34. 攻龍 2009/03/26(木) 02:22:22
「護衛艦」この新艦種について

日露戦争の際、日本は近代海軍による初の攻撃を受けた。その名を『通商破壊戦』という。
日本海軍にはこの種の攻撃の発想さえなかった。当然、対策も後手後手に回った。
その結果、「常陸丸事件」が発生、あまつさえ東京湾の沖をウラジオ艦隊が遊弋する始末となった。
最終的には蔚山沖海戦でウラジオ艦隊を補足、撃破することで制海権を確保しなおして、輸送船は航行の自由を得たのだが、ここに歴史の分岐点が潜んでいた。
すなわち、「制海権の確保」=「敵艦隊の撃破」=「輸送船の航行の自由」のどれをとるかである。

史実の日本は、「制海権の確保」=「敵艦隊の撃破」のみを選択した。「輸送船の航行の自由」には見向きもしなかったのである。その週末は…あえて言うまい。
「憂鬱世界」の日本は、これらすべてに目を向けたのである。無論これは茨の道であったが、「史実よりはマシ」を合言葉にまい進した漢たちがいた。
これは彼らの奮闘の一部である。

WW1において日本海軍は太平洋、地中海のみならず、大西洋沿岸にも駆逐艦隊を派遣し、船団護衛任務に当たった。
ここで彼らは「駆逐艦」の「フネ」としての能力を試される羽目になった。
大西洋の戦いは、彼らの予想を上回っていたのだ。戦闘力ではなく、フネとしての能力で。

太平洋は外洋に出れば波浪にさらされる。だが、西太平洋は島伝いに行動が取ることができた。
だが大西洋は中継点のない海である。会合点で味方船団を待ちうけ敵艦を探して、しかもその船団は日本の船よりも高速であった。
われわれの小艦隊は大波に木の葉のように揉まれ、一度出撃すると港に寄港したときは乗組員は疲れ果てていた。あの大波の中で砲にしがみつき、敵の巡洋艦を探し出す。
幸いなことにわれわれは敵艦とは遭遇しなかったが。

途中からは敵艦に潜水艦なるものが加わった。日本にもあったが、われわれの知っているそれは正直な話、使い物になるとは思えなかった。
だがここに待ち構えていた潜水艦はそれこそ次元が違っていた。そう、何もかもが違っていたのである。
最初われわれには彼らを探し出す術がほとんどなかった。まして、攻撃するなど…であった。
それでもわれわれは戦った。揺れる海面の中からちっぽけな潜望鏡を探し出し、潜水艦らしき物体に砲撃をして体当たりをする。戦果はわからない。一日中海を眺めていた。
派遣艦隊の参謀たちは本国と何か連絡を取り合っていた。われわれは何と戦っているのだろう。これが戦いなのか。これも戦いなのか。

やがて2次派遣艦隊がやってきた。彼らのフネを見たわれわれはしばし首をかしげた。それはそうだろう、どこか見覚えのあるライン、だが兵装配置が換わっていた。
なにより主船体がちがう。われわれの乗っているのは出港時は最新の駆逐艦「樺」級であり、その船体は短船首楼だ。だがあの船体は長船首楼ではないか。
ある日、用事があってそのフネに乗艦することがあった。まじかで見ると、ずいぶんと違っていた。船員の居住区は広く、風通しがいい。砲も波除がついていた。
なにより装備位置が高く、波の影響が受けにくくなっている。さらに魚雷の数が違う。驚くことに少ないのだ。代わりに後部甲板に見たことのないものがくっついていた。
いや、私はこれを1度見たことがある。そうだ、最新のイギリス艦で見たのだ。あれは…対潜兵装だと聞いた。だが数が違う。
それだけではなさそうだ。士官たちと話をしていくうちに私の中に久々にある感情が走った。たぶんこれは嫉妬だ。そして歓喜の声だ。そう「これでわれわれは戦える」
1次派遣艦隊のわれわれは交代のために日本に帰国する。途中で地中海の連中と合流するだろう。彼らはどんな地獄を見たのだろうか。

