942 :影響を受ける人:2015/02/22(日) 22:00:16
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
残酷、流血表現があります。
あと、今回も長くなりました。



提督憂鬱×ストパン+零
第五十話 ―墜ちる空Ⅻ―



赤い、紅い、朱い。

「きゃあああああ!!」
「なに! なんなの!!」
「回避、回避をしろぉォォ!!」

怒号と、叫びと、悲鳴が戦場に響き渡る。
幸いにして薙ぎ払うような攻撃であった為に、殆どのウィッチが回避できたのは僥倖だった。
そんな中で、最も近くにいた特務隊メンバーは、反撃も出来ずに散り散りとなってしまう。

「ミチル! 美緒ちゃんをしっかり守りなさいよ!!」
「わかっている!」

別れ際に何とかそれだけの言葉を介し、ミチルと美緒は急降下で攻撃をかわしていく。
赤い光の雨が降り注ぐ戦場で、二人は必死に生きるために行動する。

「っく!」

攻撃をシールドをストライカーの先から展開して何とか防ぐが、今ままで受けた衝撃と全く違う圧力にうめき声が上がる。
すぐそばの美緒もシールドに注力して展開しているが、実弾の一撃を受けるたびに一気に押し下げられていく。
それでも何とか距離を離し、攻撃が止んで一安心できた。
ふと周りを見渡せば、同じように編隊維持すらできなくなったウィッチ達が個別にネウロイの攻撃を捌いているのが見える。

個別に対応しているが故に余裕が全くなく、合流しようと必死に反撃していた。
そんな中でミチルと美緒は、この状況を作り出した犯人を見ようと上空を仰ぎ見て・・・呆然となる。
雲を突き破るように現れたそれは、丸い頭部を下にして降下してくる。
綺麗に彩られた六角形の模様は、均一に赤いレーザー照射が円筒状の胴体に並び。
実弾を発射する砲口が、王冠の棘の様に均一に並んでいる。

巨大な塔のような胴体、その後半は六つに分かれたタコ足の様で、呼吸するように開いたり、閉じたりしている。
動きはゆっくりとしているが、並走している“アホウドリ”がいるのを見て同じ速度で飛行しているのがわかった。
“アホウドリ”と並走しているからわかる。その圧倒的な巨体が・・・

「デカい・・・」

ミチルの呟きが全てを代弁していた。
敵が新たに投入してきた大型ネウロイ。それが戦場に現れた。
大型ネウロイはそのまま雲海の下に身を全て出し、地面と水平に飛行する。
自転しながら大型ネウロイは再び攻撃を放つ。

「坂本、逃げるぞ!!」
「はっ、はい!」

豪雨と言っていい攻撃に一目散に逃げ出す。
上空から降り注ぐ死の雨に、恐怖で歯が知らぬ内にガチガチ鳴らし始めていることにミチルは気が付いた。
未知の敵。これほど厄介な敵は無い。
兎に角今は距離を離すのが先決として、攻撃範囲外出ようと必死に回避する。
チラリと後ろを見て、着いてきているか確認すると、必死に回避している後輩が見えてちょっとだけ安心する。

自転しながら攻撃しているおかげで、殆どタイムラグ無しに攻撃を放つ大型ネウロイ。
しかしその攻撃範囲は前方に寄っているらしく、横にずれれば範囲外に抜け出せた。
荒く呼吸を整える身を横目に、ミチルは十華と彩子に連絡を取る

943 :影響を受ける人:2015/02/22(日) 22:00:40

「こちら早良ミチル。聞こえるか?」
『・・・・・・』
「こちら早良ミチル。聞こえたら返事をしてくれ。」
『・・・・・・』

返答は無い。
やられたのかと一瞬思ったが、すぐに否定する。
今まで同じ戦場に出ていた二人の技量は良く知っている。
無事に逃げていると考え直し、だいぶ落ち着いた美緒の方に向いた。

「坂本、いいか?」
「ハァ・・・ なん、ですか。」
「私はこれから帰還するつもりだ。」
「え・・・!?」

思わぬ言葉に美緒は目を見開いてミチルを見る。
視線の先の先輩は、何時もと変わらない厳しい表情で戦場を見詰めている。

「わかれた二人とも連絡が付かない。これ以上戦場にとどまるのは危険だと判断した。」
「そんな!」

視線をミチルから戦場に移せば、“ウシアブ”“アホウドリ”“スズメバチ”に追いかけられているウィッチの姿がある。
彼女達を見捨てて逃げるというのか?
抗議の為にミチルを睨む。しかし・・・予め言われていた命令を思い出すと、何も言えない。

必ず生きてい帰る事。味方を見捨ててでも・・・

それがどうしても、重い・・・
舞鶴にいた頃から慕い、信頼している北郷章香経由でやってきた命令。
しかしこれだけは聞きたくない。
せめて、あの大型ネウロイの弱点を知る事だけでも!
そう思っていると、ミチルはなぜか銃の点検をしていた。

「では、いくぞ。」
「自分は・・・私は!」
「坂本一飛曹。これから奴の弱点を探りに行く。復唱は?」
「・・・・・・へ?」

あれ?

