136 :影響を受ける人:2014/08/03(日) 22:20:07
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。今回はちょっと卑猥な表現があります。
それでも良い、という方のお読みください。
旅館に到着し、素早く着替えた北郷章香はたまたまいた女将に用事と用件を伝えて外に出る。
普段から戦闘用の服装をしているので、長ズボンに違和感があった。
まぁしかたがないとして諦める。
それはともかく、旅館を出た章香は大通りに出て、人力車を運よく捕まえた。
「すまない、ここに行ってくれ。」
「へぃ!」
人力車で移動する際中、トラックの助手席から見ていて景色と同じような景色を見る。
今この場所は平和だ。
とても最前線のような、殺伐とした雰囲気などない。
しかし、どことなく緊張感があるというのは、最近停泊し始めた第二打撃艦隊 ―通称:長門艦隊― のせいだろうか?
戦艦と言うどっしりとした、力強い姿は頼もしさと安心感を与えてくれる。
「それは悪い事ではないが・・・」
章香は海軍の内情をそれなりに把握している。
何せこの歳で少佐だ。贔屓にしていただいている大佐からの情報。
本土にいる戦えなくなった同僚からの手紙。
堀井大将一派の事は良く知っている。
戦場にいる以上関係ないかもしれないが、将来は中央に行く可能性があるために無視できない。
その姿があまりに魅力的に見え、通行人が見とれている事に気が付いていなかった。
章香自身美人であるし、凛々しい表情が良く似合っている。
軍服を着た姿も、宝塚歌劇団の男装の麗人様に人目を引くのは必然であった。
そんな事はつゆ知らず、少しだけ考えに耽っていると人力車は目的地に到着した。
お金を払うと、なぜかサインをねだられた。
首をひねりつつ、そのまま料亭に入る。
そこは本土にあるような海軍が良く使う料亭で、秘密が守られる場所だった・・・
「すまない。ここに水瀬ササリ大佐が来ているはずなのだが・・・」
「ええ、きております。奥でお待ちしておりますよ。」
玄関で女将に聞くと、もう到着していたらしい。
そのまま上がって奥のままで案内してもらった。
ここに来るのは実は初めてで、少しだけ視線を周りに向ける。
純和風の庭、鯉が泳ぐ池、小さな竹林が大陸にいる事を忘れさせられそうだ。
部屋の前に到着すると、女将が訪ねた。
「御待ちの方がお見えになられました。」
『ああ、中に入れとくれ。』
了承を受け、障子が開くとそこには女性が一人座っていた。
第二種の軍服を着ていて階級章は大佐。
短くザンバラに切りそろえた髪が、凄みを出している。
「章香、久しぶりだね。」
「大佐もお元気そうで。」
顔を合わせて軽く挨拶をする。
目の前にいる人物こそ、今回呼び出した張本人 ―扶桑国海軍大佐:水瀬ササリ― である。
ササリの向かいに座った章香は、大佐の手に握られたものを見て呆れた。
「・・・大佐。昼間から御酒ですか?」
「なに、徳利一本だけさね。このくらいじゃ、酔いもしないよ。」
137 :影響を受ける人:2014/08/03(日) 22:20:41
カラカラ笑う上司に内心で溜息をつく。
まぁ確かにこの人は蟒蛇だ。男共と勝負して10人酔い潰して、なお余裕があるというのだから・・・
「いやぁ、おもいだすねえ。
最初の頃、アンタが自信たっぷりでアタシに突っかかってきたのはいつだったか。」
「訓練校時代の話です・・・」
「そうだっけね?
部隊配属の時泣いて、配属先にアタシがいたら、また泣いたよね。」
「・・・(やっと鬼教官から離れられたと思ったのに、またいたら誰でも泣く・・・)」
ササリは章香の面倒を終始し見ていた上司だった。
平時ではウィッチの階級は上がりにくい。それでも大佐になったというのは実力があるという事だ。
章香が少佐になったときも、御世話になったモノである。
御世話になりすぎて、弱みをいろいろ握られているのはご愛嬌だ。
二人は昔話に花を咲かせつつ、運ばれてきた昼食を食べた。
章香も一杯だけお酒を頂き、ちょっと嬉しい。
しばらくは和やかな雰囲気であったが、御酒が無くなってまた注文し終わったとき雰囲気が変わった。
「させと・・・本題に入ろうか。」
「本土でなにか問題でも?」
「いや、問題は起きていないよ。堀井の馬鹿が余計な事をしている以外はね。」
「そうですか・・・では?」
「上の連中・・・と言っても一部なんだけどね。
どうも、大陸からの全面撤退を考えているらしいんだよ。」
「全面撤退、でありますか?」
「ああ。」
腕を組むササリに、章香も自然と姿勢を正す。
「防衛戦の構築は順調ですが?」
「・・・アンタらしくもない。気付いているんだろ?
連中の攻勢があまりにも弱すぎだという事に、さ。」
それは同居している江藤敏子中佐以下、隊長陣も危惧している事だ。
嵐の前の静けさではないだろうか?
