501 :ham ◆sneo5SWWRw:2015/12/29(火) 23:54:49
この作品はGATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりと憂鬱のクロスものです。
原作の平成日本とは繋がりません。
色々破茶けてます。
こんなの無いだろ、なオリ設定もあります。
笑い飛ばす程度に読んでください。
以上の事を留意してお読みください。
GATEネタ GATE 皇軍 彼の地にて、斯く戦えり 第3話 思惑 中編
1945年11月14日 特地 アルヌスの丘周辺
「ごめん、ちょっと・・・」
「うん、わかった。行ってきな」
ミューティ・ルナ・サイレスは、そう言って一緒に捕虜となった女性兵士にそう言って行かせた。
日本軍の捕虜となった彼女は、名前や所属している軍等について聞かれた以外では、一定の自由が認められていた。
食事も今までに食べていた物より断然美味しいし、一定の労働は強いられるが、奴隷のように扱き使われない。
彼女の常識からすれば、好待遇ではあった。
そして現在、彼女は日本軍の監視の元、ある労働を行っていた。
「(こんな状況じゃ、朝ご飯全て戻すのも無理ないわ)」
彼女が行っている労働。
それは、戦場の跡始末であった。
現在、彼女を含む五体満足な捕虜は、日本軍と共同で、死体を埋めるための穴掘り、瓦礫等の撤去運搬、時には死体検分協力(名前や身分、所属など素性判別)を行わされていた。
日本側が一括で処理するのも可能ではあったが、何分異世界ということもあり、異世界の慣習的にアウトな処理をしたら何を言われるか分からないという不安もあった。
また、高位身分の人間の死体が混ざっている可能性もあり、国交成立如何では、遺族及び母国への死亡通告、場合には遺体の送還を行う必要もある。
そのため、捕虜となった彼女らの協力は必要であった。
「(ま、アレなことされるよりはマシかもしれないわね)」
御花摘みにいった同僚と同じく気分を抑えつつ、彼女はそう自己完結して作業に戻った。
502 :ham ◆sneo5SWWRw:2015/12/29(火) 23:56:47
1945年11月16日 イギリス某所
「つまり、門と特地の存在は憂慮するべき問題ではあるが、かと言って現在の世界バランスを覆すに至るには難しい、と?」
「はい」
円卓会議の席にて首相であるモズリーは、情報部を始め、各機関の総力を挙げて精査した門に関する報告を聞いて、報告担当者にそう訊ねた。
イギリスとしても門の存在は無視できなかった。
辛うじて首の皮一枚で繋がっている日英関係の回復に必至である今、もし門の向こうの世界の資源を手にしてしまえば、日本は独力でドイツを叩き潰すことが可能になり、同時にそれはイギリスの価値を乏しめる結果となる。
それだけでいいが、もし日本が報復戦争を仕掛けられたら、という不安もあった。
もっとも、日本を牛耳っている
夢幻会が毛頭そのつもりがないことと、先の今上天皇陛下の発言で反英派の戯けた強硬論は鳴りを潜めざるをえなくなっているが。
また、イギリスが今まで頼りにしていた資源の供給先であるインドを将来的に手放すことが確定している以上、新たな資源供給先が必要であり、門の向こうの未開発の資源は魅力であった。
そのため、なんとしても日本との関係回復をして特地の資源開発に一枚噛みたかった。
ゆえに英関係回復は急務であり、門の情報はなんとしても必要であった。
「産出量がそれほど多くないのかね?」
「問題なのは資源の量ではなく、門そのものです。我が国で言えば門はこのグレートブリテン島の港全てと言っていい様なものです」
「つまり、近代国家にとって死活問題である資源の外部からの輸入が不可能になる危険性が有る、というわけか」
「その通りです」
モズリーに訊ねられた分析官はさらに報告を続けた。
「たしかに特地の資源は無視できませんが、かと言って依存し過ぎるのは危険過ぎます。特に輸送ルートが門に限られてしまうことが大きな問題です。いくらタンクに大量の水があっても蛇口がこれ以上開かないのですから」
「ふむ。門がもっと大きい、それこそ船舶輸送が可能なほどであれば話は別だったろうが、あの大きさでは鉄道輸送が精一杯だろうしな」
モズリーはそう言って分析官からの報告に納得する。
「どれだけ採掘しても運ぶ量が変わらなければ採算が取れませんな。逆にこちらからの物資の量も限られますから、軍の補給の問題がありますし。おまけに門が破壊されれば、完全に遮断されるわけですからな」
「辻氏と接触したエージェント(ヴィクター・ロスチャイルド)と駐日大使館の分析から、夢幻会としても特地に依存し過ぎることを危険視する気があると報告を受けています」
BUFの重鎮にして国防大臣のフラーも、分析官からの報告を聞き、軍人としての観点からも門による補給の問題点も指摘する。
