837 :影響を受ける人:2015/09/29(火) 22:31:05
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
撤退する日時が決まった。
ただ単に後方に移動するわけではなく、本土に帰還するためにだ。
予め教えられていた事であるので、特に問題なく受け入れられた。ただ一人を除いて。
「そんな~!」
「風間大尉、あらかじめ言っておいた様に思うのだが?」
「もっとかかると思ったんです♪ まだ私の活躍が「・・・それはいらん」旗本さん、ぶった切らないで♪」
案の定、風間ランが猛抗議してきた。
が、決定は覆らない。
「まだ時間があるとはいえ、荷物の整理は済ませておく様に。
それと、食堂が明後日から使用不能になる。軍が雇っていた民間人を、先に本土に避難させるからだ。
対策として、最近の襲撃頻度から待機する人員を増やし、その人員をもって食事を自給する事になる。
本来なら補給部隊を付けたいのだが、引っ張りダコで来る事ができない。
少なからず我々扶桑ウィッチは、将来の為として料理勉強をしているから問題ないだろう。」
食事に関する通達があると、二名ほど視線が一名に集中する。
それに気が付いた飯島凛が、若本徹子に小声で話しかけた。
「どうしましたの?」
「え、あ・・・ いや、そのだな・・・」
「どうしようか。」
要領を得ない答えに、少し眉間に皺を寄せる。
「歯切れが悪いですわね。何時ものあなたらしくありませんわ。」
「えっと・・・ それはだな・・・」
徹子は若干怯えた感じで親友、坂本美緒に視線を向けた。
つられて大久保小毬も凛と一緒に美緒を見る。
「美緒の奴・・・」
「料理が壊滅的に駄目なんです。」
「「はぃ?」」
―――――
自室に戻った学兵達はしばらく談笑していたが、美緒が席を外すと徹子が全員を集める。
議題は『どうやって坂本美緒に料理をさせないか。』であった。
「美緒さんの料理は、そんなの酷いのですの?」
「ああ・・・」
「あれは料理じゃない。」
重く沈痛な表情の徹子と、明後日の方向を見て光が無い竹井醇子に全員がどん引きする。
皆引いている中、一人が思い出したように呟いた。
「もしかして、調理実習室爆破事件て・・」
「美緒だな。」
「なぜ鍋で煮込んだだけだったのになく爆発したの?」
「一クラス集団食中毒事件があったて、聞いているけど・・・?」
「美緒だな。」
「どうして見た目はおいしそうなの? 食べた後の記憶が無い。」
「剣道部が昨日不能になったのも?」
「美緒だな。」
「先生と先輩に差し入れしたの。食べ終わったら皆トイレに直行して、一週間休んだんだよね。」
全員が更に引く。
余りにも悲惨な事実に顔が蒼白になっていくのがわかる。
そんな皆の気持ちがわかる徹子は苦笑した。
「でも最初の頃の話だ。今は見張っていれば問題ない。」
「切るだけなら問題ないし。単純作業も普通にこなせるから安心して。」
その言葉に全員が安堵した。が、
「でも調味料を使わせるなよ。どうなるかわからん。」
「工夫もさせないでね。前に、御握りに果物詰め込んだことがあるから。」
再度テンションが落ちる。
話を聞き終えた凛は、深々と寝台に座り直す。
838 :影響を受ける人:2015/09/29(火) 22:31:42
「何と言いますか・・・ 法術士学校ではそんな事ありませんでしたわ。」
「普通に料理していました。」
小毬もなんだか疲れたような表情。
それから誰がパートナーになるにしても、美緒を見張る事は決定された。
誰だっておいしく料理は食べたいし、入院なんてしたくない。
この殺伐とした戦場で、数少ない潤いを汚したくはないのだ。
―――――
さて、そんな会話を親友達がしているとも知らずに美緒は、トイレから出て手を洗っていた。
すっきりし、ちょっとだけ鼻歌を歌って廊下を歩いていると、前方から穴吹智子がやってきた。
彼女は美緒の顔を見るなり笑顔になる。
急な感情の変化に何だろうと思いつつ、廊下脇に寄って敬礼をするのだが智子は軽く手を上げて抑えた。
「いいの、いいの。
わたしは陸軍だから、海軍式の敬礼されても困るわ。」
「あ、そうでした。申し訳ありません。」
「だから良いって・・・ 結構お堅いのね。」
「良く、言われます。」
気にしている所を指摘され少し不機嫌になるが、これも自分の不服とするところだと思い、変えていこうと誓う。
それから二人は少しだけ話をした。
剣術の見解。
空への憧れ。
そして早良ミチルについて・・・
こうして話してみると思いのほか、目の前の女性は良く話しかけてきていることに気が付く。
とりあえず目線があった時、会議の時、何かと先に口を出すのは決まって彼女だった。
よく副隊長の加東圭子が愚痴っているのを聞くが、隊員との関係は良好だ。
そして隊員は皆彼女よりも年上。だけどよく指示に従っている。
穴吹智子と言う人物は、以外とリーダーシップ溢れる人なのかもしれない。
その代りと言っては何だが、副隊長当たりが大変苦労すだろうけど。
将来一部隊にとどまらず、もっと大きな部隊を率いるかもしれないと思うと尊敬する気持ちがわきあがってきた。
自分もそうなれるのだろうか?
