80 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22:05:20
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第十八話 ―乙女の休日―



坂本美緒は疲れ切っていた。
【アホウドリ】迎撃作戦の時に、魔眼による弱点看破を行ったのであるが、その精度はどの魔眼所有者よりも高く、各戦線に引っ張られる事となってしまう。
結果、ネウロイに関するデータ収集に貢献はしたのだが・・・慣れない書類製作と魔眼の使用頻度向上により、完全にダウンしていた。

「ぅぁ・・・」

声を出すがまったく張りがない。
しかしもう書類は見なくていいという安心感があった。
そして現在ベッドに横になって休んでいる。
“魔眼殺し”の片眼鏡をとって、完全封印する眼帯を付けていることからも、かなり疲れているのがわかるだろう。

そこに、一人の人物が訪ねてくる。
狸釜隊の学兵、早良ミチルは両手に新聞紙にくるまれた何かを持ってきていた。
部屋に入るとぐったりとした美緒を見つけ、近くの椅子を引っ張って座った。

「おい、だいじょうぶか?」

声音はいつもと同じ不機嫌そうな感じだが、少しだけ心配なのか、相手を気遣うような感じが見受けられる。
もっとも、疲れている美緒にはわからなかったが。

「大丈夫じゃ・・・ないです・・・」
「魔眼使用と言うのはそんなにきついのか?」
「かなり・・・脳に、負担がかかります・・・」
「私は能力なしだからわからないが、二日酔いのようなモノか?」
「多分、その通りで・・・・・・へ?」

今、聞き捨てならない事を聞いたようなことを聞いたような気がする。
少し動かすのも億劫なのか、ゆっくりと首を動かして不機嫌な先輩を見た。

「お酒・・・飲んだことがあるんですか?」
「まあ、な・・・」

ミチルは「しまった!」と思ったのか、眉間に皺が寄っていた。
そこで美緒は思った。
自分は・・・自分達はこの人の事を良く知らない。と・・・

「先輩は・・・いつお酒を?」

そう思ったら急に知りたくなった。
今思えば、狐狸部隊にいる学兵は三人。
数としては中途半端であり、副隊長陣を隊長にして古参の兵を副隊長に、その下を学兵にすれば部隊は四隊となるはずだと思う。
でも、何か事情があっているというならば、それは聞かない方がいい。

「前の部隊で、隊長の悪ふざけで飲まされた・・・」

他の戦線に行って、様々な出会いをした。
第一陣・第二陣の学兵は覇気があるモノもいれば、皆疲れたような人達もいた。
部隊が壊滅して、穴埋めで移動する学兵もいたのを知った。
もしかしたら先輩もそうなのかもしれない。
そうおもうと・・・直接は聞けなかった。

「そうなんですか・・・おいしかったですか?」
「興味あるのか?」
「・・・少しだけ。」

81 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22:05:54

北郷章香と旗本サエが、隠れて日本酒をこっそり飲んでいるのを見ていた徹子が、こっそり一杯だけ拝借してきて飲んで吐いたのを見たことがある。
そんなに不味いのかと聞くと、度数が強い奴だったらしい。
後にばれて説教された。

「意外と飲みやすかった。皆で騒いで・・・楽しかったな。」

笑って言う先輩に少しだけ驚く。こんな顔も出来たんだと。
しかしミチルの顔は笑顔なのだが、どこか影があるのが見えた。
だから話題を変えることにする。

「先輩・・・何か、用事があったんじゃ?」
「あ、ああそうだな。ほら・・・」

そう言って渡されたのは新聞の塊らしきもの。
少し焦げていて暖かい。

「これは・・・御芋?」

ガサゴソと新聞紙を剥がすと、出てきたのは綺麗な赤紫色の物体。

「ああ、近くの農家から差し入れがあってな。
 今、外じゃ焼き芋大会している。」
「大会?」
「一度欧州義勇飛行隊と飛んだだろ?
 あいさつに来たメンバーと一緒に焼いている。」

それでいいのだろうか?
耳を澄ませると、何やら楽しそうな声が響いているから気にしない事にする。
しかしこうしてのんびりできるのも、【アホウドリ】を撃墜したからだ。
撤退作戦の為の一時攻勢はうまくいったと中央は判断している。
事実、【アホウドリ】は出てきた端から撃墜され、大多数の敵を破壊した。

新型戦車(駆逐戦車なのだが、美緒は知らない)をも投入し、制空権を握って大量投入された爆撃機群の爆弾の雨で粉砕、敵を奥地に押し戻す。
敵が戦力を整える前に一気に後退し、民間人を優先しながら順次戦線の後退をして行っている。
自分達も、いつかはここから去らねばならないのが寂しく感じる。
農家もここを去るくらいならば、物資を兵士達の為にと思って提供していくのが多い。
こちらとしては有り難い事だ。

