5 :影響を受ける人:2015/03/15(日) 22:10:10
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第五十三話 ―残されたモノ 遺したモノ―



――これを読んでいるのが隊長、もしくは同僚であることを願う。
――家族用のは別に書いてあるので、そちらを送って欲しい。
――もし自分であるならば、早急に廃棄した方がいい。
――隊長陣に見つかったらどやされるのが目に見えている。
――遺書に書くにあたり、私は何を考えていたかだが。

――激戦続く戦場で、いつ死ぬかもわからない状況で、せめて何か残せないかと思ったからだ。

――遺書を書くのは縁起が悪いと言われているのは知っている。
――しかし私は書かなければならない。
――飯井オトメ少佐が率いていた龍宮隊を壊滅させた責任が自分にはあったから。
――どんなに取り繕うとも、あの時の判断が間違っていたのには間違いない。
――だからこそ自分に対しても、後から来る学兵にも厳しくする。
――ある意味これは、

――自分に対する復讐

――であると言える。
――安易に自殺するなど許されるものではない。
――そんな事をすれば、心配して声をよく駆けてくれる穴吹隊長に申し訳が立たない。
――それに、生かしてくれた隊長達に申し訳が立たない。
――だからできうる限り生きるつもりではある。
――しかし、目の前ですくえる命があるならば、私は躊躇なく助けると決心している。
――隊長がしてくれたように。
――生きると言っているのに死ぬような発言があるが、これは

――私なりの、私が決めた生き方だ。

――穴吹隊長が見れば殴り掛かってくるだろう。
――あの人は容易に想像できる。
――でも曲げるつもりはない。
――しかし強制するつもりはない。
――あくまでこれは私個人の考えだ。
――もし、助けた人物が苦に思い訪ねてきたら言ってほしい。
――私は後悔などしていない。貴方を助けられてホッとしていると。

――そして復讐などと考えるならば、私に復讐してほしい。

――貴方にそんな思いをさせたのは私だ。
――これから気持ちを縛り続けてしまう咎人の私を恨んでほしい。
――そして私よりも長く生き、老人となって若くして死んだ私を罵って欲しい。
――私よりも優秀になり、無脳の内に死んだ私を見下して欲しい。
――矛盾を孕んで死んでいった私をあざ笑って欲しい。

――その人には、その権利がある。

――私の様になって欲しくないから。

――私を反面教師にしてほしいと思う。

――穴吹隊長。先に逝ってしまい、申し訳ありません。
――加東副隊長。射撃のコツを指導して頂いて、有難うございます。
――加藤隊長。御指導ありがとうございます。
――黒江副隊長。釣りに誘って頂き有難うございます。

――江藤大隊長。部隊に配属していただいて本当に感謝しています。

――若本徹子。お前はもっと連携を意識しろ。無茶をするなよ?
――竹井醇子。自信を持てば、良い指揮官になれる保証をするよ。
――飯島凛。仲間を大切にする心、基礎を忘れない姿勢を忘れるな。
――山田里子。お嬢様を支えているのはお前だ。決して自分を卑下するな。
――大久保小毬。お前を見ていたら、妹を思い出した。体を大切にな。

6 :影響を受ける人:2015/03/15(日) 22:10:45

――最後に坂本美緒。
――私は良い隊長だったか?
――私は見本になれただろうか?
――私はお前を守り切れたのだろうか?
――ただ願うのは、お前が無事である事だけだ。
――もし私の死を気に病んでいるならば、仲間を頼れ。
――お前の仲間達は、素晴らしい仲間だ。誇りに思っていい。
――それでも気にしているならばどんな事でもいい、切掛けを作って前に進むことを強く望む。
――私を見返して欲しい。
――自分はこれだけ成長したと。
――書きたい事はまだあるのだが、文章にできない自分が恨めしい。
――最後に皆に感謝と謝罪を、

――ごめんなさい。

――ありがとう。

―――――

関係者一同が集まった会議室で、江藤敏子が代表で早良ミチルの遺書を読んでいた。
遺書を見つけた美緒と醇子は大急ぎで江藤に提出、すぐさま集合がかけられた。

早良ミチルの遺書。

それが見つかった衝撃は大きく、全員黙って集合して聞いていた。
そして読み終わっても誰も動けないでいる。
醇子や小毬の嗚咽が部屋に響き渡る中、一人だけ怒りを浮かべたウィッチがいきなり机を握り拳で殴り飛ばした。

「あの馬鹿がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「「「っ!!」」」」

穴吹智子の両目からも涙は流れているが、鬼のような形相がなおさら彼女の内心を映し出している。

「死んだら、何の意味もないのよ。」
「智子・・・」

震える声の呟きは、隣にいた圭子にしか聞こえなかった。
怒りにより握り拳からにじみ出る血を覆い隠す様に手を握ってやると、ビクッと反応したがそのままにした。
本当は激情のまま叫びたいのだろうが、我慢している年下の隊長を優しく抱きしめる。
黒江綾香は壁に寄り掛かったまま目を伏せているが、喰いしばる音から内心を推測できる。