「ねぇ・・・聞いてる?」
「あ、すみません。少し考え事を・・・」
思考していた為に、何の話をしていたのか忘れてしまった美緒はワタワタと謝る。
少し不機嫌だった智子はその様子を見てすぐに笑顔にかわった。
「大丈夫。気にしてないから。」
「・・・すみません。」
壁際に寄りかかりながら話していた智子は、背伸びをして壁から離れる。
そしてそのまま首を左右に振ると「ゴキゴキ」と音が鳴った。
踵を返し、軽く手を上げて去ろうとしたが、すぐに何かを思い出したのか慌てて美緒の方を向く。
「ああ、わすれてた。
さっき総隊長が、移動映画屋が来たから皆で見ようって。」
「映画ですか!」
この時代、テレビなんてあるはずもなく、しいて言うならラジオ位な物。
庶民にとって映画新聞は貴重な情報源で、最大の娯楽と言えた。
美緒は短期訓練していた時期に、一回だけ見たぐらい。
そう頻繁には見れない。
「映画、なんでしょうね。」
「う~ん。なんだろう?
前に見た任侠物の続きだといいんだけど。」
「私は本土で見たアニメの続きが良いです。」
「アニメ? なんの??」
「確かタイトルが“それゆけ! 鉄人●号 第十五話:阪は登らない、駆け下り転がる物”だったかと・・・」
「・・・それって、敵を最初にぶっ飛ばすけど、最後は味方もぶっ飛ばすギャグアニメじゃ?」
「そうです。見たことが?」
「うん。まだ続きがあったんだ・・・」
―――――
映画の話は瞬く間に基地中に広まった。
どんな映画が上映されるかは秘密にされ、どんなものが見たいか、どれが見たくないか、どんなものが面白かったか、会話が各所で弾む。
設営場所を覗きにいた学兵の一人が「三ヶ所に作ってる。」というと、更に会話が弾んだ。
殺伐とした戦場での潤いに、皆が子供の様にワクワクしながら待っている。
当初は男女別々だと思われていたのだが、混合だと言うとちょっと困惑があったがすぐにどうでもいいとばかりに消えていく。
この映画鑑賞、実際にはお見合いと言う意味も含まれている。
扶桑皇国ではウィッチは手厚く保護されている。
無論他国もそうだが、九曜葛葉の干渉によりある程度の利権や免除があるのだ。
これは家族にも及び、一人いるといないとでは違うとまで言われる。
しかし代わりに背負う義務も発生する為、一概にいいとは言えない。
839 :影響を受ける人:2015/09/29(火) 22:32:16
義務の一つとして早期結婚制度がある。
ウィッチとなるとお見合い等を必ずセッティングされて、一度は受けることになる。
血統を濃くするためであり、断絶させない為の工夫だった。
一応結婚するいかんは本人の自由意思だが、年齢が高くなるにつれてお見合い頻度は多くなる。
「結婚したくない!」と言い張ってもいいのだが、そうなると今度は一部の利権や免除が剥奪されてしまう。
まあ、大抵は制度を利用して結婚するウィッチが全体を占めているので、主だった問題は特に発生していない。
利権免除等も、法律をよく理解していないとうまく使えないので、知っているけど内容は知らないのウィッチが多い。
夕食を食べ終わり、夜戦部隊と交代した隊員達も映画の話を聞くと大急ぎで夕食を食べて、映画鑑賞はスタートした。
―――――
アニメ映画は学兵達が占拠しているような状況になっていた。
美緒がロボットの動きに一喜一憂し、徹子が戦闘シーンで何度も大声を上げそうになる。
醇子と小毬は「ネウロイに、ああいうのもいるのかな?」と、場違いな会話をしている横ですまし顔の凛も口元は楽しそうに歪んでいる。
北郷章香は学兵達の中で一緒に見ていた。
「ううむ。あの敵ロボ。動きが良いな。」
「そうですよね! ちゃんとして剣術の動作していますよね!」
「美緒、うるさ・・・ぉぉぉぉぉぉ!!!!」
注意しようとした徹子であったが、視線は映画にくぎ付け。
丁度主人公が操る鉄人が動作不良を起こしてゴロゴロ転がり、カサカサとケツから敵ロボに体当たりをする。
「鉄人の攻撃は、何と言うか・・・・・・卑怯に見えます。」
「黒いから余計にあれに見えるな・・・」
「製作者は何を考えているのでしょう。」
凛が「下品ですわ。」と言うと皆頷く。
しかし鉄人の不規則でコミカルな動きにみんなが笑う。
大人には不評の作品であるが、出来はかなり高く、制作者が黒く塗りつぶされているのが悔やまれる。
ストパンキャラが面白くて笑っていると知ったら、邪気眼な彼は宇宙に飛んでいく事だろう。
場面は変わり残り二つの場所でも映画は上映されているのだが・・・
子供達のトコロとは打って変わって静かだ。
普通ならばワイワイとまではいかないが、それなりに賑わっているものだろうが・・・
「・・・」
「・・・」
なぜか殆ど女性陣ばかりだった。
理由は、男性陣は皆な若い女優が出演する方に行ってしまい、ナイスミドルな叔父様と既婚者しかいない。
これでどう話しかけろと?
叔父様は基地司令官だし、整備班長は既婚者だ。
かと言ってあちらに行っても、映画女優を見ると負け組な気がして見に行けない。比べられるのも嫌だ。
女性陣は内心で溜息を吐きつつ任侠映画を見る。
画面の中でナイスミドルな叔父様がこちらを見るがときめかない。
華やかさが無い映画鑑賞であった。
以上です。
提供して頂いたネタを使用しました。
こんなのでいいのだろうか(汗
最終更新:2016年02月14日 22:08