2 :影響を受ける人:2015/05/10(日) 22:40:50
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
残酷な描写があります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第六十話 ―黒雲来たりてⅤ―



『目標、なおも進行中。』
『護衛の敵、挑発に乗らず。離れず。』
『高射砲陣地準備完了。』
『こちら防護結界隊。魔導布の陣連結に遅れあり。
 しかし戦闘開始予定時刻までには完了可能。』
『大型砲の仰角準備良し。いつでも撃てます。』

無線機から様々な情報が飛び込んでくる。
片手で耳覆うようにして聞いていた江藤敏子は、一旦聞くのをやめて前方をみる。
敵は北東側ルートの乙に入っていた。
流石に大量にある大砲を嫌っての様だ。
それでも大回りにしなかったのは自信があるからか、どうなのか・・・

悩んでいてもしょうがない。
戦いとは常に相手がいるものであり、相手が思った通りに動く事など早々ないのだから。
通信機を弄り、部隊全員に聞こえるように大きく喋る。

「全員良く聞け!
 敵、右翼側から狐火隊・狸釜隊。
 左翼側から水蛇隊・淵猿隊が接近する。
 両隊は護衛の排除だ。いくら何でも我々が突撃してくれば離れるだろう。
 そして目標を北郷章香中佐が直接指揮を執る下田隊A・B両隊が攻撃をし。
 その間に特務隊が敵の弱点を探る。
 迅速に調べろ。あまり時間は無いと思え。
 海軍機械化航空歩兵隊が目標の足止めをしている間に大型砲が照準を完了させる。
 大型砲が敵の弱点を粉砕出来たら作戦終了だ。
 あと高射砲陣地が火力集中空域を作っている。上手く活用しろ。」
「「「「「了解!」」」」」

元気よく返事をした穴吹智子は銃を握り直す。
すると、斜め後ろで飛行していた加東圭子が横に並んできた。

「穴吹隊長。敵は少ないけど油断しないでね。」
「わかっているわよ。心配性なんだから・・・」
「一応年上ですからね。年下が心配なのよ。」
「むぅ・・・」

頬を小さく膨らませてプイッとそらすが、圭子は笑うだけ。
副隊長としては、御調子者の隊長を率先してからかう事で慎重にさせているつもり。
以前は刀を抜き放ってよく突撃していたものだ。

(こんな風に過去を思うなんて・・・ もしかして内面老けてきたかな?
 いや! まだ私は若い!!)

余裕そうに見えて、そんな内心の葛藤をしていることを知らない加藤武子と黒江綾香は、年長者である圭子を尊敬の念で見つめていた。

「やっぱり圭子さんはすごいですね。」
「そうよね。あの智子を制御しているんだから。」
「私達も負けていられませんね。」
「そうね。隊長としてもまけていられない。」

距離が離れているから聞こえていないが、もし聞いていたら悶えるだろう。
敏子はそんな部下たちに苦笑しつつ号令をかける。

「よし、散開!」

3 :影響を受ける人:2015/05/10(日) 22:41:33

―――――

目の前で四つの部隊が二手に分かれていく。
それを見ていた北郷章香は後ろを振り返り、特務隊の面々を見る。

「よし。こちらも行動開始だ。」
「はい。」

静かに、力強く頷いて坂本美緒が上昇していく。
中森彩子と井沢十華も上昇していくが、十華が心配そうに此方を見る学兵達の視線に気が付いて軽く手を振った。
ぐんぐん上昇していき、小さくなっていく親友を若本徹子は、ただ見上げている。
共に志願し、共に戦っていた筈なのに、どこか遠い存在になってしまった様な気がする。

「はぁ・・・」

知らず知らずの内に溜息が出てしまう。
それを後方から竹井醇子が表情を暗くして見つめる。
表面上仲がまだいいように見えるが、戦場と言う過酷な環境下で精神的なストレスが無いわけではない。
坂本美緒は特に衝撃を受けやすく、若本徹子は知人の変化に敏感すぎた。
それを何とかしているのが醇子。

もし彼女が居なければ早々に二人は喧嘩をし、二度と友達と言う関係には戻らないはずだ。
最悪、片方が戦死している可能性が高い。
章香も気が付いてはいるが、何分歳の差が離れすぎているうえに友人関係が特殊だ。

旭川梨奈は相棒と言う感じ。
旗本サエは頼れる大人。
真嶋志麻は野獣。
風間ランは・・・・・・おかしい。
鮫島トミは妹のような感じで泣き虫。

(結局相談できるのは旗本さんだけか・・・)

