272 :影響を受ける人:2014/12/21(日) 21:55:32
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
襲撃終了の夕食後、決められた部隊配置を発表したところ、案の定反発が発生した。
しかし、戦場を知っているが故に賛同する面も有った。
あまり変わらなかった部隊はともかくとして、北郷隊・・・美緒や徹子達はお互いに顔を見合わせて困惑し、自分達の隊長を見る。
章香は真剣な表情のままで、質疑応答に答えたのは敏子の方。
結局彼女は何も話さないままその場を去った。
すぐに食事を終えた早良ミチルは、敏子に食って掛かるために司令室を襲撃し、大声で怒鳴りあった後に出ていく。
彼女としても今までの編成ではだめだとはわかる。
だからと言って“学兵のみの部隊”には反対だ。
しかも自分が隊長となり、坂本美緒を護衛するなんて・・・
「はぁ・・・」
司令室から出てしばらく歩き、外に出た所で溜息を吐いた。
そしてそのまま外を歩く事にする。
気分的に、風に当たりたかったのだ。
普段なら銃器の点検をするのだが・・・そんな気も起きない。
そしてふと気が付いた。
何時もの 儀式 をしていないと。
袖をまさぐると、すぐにタバコとマッチが出てくる。
視線がタバコの銘柄を見続ける。
あまり好きではないと言っていたのに、好んで吸っていた風変りの隊長・・・
自分と同じく志願していた仲間・・・
頼りになった先輩たち・・・
彼女達はもういない。
自分が・・・殺したも同然。
「ッ・・・!」
あらためて噛み締める罪に、力のこもった手で握った紙の箱がひしゃげる。
今度はミスをしない。
今度は自分が・・・自分が命がけで守るのだ。
坂本美緒を。
―――――
「・・・以上だ。
・・・何か質問はあるか?」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
食事が終わり、告げられたことに動揺していいた学兵一同は旗本サエに連れられて詳しい話を聞いた。
それでもなお、彼女達は事実を受け入れがたかった。
そんな中、美緒が手を上げる。
「えっと・・・つまり自分はまた部隊を離れる。で、合っていますよね?」
「・・・そうだ。」
「また美緒は大忙しか」
徹子が苦笑して言うと、美緒はちょっと困惑気味であったが同意する。
「北郷隊長も、部隊掌握で忙しくなりますし。
階級が上がると言うのは大変ですのよ?」
「そうですね。」
273 :影響を受ける人:2014/12/21(日) 21:56:04
軍人の家系である凛と醇子、小毬も頷く。
まだ軍の事をよく知らない徹子は、「そんなもんか?」と納得しておくことにする。
それよりも気になるのは、新しい上司だ。
「それで、下田隊長はどういう人なんですか?」
「・・・北郷よりは厳しい。
・・・技量は比べるな。」
簡略して言ったが、目の前には困惑しか浮かぶ少女たちしかいない。
簡略し過ぎたか?と思ったので、不安を和らげるために苦手な会話を再開する。
「・・・勝手が変わるから不安だろうというのはわかる。
・・・下田は腕というよりも指揮能力が良い。
・・・従っていれば、まぁ・・・間違いはない。」
「なんか不安だ。」
何と言っていいかわからない複雑な表情で、徹子は皆を見渡す。
やっぱり不安と困惑しかない。
とりあえず納得はしないといけないのはわかる。
納得した事を述べると、サエは美緒以外に就寝するように言った。
これにも困惑した一同だが、彼女の強い視線に押されて渋々退出した。
外に出てすぐに徹子と里子は聞き耳をしようとしたが、里子は凛に耳を引っ張られて、徹子は出てきたサエに睨まれて逃げるように去った。
そして二人きりとなった美緒は、緊張により生唾を飲み込んで目の前に座りなおしたサエを見上げる様にみる。
「・・・さて。坂本美緒一飛曹。」
「ひゃ、ひゃい!」
緊張して変な返事になってしまった。
アワアワしているの余所に、サエは何時も通りだ。
「・・・これから言うのは、あいつらには言うな。」
「えっ?」
「・・・先の襲撃。・・・“アホウドリ”が確認されただけで、最低でも31体以上いるとの事だ。」
「そ、そんなに!?」
“アホウドリ”は最初の頃に出てきたのでも最大8体。
迎撃が成功したその後はあまり見かけなくなっていた。
見かけても1体が多く、最大でも2体。
つまりは・・・戦力として溜め込んでいたといことだろう。
「・・・撃墜できたのは、たった3体だ。」
「そんな・・・」
一日中襲撃してきて確認できたのは31体、そのうち3体撃墜出来たとはいえまだ多い。
しかも戦場は錯誤していた。数はさらに多くなる可能性もある。
「・・・ここからが本題だ。坂本美緒一飛曹。」
「は、はい!」
