763 :影響を受ける人:2015/02/16(月) 21:55:20
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
今回長くなりました。
戦闘中に山田里子が意識を失った。原因は魔力欠乏症による意識混濁である。
他にもストレスや、強制魔力回復薬の過剰摂取もあった。
たとえ大人であっても、戦場と言う世界は過酷極まりない世界だ。
連続した出撃は、彼女の肉体を疲弊させるには十分すぎた。
ただ、救いがあると言えば・・・生きて戦場を後にする事が出来る、という事だろう。
間一髪で里子を救出できた飯島凛は、泣きそうになりながらもそのまま戦場を離脱し、近場の地上陣地に移送した。
本当なら駐屯基地に送りたいが、いまだに戦友たちが戦っている空を後にするには憚れた。
しかしそれ以降、山田里子とは会っていない。
ただ報告で、
『無事に移送完了。治療の為に、本土に移送する事が決定』
だけが知らされただけだ。
「はぁ・・・」
櫛歯の様に欠けていく仲間達。
学兵だけではなく、ベテランと言えるウィッチ達にも被害が出始めている。
夜戦を行っている旗本隊でも二人欠け、くるしい状況だ。
ベッドに横たわり、気落ちしていると・・・誰かが入室してきたのがわかった。
「あの・・・さぁ・・・」
「なんですの?」
やってきたのは若本徹子。
昨日の出来事から朝食時まで顔を合わせず、戦場に出てもろくに会話が無かった。
彼女は何か言いたそうにしていたのだが、最初に切り出したのは問うた凛。
「昨日、ああ言った手前なのですのに。人の事、言えませんわね。」
「そんな事! なぃ、ぜ・・・」
みっともない自分自身に呆れ、侮蔑を込めた苦笑をする。
そんな凛を見て、徹子は否定しようとしたが声に力は宿らない。
凛は身を起こして徹子の顔を見詰める。
「徹子さん、ごめんなさい。」
「委員長・・・俺の方こそごめん。」
お互いに謝りあい、ちょっと可笑しかったのか小さく笑いあう。
「へへっ♪」
「ふふ・・・ それで、御用件は?」
謝りに来ただけではないのでしょう?そう言うと徹子は驚いて目を剥くが、すぐに敵わないなぁ~と言って近くの椅子を引いてきて座った。
「昨日の事なんだけど・・・黙っていてくれないか?」
「昨日の喧嘩・・・ですの?」
「いや、それはいってもいい。問題は・・・“力”についてなんだ。」
「“力”・・・特殊能力ですわね?」
「うん。私の能力は問題があって・・・」
徹子から詳しい能力の話を聞いた凛は驚き、同時に能力制限を聞いて納得。
けして口外しないと約束した。
そして同時に思う、彼女が能力を使わなければならない状況が来ない事を。
764 :影響を受ける人:2015/02/16(月) 21:56:09
―――――
戦場にとうとう雨が降り始めた。
忌々しい雨は風と共にやってきて、通常戦闘機隊の移動と出撃を制限する。
基地司令はまだ高角砲部隊がいるという事で残り、他の部隊は後方に移動させた。
すでに大規模後退作戦は発動されており、遅延は許されないがミスのせいで遅れは少なからず発生。
民間人の退避も事前通達して手荷物だけの移動としたが、先祖から開墾し続けた土地を見捨てる事は出来ないと、抵抗する者達も存在した。
これらの要因が重なり、全体としてみれば順調だが部分、部分で混乱が見られるという事態になりつつあった。
決死の戦闘により爆撃機部隊が稼いだ時間を無駄にしないよう、地上部隊も連動して後退し始めている。
本当なら通常戦闘機部隊も多少は援護に出撃できる計算だった・・・風雨さえなければ。
風雨の中でも行動でき、シールドを張れるウィッチの負担は増すばかりだ。
そんな中、先頭に早良ミチル、二番手中森彩子に、三番手に井沢十華、そして坂本美緒を後方に置いた雁行陣で戦場を飛び回っていた。
「美緒ちゃん、頭と目・・・大丈夫?」
「なん、とか・・・」
十華に返事をするが、実際は少し辛い。
連日の能力行使に脳が疲れ始めており、眼球にも疲労が溜まっていて痛みを訴えていた。
魔眼殺しの眼鏡は能力を制御してくれるだけなので、回復は自分で調整しなければならない。
早く睡眠をとったり、冷却用術符を張ったりしたが効果が薄く、今では以前の様に眼帯に戻っていた。
そのせいで遠近感がつかめず。度々ふらつく事が目立つようになっている。
「隊長さん、今日は早めに上がる事を考えた方がいいと思う。」
「そうだな・・・」
ミチルも内心では、もう美緒を戦わせることに抵抗を感じていた。
任務上同胞を見捨てなければならない。
その事がどうしても彼女の負担となっている。
さらに仲間が戦死、又は本土に戻されていなくなるというのもストレスとなって蓄積されているのだ。
出来うることなら代わってやりたい。
しかし、ミチルは普通のウィッチだ。代わってやることはできない。
隊長として彼女を是が非でも守る事しかできないのだ。
美緒を気遣って、一時的に並行飛行していた十華が元の場所に着くとミチルの方を見る。
「次は何体だっけ?」
「4体だ。相手も本腰を入れ始めたという事だろう。」
「うわぁ・・・ いやになるさぁ・・・」
「護衛も今までになく多いそうね。」
嫌そうに顔を歪める十華を尻目に、彩子は淡々と事実を述べる。
いままでペアーで攻めてきた“アホウドリ”だが、今回向かう戦場では4体纏めて確認されている。
別に珍しい事ではないが、この数日は2体での出現が多かったので珍しいと言える。
それに比例して護衛の数も多いのは、御愛嬌と言える・・だろうか?
