431 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22:30:44
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第六十四話 ―黒雲来たりてⅨ―



切り札の大型砲。
艦載砲を改造して作り上げた改造砲塔。
口径は45口径41cm・・・元々紀伊型戦艦に搭載されていたが、夢幻会が「この世界において、戦艦の高火力はぜひとも欲しい。」という意見により、大砲製造などにか関わっていた人員を派遣したおかげで50口径41cmの開発が早期に終わり、早々に余ってしまった。
本当はそのまま破棄する予定であったのだが、艦体派ともいうべき堀井大将により保存されていた。
短期間で作り上げたせいで装甲は皆無。

列車砲にする予定もあったが、そんな余裕は無かった。
固定式でも上下に俯角が取れるだけでも有り難い。
現地改造により、無理やりだが旋回も可能だ。

「よぉし! もうちょい右だぁ!」
「「「うっす!」」」

駆逐戦車で無理やりけん引して砲台を動かす男達の横で、目標座標に向けて俯角を計算する兵士がハンドルを操作している。

『目標、射撃予定地まで、およそ二十分。』
「よぉし。そんなもんだなぁ!」

スピーカーから音声が聞こえてくるが、男達は無視して予定の範囲に砲弾を叩き込むために急ぐ。

「俯角はこんなものか・・・」

俯角を調整していた兵士は、そのまま天高く伸びる砲身を見上げる。
既に砲弾はセットされており、ここから見える三つの砲台もすでに準備は完了している事だろう。
最初の射撃で二門が射撃を叩き込む。
続いて二門が行動を鈍らせた目標に叩き込む予定だ。
チャンスはそう多くない。

艦船ならば平行移動するなど、移動しながら射撃できるだろう。
しかし固定砲となるとそれは出来ない。
クロスファイヤーポイントを設け、そこに誘い込まないと当る事は無いだろう。
ましてや相手は高速で移動する。
小口径で大量に打ち上げる高角砲でさえ、直撃させるのは難しいのだ。

大型砲であるこいつを直撃させるのは夢物語でしかない。
ただ“オニグモ”の出現が遅かったお蔭で、ある程度のデーター収集が出来たのは有り難かった。
それに基づいて調整したので問題は無いだろう。
兵士は戦車での調整を指揮していた男に近寄って声をかける。

「彼女達の状況は?」
「うぅん? 今のところ無事みたいだなぁ。」
「そうですか。混戦だと聞いていたので・・・」
「この作戦で抜擢された腕利きの部隊だぁ。問題ねぇさ!」

「ガハハハハ!」と豪快に笑う男に苦笑しつつ、兵士は持ち場に戻った。
空を飛べない自分は、出来うることが限られている。
その中で奮闘するのだ。

―――――

北郷章香の指示により、“オニグモ”に徹底的に破壊された陣地救援に舞い降りた美緒達は燃え上がる陣地の惨状に息を飲んだが、すぐに行動に移った。
既に戦場の惨劇などは前線で見慣れている。
悲しい事ではあるが・・・慣れてしまっていた。
ホバリングしつつ負傷者の運搬、残骸の撤去等を行うのが仕事。

432 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22:31:14

しかし学兵の中で舞い降りていないのが一人だけいる。
弾薬係の大久保小毬だけ、上空で待機していた。
背中にしょっている弾薬運搬箱にはまだ弾薬が入っていたし、燃え上がる陣地に降りて引火したら目も当てられない。
その為、別の弾薬係と合流して北郷隊を支えている。
それとは別に、美緒達は小毬を連れてこなくてよかったと思っていた。

いかに慣れてしまったとはいえ、惨劇の現場を見るのはやはりキツイ。
燃えている人間を見るなど、この年代の子供にっとって悪影響が無いわけが無いのだから。

「誰か! 誰かいませんか!」
「声を出さなくても良い! 音を鳴らせ!!」

美緒は若本徹子と共に地上スレスレを飛行しながら呼びかける。

「もう、いないのかな?」
「そうだと思いたいな・・・」

会話しつつも視線は地上で動くモノを逃がさない様にせわしなく動く。
別の場所では醇子と飯島凛が捜している。
くまなく、根気よく捜し回り、もういないと判断した二人は集合場所に定めた野戦病院に向かう。
高射砲陣地から離れた場所に設けられた野戦陣地には、沢山の負傷兵が集められていて治療を待っている。
帰途に移っても負傷者を見逃さない様にゆっくりと飛ぶ。

