359 :影響を受ける人:2015/10/11(日) 22:40:26
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
撤退日時が決まり、忙しい毎日が過ぎた。
いや。以前から忙しくはあったが、より増したと言える。
それでも、地獄の一週間と呼ばれているあの時に比べればまだ余裕だ。
襲撃頻度は少なくなり、夜間戦闘も一回あるかないか。
一部の兵士達は「ネウロイは疲弊しきっているのでは?」というが、上層部は「戦力を温存、増強しているに違いない。」と判断している。
北郷章香、江藤敏子両名も上層部の、この判断を支持している。
今は嵐の前の静けさに過ぎないと、己の感が言っているのだ。
自分達の上司も同意している。
今の内に押し返そうと主張する輩もいるらしいが、兵器の質が劣るためにそれは不可能。
連戦により兵士達も疲れているし、再編が必要な部隊が多すぎる。
今は現場をわかってくれている上層部がいるから何とかなっているが、横槍には注意しないといけない。
主に海軍に問題がある。
陸軍は大陸戦線が発生してから人材の適材適所が急がれたおかげで、大分組織的に風通しが良い。
対して海軍は昔から、対人の戦争でも前線で頑張り、ブリタニアを退けたこともあるからプライドが高い。
一応政治に口は出さないと言っているが、堀井一派は最近露骨に干渉しているという。
が、さすがに織田信平首相に付け入る隙は無く、失敗しているとか。
上手く行かないからと豊臣秀文に接触しようとするも、彼は既に本土からいなくなっており、影響力も皆無になっている。
ならばと、陸軍で不遇の待遇を受けた者に接触し、足を引っ張らせようとするも・・・末端過ぎて意味が無い。
こんなことをしている合間に、九鬼大将との不仲が影響して離れていくものが相次いでいる。
それにより更に影響力が落ち、焦っているという。
個人的に、何をやっているんだと言いたい。上司は愚痴愚痴言っているけども。
撤退作戦自体は既に最終段階まで移行している。
自分達は本土に先に帰り、陸軍海軍合同機械化航空歩兵部隊を作る予定だ。
これは将来において空軍設立を視野に入れたもので、
夢幻会が主にかかわっている。
章香と敏子両名は知らないが、ウィッチの総数が少ないから先に実績を作ってみようという試みだ。
いかに前世の経験があるとはいえ、こちらの世界では女性がすでに飛んでいる。
別の問題が発生するとも限らない為、早めに問題を解決したい、と思っての行動だ。
そんな思惑は知らずに上司から聞かされていた二人は精力的に話し合い、いろんな問題に直面しつつも調整し続けている。
上司達はこれが完成したら引退して隠居するつもりのようだが、内心では「「見捨てないで~!」」と叫びたい。
コネクションもそれほどではないし、まだあの二人の力が必要。
というか、まだ若いからそんな重責を負いたくないというのが本音。
もうちょっと自由でいたい。
―――――
隊舎を引き上げる際に北郷部隊・江藤部隊はきち司令に別れの挨拶をした。
彼等も後に引き上げるが、大きな機械を扱っているから最後になるのは避けられない。
それでも次の避難船団の船便で帰る予定だから、問題は無いだろう。
「その時、私は基地司令ではないだろうがね。」
「航空隊の司令になっているかもしれませんよ?」
「はははは! それならいいが、さすがに歳だ。引退時手後進に譲るべきだろう。」
章香の言葉をジョークとして笑った司令だが、微妙に寂しさを浮かばせる笑顔となっているのに本人は気が付いていない。
「本土に戻っても忙しいだろう。ありきたりだが、頑張ってくれ。」
「司令もお元気で。」
一同は綺麗な、陸軍海軍それぞれの敬礼をするとトラックに乗車した。
全員乗ったのを確認すると、章香は運転手に促してトラックは基地を出ていく。
全てのトラックを見送った司令は、傍らに残ったウィッチを見やる。
「君は別の基地に移動だったかな?」
「・・・肯定。」
問いに答えた夜間戦闘部隊を指揮する旗本サエは、別に待機していたトラックに乗り込む。
