673 :影響を受ける人:2015/03/08(日) 22:30:41
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
“オニグモ”の出現は、各方面の軍人達に衝撃を与えた。
その圧倒的な火力は優に及ばず、瞬間加速と言う特殊能力は脅威を伝えるには十分過ぎる。
一体出現しただけで前線を強行突破され、一つの都市が壊滅する。
事態収拾を何とか行えたのは、相手が突然襲撃を止めたからに他ならない。
まだ“オニグモ”に不備があるからなのか、それとも突出したネウロイ軍に対して決死の攻撃を加えたからなのかはわからない。
しかし時間を与えられたのは幸運だった。
戦線の整理、民間人の避難、対策の為の会議・・・やる事はいくらでもあったから。
そんな中で、北郷章香等正規の軍人ウィッチ達は会議を開いていた。
―――――
「と、いうわけで本土の大本営からはウィッチでの討伐を命じなかったわ。」
「「「「「・・・・・・」」」」」
江藤敏子が締めくくって全員の顔を見ると、全員の顔から安堵と困惑の表情が浮かんでいた。
まあ無理もない。“オニグモ”と呼称される大型ネウロイの被害は甚大過ぎた。
前線に出張っていたのがウィッチだけであった為に、被害もこちらに集中している。
小型に対しては通常兵器でも対抗できるのだが、中型大型になるとキツイ。
どうやって戦うつもりなのか?
「当初の案では海軍の戦艦・・・長門型戦艦二隻(長門・陸奥)、伊勢型改装滞空戦艦二隻(伊勢・日向)で撃滅を考えていたそうよ。
しかしながら敵をそこまで誘引するには、途中にある都市を放棄しなければならない。
その為の人員やら、事務処理やら・・・大変だからそれは見送りされたわ。
代わりに考えられたのが列車砲よ。」
「列車砲・・・」
誰かが呆れたように呟く。
「紀伊型戦艦の主砲が交換されたのは知っているわね?
交換前の処分する主砲を改造、設置を考えられているわ。」
紀伊型戦艦は45口径41センチ砲を装備していたが、
夢幻会の介入により開発が進み50口径41センチ砲を全艦に搭載する事が出来た。
その為、まだ処分されていない45口径41センチ砲が保管されており、それを使用する案が出たのだ。
無論まだ計画段階であり、どうなるかはわからない。
大型の大砲になるから移動は困難、基本的に待ちの戦術となるのは必至だ。
それを守らないといけない事を考えると、億劫と言える。
更に言えば堀井大将の強硬派が反対しており、これを説き伏せるのが先決とまで言われている。
どちらにせよ、ネウロイが攻撃の手を休めている今の時期に動かないと、取り返しのつかない事になる。
「私達も作戦を考えているけれど、今は考えない。
私達の前には、差し迫った問題があるわ。」
一週間の大攻勢は彼女等ウィッチの損耗を速めてしまった。
今まで損害を出していなかった北郷隊・狐狸部隊からも損害が出ている。
山田里子等、学兵の魔力欠乏症による戦線離脱。
新型ネウロイ登場と疲労による戦死。
長い戦闘による武器の損耗。
これの内、武器の損耗は気にしなくてもいい。
リベリオンの質の良い武器が有入されてきているし、南洋島の工場がフル稼働して送ってきてくれている。
術符に関しては法術士学校・導術士学校・民間人の中にいるウィッチの内職により、何とか保っている。
しかし人員はどうにもならない。
魔力欠乏症自体は治療法が昔から確立されているので問題は無い。入院が長いという点を除けば・・・
674 :影響を受ける人:2015/03/08(日) 22:31:22
その後は確認と言った会議に終始し、すぐに解散となった。
隊長陣がすぐに出ていく中、会議室に残ったのは狐狸部隊隊長陣と北郷美香、江藤敏子だ。
理由はわかっている。早良ミチルの戦死だ。
智子は常日頃から食って掛かっていた。
真っ直ぐすぎるミチルが、どうしても危なく見えていたから。
他のメンバーも気にしてよく話しかけていた。
しかし懸念は現実となり、部隊は暗く落ち込んでいる。
特務隊の中森彩子と井沢十華が、あの戦場を生き残りをかけて戦い、その最中に何とか美緒を見つけた時にはミチルは死んでいた。
最初は眠っている様に見えたのだが下半身を濡らす血流と、ストライカーが抜け落ちて見える素足を見て悟る。
そして美緒は必死に呪歌使い頼み込んでいた。
早良ミチルを助けてくれ。と・・・
以下に回復が得意である彼女しても、死者を甦らせることは出来ない。
しかし涙ぐみ、必死に頼み込む美緒は正気ではなかった。
慕っていた人物が目の前で死に、それを受け入れる事が出来ないでいたのだ。
