337 :影響を受ける人:2015/07/26(日) 22:36:50
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
それでも良い、という方のお読みください。
“オニグモ”殲滅以降、ネウロイの攻勢は再び落ち着きを取り戻した。
別に攻勢が止んだわけではなく、只頻度が低くなっただけではあるが。
それでも最前線の将兵にとっては多少息抜きが出来る猶予が生まれ、酷使し続けた武装の交換なども行えるのでありがたかった。
空戦に関しても“スズメバチ”“ウシアブ”と言った小型ネウロイが中心となっている為、通常戦闘機隊である程度対処できるようになった。
損耗著しく、補充もなかなか効かないウィッチ部隊は順次後方に下げられていく。
無論完全に下げるわけではなく、時折思い出したように“アホウドリ”が襲撃してくるのでその対処がメインだ。
それでも以前に比べれば、天と地に等しい差がある。
そんな中、江藤敏子は御伴として加藤武子と、黒江綾香を連れて大陸層司令本部に赴いていた。
―――――
「なるほど。それで殆どを取り逃した・・・と?」
「はい。あれらの動きは通常のネウロイとは違いました。
エースパイロットのような機動、隙を埋める連携、どれをとっても一級品です。」
報告書に目を透しながら田中ウメは視線のみを敏子等に向けていた。
届けられた報告書の中で、最も気になった情報。
ベテラン戦闘機乗りの働きをするネウロイ
目を透した時、現実味は無かったのだが。敏子がそんな報告をするわけが無いと思い、今回呼び出して直接聞く事にしていたのだ。
やはりこうして生の情報を聞く方が、書類で見るよりもよほど現実味が加わる。
書類を置き、手を組んで顎を乗せる。
「それが事実であるならばゆゆしき事態になります。わかりますね?」
「はい。もし奴らが他のネウロイに機動戦闘を教えれば、戦線は瞬く間に崩壊します。」
「そうです。そうなれば、最初に犠牲になるのは学兵等です。
豊臣内閣が倒れ、臨時織田内閣が発足し、現在派兵していたウィッチの第一陣が帰投中。
ですが彼女等が戻ってくるまで彼等が強化されてしまえば、本土進攻もあり得る。」
敏子の後ろに控えている二人から唾を飲む音が聞こえた。
全てのネウロイがあのベテランネウロイのような機動となる。最悪の現実。
この危惧が現実のモノとなれば、現在進行中の撤退作戦が崩壊。
最悪大陸の兵士の殆どが取り残され、決死の防衛戦が扶桑海にて起きうるのだ。
その時間を稼ぐために自分達奮闘する事になるだろうが・・・学兵を守りながらの戦闘は考えたくない。
「あれを取り逃がした責任は私にあります。」
「「中佐!」」
「・・・・・・」
真っ直ぐにこちらを見る部下を見つつ、心配そうにする後ろの二人をちらりと一瞬だけ一瞥する。
そしてひとつ息を吐くとメガネを押し上げた。
「別に責めはしません。」
そう言うと、あからさまに二人の気配が安堵に変わるのがわかった。
内心で良い部下を育てていることに嬉しく思いつつ、もうちょっと腹芸を覚えて欲しいと思う。
真面目な所は自分から学んでいるのだろうけど。
「この事実は、全ての部隊に知らせておいた方がいいと私も判断している。
そして全ての国にも、です。」
「ネウロイは学習する・・・それを伝えるという事ですね。」
「今まで奴らは物量の力押しだけ。そこに技術を持つ敵が出現するとなると、今までの対処法では上手く行かなくなる。
早急に研究せねばなりません。」
ネウロイが人類と同じ機動戦闘をする上で、最も有利な事がある。
1:人を乗せているわけではないから、重力作用を考慮しなくていい。
2:全身金属塊のようなモノだから、強度も考えなくていい。
3:プロペラなどの影響を考慮しなくていい。
4:武装を考えなくていい。
以上だ。この点が、人類側が不利となりうる要素と言える。
巴戦は戦闘機乗りの花と言う輩もいるが、敵は一撃離脱をメインに使っている。
いくら誘っても乗ってこないのであれば、こちらも一撃離脱にせざるを得ないだろう。
ウィッチには厳しくなるが、幸いにして扶桑の航空歩兵教導本には近接戦闘術がある。
ある程度は問題ないだろう。
338 :影響を受ける人:2015/07/26(日) 22:37:22
その後、軽い話を二三した後で退室した。
部屋から出て、しばらくして後ろの二人が大きく息を吐く。
気配で察知した敏子は苦笑する。
「なに。緊張したの?」
「それはしますよ。」
綾香はそう言うと肩を軽く回してコリをほぐす。
「なにせ平時で大佐まで上り詰めたお方ですしね。」
「雲の上と言うか、何と言いますか・・・」
「まあ、あの通り厳しく真面目な人だからな。無理もないわね。」
カラカラと笑いながらそのまま食堂に向かった。
ここに来る前に約束した甘味を驕るためだ。
この約束が無かったら、二人は来なかっただろう。
疲れたように座る部下を見て苦笑し、餡蜜を三つ頼む。
そして出されたお茶を一口飲んで、武子がここに来るまで考えていた疑問に思っている事を口にした。
「しかしなぜ我々を連れてきたのですか?」
「それはここの雰囲気を知っておいてもらいたいからよ。」
ああ、やっぱりと二人は内心で思う。
「・・・昇進の件ですか?」
