滑走路で威勢のいい声が響いていた
「ほら、走れ走れ!!訓練で血と汗を流せば戦場で流す量は少なくなる!!」
「「はい!!」」
そう、訓練の走り込みなのです
坂本さんが竹刀を持って指示を出し、私とリーネちゃんは必死に走っています
「宮藤!遅れてるぞ!!もっと速く走れ!!」
「はい!!」
「リーネ!!宮藤に追いつかれるぞ!!速く走れ!!」
「はい!!」
「よし!ラスト一本だ!!遅れた者は腕立てだ!!」
「「はい!!」」
この言葉に私達は必死になって走りました
そして、指示を出す坂本の後ろから近づく人物がいた
「おー、精が出てるな。油断せず訓練をやっていて大感心だ」
「はい?」
声が聞こえたので、坂本さんが普通に振り返ったのだが
その両目が驚きで開かれる
「え・・・・あ・・・・?」
「久し振りだな。元気だったか」
そこに立っていたのは扶桑の制服を着た
長い髪を後ろにまとめた女性であった
そして、彼女は・・・・
「お・・・お久しぶりです!!北郷せん・・・いえ!北郷少将!!」
「はっはははは。そんなに堅くならなくていいよ、今日はお忍びだよ」
「いえいえ!!これぐらいは当然の事かと!!」
「むう・・・・昔は先生、先生と呼んでくれて可愛げあったんだがなあ」
「む・・・昔の事です!!」
坂本が顔を赤らめて否定する
そして、ようやく私達が走り終えて、坂本さんの側に寄ります
「「ぜー・・・・はー・・・・ぜー・・・・はー・・・・」」
私もリーネちゃんもかなり息が荒いです
北郷が私を見て
「彼女が宮藤博士の娘で、私の後輩かい?」
「はっ!そうです!身贔屓するつもりはありませんが、素晴らしいウィッチであります!」
「ほー。あの厳しい坂本がそう評価するとは、将来有望だね」
私は、坂本さんが見知らぬ女性といることに気づき、尋ねます
「あのー・・・・坂本さん、この方はどなたでしょうか?」
「むっ、そうか、宮藤は知らなかったな。この方は遣欧扶桑皇国ウィッチ隊総監北郷章香少将だ」
「へー。そうなんですか」
私は坂本さんの知り合いなんだという程度でしたが、リーネちゃんがもの凄く興奮しています
「よ・・・芳佳ちゃん!!この人ね凄いウィッチなのよ!!
あの扶桑海事変で扶桑を守った英雄で、遣欧ウィッチで最も多くのネウロイを撃墜したエースで!
鬼神と呼ばれたウィッチ中のウィッチの人だよ!!」
「はーっはははは!それは昔の事さ。今はただのウィッチだよ」
北郷がそう謙遜していると、建物の奥からバルクホルンさんが物凄い勢いで走ってくるのが見えました
「はあ・・・はあ・・・・お久しぶりです!!あの時はありがとうございました!!」
「うん?・・・・ああ、あの時いたウィッチか
北郷はそういって、頭を下げる
「あ・・・頭を上げてください!貴方は悪くないのです!!」
「それでも、ベルリンを守れなかったのは私の責任だ。リバウ航空隊に撤退命令を出してベルリン陥落を速めてしまったのだ」
「あの時は仕方がなかったのです。我々がカールスラントの民を守るための義務があるように、貴方は隊員の命を守る義務があったのです。
それにあのネウロイの勢いではリバウ航空隊があってもベルリン陥落は免れなかったでしょう。
それでも、貴方達のお蔭で多くの人が救われました。誰も責める人はいません!!」
バルクホルンさんはそういって、力説する
「そうか・・・・そう言ってくれると助かる。ところで、妹さんは元気かい?」
「はい!クリスは元気です!もし、あの時貴方が居なかったらクリスはどうなっていたことか・・・・
大怪我だけでなく、もしかしたら亡くなっていたかもしれない。貴方は私の恩人です!!」
「礼は言われるものではない。私は当たり前のことをしただけだ」
北郷は笑って、否定するが、バルクホルンは頭をペコペコと下げ続けたのだった
その後、北郷さんは食事を一緒に取り、その日のうちに帰られましたが
その間にコチコチに固まった坂本さんとバルクホルンさんの姿が見ることができて
普段と違った新しい姿がみれて新鮮な日でした・・・・
おまけ
とある部屋
そこに北郷と宮藤博士の姿があった
「宮藤博士、遠い土地で不便かと思いますが、ご辛抱を」
「なに、いいってものさ。ここでも自由に研究できて、新しい発想や知識の喧嘩ができて楽しいよ
それに、昔から芳佳をきちんと構ってやれなかったからな。ここで芳佳の新しい面を知って、つくづく私は父親失格だと思ったよ」
「そう言っていただけると幸いです」
北郷がお礼を言うと、宮藤博士は真剣な顔をして尋ねる
「ところで・・・・あの件はどうなったのですか?」
「はっ、博士、およびご息女を狙った組織ですが・・・
足取りがなかなか掴めない状態で、もう暫く、ここに滞在していただくことになりますかと」
「芳佳には知らせる訳にはいかないからな・・・・・ここには僕の我儘で来たと思い続けることができたら・・・」
芳佳に隠し事をしているふたりであったが、芳佳がそれを知る日はいつ来るのだろうか・・・・
最終更新:2016年02月14日 08:04