彩子と十華は美緒を落ち着けさせようとしたが、逆に銃で来るなと威嚇されてしまう。
困り果てた二人だったが、呪歌使いが〔催眠の歌〕を〔治療の歌〕と偽って美緒にかけて眠らせ、何とか基地に帰投する事が出来た。
基地に帰投後は騒然となった。
特に徹子達のショックは大きく、病室に運び込まれた美緒に付き添い続け、今も一人は必ず傍にいる。
昏々と眠る坂本美緒を見る限り、かなりの疲労が溜まっていたと推測される。
精神的なストレスもあるのだろうが・・・
今のところ目覚める兆候は無い。
早良ミチルに関しては、遺体はすぐに移送されて荼毘にふせられたという。
遺骨は本土の家族の元に届けられるだろう。
江藤敏子は彼女を指揮下に置いていたから手紙を書く必要性がある。
後必要なのは部屋の整理だろう。
「で? 誰があの子の整理を?」
静かになった会議室で智子が問う。
それに対し、敏子は瞑っていた片目を開けて章香の方を見る。
「それは北郷隊だった学兵に任せようかと思う。」
「はぁ?」
てっきり自分達がやる物だと思っていた智子は、ストッキョンな声で応じてしまった。
隣にいた圭子が腕組みをしたまま章香を見る。
「それはまた、なぜ?」
問いかけられた章香は溜息を一つすると、目を伏せながら言う。
「若本徹子等の、学兵達の精神安定のためだ。
早良ミチル戦死は私達もショックだったが、彼女等にも強い影響を与えていた。
厳しく対応していたが、私達が思うよりも強い信頼関係が出来ていたんだろう。
それに坂本美緒が意識不明で寝込んでいる。
わかるだろう?
はた目から見ても、彼女達が不安定になっていることを・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
確かにそれは覚えがあった。
自分達もショックは受けているし、戦死に思う事はある。
しかし自分達はそれなりに分別が出来ている。
ならば、心の整理も兼ねて遺品整理させてやりたいと思うのは間違いではない。
「頼む・・・彼女達にやらせてやってくれ。」
頭を下げて頼み込む章香に、綾香と武子が顔を見せ合いつつ頷く。
智子は不機嫌そうだったが了承し。そんな隊長を撫でながら圭子も同意した。
礼を言い、さっそく伝えに行こうとした時、醇子が飛び込んできた。
坂本美緒が、目覚めたと・・・
675 :影響を受ける人:2015/03/08(日) 22:32:10
―――――
目が覚めた坂本美緒は、なぜ自分が病室にいるのかわからなかった。
だが徐々に記憶が蘇り、早良ミチルが死んだことを思い出す。
自分の油断で死んでしまった。その後悔が再び美緒に襲い掛かった。
しかし、仲間達がいたことにより何とか精神的な安定を取り戻せた。
もっとも医者からは精神安定の為に、本土に戻っての休養が必要と言われたが・・・
「美緒ちゃん・・・」
「醇子、大丈夫だから。」
心配そうに傍に立つ親友に、ぎこちない笑顔で答える。
心配性な親友は片時も離れない様にして作業に戻った。
若本徹子・坂本美緒・竹井醇子・飯島凛・大久保小毬の五名は、今現在早良ミチルの遺品整理をしている。
と言っても彼女の遺品はかなり少なく、二人で事足りそうなために残りの三人は他にないか探しに出ていた。
「手紙だ。」
「うん。・・・御家族の物みたいだね。」
ミチルの私物は、大半が手紙で埋め尽くされていた。
一番上にあったのは家族・・・主に妹と、母親からの物だった。
どれも心配そうで、身体を気にするモノばかり・・・
胸が締め付けられる思いにかられつつ、美緒は手紙を纏める。
後半は元の部隊・・・飯井部隊に関するモノだった。
それらは隊員達の家族からきており、罵詈雑言もあれば、気にしなくていいという内容のもある。
恐らく、ミチルは全員に詫びの手紙を送っていたのだろう。
本当に真面目な人だった・・・ 涙腺が緩んで涙が出そうになる。
何とか堪えて手紙を纏め終え、箱に詰めると醇子が肩を叩いた。
「ね、ねぇ。これって、タバコだよね・・・」
振り返ってみると、手にはタバコと・・・封筒が握られていた。
封筒はともかく、タバコには見覚えがあった。
「ああ。先輩は、時折吸っていたよ。」
「それっていけない事なんじゃ・・・?」
「そうだけど、理由があったみたいだし・・・って、醇子その封筒は?」
「これ・・・“遺書”って書いてある。」
「ッッ!!」
早良ミチルが残した遺書。
それを見た美緒の顔がこわばった。
以上です。
遺書の文が思いつかなかったため直に持ち越しです・・・
人、これを問題の先送りと言う・・・
最終更新:2016年02月14日 19:21