「・・・なぁ。」

その途中で美緒の方に視線を向けずに徹子は話しかけた。

「なに?」
「ええっとな・・・」

普段の彼女からしたらもどかしい感じで、何とも言えない。
それでも勇気を振り絞って美緒の方を向いた。

「お前、大丈夫なのかよ。」
「えっと・・・ なにが?」
「なにがって・・・ 早良先輩の事だよ!」

思わず声を張り上げてしまい「しまった~」と内心で焦ったが、美緒はそんな事に気付く事は無く少しだけ俯いた。

「正直に言うと・・・ まだ後悔はしている。」
「そうか・・・ でもよ。遺言書で・・・ その・・・」
「確かに先輩は「自分を恨め」って言っていたけど、自分にはできない。
 だって、感謝する事もあるから・・・」

美緒は悲しそうに微笑む。

「確かに先輩は自分を助けて死んでしまった。
 でも、助けてくれた事は感謝しているんだ。
 それに今思えば、今まで訓練の合間にかけてくれた言葉は自分の中に残っている。
 先輩の教えは、しっかり残っているんだ。
 だから恨まない。」

徹子にはわかった。親友だからわかった。
美緒は、自分が思っていたよりも強く、そして前を向いていると。
だから小さな声で「そうか。」とだけ言う。
悩んでいるのはもう自分だけ。
最初の頃に「言わなければいい。」とケリを付けたはずなのが、早良ミチルの死により再び悩みが出てきた。

どうすればいいのか?
もし、安易に能力を発現すれば・・・

(美緒達を巻き込んで殺しかねない。)

そのぐらい危険な能力だとしっている。
僅か1分のみの開放で、その場にいた試験管全員を半殺しにしかけた能力。
制御するために努力したが、それでも封印するしかなかった。
どうすればいいのか、まだわからない。
ほどなく二人は醇子達と合流し、“オニグモ”を追って飛び出す。

433 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22:31:47

救援の御礼として墳進砲を貰ってしまったが、火力が欲しいので丁度良い。
基地と連携できる陸戦ウィッチとは違い、積載量が小さい空戦ウィッチではこういった武器の確保は重要だ。
素直に御礼を言ってそれぞれ一本ずつ抱えていく。

「間に合いますかしら?」
「どうでしょう・・・」

重量物を抱えて多少速力が落ちているし、“アホウドリ”に負けない速度を誇る“オニグモ”。
普通に考えれば追いつけるわけが無い。
しかし、それは杞憂だった。
かなり先に進んでいると思われた敵は、先程の奇襲を警戒しているのか遅い速度で飛行していた。

『救援は終了したのか?』

あちらもこちらを認識したのか、章香の声が通信機から聞こえてきた。

「はい。」
「ついでに墳進砲もいただいてきました。」

美緒が答えると、見えるように徹子が憤進砲を大きく振るう。

『ほう、それは良いな。
 だが少し待ていてくれ。もう少しで 予定地点 だ。』
「「「「!?」」」」

その言葉を聞いた四人は顔を見合わせると、大急ぎで上昇する。
しかし視線は上空ではなく地上、見つめる先には目立つ塗料で書かれた線があった。
その線こそ、改造大型砲の射程を示す線。
“オニグモ”が戦に到達するその前に、章香達は憤進砲で射撃をして加速を誘発させる。
ここからは見えないが、すでに大砲は射撃していると思う。

一時的な加速しかできない“オニグモ”の加速が終了し、速力が落ちる寸前に命中する・・・はずだった。
前に進んでいた“オニグモ”は、今度は足を思いっきり開いてブレーキをかけ、めくれ上がるくらい足を前方に向けて振り、 急 速 後 退 を掛けた。
降ってきた砲弾はむなしく地面を直撃し、大量の土砂を巻き上げるに終わった。



以上です。
誰が 単純に 仕留めさせる と言った?

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最終更新:2016年02月14日 19:45