おまけその2
病室は沈黙に包まれていた

病室にいるのはベッドに伏せているマルセイユとベッドのそばに立つ加東だけであった
二人は長いこと沈黙を保ち続けた。

やがて、加東が重たい口を開ける
「・・・・ねえ、ティナ。あなた最近可笑しいわよ。突然、力を求めるようになるとか
謙虚なあなたらしくないわよ。」
「・・・そうだな。何も知らなければそう見えるよな・・・・」

マルセイユは寝転び、天井に仰いで、手を頭の上に置きながら言う
「ケイ、聞いてくれ。一人のおバカな少女のお話だ」


天井を見続けながらマルセイユは独語をする




「・・・あれは、修行が後半に入った頃だった。私の最初の使い魔が急激に力付けた私に着いていけなかった時の事だった」

あの頃は、相当焦りもあった。周りがそれぞれの己の身に合った能力などを身に着けていくのに自分は何も獲得できなかった
回転・剣術・シールド・呪歌と何でも出来ることをやった。それでも、皆とは一歩及ばなかった。
それに、使い魔の調子が悪く、魔力も途切れがちで私もイライラしだしたんだ。


ふと、古書物が多く収められている封印書庫に潜入することを思いついたんだ。
そこには多くの秘術などが納めていて、師匠と同伴で書物を取りに行ったことがあるから大丈夫だと思ったんだ
秘術を身に着けることで私だけの力と使い魔が無理をしなくても良いんだと

それを聞いた、ドミニカと菅野が面白そうだと付いていき、リリィが駄目だよぅと必死に止めるも私たちは封印書庫に入ったんだ



        • でも、あの時深く考えるべきだったんだ。
なぜ、あの部屋が封印書庫と呼ばれて、なぜ師匠と同伴じゃないといけなかったのかということを


私達は書庫に入り、書物を漁ってみたが、どれも前に見たことあるものばかりで力になれそうにもなかった
そのまま、書物を探し続けていたら

「みんな、駄目じゃない。先生の許可なく勝手に入っちゃ」
「うげっ」
リリィが偶々近くにいたウィルマに助けを求めて部屋に入ってきたのだ。

「ここは興味半分に見ちゃいけない部屋だと分かっているでしょ?」
「すまない。でも、私が助かると思って見逃してくれよ」
「はぁ・・・しょうがないわね。私も手伝ってあげるから、少しだけよ?」
「助かる!!」


こうして、ウィルマも加わった状態で部屋を探索続けた。


ふと、奥にお札みたいな物が張られた扉があったんだ。
興味を持った私がそれを開けるのと

「っ!ティナ!!それは開けちゃダメ!!」
ウィルマの声が聞こえたのは同時だった。
そして、ウィルマに押された。


      • それが運命の分かれ道だったんだ


部屋の奥から飛び出た何かが、ウィルマに貫いたんだ
        • もしも、ウィルマが押してくれなかったら、貫かれたのが私だったのに

「ウ・・・・ウィルマァァァァァ!!」
私はウィルマが崩れていくのがスローモーションのようにも見えた。
やがて、床に倒れて血を流していくのを見て・・・・私は頭が真っ白になったんだ

「あアアああァァァァァ!!」


仲間が何かを叫んでいたのかもしれなかったんだが、ただその時の私は我武者羅にソイツを倒すしか頭になかった

ソイツは球体をしていたが、グニグニと素早く飛び回り、触手を伸ばしてくるのだ
手に持っていた刀で斬り付けるもソイツは全く効果が無かったように見えた。

そして、私とソイツは封印書庫の中で暴れまわり、積み上げた本や棚を壊しながら攻撃を続けたんだが
ソイツはビクともしなかったんだ。


何度も触手と斬り合っていくうちに遂に刀が折れてしまった
それに呼応するかのように、無数の触手が飛んできたんだ

(っ!不味い!!)

私は、刀もなく、シールドも張る暇もなく、無防備の体を晒していたんだ
もはや、躱せないと観念した私だったが、目の前で羽が飛び散った



なぜ、羽が飛び散ったのか?その答えは目の前にあった・・・・



「・・・・うそ・・・・・だろ?」



私の使い魔が貫かれていたからだ。
使い魔は私達を庇うためにソイツの触手の全てを受け止めていたんだ

触手がゆっくり抜き去ると、使い魔は力無く床に落ちた


「あ・・・ああ・・・・・・あああああああああ!!」
ウィルマのみならず、私の使い魔まで犠牲になった。私はただ、泣き叫ぶほかなかった


唸り声が聞こえたので、顔を上げると、ソイツは体をビクビク動かして肉体を変化させていた
人のような手を生え、鷲のような足と翼を背中に生やし、顔は鋭角な三角形甲羅に覆われていた

ソイツは大きな翼をはためかせて、天井をぶち破って、西の空へ飛んでいったんだ
残されたのは、呆然とする私に、最後まで警戒を続けるドミニカ、泣きながらシールドを張った菅野に、必死に治療を続けるリリィだけであった・・・・

その後、師匠がやってきて、師匠の治療のお蔭でウィルマは一命取り留めたが・・・・
後遺症を残してしまった

そして、師匠から封印書庫と呼ばれた理由も理解した。その書庫には遥か昔から曰くつきものが多く収蔵されていて
手に負えないものは封印処理していたという物が多いという

ソイツも封印されていたもので師匠が大昔に激戦の末に封印できたもので、力が弱まるまでに封印したという
だが、私のせいで封印が解かれて、ソイツを解き放してしまった。ソイツは触手で捉えたものを取り組む能力があるそうで
ソイツが人型で翼が生えたのも、ウィルマと私の使い魔から取り込まれたのだろうという


私は猛烈に後悔した。安易に力を求めなければ、こうならなかった
同時に力を欲した。ソイツを殺したい程に憎しみに囚われていたからだ


私は、今まで以上に我武者羅に修行に励み、時には自分の身が危険になるほどだった。
当然、周りの仲間も止めようとしたが、私は止まらず、ドミニカと衝突を繰り返し
仲間と修行を始めて以来、最悪の空気だった・・・・


それを打ち破ったのは、長いこと眠りの状態だったウィルマが復活してからだった


「無理に謝らなくていい。自分で、自分を許せるようになったら来てね」


その言葉でようやく、私は力が抜くことができた。
この後は、師匠から斬鮫を戴いて、卒業したんだ



「・・・・・これが、おバカな少女の顛末さ」
「・・・・そんな事が・・・・」

加東はティナとマイルズが時々ウィルマの事で喧嘩することがあったが、このような出来事があったとは思わなかったのだ

「それで、どうして最近無茶をし始めたことに繋がるのよ?」
「・・・・先週、スエズに偵察に行ったウィッチの報告を覚えているか?」
「?ええ、何でも新しいネウロイを発見したとか。それはまるで翼をはや・・・・まさか!?」
加東は何かを確信したのか、顔色を変え、私は重苦しく頷く

「ああ・・・・・ソイツが・・・・いるんだ。『グレイ』が」
数年越しに殺したい敵がいたのだった・・・・



終わり











大筋は変わっていませんが、細かいところで変えています。
影響を受ける人様のssにあった

 血だまりに沈む自分。
 泣きながら化物を相手に戦う二人。
 後ろ姿だけど、必死に敵から此方を守ろうとする直枝。
 深い傷を、まだ稚拙な回復魔法で治そうとするリリーシャ。

あれは自分にも責任がある。
もっと強く言っていれば・・・


という文章があったので、こちらにした方が自然かと思いました。

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最終更新:2016年02月14日 07:56