- 592. earth 2011/10/12(水) 00:12:11
- 憂鬱世界の仮想戦記事情についてのネタSSです。
相変わらず妄想ネタで短いです。本編がこうなるとは限りませんのでご了承ください。
西暦196×年、世界は何とか安定を取り戻しつつあった。
だがそれまでに多数の人命は失われ、世界人口は大きく減じていた。だがそれでも漸く安定すると娯楽を求めるのが人の常だった。
そして日本に大きく水を開けられた欧州や旧アメリカ(特に西海岸)では、史実日本のように仮想(火葬)戦記が流行しようとしていた。
「……いや〜これは凄いですね」
引退したにも関わらず政財界に強い影響力のある辻は、手に持った西アメリカで出版されている仮想戦記を手にとって苦笑いした。
そんな辻を嶋田は横目で見る。何しろここは彼の自宅の応接間なのだ。
「というか、何でここに居るんです?」
「いやはや、まぁ雑談をしにですよ」
「貴方が雑談なんて信じられないでしょうに」
同じく引退したにも関わらず、政財軍に強い影響力を持つ昭和の元老と言われる嶋田はきっぱりと言う。
「おや、雑談ですよ。まぁ少し重要なことがぽろりと零れるかも知れませんが」
「やれやれ。まぁ良いでしょう。で?」
「このお話を見てどう思います?」
「まぁ凄いですね……というか貴方も笑っていられないでしょうに。中にはテロリストや軍の反動分子に暗殺されるなんて話もありますよ」
「嶋田さんだって似たようなものじゃないですか。日本海海戦で戦死していたり、テロで死んだり、中には未来人によって強化された米軍が
東京を奇襲して、その際に戦死なんてネタもありますよ」
机の上にある仮想戦記(翻訳済み)は多種多様だ。
「太平洋艦隊遂に勝つ」とか「星条旗征く」とか「欧米連合艦隊進撃す」など、史実を知っている人間からすれば突っ込みどころが
満載のものだった。
いやこの世界の日本人なら噴飯物と言えよう。
だが辻は笑ったままだ。
- 593. earth 2011/10/12(水) 00:12:55
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「良いじゃないですか。お話の中くらいは、彼らが勝っていても。その程度で気が晴れるならお安いものですよ。
ですが、こうも反日ものが流行るというのはやはり、反感が強いのでしょうね」
「日本や日本の同盟国(一部の国を除く)が隆盛する一方で、欧州や旧アメリカはかなり零落していますからね」
「まぁ日本人の思い上がりも一時よりはマシになりましたが、一部の馬鹿者が無茶をしてくれます。注意は必要でしょう」
「程度の酷い連中には手を打ちますが」と怖いことを言う辻に、嶋田は乾いた笑みを浮かべつつ話題を戻す。
「日本ではあまり仮想戦記は流行っていませんが、やはり勝ったからでしょうね」
「でしょう。まぁ倉崎老の遺志を継ぐ連中が幻の機体を綴って本にしたりしていますが……」
「変態機をこよなく愛している連中ですからね……あと擬人化も」
苦労させられたことを思い出し嶋田は遠い目をする。
「ですが娯楽などを通じて、彼らの感情を推し量ることも重要。色々と調査してみましょう」
だが彼らはこのとき知らなかった。
外国の仮想戦記の作者達は自分達が書いていることなど現実に比べれば大したことなどないと思っていることを。
日本や日本人の辿った軌跡のほうが(白人達にとって)よほどファンタジーだったということを。
最終更新:2012年01月02日 18:32