「復唱はどうした?」
「あ、あのー・・・ 帰還するんじゃ?」
「お前の主任務は「敵の弱点を探る事」だ。
 未知の敵だからと言って、弱点も探らずに帰れば大目玉だからな。」

そう言ってにやりと笑い、銃で大型ネウロイを指し示す。
混乱していた美緒だったが、次第に言葉を理解して笑顔になっていくのがわかる。

「はい!」
「いい返事だ。いくぞ!!」

二人はストライカーを吹かし、一気に上昇していく。
そのまま接近するのは危険なので上に出る必要性がある。
遠視と同時に透視もできなくはないが・・・動きを止めないといけない。
流石に二つ同時使用は、美緒にはまだまだ技量が足りなかった。
急がば回れ・・・少し遠めで上昇していく二人。

しかし、護衛のネウロイは目ざとく二人を見つけて突撃してきた。
長距離を狙うレーザーは、さすがに威力が減衰しているので楽に防御できるのが有り難い。

「このまま雲の上に出るぞ!」
「はい!」

黒い雨雲に突入していく。
ビシビシと顔に小さな氷が当たるが、腕で何とか保護をして耐える。
そして雲を抜け出ると眼前に青空が広がった。
美しい光景に一瞬心を奪われるが、後ろから放たれるレーザーを見て慌てて先行するミチルの後を追う。

944 :影響を受ける人:2015/02/22(日) 22:01:22

「よし。私が先行して潜る。後は・・・わかるな?」
「何時も通り、すれ違い様にですね。」
「そうだ。」

後から雲を突き破ってきた“スズメバチ”はこちらを見失ったのか、旋回しているのを尻目にこちらは雲海ギリギリの高度で飛行する。
そしてこちらに気が付いて攻撃を放った時には遅く、二人で降下に入っていた。
再び雲海に突入した二人は、予測した未来位置を信じて駆け下る。
もう降下すれば後戻りはできない。

覚悟を決めて、ひたすら高度を下げていく。
だが敵もこちらの意図を悟ったのか、今まで見た事が無い太いレーザーがすぐそばを通過した。
その熱量で雲を吹き飛ばし、こちらの姿が露わになってしまう。
大型ネウロイはただ単に、上から来るようだから目暗打ちをしただけなのだが、圧倒的な攻撃力に冷や汗が流れて止らない。

姿が見えたことで攻撃は苛烈になっていく。
弾幕は“アホウドリ”以上と言え、別に撃破するつもりではないが、この弾幕に突っ込まなければならなくなると思うと気が重い。
僅かに円を描く様にして降下し、レーザーが、実弾が隣を通過していく。

「ぬぁ!」
「先輩!!」

その内のレーザー一筋がミチルを捕らえた。
咄嗟にシールドを張って耐えるが、離されるように薙ぎ払われる。

「心配するな! マーキングを!!」

光の渦に巻き込まれつつも、ミチルはそれだけを言って離れていく。
視線で追っていた美緒だが、すぐさま降下速度を上げた。
たった一人での突入に、恐怖が胸を締め始める。
しかしここでマーキングをしなければ、後のウィッチが大変なことになる。
恐怖心を抑え、歯を食いしばって耐えた。

眼帯を捲るのも惜しく引き千切って魔眼をさらし、大型ネウロイを透視する。
急降下であるから、時間はそれほどない。

(どこに・・・あった!)

ネウロイの核はご丁寧に中心部にあった。
上空から見ているから本当に中心部にあるかはわからない。
“アホウドリ”が弱点をランダムにしたように、位置は微妙に違うかもしれないのだ。
それでも銃を構えて狙いを付ける。

(焦るな・・・ 遠くから狙っても思った位置に当たらない。
 寧ろぶつかる位で!)

集中し、狙いを付けて降下していく。
現前に、大型ネウロイの巨体が次第に大きく迫っていく。
そして射程圏に収まった。

(今だ!!)

放たれたペイント弾は、ものの見事に外れた。

「・・・え?」

訳が分からない。いきなり核が消えたように見えた。
既に真上から迫る時間はもうない、内心で疑問に思いつつ横に抜ける。
その最中にもう一度透視して狙いを付ける。横からの、一瞬しかないチャンス。
だがそれも、放たれた弾丸は外れてしまう。
しかし今度は原因がわかった。

敵はまさにタコの様に、一瞬で足?を閉じると加速したのだ。
余りの理不尽さに美緒は茫然とする。だから“ウシアブ”の接近に気が付かなかった。
異音に気が付いて振り返ったときにはすでに回避できない距離。
目を見開いて、何もできずにいたが誰かに押されて攻撃を受ける事は、無かった

945 :影響を受ける人:2015/02/22(日) 22:02:00

「・・・ごふっ」
「・・・・・・え?」

目の前に手を突き出したミチルがいた。
ミチルは口から血を吐き出しながら逃げる“ウシアブ”に射撃を喰らわせ斃す。
しかしそれが限界だった。
ミチルはそのまま落ち始める。

「あぁぁぁぁぁぁ!!」

ミチルに救われた。ミチルは負傷した。
それに気が付き、自由落下し始めた彼女を美緒は追う。
叫び声を上げながら後を追い、銃を放りすてて胴体を抱え込んで水平飛行に入る。

「先輩!」
「ああ・・・ 聞こえているよ・・・」

息も絶え絶えに返事が返ってきた。その間にも白い布地が赤く染まっていく。
“ウシアブ”の実弾が腹部を貫通しているのだ。
真っ赤に染まるのも構わず美緒は呪歌使いを探す。
しかし混戦の最中で個人を特定するのは難しい。

「なぁ・・・ 坂本・・・」
「すぐに手当てを!!」
「無理だ・・・ 持たないよ・・・」
「そんな事ありません!!」

必死に探す美緒を安心させようとミチルは笑顔で頭をなでてやる。

「無事で・・・よか・・・た・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」
「先輩?」

撫でてられた事に戸惑い、顔を上げると嬉しそうで困っているミチルが居て、力が抜けると同時に撫でていた手も垂れ下がる。

「いやだ・・・
イヤダあああァァァァァァぁァァァァァッッッ!!!!!!」



以上です。
早良ミチル戦死。
大型ネウロイ:参考の形はタコウィンナー六本足

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最終更新:2016年02月14日 14:27