94 :影響を受ける人:2015/08/23(日) 22:40:08
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
現在、夜間戦闘を専門とするウィッチはそれほどいない。
なぜなら怪異としてネウロイが出現するのは、主に昼間だったからだ。
時には夜間にも出現する事はあったが、その回数は少ない。
そのため史実同様に、夜間戦闘技術はそんなに高くは無かった。
しかし扶桑皇国では夜間に飛翔するウィッチがいた。
天狗の下駄と言う道具を使う時から、夜間に彼女達は飛んでいたという。
何故その発想が生まれたかと言うと、九曜葛葉と名乗る前に信長に謁見できた時にこぼした戦術故にだ。
戦闘こそなかったが、夜間にある程度敵の位置が知る事ができ。
軍の規模を把握できるというのは、あの時代において中々のアドバンテージがあったという。
昼間だとウィッチ同士の戦闘が発生する確率や、下手をすれば撃ち落とされる危険もあったので、夜間偵察は彼女達にとって比較的危険が低いモノだった。
奇襲攻撃をする事もあったと言うが、片手で数えるほどでしかない。
その殆どは偵察に絞って運用されていた。
だが平和な世になると、この任務自体が無くなってしまう。
日本を統一し、扶桑皇国となり、海外に向けた大航海時代の到来のせいだ。
昔の船舶は小さく、たとえ大型船であろうとも外洋に出ての航海と言うのは、危険極まりない行為だった。
ウィッチを乗せて陸地を素早く発見する。というのは簡単に思いついたのだが、それまで彼女達はお荷物でしかない。
ましてや閉鎖空間になりがちな昔の船で、女性を連れて後悔するのは大変なものだ。
実際海外では船員のストレスが溜まり、彼女達を襲う事が起きたという。
その為、現代の様に渡航が容易になるまで、ウィッチの艦載運用は考えられていなかった。
精々港や、重要拠点で活動するぐらいしか運用する事は無かった。
しかし現在は技術の発展により、航空母艦での運用が可能に。
そして夜間戦闘もネウロイの侵攻により活発化。
再び夜の空にウィッチ達が飛び立つことになった。
しかし、失われた技術を復活させることは並大抵の事ではない。
それが偵察のみとはいえ夜間飛行を可能にしていたとなれば、藁にもすがる思いとなる。
といっても資料自体が少なかったのだが・・・
旗本サエ率いる夜間戦闘隊は、とにかく工夫でどうにかしようと試行錯誤を繰り返した。
ベテラン中のベテランで構成されたこの部隊は、同様の部隊三つよりも高い。
サエ自身の使い魔が梟であり、感覚で飛行できる。
寡黙だが指示は的確、真面目で部下の話もよく聞くから評判もいい。
「なんであの人、もっと階級が上がらないの?」
とは、部下の疑問だったりする。
それはともかくとして、同隊の宇田新(うだ あらた)軍曹が恋人から仕入れた情報を元に、新たな技術開発に乗り出した。
これこそ後に魔導針の基礎となる八木・宇田式呪術陣となる。
といっても現段階では魔力消費が多く、精度も悪いのであまり頼りにはならない。
前方を調べるのだがその距離も短め。正直言って頼りにする事ができない。
「う~ん・・・」
「・・・どうだ?」
今日も今日とて夜空を、七人のウィッチ達が飛行していた。
真ん中に隊長の旗本サエと副隊長の宇田新、先頭に二人、左右と後ろに一人ずつ。
宇田は頭部付近から魔力光を放つ、光の棒を生やして頭をゆっくり左右に振る。
彼女は先程から目を瞑って飛行していた。
「一応前にいるのはわかりますね。」
「・・・ふむ。 ・・・で、距離は?」
「不明です・・・」
「・・・方角は?」
「み、右より・・・かな?」
今二人は魔導針の性能チェックをしている最中だ。
襲撃頻度が下がっている昨今、今の内にやっておかないと後が辛い。
魔導針を消して、眉間をモミモミしている副隊長から視線を外して前方を見る。
右よりなのは合っている。一人だけだが。
もう一人は左にいて、さらに先を進んでいるのだが、それを感知することは出来なかったようだ。
「・・・精度は上がらんか。」
「すみません。」
「・・・いや。 ・・・忙しい現場で、ここまで仕上げている。
・・・文句などない。」
95 :影響を受ける人:2015/08/23(日) 22:40:48
実際彼女はこの短期間でかなりの精度を上げていた。そして努力する姿も知っている。
使い魔の御蔭で戦えるサエとしては、何も言えないのだ。
「・・・やはり、機械の公式をそのまま当てはめるのは無理か。
・・・他に問題は?」
「そうですね。
自分はわかっているのですが。どうも使い魔の方にも問題があるみたいで。」
「・・・む?」
「動物は人間よりも夜間の視力は良いですから問題はありません。
しかしそれが私達に影響するか、と言うとそうでもない。
肉体の構造が違いますから、それは仕方がありません。
だから私は人間でも 知覚 できるようにしたいと思いました。
しかし、今度は使い魔の方が理解できないのです。
今やっている原理は、蝙蝠のように反射をとらえて調べるわけですが・・・
音ではなく魔力波で調べているので、使い魔が慣れていないと感じています。
