ウィルマが教官と赴任してしばらくたった。
人心をあっと言う間に掴み、姉のように慕われる日々に笑顔で過ごす。
まあ、一度勝負を挑まれたのだが、問題なく終わって一安心。
エース級ではないが、機動においては負ける気はない。
ただ・・・
『ウィルマァァァァァァ!!』
『ティナ落ち着け!』
―ギギャァァァァァ!!―
『なんなんだよ、コイツ!』
『ナオ、シールドを張り続けて!』
『リリィは回復に専念するんだ。お前しか回h『あアアああァァァァァ!!』馬鹿野郎!ティナもどれ!!』
―ギギギギッッ!!―
『ドミニカ、木刀もってけ! 少しは使えるだろ?』
『ナオ、リリィ・・・後を他のむ。ウィルマ・・・すまない。』
戦闘後、あれを夢で必ず思い出してしまうのが憂鬱だ。
血だまりに沈む自分。
泣きながら化物を相手に戦う二人。
後ろ姿だけど、必死に敵から此方を守ろうとする直枝。
深い傷を、まだ稚拙な回復魔法で治そうとするリリーシャ。
あれは自分にも責任がある。
もっと強く言っていれば・・・
「はぁ・・・気にしてもしょうがないんだけどね。」
自分では折り合いをつけている。
だから気にはしないが、関わった残りのメンバーが未だにトラウマとしている。
取りあえずコーヒーを飲んで、一息ついてから書類格闘に戻る。
テキパキ片づけていると、扉が叩かれた。
「は~い」
「教官、お客様です。」
「お客様??」
入ってきたのは以前対戦したウィッチだった。
しかし・・・はて? こんなところにやって来るとなるとお偉いさんだろうか?
取りあえず応接の方に通す様に言って、残りの書類をキリが良い所で切り上げる。
通路に出ると教え子やら同僚、又は隊長に相談されて少しだけ談笑した。
ちょっとばかり時間がかかってしまい、少しだけ早歩きで応接室に向かった。
扉の前まで来ると軽くノックする。
「ごめんなさい。少し立て込んでいて・・・」
扉を開けて入ると青い軍服を着たウィッチが座っていた。
その髪は真っ白で・・・
「いえ、お構いなく。お久しぶりですね。」
「リリィちゃん!」
「ワプッ」
訪ねてきたのはリリーシャ・カステヘルミ・アホカイネだった。
思わず抱き着いてハグしてしまう。
驚いたリリーシャだが、すぐに笑顔となった。
「びっくりしたよ。どうしたの!」
「少しだけ立ち寄れる時間が出来たので、会いたくなって・・・」
「そうなんだ。」
嬉しそうに会話を始めた二人は、席に座ってお互いの近況を話し合った。
困った教え子の事。
戦場で行っている治療の話。
新しい戦闘機動が開発されると習得に忙しい事
各戦線に引っ張りだこで、なかなか定まった場所にいられない事。
沢山話あった。
そして話の間に入れてくれたコーヒーを飲んでお互い一息つく。
「それじゃ。見せて下さい。」
「はいはい。」
返事をしたウィルマはソファーに寝そべり、力を顕現させたリリーシャは胸から腹部にかけて入念に調べていく。
元々リリーシャの訪問はこちらが目的だった。
傷に関しては九曜葛葉が完璧に消した。
しかし、後遺症については彼女もお手上げ。
それを直したいという思いで、リリーシャは今も勉強を怠らない。
後遺症の一因は、自分にもあるのだから。
「戦闘機動したと聞きましたけど、大丈夫ですね。」
「無理はしていないってば~」
「・・・時折無茶をするのを知っていますが?」
「あ、あははははは・・・・・・」
引き攣りながら笑うのを呆れ顔で睨む。
でも・・・
「まったく、もう・・・」
この人には屈託なく笑ってほしい。
そう思うのだ。だから苦笑してしまう。
「今日はどうするの?」
「明日には移動する予定です。
まだ話足りないですし・・・お泊りさせて頂いてもいいですか?」
「いいよ、いいよ!」
嬉しそうに頷く彼女を見て、やっぱりこの人には笑顔が似合うと再確認した。
二人は夜分遅くまで楽しそうにすごし、翌日にリリーシャは次の任地に向かっていった。
見送ったウィルマは寂しそうだったが、すぐに気分を変える。
自分は前線には出れない。しかし、皆が安心できる場所を作る事はできる。
そして一人でも多く、家族の元にウィッチが・・・少女たちが帰れるように術を教えるのだ。
太陽輝く空は今日も蒼く美しい。
いじょう。
オリキャラ:リリーシャを絡めて見ました。
最終更新:2016年02月14日 08:40