955 :影響を受ける人:2015/07/12(日) 22:30:12
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
“オニグモ” 殲滅の報が入る前に全てのネウロイ達は撤退を開始した。それはちょうど断末魔を上げた直後であった。
その時には、穴吹智子が“スズメバチ”一体に損傷を与え、加東圭子が止めを刺しており。
加藤武子と黒江綾香が協同で“アホウドリ”に多大な損傷を与えていた。
彼等も断末魔を聞くと同時に戦闘を放棄、全速力で踵を返して逃走。
江藤敏子達は追撃したが、殿で残った“アホウドリ”に出鼻をくじかれてしまう。
損傷が回復しきれていない敵は、回復を後回しにして味方の離脱を支援して成功するも、敏子のシールドブレードにより切り裂かれて果てた。
この戦闘で江藤部隊が斃したのはたった二体・・・
すぐさま最前線の味方に連絡したが、運悪く交代している時であり、通常戦闘機隊も引き下がった直後だった。
結局彼女等が相手にしたネウロイ達はそのまま全速力で大陸奥深く、彼等の巣まで逃走していってしまう。
最前線で敵の進行を食い止めていた防御陣地は、第四防衛陣地まで下がっていて、最終防衛ラインまで下がるか否かまで来ていた。
この後退戦は上手く行っていて、被害は最小限に収められていることが唯一の慰めと言っていいだろう。
ワザと泥水のある堀を用意して、敵の誘導を行ったのも上手く行った要因だろう。(大型ネウロイは無視して突き進んできたが。)
かわって街の被害だが、元々無人にしているので人的被害は無い。
しかし街の五分の二に相当する面積が瓦礫と化し、火災が発生してしまった。
消化活動をする味方を手伝う事無く去ることにした美緒達は申し訳なく思ったが、燃料が心許ない状況で手伝う方が最も危ないのだから。
―――――
「ねぇ。「皆お疲れ様。」
「「「「「はっ!」」」」」
いつも使っている会議室にウィッチ一同集まっていた。
報告書などやる事が山積みだが、今この瞬間だけは息抜きさせたやりたいと思い、敏子は秘蔵の御酒を持ち出して皆に配った。
学兵組はジュースだったが、おつまみとして出された肉料理が並んでいて目が離せない状況になっている。
「もうやめ「無事、目標を排除できたことに安心し、何よりも皆がこの基地に帰ってきた事を喜んでいます。」
気持ちよく喋る敏子の横で、北郷章香が 正 座 で 鉄 板 の上に座らされていた。
もちろんこれは罰だ。
砲弾の雨の中を突っ切るという危険行為を、あっさり見逃すほど敏子は甘くない。
司令部からも厳重注意の連絡があり、一時は降格すると思われたが“オニグモ”を仕留める補助をしたことが評価されて打ち消している。
帰ってからずっとこの体勢でいる為、もういい加減足がしびれてきているだろう。
「頼む。「ささやかだけども私からの心配り、食堂のおばちゃん達の手料理を食べて英気を養ってね。」
「「「「「はっ!」」」」」
話をしようとしても早々に潰され、章香は涙目になっているが、皆目を合わせない様にしている。
なぜならその横には鬼夜叉が佇んでいるのだ。
「旗本さん。お願いします。たすけて・・・」
「・・・正座。」
「いや。でも、もういいのではないかと、愚考しますが!」
「・・・黙れ。 ・・・正座。」
「せ、せめて。御酒だけでも・・・」
「・・・反省が足りん。 ・・・・・・翌朝まで正座。」
「後生です!」
956 :影響を受ける人:2015/07/12(日) 22:30:45
お目付け役の監視は厳しく、刑務所よりも厳しかった。
そんな漫才を見ながら敏子達は乾杯の声を上げ、楽しい宴会に突入していく。
途中、整備班長や基地司令が酒を持参してきたり、同居している通常戦闘機隊の男達が半分合コン目的で乱入したりもした。
その片隅で、学兵達はおつまみを確保して乱珍騒ぎを遠巻きに見ていた
「それにしても、録に活躍しなかったな。」
「徹子ちゃん。それはどうかと思うよ?」
チビリチビリとジュースを飲みつつ、愚痴の様にブツブツ言う友を竹井醇子がたしなめた。
「そうですわ。目立たずとも、地道にコツコツ積み上げた物の方が、価値がありますわ。」
「ええっと・・・ 最後に、すれ違い様に墳進弾叩きつけたのは格好よかったです!」
飯島凛のはともかく、優しさに溢れる大久保小毬の感想にちょっと涙。
「小毬・・・ お前はそのままでいてくれ。」
「え? あ、はい・・・??」
「凄いと言えば・・・ 隊長の【海割り】もしうごかったなぁ。」
「そうですわね。うわさは聞いていましたけど。実際見るのとでは全く違いましたわ。」