訓練さえすれば慣れていくのでしょうけど・・・」
「・・・そうか。」
今でこそ兵士の宇田だが、本来ならば科学者志望だったという。
しかし家庭の事情と、現場での検証に惹かれてそのまま。
だからか、ちょっと説明が長い。
前方の二人に何時もの配置に戻るよう言うと、真剣に哨戒する。
いかに襲撃が減ったとはいえ、戦闘が無くなったわけではない。
日に一度は夜間襲撃を掛けてくるから、油断はできない。
もっとも、他国からすればこれだけ夜間戦闘が可能となるウィッチが沢山いるのは、羨望と嫉妬の視線が止む事は無いだろう。
暫らく飛行し、前線を通過する。
眼下の荒野は真っ黒で、サエが何とか地面の様子を見る事ができる位だ。
すると、無線に通信が入る。
『こちら夜間偵察機ヨガラス03。』
「・・・どうしたヨガラス03.」
『眼下にネウロイを発見した。例の新種だ。』
「・・・新種。」
つい先日見つかった新種。
中型のコウイカ型“ヒラクモ”と、小型の“コバエ”。
発見報告は今までに三度会ったが、いずれも殲滅している。
今までの敵に比べると、かなり貧弱な印象を受けるという。
『中型は二体、小型は少なく見積もっても四十はいる。』
「・・・ぬぅ。」
小型とはいえ四十は多い。
夜間戦闘で物量とは、さすがにいやらしい。
『敵は前線に向けて飛行しているようだ。
この辺を周回し、索敵を続行する。』
「・・・了解した。」
返信をすると無線機からは何も聞こえなくなる。
サエが銃を構えると同時に、全員の雰囲気が変わった。
「・・・これより、敵の殲滅に向かう。 ・・・続け。」
「「「「「「了解!」」」」」」
力強い返しに満足しつつ、敵がいるという方向に機首を向けた。
―――――
敵との邂逅はすぐに済んだ。
敵は予測進路上を真っ直ぐ、愚直に進んでいたのですぐに発見できた。
宇田は弾薬箱を背負っているので後方で待機する。
本来ならば銃を持っているのだが、術式の試験運用が有ったので今回は参加しない。
「・・・左右から挟撃する。」
短く作戦を伝えると、部隊はすぐに別れた。
右側からサエが、左側を三番目に信頼しているウィッチが率いていく。
敵もこちらに気が付き、護衛を十体残して向かってきた。
“コバエ”は短射程の攻撃、一門しかないが連射してくる。
それが群れで迫ってくると弾幕を形成するから意外にやりにくい。
「・・・っく。」
弾幕を形成するという事は、それだけレーザーの光がまぶしくみえる。
人間の目は光があるとそちらに集中してしまい、暗闇が見えなくなってしまう。
組みやすい相手だと聞いていたが、夜間戦闘に限ってはそうではないようだ。
圧倒的な数は、数が少ない彼女達にとって厄介だ。
「・・・墳進砲で蹴散らせ。」
『え、しかし・・・』
「・・・中型の装甲はたいした事は無い。 ・・・小型を纏めて落とせ。」
『はい!!』
96 :影響を受ける人:2015/08/23(日) 22:41:26
通信の後、囮となるために少し前方に出て牽制射撃を行う。
すると面白いように集団が付いてきた。
こんなにあっさり付いて来るとは、以前聞いた頭の良いネウロイはこの中にはいないようだ。
「・・・こい!」
乱射の光の中で、サエは回避に専念しつつも真っ直ぐ飛ぶ。
本来なら自殺行為のような方法だが、速度がほぼ同じの敵だと回り込まれたりしないから敵はだんだん一列に並んでいく。
そして攻撃頻度も下がるのだが、今度はわざと上昇し急ブレー気をかけた。
“コバエ”はすぐに追従して上昇しようとする。後ろの“コバエ”も高い機動力をいかして左右に広がろうとした。
しかし真後ろにいた“コバエ”達は、急な軌道変更について行けずに衝突してしまった。
「・・・今だ!」
号令と共に墳進砲を構えた二名の大砲が火を噴き、敵中に命中した大爆発を起こす。
中心にいた“コバエ”は消滅。周辺にいたのは瀕死で、残りは混乱するように周りに攻撃を放ち始めた。
サエは冷静に、落ち着いて負傷した“コバエ”を殲滅する。
墳進砲を構えていなかった隊員達も攻撃に加わって敵の数を減らしていく。
この猛攻に怖気づいたのか、生き残った“コバエ”達は“ヒラクモ”に向かって逃走し始めた。
代わりに“ヒラクモ”の護衛が後退として向かってくる。
護衛が離れた瞬間を逃がすほど、旗本隊は甘くは無い。
いつの間にか上空に遷移していた宇田が、弾薬箱に着けていた墳進砲をとって構えていた。
「逃がしはしない!」
放たれた砲弾は油断していた“ヒラクモ”に命中し、その身を二つに砕いた。
「うわ。本当に脆い。」
報告通りの脆さに隊員が苦笑する。
しかし核には当たっていなかったのか、すぐに機首を戻そうとする。
仲間の被弾にもう一体の“ヒラクモ”が寄ってきて再生を促し始める。
どうやらネウロイ同士なら、どんなモノでも治せるらしい。
「・・・報告に追加だな。」
飽く迄も旗本サエは冷静に現状を見る。同時にこの敵は何なんだろうかと思う。
今までの敵とは違う弱さに少し首をかしげるが、これ以上は推測しかできない。
今やるべきことは、敵を殲滅する事だけだ。
以上です。
今回は旗本サエさんをメインにしてみました。
最終更新:2016年02月14日 22:05