- 59. earth 2011/06/28(火) 23:05:12
- 電波を受信して作ったネタのネタです。本編がこうなるとは限りません。
アメリカの崩壊という史上稀に見る大イベントが発生し、その後も混乱が続いた20世紀も終わり、世界は次の世紀を
迎えた。20世紀中盤から飛躍的な発展を遂げる日本の勢いは留まることなく、21世紀では先進国筆頭どころか、事実上の
世界帝国となっていた。
世界最強と謳われる陸海空軍に加え、新設された宇宙軍は圧倒的な威圧を世界各国に加えていた。20世紀後半に勃発した
事実上の第三次世界大戦でドイツを中心とした欧州枢軸国を文字通り一方的に潰滅させた宇宙艦隊を擁する日本に逆らう国家
は存在しなかった。
『史上最小にして、史上最強(凶)の世界帝国』、それが21世紀の日本帝国の異名だった。そしてそれを実現させた偉人達
は伝説的存在であった。そう、彼らが在命中にも関わらず。
「……やれやれ、やっと仕事が終った」
ハワイに置かれた環太平洋条約機構軍総司令部(日本を中心とした軍事機構)で一人の若い男が豪華な作りの椅子に座った
まま体を伸ばす。
「くそ。どいつもこいつも、面倒ごとばかり押し付けやがって」
ぶつぶつ怨嗟の声をあげる男。20代後半と思わしき容姿であったが、その制服の階級章はその男が元帥であることを
示していた。
その男の傍の机で仕事をしていた女性秘書は苦笑しつつ、宥めるように言う。
「仕方ありませんよ。閣下は伝説の軍人。皆さんが頼るのは無理もありません」
「ふん。どいつもこいつも面倒だから、押し付けているに過ぎんよ。昔からそうだった。どいつもこいつも」
そう恨めしげに言うのは海軍元帥・嶋田繁太郎本人だった。尤も軽く100歳は超えているはずのなのに若々しい姿で
いられるのは、昔から彼に面倒ごとを投げてきていた連中のおかげだったが。
辻によって開始された憑依現象の謎を探る実験で、日本帝国は21世紀以降の未来人を呼び寄せることに成功した。
彼らが齎した技術や情報はさらに日本の発展を後押しした。そして日本は1970年代には医療用ナノマシンの実用化に
成功した。それは病気に対する耐性だけでなく、日本人に不老長寿をもたらすものだった。
だが最終的に日本が得たのは不老長寿だけではない。クローン技術、そして魂の解明によって死んだとしてもすぐに次の
体に魂を移す技術も日本は得た。
前者は兎に角、後者の技術は一部の裕福な人間しか出来ないものだったが、それでも事実上、日本人は人類永遠の夢である
不老不死を手にしたのだ。
嶋田としては下手に不老不死なんて手に入れても扱き使われるだけと思っていたので、大人しく寿命で死のうと思っていた
のだが、公人としての功績がそれを許さなかった。
かくして彼は強制的に永遠に日本のために働くことを余儀なくされたのだ。彼はその立場と経歴から一度暗殺されたことが
あったが、その技術によって強制的に復活させられた。
- 60. earth 2011/06/28(火) 23:05:51
- 事実上の不老不死、そして人も羨む権力と引き換えに永遠に働かなければならないという事実は嶋田を憂鬱にさせる。
だが持ち前の性格なのか、不満を抱きつつも仕事は的確にこなした。このためにますます声望を得てしまい、働き続け
なければならないという悪循環に陥っていた。
故に愚痴の一つや二つ、いやそれ以上出てくるのは当然の流れであった。そして彼をさらに愚痴らせることがあった。
「……あと、ああいったゲームや本は何とかならないのか?」
嶋田の言葉に秘書は無理でしょうと首を横に振る。
「さすがに言論を統率するような真似は無理かと」
「しかし本人が在命中にするか、あんなこと……」
嶋田を憂鬱にさせているのは、日本で販売されるゲームや本に自分達が使われていることだった。
勿論、それが真っ当な使い方なら彼も文句は言わない。しかしながら昨今では、有名人のTS物が流行っており
色々なところでネタとして使われていた。
最初は笑って許可したものの、さすがに現状には頭を痛めた。かといって下手に制限をかけると夢幻会の一部の
連中からブーイングが来る事は確実。仕事上、仲間と不和を抱えたくない嶋田としては何も言えない。
「……全くストパンを作った連中と言い、エロゲ会社と言い、何でああも情熱を燃やせるのやら」
この世界でもストライクウ○ッチーズは作られていた。史実の設定とは異なる部分が多々あったものの、あの格好で
少女達が空を飛ぶというのは変化が無い。
「まぁあのような文化が隆盛するということは平和な証拠ですよ」
「……それと引き換えに私の安息は犠牲になっているがね」
総司令部の窓から見えるホノルルの街を見て、嶋田はため息を漏らした。
「21世紀の帝国か。全くどこに向かうのやら……まぁ想像の斜め上をアクロバット飛行していくのは確実だろうが」
帝国海軍元帥であり、環太平洋条約機構軍最高責任者となった男の心配事は尽きなかった。
- 79. earth 2011/06/29(水) 21:34:54