「とにかく気を抜くな。坂本、お前は危ないと思ったらすぐに退避するんだ。」
「え、でも・・・」
「いつも言っているが・・・いいか、お前に代わる人材はいない。
だからこそ、生き延びねばならないんだ。」
「はぃ・・・・・・」
望んだ返事は小さい。しかしこれでいい。
こうしておけば、何かあったときには自分を恨むだろう。
優しい彼女に怒りの捌け口を用意しておけば、それだけでも負担が軽くなるはず。
前を向いて黙って飛行していたが、ふと気が付く。
「・・・そう言えば煙草。最近吸う機会が無かったな。」
「どうしたのよ?」
「いや。独り言だ。」
苦笑しながら答え。帰ったら吸えばいいと思い直す。
訳が分からなかった彩子だが、気にせず後に着いていった。
765 :影響を受ける人:2015/02/16(月) 21:56:41
―――――
飛行する事数十分、戦場に到達した時には大乱戦が行われていた。
“スズメバチ”がウィッチを追いかけ。
別の場所では“ウシアブ”が前面に機関銃の雨を喰らって爆散する。
“アホウドリ”が凄まじい弾幕を張って寄せ付けないばかりか、弾薬係と思しきウィッチを狙うように飛行する。
この戦場には回復役の呪歌使いもいるという情報があったが、一部分でネウロイの動きが鈍い所が見受けられる。
ウィッチ達はわざとそこに誘い込み、着実に削っているようだ。
しかし圧倒的な敵の数の戦闘に、一同は気圧され、茫然としてしまう。
「っく! 思った以上に混戦だ。全員離れるなよ!」
「「「了解!!」」」
何時もの通りの作戦を決行すべく上昇を開始する。
全員が上空に駆け上がる最中、美緒は戦場を見渡す。
シールドの光が見えたり、ネウロイの爆散した跡が見えたりもする。
しかし敵の数は一向に減ったようにも見えない。
圧倒的な物量・・・これこそネウロイが人類に対して優位に立つ戦術だ。
戦いは数を揃えるのが基本。
そう教えられてはいるが、敵にするとここまで厄介なものだとは思わなかった。
「よし! じゃぁ最初にアイツから行くぞ。」
「右に旋回しているやつね。いいわさ。」
ミチルの声を聴き、思考を止めて眼下を見下ろす。
どうやら狙いは、やや右側中央部を飛行している“アホウドリ”のようだ。
観察するように眼下を見下ろす。こうして上空からみると・・・
(右と左に別れている様に見える・・・)
敵は2体ずつペアーを組んでいるようだ。この辺はかわらない。
ただ気になるのは、なぜか中央に全く寄ってこない事。
訝しんだが、すでにミチルはタイミングを計って突入すべく行動に入っている。
今言うとタイミングが無くなって、味方が苦戦するかもしれない。
それに、自分が思っているだけだから、言って混乱させるわけにもいかない。
兎に角今は何時も通りに行い。指示したがっていけばいい。
そうすればミスはないだろう。そう思い直して眼帯を外す。
未だ制御に苦心する魔眼。
何時か、これを完全に“自分の力”で制御したいと思う。
その思いを胸に秘め、銃を構え直して合図を待つ。
「作戦開始!」
ミチルの掛け声と共に、先頭の二人が最初に駆け下る。
続いて十華と美緒も急降下に入った。
眼下の敵もすぐに四人に気が付き攻撃してくるが、露払いの二人が撃破するか牽制を放つことで活路が開く。
「よし!」
うまい具合に合間を通り抜け、四人は第一目標に命中弾と目印をつけることに成功した。
続いて第二目標と行きたかったが、駆け上がる工程でぶち当たりそうなのはいない。
仕方なく敵を蹴散らしながらの上昇とした。
その後は特にこれといった問題も無く、第三第四目標共に目印を付ける事に成功。
上空で集合して眼下を見下ろすと、“アホウドリ”が一体爆散するのが見える。
「これで終りさね。」
「帰還し終わるまでが戦場よ。」
十華がおどけ、彩子が苦笑しながらも小突く。
最初はどうなるかと思われた特務隊だが、今ではいい感じだと思う。
そう思いつつミチルは美緒を見やる。
まだ少し暗い表情をしている彼女に溜息を吐き、声を掛けようとした時だった。
周囲が急に暗くなり、ネウロイ独特の異音が鳴り響き始めた。
「な、なんなのよ!?」
急激な変化に十華が慌てて銃を構える。彩子とミチルも銃を握り直し美緒を守れるように移動する。
美緒は不安に駆られ、ペイント弾しか入っていない銃を構える。
そうでもしないと、更に不安が増しそうだったのだ。
眼下でも異常を察知したウィッチ達が何事かと上空を仰ぎ見・・・
そんな彼女たちの真上から、赤い光の雨が降り注いだ。
以上です。
次回に中ボス登場。
美緒ちゃんはこの試練を超えられるか・・・
ちなみに、中ボスの形は既存の飛行機ではありません。
生物に近いかな?
最終更新:2016年02月14日 14:25