「優秀な部下を持つっているのは良いわね♪」
ここに連れてきた理由は簡単。自分の右腕が欲しかったからだ。
直轄部隊の中で優秀な二人は、まさに敏子にとってかけがえのない部下なのだ。
「大佐になるのはいいけど、田中大佐と同じになるっていうのは胃に来るのよ。」
「それで一緒に苦しむ仲間が欲しいと・・・」
「そう言う事♪」
微笑んだ上司をみて「ああ殴りたい。この笑顔。」と言うタイトルの、最近見た小説を思い出す二人。
ショートストーリの小説なのだが、最後にこう締めくくられる。
それを実感してしまう事に内心涙した。
拳を握りつつも、自分達が若いのにここまで昇進できているのも、目の前の人のお蔭だとわかっている。
二人は遠慮なしにおかわりをすることに決め、上司を泣かした。
―――――
時同じくして、違う建物にて上司にこっぴどく怒られた北郷章香が、よろよろと退室して廊下を歩く。
その後ろから付いて来るのは旭川梨奈だ。
「いやぁ。大噴火でしたねぇ。」
「ぅぅぅ・・・耳が痛い。」
ケラケラ笑う元副隊長を無視し、章香はそのまま進む。
「しかし、大佐が怒るのは無理もないですよぉ。」
「あの時の、あの判断は間違っていなかった。」
「けど、旗本さんにも怒られたのでしょうぅ?」
「・・・ウグゥ。」
正し過ぎてぐうの音も出ない。
「これから大佐になって、海軍航空歩兵部隊を率いる御方が、あんな無茶をすること自体おかしいのですよぉ。」
「それはだな・・・」
「学兵が悪影響を受けたらどうするのでぇ?」
「もういい・・・」
情け容赦ない口撃に降参するしかなかった。
溜息を一つ着いてそのまま玄関へと向かう。このあとやる事は山ほどあるのだ。
本土に戻った際の部隊編成。
戻ってきた兵士達の分配。
その他諸々・・・
軍隊もお役所仕事。仕方がない。
まだまだ最前線で戦いたいが、そうも出来ないのが社会に出た人間と言うモノ。
気持ちを切り替えようと前を向き・・・何やら走り込んでくる人物が見える。
その人物を見た章香はすごく複雑な顔になりあとずさった。
反対側に逃げようとしたが、建物の構造上行き止まり。
更に言えば、後ろには邪魔な梨奈がいるので逃走以前に無理。
結局章香は、不審者のダイビングボディプレスを受ける羽目になった。
「たぁぁぁぁいぃぃぃぃちょぉぉぉぉぉぉ!!!♪♪♪」
「ぬぉぉぉぉ!!」
倒れ込む二人を支えずに避ける梨奈。薄情者だ。
床に倒れても不審者は章香の豊満な胸に、顔をグリグリ押し付けてくる。
339 :影響を受ける人:2015/07/26(日) 22:37:52
「アアァァァァァ♪ 隊長ぉ、お久しぶりですぅぅ♪」
「ぬぁぁぁぁぁぁ!! 離れろ風間ぁぁ!!」
「嫌ですわ嫌ですわ♪
こうして会えたのは運命ですよぉ♪
扶桑離れてからと言うも、一度も隊長を忘れた事撫でないのです♪
ああ隊長匂いが私を興奮させるゥゥ♪」
怒涛の勢いに相変わらずだなと二人は思った。
大機付いてきた人物、風間ランはもう三十路前なのにレズビアンな困った人。
しかも年下が大好物ときている。
ウィッチの定めにより外見の老化が遅いので、二十代前半に見えるのが弾に傷と、元部隊メンバーは考えていたりする。
そんな彼女は最後の派遣部隊に編入されていた筈で、最初に帰ってくる部隊名簿に載っていたのは確認していたのだが・・・
「風間さん。いつお帰りにぃ?」
「呪歌使いが足りないからって言うから、直行便で今朝帰ってきたのよ♪」
「離れろ、離れてくれ!」
「あいさつに向かわ無くてよろしいのでぇ?」
「まずは隊長成分を補給しないといけないのよ♪」
「首に鼻を近づけるなぁぁぁぁ!!」
暴れる章香に、がっちりと組みつくラン。傍で見ている梨奈は助けようともせずに飄々と対応する
余りにカオスな空間に誰も近寄ってこない。
遠目から皆、ヒソヒソと話すだけ。
正直苦手な人物だが年上であるし、先輩格なのでどうしても乱暴が出来ない章香は内心で涙を流しながら訴える。
「お願いします。離れて下さい!」
「いっや♪」
即答で断られた。
どうすればいいんだと困り果て、マジ泣き十秒目になった所でランが急に離れた。
「え、あ、ちょ!?」
ランが離れたわけではない。長身の人物が彼女を持ち上げたのだ。
人の愛瀬を邪魔した不届き物を睨もうとして振り返り、蘭はそのまま硬直した。
「ぎぁははははははは!! 久しぶりじゃねぇですか先輩さんよぉおぉ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!! 野獣が何でここにいるのよぉぉォォ!!!!????」
風間ランが唯一苦手とする人物、真嶋志麻が立っていた。
「俺も隊長に呼ばれていてよ。待機していたら先輩さんが飛び込んでくるじゃねぇの。
こりゃ挨拶しねぇとなぁっと、思ってなぁ。
ギィシシシシシィ!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!! 離してェェェェェ!!」
更なるカオスになった現場に、誰も近寄る事は無くなり。ヒソヒソ声も無くなった。
結局カオスな空間は、上司たる水瀬ササリ大佐が怒鳴り込むまで形成されるのであった。
以上です。
上司は頑張るよ。
暫らく戦闘は無いです。
最終更新:2016年02月14日 20:04