689 :影響を受ける人:2014/08/17(日) 22:00:11
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第二十四話 ―乙女の休日Ⅶ―



「悪かったな。」
「いや・・・お前と話せて良かったよ。」

旅館の玄関で草鞋(体が大きいため自作)を履く志麻に、少しだけ申し訳なさそうな表情の章香が立っていた。

「なんつう顔してんだ。お前らしくねえぞぉぅ。」
「いや、だがな・・・」
「俺がそんなことを気にするたちだと思うがぁ!」

獣のように嗤う同期に、苦笑して頭を掻く。
掻いていた手を下すといつも通りの章香がいて、嬉しくなってしまう。

「ぎひひひ! それじゃ、いくぜ。」
「ああ、戦場で会えたら会おう。」
「おうよぉ!」

御互いに手を出し合って〔パンッ!〕と叩き合い、そのまま握手する。
力のこもった握手はちょっと痛かったが、背向けて立ち去る志麻が見えなくなるまで痛みは続き。
見えなくなると同時に引いていった。
名残惜しそうに玄関を見ていた章香だが、すぐに学兵達のいる部屋に向かう。

「さて、夕飯は何かな?」
「・・・刺身だ。」
「船盛ですか? 良いですね~」

質素になってしまう前線とは違い、旨い物を喰えるというのは誰でも嬉しくなるもの。
ルンルンと足取り軽く歩く、彼女の後ろ見ながらサエは呟いた。

「・・・そうだな。
 ・・・・・・章香。」
「なんですか?」
「・・・学兵達の様子がおかしかった。
 ・・・恐らく ・・・聞かれた。」

二人の歩みが止まった。
後ろ姿なので顔は見えないが、緩んでいた章香の顔は苦虫を潰したようになっているはず。
容易に想像できるが、そのまま続けた。

「・・・水風呂から上がってから、話に夢中で気付かなかっただろうが。
 ・・・大人しくなり過ぎていた。
 ・・・それにさっさと去った事からの推測でしかないが。
 ・・・・・・間違いないだろう。」
「そう、ですか・・・」

答えた声は平淡なモノ。
志麻に言われていたが、いざばれると胸が苦しくなる。
あの話の後、いずれは話そうと思うようになってはいた。
息を一度大きく吸い、吐き出す。

「自分が何とかします。」
「・・・そうか。 ・・・多少はフォローしよう。」
「ははは。お願いしますね。」

歩みを再開し、大部屋に向かう。
そんなに距離は無い為、すぐについた。
軽くノックすると『どうぞ。』と言われたので遠慮なく扉を開く。

「またせたな。」
「いえ、そんなに待ってはおりませんわ。」
「うんうん。」

690 :影響を受ける人:2014/08/17(日) 22:00:46

凛と醇子が答えるが、二人以外の視線は前に固定されているかのように動かない。
更に、普段正座をあまりしない徹子が正座をしている時点でおかしい。

凛・サエ・章香・醇子
里子・徹子・美緒・小毬

の順番で座って箸をとる。

「頂きます。」
「「「「「「・・・「頂きます!」」」」」」」

章香は、まず最初に船盛の刺身をとる。
見たかんじからして、恐らく鯛だと思う。
醤油にチョンとつけ、刺身に山葵をつけて食べる。
最初に魚の旨味が出てきて、醤油が更に味を引き立てる。
最後に山葵の絡みが味を引き締め始めた。

そこに白い熱々のご飯を入れると、旨さが更に倍増する。
ああ、生きていてよかった。
この一杯の為に頑張っているようなもの。
食べている物は違うが、美緒達も同じなのか幸せそうな顔になっている。
その後、一心不乱に食事をとり続ける。

ご飯を二度ほどおかわりしてから、ようやく話を切り出そうという気になった。
遅くなったのは、決して刺身の魔力に囚われたからではない。

「ふぅ・・・ さてお前達。「・・・ご飯粒が付いているぞ。」あ、すみません。」

整えた威厳は崩壊した。
ご飯粒を全て食べると、咳払いをして姿勢を正す。
それにつられて食べるのをやめた学兵達。

「どの辺から聞いていた?」
「えっと・・・その・・・」

副リーダー的な醇子は口を開いたが、言葉が出てこない。
アワアワしながらも懸命に話そうとする。が、その前に凛が体を章香の方に向けて口を開く。

「ほぼ、最初からですわ。」
「どの辺からだ?」
「真嶋志麻大尉が、隊長を同期の中で一番だという所からですわ。」
「そうか・・・」

腕を組んで一同を見渡す。
いずれも悪戯をして怒られる子供の様に委縮している。
いや、彼女等はまだ子供なのだ。こうなって仕方がない一面もある。
だが・・・同時に彼女等は軍人でもある。