さらにメンジーズの後任のMI6新長官がそう報告する。
「未開の資源という魅力があるにも拘らず、これだけの問題があるとは・・・。おまけに向こうの住民は敵対的どころか向こうからいきなり戦争を仕掛けてくるとは厄介な」
「日本の新聞などの情報ですが、向こうの連中は我々を蛮族と罵る発言をしていたとか?」
「自分の身の丈も知らずに戦争を吹っかけてくるなんて全くクレイジーな奴らだ。特地の資源も考えると、なんだか某国を連想してしまうな」
「ああ・・・あの国ですか。あの国の住民もたしかにクレイジーでしたな」
そう言って、彼らは日本人が扱いに苦労する地下資源が豊富な2つの某国を思い浮かべた。
駐日大使館にいる英国一の日本通、サンソム卿から詳細に伝えられた2つの某国の人間の狂いっぷりに円卓メンバー全員は本当に呆れたものであった。
「ということは、これは神が恵まれている日本に与えた、新たな試練なのかな?」
「我々としては越えてほしくない試練だがな。話を戻すぞ」
503 :ham ◆sneo5SWWRw:2015/12/29(火) 23:57:44
そう言ってモズリーは話を戻させた。
仕事には時に休息も大事ではあるが、彼らにとってはそれをしているほど暇も無かった。
「ドイツの状況は?」
「環太平洋会議に向けて活発にSSなどを送り込んでいましたが、今は特地の最新の情報を届ける為などと理由を付けて、現地のジャーナリズムの特派員を増やしています。おおかた、副業に命を懸けている特派員もいるでしょうな。フィルムの代わりに鉛玉の入ったカメラの持ち込みにはさすがに苦労しているようですが」
「鉛玉で写真が撮れるのは初耳だが、やれやれ物騒なことだ・・・ソ連の状況は?」
モズリーの質問を受けて報告担当官の対ソ連専門部局であるセクションIXの部長、ハロルド・エイドリアン・ラッセル・キム・フィルビーが報告する。
「ソ連としても資源貿易の関係から危惧しているようですが、スパイの数を数人増やす程度で大きな行動は起こしていません」
「どうやら、ソ連のトップは伍長閣下よりは冷静なようだな」
そう言って、ソ連が迂闊な行動をしないことにモズリーは安堵した。
読者諸兄で詳しい人間は知っているだろうが、実はキム・フィルビーはソ連の大物スパイである。
彼は二重スパイとしてMI6内の対ソ情報を掌握し、同時に史実と同じくこの年の8月にソ連の対英諜報網を手土産にイギリスに亡命しようとしたNKVD駐トルコ副代表のコンスタンティン・ヴォルコフを間接的に始末したりするなど、史実と変わらぬソ連への忠誠心をもって行動していた。
当然、先程の報告も嘘八百で、実際はNKVDからそれなりのスパイが日本に侵入していた。
ドイツと同じくドイツ国内で迫害されるポーランド人やユダヤ人、さらにロシア人、旧アメリカ人などの多くの被迫害人種の中からスパイを仕立て上げて日本に亡命させたり、
赤軍内部で発生した性犯罪に関する粛清で冤罪を掛けられた人間やその以外の犯罪者を身の安全を条件にスパイの教育し直し日本に亡命させたり、と色々な手段で巧妙に日本国内にスパイを送り込んでいた。
ただし、さすがに日ソ関係に影響を受けたくないのか、情報収集に止める程度であったが。
「さて、先程の報告でもあったが、特地の資源や利権にはさまざまな問題がある。しかし、かといってこのまま放っておくわけにもいかん。日本に恩を売って関係改善を図るためにも、な。義勇軍や観戦武官の派遣打診についてはどうかね?」
モズリーはそう言って前首相で現在も外務大臣に残留しているイーデンに問いかける。
「正直言って進展はない。やはり先の裏切りに対する恨みはかなり根深い」
「まぁ、それは仕方ない。予想通りといったところだが・・・ワイルドギース(傭兵)はどうだ?」
中世の英国では王侯貴族が私兵を蓄えていた。
彼ら雇われ兵は契約料をカットするために追い出されることもあり、必然として王侯貴族らの渡り鳥のように渡り歩き、彼らの求めに応じていた。
ゆえに彼らは"渡り鳥のガン(ワイルドギース)"と呼ばれ、転じて傭兵の事をワイルドギースと呼ぶようになった。
モズリーは組織としての義勇軍は無理でも、ならば、個人による義勇兵を、と一縷の望みを期待していた。
近年の戦争のように"他国に表立って介入できない国が正規軍の一部を「義勇兵」と称して派遣する"のではなく、あくまで、イギリス人が個人的に参加するもので、少しでも日英関係を改善したいモズリーの苦肉の策であった。
また、戦争終結と捕虜解放、植民地撤退で大勢の兵士がイギリス本土に復員し、イギリスの財政の負担となっていた。
ドイツとの関係から予断は許されないとはいえ、かといってそのままの規模で維持できるほど財政は良くなかった。
幸いにして、日本には半官半民の傭兵組織海援隊があり、そちらにも採用してもらうことで実戦経験を積ませる目論見もあった。