1次派遣艦隊の士官たちと話をすることができた。彼らはしきりにこのフネのことを聞いてきた。私たちが説明をしていくと、彼らの顔つきが変わってきた。
食いつくように説明を求めてきたのだ。そして彼らは叫んだ、「これでわれわれは戦える」と。
やがて彼らは帰国していった。だが、彼らの話はある意味で事前の予測を大きく超えていた。彼らは言った。「われわれは何と戦っているのだろう。これが戦いなのか。これも戦いなのか」と。
35. 攻龍 2009/03/26(木) 02:23:39
やがて私達は出撃した。アメリカからの輸送船団を会合点まで迎えに行き、港まで護衛するのが私達の任務だ。これは彼らと変わっていない。
外洋に出た私達を出迎えたのは大波だった。太平洋の大波はすごかったがこれはもっとすごい。会合点まではまだある。かなり揺れるが休憩を取ろう。彼らの話ではこの先ずっとこの調子だそうだ。
無事に合流した私達は残り半分の距離にやってきた。もう少し走れば波が少し収まるそうだ。しかしよく揺れるが、体力にはまだ余裕がある。
先ほど僚艦から潜望鏡らしきものを発見との連絡が入った。水測室からはまだ何も連絡がない。戦闘配置に皆ついている。波はまだ高い。やがて敵潜らしき反応有と水測室から反応がきた。
さあ、これから狩の時間が始まるぞ。

3次派遣艦隊がやってきた。私達も結構長くここにいたのだなと思う。だがこれで帰れる。
彼らと引継ぎが始まった。なんと、1次艦隊の彼がいた。久しぶり等と話が弾む。気がつくと彼らの顔は笑っていた。前に分かれたときとは別人のようだ。


われわれは彼らの戦果を聞いて驚いたが、しかし納得もした。この装備ならば不思議ではない。そして前回の地獄を知っているわれわれはそれをさらに上回れるだろう。
地中海の連中もわれわれと同じ思いをしたそうだ。そして帰国後新しいフネがわれわれに渡された。そしてわれわれは歓喜した。悔しかった。うらやましかった。帰国中のあの色々な思いが脳裏をよぎった。だがそれも昨日までの話しだ。この新型艦はおそらく現時点で望むかなりの能力を満たしている。

第2次派遣艦隊  2等駆逐艦「楢」級    ()は日本近海での兵装
基準排水量  850t      全長  87.0m    全幅  8.2m
主缶  重油専燃缶×3基    出力  17500馬力    速力  30Nt    燃料  320t    航続力  14Nt/3500浬
兵装  12.7cm単装砲×3基    6.5mm機銃×2    45cm魚雷3連装×1(2)    爆雷×45(25)    聴音器×1
補足  船体を長船首楼とし、居住性の向上、艦内移動の利便性向上、各砲は盾とキャンバス地による砲室を波除用に持つ  艦橋および1番砲の後退による荒天時の戦闘能力向上をはかる。これらにより1ランク上の戦闘力を入手した。
      史上初の水中聴音器を用いた対潜戦闘を可能とする。また、簡易治療室を採用し、長期航海に備えた。
36. 攻龍 2009/03/26(木) 02:24:28
WW1での欧州派遣艦隊の戦訓をうけ、これを設計段階から本格的に取り入れた駆逐艦の設計が始まった。
ところが、要求を取り入れていくと、当然ながらフネは大型化する。ある程度は妥協していったとしても、排水量はどんどんと増えていったのだ。
「軍艦である前によき船であるべきだ。居住性と凌波性の更なる向上を」「駆逐艦といえど砲戦距離は伸びていった。長距離射撃を」「雷撃能力が不足している。もっと強力な魚雷を」「…、…」等など、喧々諤々な議論が交わされた。

その結果、2種類の駆逐艦が生まれた。すなわち現時点で最良を求めた1等駆逐艦と妥協した能力ながら量産で総合能力を満たす2等駆逐艦である。

1等駆逐艦  「峯風」型  24隻
基準排水量  1600t      全長  103.0m    全幅  9.5m
主缶  重油専燃缶×4基    出力  40000馬力    速力  36Nt    燃料  500t    航続力  14Nt/4800浬
兵装  12.7cm単装砲×4基    6.5mm連装機銃×4    53.3cm魚雷4連装×1(2)    爆雷×55(30)    聴音器×1
補足  長船首楼型船体を採用。艦の後部に魚雷を集中させ、他の目的に使用する際は発射管を降ろすことで汎用性を確保する。
      最後の8隻は魚雷を大型化した。