「ったく・・・」

武子は髪の毛をグシャグシャにして何とか気持ちを落ち着けさせようとし、学兵達の様子を見る。
彼女達も一つに寄り固まって嗚咽を上げていた。
その中心となっている坂本美緒は涙が止まらず。
みんなに抱きしめられている事で、何とか声を上げずにすんでいる。
他の隊員達も思う事があり、それぞれ思いに沈む。

このままではいけないと思い、敏子は静かに遺書をたたむと章香の方をチラリと見る。
目配せを理解した章香は少しだけ前に出る。ワザと音を立てて。
全員の視線が集中する。

「皆、思う事があるのは間違いない。
 早良ミチルが言うとおり、我々は前を見据えて動かないといけない。
 幸いにして“オニグモ”出現以降、ネウロイの襲撃頻度が落ちている。
 これは“アホウドリ”の出現時と同じパターンではあり、今後複数出てくるという最悪なパターンも考えねばならん。
 だが、我々はそれでも戦う。
 今後、彼女の様な犠牲者を出さない為にもだ!」

強い口調で断言すると、涙を拭いて気持ちを切り替えていく隊員達。
学兵の中でも徹子と凛が表情を引き締めている。
美緒も気遣われながらも涙を拭いて章香を見た。

7 :影響を受ける人:2015/03/15(日) 22:11:32

「現在、本土の大本営で作戦が練られているけど、私達も独自に練って上層部に提出するつもりよ。」
「今回の敵は大物だ。昔はともかく、現代に入ってからネウロイ観測史上最大級の大きさだろう。」
「今まで以上に通常兵器の部隊との連携が重視される。」
「もはや大陸からの撤退決定事項だ。だが、只で我々はこの地を奴等にくれてやるつもりはない!」
「なんとしてもアイツを仕留める! いいわね!!」
「「「「「「「「「「了解しました!」」」」」」」」」」

大隊長二人の激励に全員が敬礼して答える。
そしてすぐさま一同が出ていく中、章香は美緒達を呼び止める。
会議室から執務室に移動したが、気を使った敏子は基地司令との打ち合わせにいていない。
取りあえずコーヒーを入れて一同に振舞う事にした。
本来なら敏子の持ちモノなのだが、たびたび使用させてもらっているので問題ないだろう。

「ブラックで飲むと苦いから、砂糖とミルクを入れて飲むと良い。」
「ワタクシはブラックで。」
「む! 委員長がブラックなら俺もだ!」
「「「・・・ミルクを下さい。」」」

すんなり飲む凛にちょっと驚きつつ、余りの苦さに身もだえしている徹子を横目に章香も一杯飲んで気持ちを落ち着けて美緒を見る。
ミルクコーヒーをクピクピ飲んでいるのを、見てちょっとだけ癒される。
と言っても癒され続けているわけにもいかない。
この中で一番問題があるのが彼女だから。

「坂本美緒一飛曹。」
「あ、はい!」
「気持ちの整理はついたか?」
「・・・」

あえて直球で問う。
もし彼女が不安定と見えるならば、今後戦闘に出すわけにはいかない。
本土に送り返すことも視野に入れている。
問われた美緒は少しだけ俯き、表情を暗くしたがすぐに顔を上げた。

「わかりません・・・」
「わからない?」
「自分を責めたい気持ちもあります。できれば敵討ちをしたいとも思っています。」
「だが、早良ミチルはそんなことを望んでいないぞ?」
「そうですね・・・
 でも、切掛けにはなると思うんです。
 何かしないと・・・ 何かしていないと落ち着かないんです。」

美緒の独白に、一同真剣な顔で彼女を見る。
ここで言ってもおそらく彼女の為にはならない。
これは、自分で決着を付けないといけない事だ。

「それに・・・
 彼奴の弱点を探って、皆に教える・・・
 それが先輩と最後にやった仕事で、まだやり終えていない事です。
 せめて、それだけはやり終えたい。」

章香に向ける顔にはまだ迷いがあった。
しかしその目は真っ直ぐに見つめている。
その目を、章香は信じることにした。

「わかった。お前の任務はまだ終わっていはいない・・・
 それを完遂する事を私は命じるとしよう。」

それを聞いて嬉しそうになるのを見つつ釘をさすのを忘れない。

「だが、今のお前には無理だ。
 体力低下に魔眼の調子が戻っていないだろう?
 調子が戻るまで、休養をとる様に。」
「わか・・・了解しました。」

慌てて言い直したのを見て苦笑し。そのまま頭を優しく撫でてやる。
早良ミチルが生かした命。
自分も守りきることを改めて誓う。



以上です。
今回も難産だった・・・ 得に遺書が・・・
ああそうだ。あんまり関係ないけど、山代型戦艦二隻(山代・若狭)に名称を付けてみた。
もちろん改装して、対空戦艦にしています。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年02月14日 19:23