そう思うと気が滅入ってしまう。
内心で泣きつつ気合を入れなおして銃を構えた。
戦場はもう目の前だ。

―――――

悠々と大空を泳ぐ大型ネウロイ“オニグモ”。
その周りを小魚に見える“スズメバチ”が護衛のように飛行していた。
同じ様に“アホウドリ”も護衛として付かづ離れずの距離を保っている。
彼等はいくら後ろで味方が苦戦して居ようとも離れなかった。
引き剥がすためにやってきた敵に対しても、追い払う以外の行動はしなかった。

今までのように突撃してくるわけではなく、明確な意思をもって付き添っているのだ。
夢幻会も知らぬ事であるが、ここにいる護衛のネウロイは全て ベ テ ラ ン である。
生まれて戦場に出て、何度も帰還している。
蓄積された経験を持つ、精鋭部隊なのだ。
そんな彼等に指示が下される。

指示を下したのは“オニグモ”自身だ。
巨体に見合うだけの感知能力を持つので、襲撃者を追い払えと言ってきた。
そんな事はもとより承知。
攻撃目標に近く、今までよりも数が多いという情報により二つに分けようとする。
しかしすぐに別の情報がもたらされた。

上空に小さな集団がいるという。
これに反応したのは右側にいた“アホウドリ”だ。
彼の体にはもう何もないが、一度だけ妙な事をされて危機に陥った事があった。
ダメージを負っていないのに、弱点に対して集中的に攻撃されたのだ。
大急ぎで雲の中に退避し、そのまま離脱して事なきを得た経験が、上空の敵が最も危険であるという答えを導き出していた。

どんな事をしたのかはわからないが、最初に排除すべきであると進言する。
それを受けた左側の“アホウドリ”が四体の“スズメバチ”に対して命令を下す。
続いて自分達は接近してくる二つの部隊に突撃する。
これに対して“オニグモ”から「真ん中はどうする?」という抗議めいた返信がきた。
本当ならもっと仲間がいたのだが、アホな味方は散り散りなっていないので、自分で対処するように言う。

4 :影響を受ける人:2015/05/10(日) 22:42:33

正直言えば、自分勝手な“オニグモ”の行動にうんざりしている部分もある。
最初は馬鹿正直に、最も危険そうな場所を強行突破するつもりだったのだ。
それを慌てて左側の“アホウドリ”が訂正させた。
久しぶりの大型はとても迷惑な存在だ。人間なら喚き散らしていただろう。
それはともかくとして、彼等は己の定められた目標に向かう。

と、少し離れた場所に小さな反応がある。
そう言えば敵は、時折あの小さな反応に寄っていく事がしばしばあった。
すると、右側の“アホウドリ”に追従していた“スズメバチ”から有益な情報が入る。
素質はその小さな反応を攻撃して撃ち落とした時、爆発したのを見ていた。
そして敵の攻撃頻度が下がり、撤退が早くなったことも覚えていた。

ただその情報は彼しか知らなかった。しかし試してみる価値は、ある。
すぐさま“スズメバチ”に対して殲滅では無く足止めを命令。
そして“アホウドリ”は自らの高火力でもって小さな反応を消すことにした。
“オニグモ”からは何の返答も無いが、“スズメバチ”達は良い返答が帰ってきた。
最精鋭として組んだこのチームは中々に良い。

阿吽の呼吸ですんなり進む。
交戦距離に入り、まずは長距離射撃ができる“アホウドリ”が攻撃を放つ。
すぐに敵は散開するがこれは予定通り。前方が薄くなったのをとらえて増速する。
こちらに射撃を加えてくるが無視。そのまま後ろに向けて突進。
すると敵が慌ててこちらに向かってくるのが感じられる。

だが、少し置いて行かれる形となった“スズメバチ”が射撃を加えて回避を強制させる。
そこからは乱戦だ。
以前よりも旋回性能を上げた“スズメバチ”は敵の行動を読み、敵が行った有益な回避行動を真似する。
別にこだわりは無い。
上手いのなら真似をする。生存しやすくなるのなら真似をする。
そういった事が出来る連中だ。

“アホウドリ”はそれを尻目に小さな反応を追いかけまわし始めた。
速力は自分の方がある。
じっくり焦らず、包囲するように攻撃すればいい。
そうすれば簡単に落ちる。
しかし油断はしない・・・

味方の多くがこいつらに落とされた。
まだ【目標】にすら到達していないのに。
奥地で作っているさらなる味方が待ち遠しいと思うが、最近は西の連中がひっきりなしにがなり立ててきている。
無理に戦力を引き抜いているのだから仕方がない。
それもこれも・・・ 過去に出現した強大な敵に対して恐れているから。



以上です。
今回初めてネウロイ側の心情を書いてみました。
批判が多ければ次回以降やめます。

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最終更新:2016年02月14日 19:41