2等駆逐艦  「樅」型  24隻
基準排水量  850t      全長  87.0m    全幅  8.2m
主缶  重油専燃缶×3基    出力  21500馬力    速力  34.5Nt    燃料  350t    航続力  14Nt/3700浬
兵装  12.7cm単装砲×3基    6.5mm機銃×4    53.3cm魚雷4連装×1    爆雷×30    聴音器×1
補足  長船首楼型船体を採用。「楢」の能力をより高めた。  艦の後部に魚雷を置き、他の目的に使用する際は発射管を降ろすことで汎用性を確保する。
      

WW2が発生し、再び派遣艦隊が検討されることとなった。今回も戦いの主力は対潜活動が主力であると思われたが、今大戦は空も脅威になるのは確実だ。そのため派遣艦には対空能力も求められることになった。
派遣艦はそれなりの戦闘力を持ち、かつ主戦力ではいけない。この条件を満たすのは「樅」「峯風」型であろう。
時間はまだあるらしい。ただ上層部からの条件が面白い。「早く、旨い、安い」だそうだ。なるほど…これは試されているのか。ならばわれわれも乗ってみようではないか。
「対空砲は必須」「中距離を受け持つ機関砲もいる、雷撃機対策だ」「近接もいるぞ」「対潜能力を怠るなよ」おい…「居住性は絶対だぞ」「「「はい」」」「対空レーダーが使えるらしいぞ」「水測機器の入替ができるぞ」「「「よく予算下りたな」」」ただ…「派遣艦隊の主力は長距離護衛艦だそうだ」なんで…?
このような議論のもとに仕上がったのが『派遣艦改装計画』である。


1等駆逐艦  「峯風」型  高速護衛艦私案  
基準排水量  1750t      全長  103.0m    全幅  9.5m
主缶  重油専燃缶×4基    出力  40000馬力    速力  35Nt    燃料  500t    航続力  14Nt/4800浬
兵装  12.7cm単装高角砲×3基    40mmポンポン砲連装×2    53.3cm魚雷4連装×1    爆雷×55    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×1  対水上レーダー×1
補足  高角砲は平射砲の改造品    対潜戦闘のみならず対艦戦闘も考慮したモデル
      
1等駆逐艦  「峯風」型  長距離護衛艦私案  
基準排水量  1700t      全長  103.0m    全幅  9.5m
主缶  重油専燃缶×2基    出力  20000馬力    速力  27Nt    燃料  750t    航続力  14Nt/7000浬
兵装  12.7cm単装高角砲×3基    40mmポンポン砲連装×2    爆雷×100    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×1  対水上レーダー×1
補足  高角砲は平射砲の改造品    対艦戦闘を切り捨てて対潜戦闘を徹底、さらにボイラー2基を撤去し燃料を増載して航続距離を伸したモデル  


2等駆逐艦  「樅」型  長距離護衛艦私案
基準排水量  1000t      全長  87.0m    全幅  8.2m
主缶  重油専燃缶×2基    出力  14000馬力    速力  25Nt    燃料  480t    航続力  14Nt/5500浬
兵装  12.7cm単装高角砲×2基    40mmポンポン砲連装×2    爆雷×60    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×1  対水上レーダー×1
補足  高角砲は平射砲の改造品  対艦戦闘を切り捨てて対潜戦闘を徹底、さらにボイラー1基を撤去し燃料を増載して航続距離を伸したモデル
  
予算については参考資料が見つかりません。ただ、レーダー無だとフネそのものを失う確立が跳ね上がるので、そこはケチれません。当時の潜水艦相手だと25Nt以上あればなんとかなります。あとは前投対潜砲…採用はどうなるのでしょうか?

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最終更新:2011年12月29日 20:07