そう言って思い浮かべるのは“オニグモ”を切り裂くシーン。
あの巨大な敵を切り裂くというのは見た事が無い。
モーゼの様に、海を切り開いて道を作ったとも、高波を横一直線に切り裂いたとも言われる北郷章香の大技。
それは想像を絶するものだった。
「やっぱ、憧れるよな~」
「ワタクシ個人で個人で持つ技としては難がありますけれど、一撃必殺と言うのは憧れますわね。」
「そこは素直に「自分も持ちたい!」とか言ったらどうだよ。」
「む・・・」
「まあまあ・・・ 今は素直にお祝いしようよ。」
険悪になりそうだった二人の間に醇子が割って入る。
二人もそこまで気にしていなかったので、すぐ小さな声で謝りあった。
と、小毬がつまみを盛り付けた肉巻野菜の小皿の一つを摘まんで食べ、美味しさにホッコリする。
「この肉巻野菜。醤油がしみていておいしいです。」
「あらそうなのですの?」
「なら、もらおうかな。」
まだ若い彼女等はすぐに食事の方に意識が行く。
少しの間ワイワイと楽しんでいたのだが、醇子が坂本美緒の姿が見えない事に気が付いた。
―――――
遠海が開始されて、しばらくは滞在していた美緒だったが今は外にいる。
みんながワイワイやっているのを見るのも良かったのだが、なんとなく外に出たかったのだ。
外は既に暗く、空を見上げれば満天の星空が見えた。
「・・・・・・」
暫らく外をぶらぶら歩いていたが、なんとなくベンチに腰掛ける。
「あ・・・」
そこは早良ミチルと話した場所。
そして懐に手を入れると、出てきたのは煙草・・・
遺品整理の際にお守り代わりとして、懐に入れていたのをすっかり忘れていた。
マッチも持っていたので、なんとなく火をつけて煙草につける。
「えっと・・・」
ミチルが吸っていたのを思い出しながら軽く煙草を吸って、
「うげっ! ゲッホ、ゲホ!」
957 :影響を受ける人:2015/07/12(日) 22:31:15
思いっきり吐き出した。なれていないのだから仕方がない。
もう一回吸ってみようと口を付けるが結果は同じ。
また咽るように咳をする。
よくこんなものを吸っていたものだと思う。
「美緒ちゃん、なにやっているの? ・・・煙草!?」
「あ、いや・・・ これは、その・・・」
「醇子、美緒を見つけたのか・・・って煙草?」
「な、何をやっているのですの!?」
「煙草はいけないと思いますよ。」
涙目になってしまい、もう消そうとした時に捜しに来た醇子に見つかってしまった。
慌てて言い訳をしようとしたが、同じように探しに来た仲間にも見つかり、詰め寄られてしまう。
観念した美緒は洗いざらい吐いた。
「ミチル先輩がねぇ・・・」
「信じられませんわ。」
「でも、吸っていたんだ。」
難しい顔でお互いを見る凛と徹子。それを見て美緒は苦笑する。
このメンツで見ていたのは自分だけ、故に説得力は無い。
どちらにせよ、もう煙草は吸わないつもりだ。
改めて消そうとする。が、醇子が問うてきた。
「でも、なんで吸おうと思ったの?」
「なんでって・・・ なんとなく、かな?」
「なんとなく?」
空を見上げて美緒は言う。
「“オニグモ” が倒れても、私の中が変わった感じは無い。
まだ、なにかあるような気がしたんだ。
それを如何にかしようとして、これの存在を思い出した。」
「供養のために?」
「自分の、気持ちの整理だとおもう。」
そう言って、視線を煙草に戻し。大分燃えてしまった煙草をベンチの前に会った灰皿で消した。
「とても吸えた物じゃなかったけどね。」
苦笑しつつ笑うと横から手が出てきた。
徹子は煙草の箱から一本取り出すと、マッチで火をつけて吸い、美緒と同じように咽た。
「ほ、本当に吸えたもんじゃないな!」
「徹子さんまで吸うなんて、駄目じゃありませんの。」
そう言いつつ凛も一本貰って吸った。続いて小毬と醇子も貰って吸う。
三人とも一回吸っただけで咽て、涙目になってゲホゲホ咳をする。
最初は茫然として、慌てて止めようとした美緒だが、徹子に手で静止させられてしまう。
「俺等も付き合うよ。」
「先輩に教えてもらったしね。」
「これも、一種の供養ですわ。」
「お父さん、よくこんなの吸えるよ~」
「皆・・・・・・」
夜空の下で、五人の少女は供養の煙を上げた。
煙に咽ながらも少女達は、この戦いで散った戦士たち弔う。
それが自分達にできる唯一の事だと思って。
以上です。
離脱したベテランネウロイ達は“オニグモ”損失の罪を問われましたが、対した問題としなかったので能力低下などの罰はありません。
代わりに欧州方面から催促されている増援部隊を率いて、戦地に向かって猛威を振るう事になります。
最終更新:2016年02月14日 19:48