- 嶋田さん、不老不死化のネタの続きです。
某エロゲとリンクする一発ネタです。続きません。
21世紀後半から日本帝国は他の列強を地球に置いてきぼりにして宇宙進出を推し進めた。殖民可能な惑星を見つけて
は領有を宣言して次々に自国領土に加えていった。
勿論、これだけ広い領域を中央集権国家が管理することは事実上不可能であった。このため日本帝国は植民地惑星を
独立させた上で『日本連邦』を結成することになった。
時に西暦2215年。日本帝国の事実上の首都となった月面都市『第二新東京市』で連邦の創設が高々に宣言される。
「……何故に日本連邦? これだけ領土が広かったら銀河連邦のほうがよくないか?」
「銀河連邦とか自由惑星同盟とか言う案もあったんですが……何か滅亡しそうじゃないですか。名前的に。
それに、どうせなら構成国の人間に親しみを持たせられるほうが良いでしょう」
式典での嶋田の疑問に答えたのは、辻政信だった。嶋田が不老不死を強要されたように辻もまた死ぬことを許されなかった。
まぁ一部の人間は「さっさと死ねばいいのに」と嘯いたのだが、それは適わぬ望みだった。
さらに言えば流血沙汰を回避して日本連邦が結成できたのは辻の暗躍があったからであった。
「裏でそうとう無理をしたらしいな。全く。そんなことをするから魔王とか揶揄されるんだ」
「心外ですよ。私は平和裏にことを終らせようとしただけです」
「……まぁ何はともあれ、戦争なんてしたら目も当てられないからな」
科学技術の果てしない進歩は、兵器の進化もさらに加速させていた。おかげで下手に戦争などすれば得よりも損が多く
なる。戦うより共存したほうがよかった。
「日本人も合計で50億となりました。正直、中央政府で統制するのは無理ですよ」
「複数の国家で共同体のほうが無理が無いか」
「ええ。幸い、夢幻会のメンバーを有力国家に食い込ませてあります。多少は統制が効くでしょう」
「……銀河を股にかける悪の秘密結社だな」
「政治の本質は悪ですよ」
「やれやれ。どちらにせよ、こちらの苦労は続くのか……引退したいなんて言わないから、少しは楽をさせてくれ」
「諦めてください」
「全く、さっさと死んでいった連中が羨ましいよ」
こうして第二新東京市を首都とした日本連邦は拡大を続けた。だがそんな中、並行世界へ進出する方法が発見される。
尤も並行世界に進出するよりは、目の前に広がる無限の宇宙を開発するほうがよいと意見が大半を占めていたので、他世界
への進出は消極的だった。
しかしその決定は並行世界の日本帝国を発見したことによりひっくり返ることになる。
- 80. earth 2011/06/29(水) 21:35:36
- 並行世界の日本帝国を見つけたとの報告を聞いた瞬間、誰もが、あの嶋田や辻、東条などの夢幻会古株のメンバーでさえ
目をむいた。だが彼らを驚かせたのはそれだけではなかった。その世界には日本帝国のほかにアメリカのパチモンくさい国家
のガメリカ共和国、ドイツのパチモンくさい国家のドクツ第三帝国などの国々が存在していることが判ったのだ。
「……何故に日本帝国が、こちらと同じ名前なんだ? いやソビエトも同じか」
「さぁ?」
嶋田と辻は首を捻るが、答えは出ない。並行世界とはそんなもの。そうとしか言いようが無い。
「それにしても、こちらの日本はかなりピンチだな」
向こうの世界の日本帝国はガメリカ、エイリス、ソビエト、中帝国、ドクツなど主だった国全てが敵という状況だった。
「……助けますか?」
「次元間大戦になるぞ。並行世界の日本人の死滅を防ぐために、こちらの日本人が死んでいい理由はないだろう」
「ですよね……」
辻は下手に手を出したら大火傷しそうな気配を感じてか消極的だった。
だが世論はそれで納得しなかった。国名が違うとはいえ、仇敵であるアメリカ、ドイツにそっくりの国々に並行世界の
同胞が負けるなど認められないと騒ぎ立てたのだ。さらにこちらの偵察艦が撃破され、死傷者が出たという惨劇が起きた
ことが出兵を決定付けた。
そして嶋田は生ける伝説の軍人として、派遣軍総司令官に任命されてしまう。
「……また俺の仕事かよ」
嶋田は頭を抱えつつも、準備に取り掛かる。だがこの時、彼は何か別の予感を感じていた。そう、まるで嘗て昔に
会ったことがある人間と再会する。そんな予感を。
そしてそれは正しかった。
「日本連邦、いや夢幻会か。まさか連中に再び会うとはな」
ドクツ第三帝国総統レーティア・アドルフは新たな参戦者の情報を知り、ニヤリと黒い笑みを浮かべる。
実は中の人は嶋田たちの世界で死んだはずのアドルフ・ヒトラーその人だった。そう、彼は死亡後、この少女に
転生したのだ。
「今度は奴らに煮え湯を飲ませる番だ」
そんな物騒な台詞を吐いたのは彼女だけではなかった。ガメリカ、ソビエト様々な場所で日本連邦、いやその
背後に居る夢幻会に敵意と戦意を燃やした。尤もエイリスだけは及び腰だったが……。
かくして宇宙大戦は次元間大戦となり、戦争は新たな段階を迎える。
最終更新:2012年01月02日 18:08