芋を半分に割ると、中から黄金色の身が出てくる。
湯気を沢山出していて、光に反射したその身はとても旨そうだ。
ゴクリと唾を飲み込んで一口齧る。
最初は熱さがやってきて、その次に芋の風味と甘さが広がっていく。
程よい甘さの暖かさが口いっぱいに広がって、鼻から良い香りが通り抜けていく。

「ムグ、ムグ・・・おいしい。」
「そうか。」

美味しそうに食べているのを見て、ミチルも新聞紙を剥がして自分の芋を食べ始める。
しかし・・・甘い物なんて羊羹以外だと久しぶりだ。
羊羹は比較的前線に・・・飛行士達に配られている。
なので、馴染み深いが・・・やっぱり自分は子供で、女の子なのだ。
そればっかりだと飽きてしまう。量も少ないし。

夢中になって齧り付いていると、別の用事を思い出したミチルは、懐から紙の束を取り出した。
一瞬〔ビクッ!〕と反応するが、よくよく見るとそれは手紙の束だった。
ホッとすると、手紙を彼女に手渡して立ち上がった。
もう食べ終わったらしい。

「用事はこれで終わりだ。手紙は他の三人が戻ってきたら読むと言い。」
「あっ、はい!
 ありがとうございました!」
「・・・礼は農家の人に言え。」

そう言うと、そのまま出て行った。
しばらくモソモソと食べていると、徹子たちが戻ってきた。

82 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22:06:33

「はぁ~食った、食った!」
「はしたないですわよ! まったく・・・」
「お嬢もたくさん食べていたじゃないスッか。」
「さ、里子さん!」
「でも、久しぶりに食べたからおいしかった~」
「そうですね。また食べたいですね。」
「一部は干しイモにするみたいで、さっき茹でていたけどね。」
「そうなんですか。それはそれで・・・」

ワイワイ話しながら戻ってきた一行に、軽く手を上げておく。

「お帰り。」
「おう! 焼き芋、旨かったぜ!」
「美緒ちゃんのもあるよ。」

そう言って醇子が未開封の新聞紙を渡してくれた。

「え? でもさっき、先輩が持ってきてくれたけど・・・」
「それホントか?」

ミチルが苦手な徹子は怪しむように、自分達が入ってきたドアを見る。

「本当だ。ほら、新聞紙。」
「早良先輩・・・一人でいなくなられて、どこに行かれたのだろうと思っていましたけれど・・・」
「結構良い所あるんすね。」

意外な彼女の一面を知って、一同印象を少しだけ良くしたようだ。
そして手紙まで渡してくれたことに驚く。

「なんか・・・イメージ変わるなぁ・・・」
「良く考えたら私達、先輩の事何も知らないよね。」
「でも醇子さん。江藤大隊長が口を濁していましたし・・・聞かない方がいいのでは?」
「わたくしも小毬さんに賛成ですわ。こんな御時世ですもの、聞かれたくない事くらいありますわ。」
「むぅ・・・そうだな。そうするか。」

納得していない様子の徹子だが、とりあえず聞かない事に決めたようだ。
そして手紙を皆で読み始めた。
最初は家族の手紙、怪我をしていないか、辛くは無いか、一時的にでも帰れそうか・・・等々書かれていた。
皆心配させているという自覚はあり、ちょっと困った顔になってしまう。
それでも家族の近況も書いてあるので、返事を書く時はこちらの近況を書こうと思った。

そして次に見たのは学友たちの励まし。
これもありきたりな事ばかりだが、それでも嬉しい。
中には押し花まであったりして、美緒達に癒しを与える。
そして・・・戦死した仲間の話もあった。
葬式話が書かれており、一気に暗くなる。

楽しい時間もあれば、辛い時間もある。
戦場に身を置いている以上、“誰かが死ぬ”と言う現実は常に付きまとう。
それを再び自覚して、美緒は空を見上げた。
空は青く、どこまでも澄んでいて、星すら見えそうだった。



以上平和編でした。
まだまだ平和な時間は続くんですけどね。
取りあえずミチルとの絡みが書けたので良しとする。
今度は他の子と絡ませたい。
もし「こんなのはどうだろうか?」と言うモノがありましたら。なるべく採用させていただきます。
そして【ライトニング・フォックス】の残り№3~6・8~12までの子で、「この子いいんじゃない?」と言うキャラがいましたら教えてください。
宜しくお願いします。

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最終更新:2016年02月14日 13:12