前線に身を射ているが故に危惧している事だ。最近では危機感が日増しに上がっている。
「全面撤退にはアタシも同意している。
もともと大陸の防衛は難しい。陸軍には悪いけど、地上戦まで考えるとなると・・・
扶桑海を挟んで、通常戦闘機隊と組んで防衛した方がいい。
救助体制さえ整えておけば、いくらでも戦ってやるさ。」
「同意します。」
この辺の考えも、同じように基地で話し合って結論付けている。
「だがね・・・それを主導しているのは、妙な連中なのさ。」
「妙な連中ですか? 最近出てきたというウィッチ不要論者のような?」
「そいつらは少数だ。気にしなくていい。
最近・・・と言うわけじゃないけど、かなり広い範囲にわたって協力がある連中だよ。
今使っているストライカー製造を、一手に引き受けている倉崎重工なんかがそうだね。
海軍・陸軍には言うに及ばず、政府にまでいるらしい。」
「ずいぶん、大きいですね。」
初めて聞く話に身を乗り出す。
ササリは溜息を吐くと、お茶を飲む。
「まったく、嫌になるよ。こんなことなら昇進するんじゃなかった。」
「は、はは・・・」
心の底からの愚痴に、苦笑するしかない。
「今の所、思惑は一致しているから妨害する気はない。
だから、取りあえずは協力する方向で動いているよ。
そんでなんだけど、アンタ。昇進してもらうよ。大佐まで。」
「・・・はい?」
話が分からん。
困惑する章香をよそに、話を続ける。
138 :影響を受ける人:2014/08/03(日) 22:21:06
「海軍所属ウィッチの総隊長として、アンタを推薦しておいた。」
「いやいやいや! 意味が解りかねますが!!」
「欧州義勇軍の総隊長が大佐だというのは知っているね?
それにつり合うようにしているだけさね。」
「し、しかし自分はまだ少佐でありまして・・・」
「来月あたりには中佐になるよ。
ついでに陸軍の方は、江藤のお嬢ちゃんが大佐に昇進する予定だ。
田中の後押しでね。」
もはや絶句するしかない。
「もう・・・そこまで話が進んでいるのですか?」
「とりあえずはね。」
御茶の残りをグビリと飲み干すと、障子があいた。
酒を受け取り、もう一度動かない章香の御猪口に注ぐ。
「大陸は放棄する。これはほぼ決定事項だよ。覚悟しておきな。」
―――――
章香は徒歩で皆がいる旅館を目指して歩いていた。
あの会談で、いろんな情報が舞い込んで頭がパンクしそうになった。
大佐は彼女の疑問に丁寧に答え、何とか整理はできた。
しかし不確定な情報もあり、漠然としないモノも有ったりする。
大佐と別れを告げると大急ぎで、その足で大陸の総本部に向かった。
情報の正否と、同僚に会いたかったのだ。
幸いにして本部勤めの同僚に会う事が出来、大佐の言った事が大体あっていることが判明した。
その同僚からは「昇進おめでとう。」と言う言葉がかけられたが、心有らずであった為に返事が御座なりになった感じがする。
その後、頭を冷やすために少々散歩しながら歩いていたのだ。
旅館に戻るとすぐに女将がやってきたので、とりあえず考えるのをやめて風呂に入る事にした。
「皆様方は、夕食の前にお風呂に入っております。」
「そうなのか? なら私も入るか・・・」
「お食事はいかがいたしましょう?」
「大部屋の方に頼む。」
「わかりました。」
女将に頼んで一度部屋に戻って浴衣をとる。(予めサエが用意してあった。)
そしてそのまま旅館自慢の露天風呂を目指す。
脱衣所に入ると、制服を乱雑に脱いでいく。
籠に放り込まれる制服と下着。そして垢擦りとタオルを持って風呂場に向かう。
すると何やら楽しげな声が聞こえてきた。
「ん? 話し声が聞こえるな・・・」
推測で学兵達が話を楽しんでいるのだろうと思い、扉を開けた。
「皆、楽しんでいるか?!」
「あ、先生。」「お帰りなさい!」「隊長、帰って来たんだ!」
「隊長、お帰りなさいませ。」「お土産ないスッか?」「さ、里子さん・・・それないと・・・」
美緒等は章香の姿を見つけるや否や、それぞれ押し合い圧し合いのように声をかける。
その奥の方でのんびりしていたサエは、軽く手を上げるだけで済ました。
章香も軽く手を上げて返答すると、その隣に見慣れた巨体を見つけて顔をひきつらせた。
「ぎぁはははははは!!! 本当に来たぜぇぇ!!」
「あぐっ! 真嶋・・・なんでお前がここにいる!!」
「ここが露天風呂だからだぁぁぁ!!」
「声を小さくしろ!」
耳をつんざく嗤い声に、一同頭を抱えた。(ちゃっかりサエは防御済み。)
大佐に続いて苦手な奴に会って、ちょっとブルーになった章香だった。
以上です。
苦手だとは言ったが、嫌いと入っていない(キリッ!
そして、描写で表現したぞ。
喜べよ。
次回は真嶋志麻との絡みを書くぞ!
最終更新:2016年02月14日 13:13