加えて、イギリス勢力圏には精強な兵士で知られるグルカ兵がおり、同じアジア人の彼らならば参加できるのでは、という打診もあった。
しかし、イーデンとフラーからの返答は希望に沿ったものではなかった。
「そちらも駄目です。日本からは丁重に断られています」
「海援隊のほうは、なんとか採用された者もいますが、当分は
アジア方面の治安維持要員として使われるようです」
「そうか・・・日本軍に関する情報はどうなっているかね?」
そう言ってモズリーはMI6の長官に訊ねる。
504 :ham ◆sneo5SWWRw:2015/12/29(火) 23:58:19
「銀座での戦闘は、観閲式の見学に出ていた武官やスパイによって情報が集められ、本国にも届けられ次第、早急に行っております。特に市街地戦ということもありましたから、想定されている本土決戦での市街地戦闘の備えに大きく生かせるでしょう。」
「報告を見た限り、このヘリコプターによる空中機動は目を引きますな。市街地戦時のコマンド活動にかなり有効でしょう。復興中の市街地に、研究中のジャイロダインが着陸出来る様に屋上を設計するように指示をするべきですね」
「ハロッズは入口を拡張したが、今度は屋上に入口を設けるだろうな」
その一言に一同から笑いが零れる。
ロンドンの老舗デパート、ハロッズは空襲で入口を破壊されたが、翌日の広告や立札などで『当店は本日より入口を拡張しましたので待たずに入れます』という機転の利いたジョークを飛ばした。
先の発言はそのジョークを利用したものであった。
「話を戻すぞ。
とりあえず解ったのは、
1.門の向こうの特地の資源や利権は魅力だが、こちら側の世界に利益を還元するのは厳しい点が多々ある。
2.日本はそれを承知であくまで首都を守るための安全保障から派兵している。
3.ドイツはそれを知らずに伍長閣下が御執心。
4.日本の我々への疑念は未だ深い。
さて、この状況で我々が採るべき選択だが・・・」
モズリーはそう言って円卓メンバーを見回す。
まず、国防大臣のフラーが発言する。
「軍は正直、日本無しでは無理です。これまでも、そして、これからも・・・。引き続き観戦武官や義勇軍、個人の判断による義勇兵を打診するべきでしょう」
「それは分かっていることだ。しかし、もっと確実に日本に恩を売らねばならん!」
そう言って、モズリーはMI6長官に顔を向ける。
「長官、イランではドイツ軍から貴重な情報を手に入れてくれたことを感謝する」
モズリーの突然の感謝の言葉に長官は戸惑いそうになるが、なんとか冷静を保って対応する。
「いえ、これくらい出来なければ給料泥棒ですので・・・」
「では、もう一度やってくれるな?」
「――っ!?」
その言葉を聞いた長官はその意図を理解した。
「つまり、ドイツの行動をつぶさに調査しろ、と?」
「いや、それだけでは足りない。時にはより攻撃的になる必要もなる」
「可能ならば妨害活動を行え、と?」
「出来るのだろう? MI6は予算も潤沢だし、我がイギリスの諜報能力は指折りのはずだ。それともドイツ人にすら負ける程落ちぶれたのかね?」
そう言ってモズリーは挑発的に問いかけた。
長官はその言葉に反論できなかった。
現状、ヨーロッパや旧
アメリカのどの国においても諜報機関は各方面から非難を浴びせられ続けていた。
日本の実力を見いだせなかったこと、第2次満州事変の真相を掴めなかったこと、そして先のイラン演習と、米英独を中心に非難轟々であった。
特に英国では、大西洋大津波を端とする恐慌により生活に困窮する労働者たちによる革命を恐れた資本家や貴族階級により、スケープゴーストとして情報部叩きを肯定し、巧みに煽っていた。
円卓会議、そしてモズリーは、この情報機関叩きから彼らを守ってはいたが、感情面における情報機関に対する不信感は根強かった。
ゆえに、MI6としても成果は必要であった。
諜報機関の活躍を改めて誇示し、さらに日本に恩を売る上でも、ドイツの諜報活動の妨害はまさに打ってつけではあった。
「まぁ、さすがに日本国内で我が国の諜報機関が妨害活動をするのは問題だからな。ドイツの情報を流しつつ、極秘裏に協力を呼びかけるようにする。最もお得意のトランジスタ製電子計算機でドイツの事はご存じだろうがな。だが、暗号解読だけが全てではないはずだ。それにだ、その過程でドイツが手に入れた特地の情報をうっかり知ってしまうこともあるだろう」
ついでに特地の情報も手に入れろというモズリーも無茶振りにMI6長官は抗議したくなるもそれは出来なかった。
彼に拒否権なんてもともとないのだから。
「・・・了解しました」
こうして、イギリスは日本に協力を呼びかけつつ、自らの思惑のためにドイツとの暗闘を選択した。
最終更新:2025年03月04日 22:17