」
「山本…」
親友の楽観論に悲観的になっていた嶋田の心を癒す。
「とはいえ、前にお前が言ったように油断は大敵。
悲観的に準備して楽観的に事を迎え入れる準備をしようじゃないか」
「陸軍も万が一に備えて準備します、閣下」
「ああ、そうだな。ありがとう」
山本、永田の激励に嶋田が頷いた。
「半島についてはここまでとしよう、
9月開催予定の環太平洋諸国会議、それに門の向こうでの首脳会談…。
やれやれ、どっちも俺が出張らなきゃならんから体が幾つあってももたないな」
この世界の外交を決めるであろう環太平洋会議には既に参加は決定している。
嶋田の言葉1つで今後の覇権国家となった日本の行く末が決まるので気が抜けない。
また21世紀の日本との首脳会談も日本政府とはうまくいくだろうが、
それ以外の煩い連中、既に吉田大使がその洗礼を受けた『手厚い歓迎』を思うと気が重くなる。
「いつになったら俺は辞められるのやら?」
思わずそんな呟きを漏らすが、
周囲の人間は完全にスルーしており、
当分辞めさせてもらえないのは明白であった。
提督たちの憂鬱、否嶋田の憂鬱はまだまだ続く。
最終更新:2015年10月06日 22:14