あらためて名を呼ばれ、今度はちゃんと返事が出来た。
しかし告げられたのは耳を疑うものであった。
「・・・状況によるが、敵の “核”を発見次第次の敵に向かえ。」
「・・・・・・・・・それってどういう事ですか?」
恐る恐る尋ねる。
「・・・敵が、前回の様に襲撃してきたならば。
・・・“核”の発見のみに注力しろと言っている。」
「攻撃に参加しなくていいんですか?」
否定してほしかった。
「・・・そうだ。」
しかし目の前の人は肯定した。
「でも、それじゃ・・・」
「・・・お前の任務は、“核”の発見だけだ。」
274 :影響を受ける人:2014/12/21(日) 21:56:47
悩むように頭を抱えた美緒の前で、無表情のサエは変わらぬ声音で言い放つ。
「味方・・・味方を援護しちゃいけないと言うんですか!?」
「・・・そうだ。」
「皆が苦しい思いで戦っているはずなのに、「見捨てろ。」って言うんですか!」
「・・・そうだ。」
「そんなの出来ません! 他の魔眼使いの人だっているはずです!!」
「・・・確かにいる。「だったら!」・・・お前ほどの精度は無い。」
重い沈黙が場を支配した。
「・・・確かに、他の魔眼使いは8人いる。
・・・陸戦ウィッチに3人、中央に1人。
・・・空は、陸軍海軍合わせ4名。
・・・1人は重傷を負い、本土に帰還している。
・・・2人は夜間哨戒に必要。
・・・最後は、お前だ。」
「以前、共闘したアドルフィーネ・ガランド大佐は・・・?」
「・・・上がりを迎えつつある人物。 ・・・更にいえば、他国の隊員を纏める総隊長だ。
・・・無理は言えん。」
縋りつく様に言うが、現状には勝てない。
サエとしても、負担の大部分を担う事になる美緒をフォローしたいとは思っている。
しかし己の使い魔がフクロウのせいか、夜間戦闘も難なくこなせる技量があった。
章香としても信用できる人物であり、確実に任務をこなせられる旗本サエは必要不可欠。
外れるなどできない。
そこで昼間を中心として活動してもらう事にし、遊撃部隊として運用する事で決着を見た。
しかしこの命令は彼女には重すぎる。
章香は最初自分が言うと言ったが、それをサエが押しとどめて代わりに恨まれ役となったのだ。
友さえ見捨てろと言う命令・・・
貴重な魔眼使いを保護するためとはいえ、やるせない思いが渦巻く。
その後、二三ほど話したが上の空の様な返事があるだけ。
話し終った時には、小さな学兵は更に小さくなって項垂れていた。
かけるべき言葉が見つからない、その言葉を書ける資格もないと、サエはその場を後にする。
しばらく俯いていた美緒は、力なく席から立つとフラフラと部屋から出ていく。
自室に割り当てられている部屋に戻ろうとしたが、先程の話を思い出してしまう。
今、会いたくない。
そう思った美緒は、そのまま基地をフラフラと歩きまわる。
別にどこに行くとかは決めていない。
ただ、気持ちの整理をしたかった。
当てもなく、フラフラ・・・フラフラ・・・歩いていく。
そんな時だった。声を掛けられたのは。
「坂本、大丈夫か?」
「・・・ぇ?」
声のした方を見ると、隊長に任命された早良ミチルがベンチに座っていた。
タバコを吸いながら。
「せ、先輩・・・タバコ・・・・・!」
「ん? ・・・ああ、これか。」
ワナワナ震えはじめたのを見て、視線が自分が吸っているタバコに注がれているのに気が付いたミチルだが、気にせず一服吸う。
「まだ、未成年ですよね?」
「そうだな。」
「駄目じゃないですか!!」
驚く様に大声で咎めると、ミチルは苦笑しつつも一本吸い終えた。
そのまま近くの灰皿に入れて消すと、もう一本引きだす。
「・・・これはな、私の再確認なんだ。」
「さい、かくにん・・・ですか?」
「ああ・・・私の罪の、な。」
「・・・・・・罪。」
急に黙り込む美緒にミチルは視線だけ投げかけ、手で座るように促す。
それに対して恐る恐ると彼女の隣に腰を下ろした。
「知っているんだろ?」
「な、なにがですか?」
唐突に話を振られて、動揺する。
見た目からも丸解りの態度に、ミチルはただ笑う。
「私の経歴さ。」
「・・・詳しくは聞いていませんでしたけど、それなりには。」
小さく肯定した後輩の頭を乱暴に撫でる。
最初は叩かれると思っていた美緒は、不意打ちに動揺して目をグルグルさせた。
「あわわわわわ!」
「あっははははは!
とりあえず、隊長達には黙っていてくれよ?」
代わりに話をしてやるから。そう言ってミチルはタバコをゆっくり吸った。
以上です。
以前、扶桑国には魔眼使いが9人いると言いました。
九曜さんも入れて9名です。なので作中の8名はあっています。
次回はミチルの過去の御話を入れようかと思っていますです。
ナハト様・・・大丈夫ですよね(汗
最終更新:2016年02月14日 13:18