「上官の話はほぼ機密扱いだ。それを知っての事か?」
「はい、そうd「さ、最初に言い出したのはアタイッス!」里子さん!?」

里子は後ろに下がり、深々と畳に額を擦りつける。
里子にとって凛は恩人だ。彼女がいなければウィッチになれたかどうかわからない。
その恩人が自ら罪をかぶろうとしているのを、ただ黙って見過ごすことはできなかった。

「アタイが術符を持ち込んで聞いたんッス!」
「それなら俺だって同罪です!」

その隣に、同じ様に土下座をする徹子。

「顔を上げろ。」
「お願いします! お嬢は悪くないッス!」
「美緒達は悪くn「顔を上げろと言っている!!」ヒウッ!」

訓練中でも聞いたことのない怒声が部屋中に響き渡った。
よほど大きな声だったのだろう。女中が何事かとやってきたので、サエが ―何でもない、ただお仕置きしているだけ― と説明してかえす。
その間に恐る恐る顔を上げた二人は、目を瞑って腕を組んでいる鬼隊長を見上げるように見た。

691 :影響を受ける人:2014/08/17(日) 22:01:21

「さて。お前たち全員、ミチルの話を聞いたんだな?」
「はい・・・聞きました。」

美緒が呟くように肯定すると、全員が頷いた。
それを片目を開いて確認し、内心で溜息を吐く。

「これはアイツの問題だ。だから深くは詮索するなよ。
 他言も無用だ。いいな?」
「「「「「「・・・はい!」」」」」」

とは言ったものの・・・逆に情報を求めて動くかも知れない。
横目でサエを窺うと、小さく頷くのが見えた。

「と言っても、気になって仕方がないだろうから、簡単に言うことにする。」
「へ?」
「い、いいんですか?」

前言を撤回する用の事を言われて学兵等は唖然とし、慌てて美緒が確認をとる。
章香は頷いて一同を見渡す。

「構わん。だが他言無用、言いふらすな・・・守れるな?」

真剣な表情になり、姿勢を正したのを見て、彼女等なりの誠意を見た。
これ無ば良いだろうと思い口を開く。

「私は詳しくは知らない。ただわかっているのは、彼女ともう一人が生き残っている。
 ミチルの隊は飯井オトメ少佐が率いる部隊で、なかなかの実力者で撃墜数も多かった。
 私も最初の頃お世話になった・・・
 だが・・・その日は連戦で弾薬が少なくなっていた上に、追撃のしすぎで奥の方に移動してしまっていた。
 その期間途中で、多数の敵に包囲されたらしい。
 救援要請を送ったが、運悪くどの部隊も下がるか、ちょうど上がってくる途中だった。
 何とか近くにいた狐狸部隊の面々が駆け付けた。
 ・・・上空にウィッチは誰もいなかった。有るのは地面から立ち上る黒煙のみ。
 せめて遺品でも回収しようと地上でホバリングしていたら、不時着していたミチルを発見した。
 自分を庇って重症を負ったウィッチを抱えてな・・・」

そこまで言って、御猪口の御酒を飲み干す。

「唯一助かった彼女は事情聴収を受け、傷が癒えた所で現場に復帰した。
 軍隊と言うのは意外と縁起担ぎが多くてな。
 一人だけ生き残ったミチルを誰も受け入れようとはしなかった。」
「そんな・・・」
「酷いですわ・・・」
「そうだな。
 しかしちょうど退役するウィッチがいた狐狸部隊が彼女を受け入れ、今に至るというわけだ。」

話し終えると皆顔を伏せていた。
無理もない、戦場ではよく起きてしまう悲劇。
もし彼女等が軍人を目指すならば、必ずぶつかる壁だ。
これをどう導くか・・・章香は休められない思考に、溜息を吐くしかなかった。



以上です。
ミチルの詳しい(?)事件内容がわかりました。
基地に帰る前に整理がつくのでしょうか?

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最終更新:2016年02月14日 13:14