そして彼女等も分かれの挨拶をし、順次トラックに乗り込み、一台ずつ門から出て行く。
司令と副指令はしばらくトラックの後姿を見ていたが、十分小さくなると基地内に戻っていく。
二人の心には小さな安堵と、寂しさが残った。
360 :影響を受ける人:2015/10/11(日) 22:41:53
―――――
港に着いた一行は、一時的に近くの倉庫内に集められた。
驚くべきことに倉庫中には同時期に志願した学兵等もいたのだ
「おお! おまえ元気だったか!?」
「琴野さん、無事だったのですわね!」
若本徹子と飯島凛が見知った学兵の傍に駆け寄る。
「あ、坂本だ!」
呆然と学兵達を見ていた坂本美緒、竹井醇子、大久保小毬は他の学兵達に囲まれてアワアワしてしまう。
よくよく見れば学年の違う学兵も交じっていて、それぞれグループを作って話している。
大体はお互いの無事を祝い、亡くなった友に黙祷していた。
部隊長等は彼女等に対し、しばらくここで待機するように言うとその場を去っている。
空戦陸戦、海軍陸軍に別れてしまったとはいえ、一度話せば尽きる事が無いと言えるぐらいに話し込む。
中には以前、美緒に突っ掛った学兵もいたが、一言詫びを入れると美緒は許して再会できたことを喜んだ。
事情をよく知らない徹子は、何で謝るのか知らなかったが深くは聞かない。
一々聞いて、不仲になる原因を作るのは愚かだから。
当の本人が気にしていないなら問題ない。
暫らくにぎわっていた倉庫であったが、戻ってきた隊長陣に気が付くと一気に静かになる。
この辺は軍隊生活が長がった影響だろう。
章香自身も厳しくしていたし、敏子にいったては怒らずにどのように話していたか聞き、間違っていれば怒気を発する笑顔で再度説明をしていたものだ。
隊長陣と副隊長陣が学兵等の前に移動し整列する。
その間に学兵達も所属部隊別に分かれて整列した。
「皆、休んでよろしい。」
敏子が前に出ていうと、全員が休めの体勢に移行する。
「今日をもって私達は大陸から離れる。
これは計画に基づいた行動であり、逃亡ではない。
まるで追い出されるようになっているが、計画に基づいての行動だ。
繰り返して言おう。これは、逃亡ではない!
私達は、諸君ら学兵の働きを良く知っている。
志願してくれた諸君等の中では、悔しい気持ちがあるだろうが、此処は堪えて欲しい。
諸君等の御蔭で民間人の退避は間に合い、助けによって生き残れた者達もいる。
これらは誇るべきものであり、決して恥ずべきものではない!
しかし、残念ながら生きて帰る事ができなくなった者もいる。
その責任は私達にある。すまない。」
そう言って隊長陣は頭を下げた。
その行動に驚いた学兵達は口々に「そんな事は無い」と言った。
必死にフォローしようとする彼女等に、隊長陣は顔を上げたが苦笑している。
「諸君らの擁護は嬉しい。しかし、上官と言う物は・・・ 上に立つ人間は責任を負うものなのだ。
だから責任は必ず負い、それを注がなくてならない。
さて、話を続けよう。
諸君らも知っているとおり、政権交代した政府は強権を行使し、派遣部隊を戻そうと躍起になっている。
すでに第一陣が戻ってきてはいるが、すぐに使えるわけではない。
旅の疲れを癒し、体調を整え、もう一度訓練をせねばいけない。
その期間を三ヶ月と見ているが、上層部は最短の一ヶ月で終わらせようとしている。
予定は未定であり、決定ではない。
誰が言ったかはわからないが、良い言葉だ。計画的にやっても一ヶ月で戦力化は難しいだろう。
本来ならば大陸から撤収し、本土に帰還した時点で諸君等は解散する予定であった。
しかしこのような事情の為、帰還第一陣が使えるまでいてほしいと思っている。
これは強制ではない。志願制で募ろうと思っている。
なぜ志願制かと言うと、諸君等の中には「もう戦いたくない」「家族の元に帰りたい。」と思っている者がいるはず。
故に強制することは出来ない。本土に戻ったら一人一人を呼び、面接をする。
その時に気持ちを、素直な気持ちを聞きたい。
もう一度言う。これは強制ではない。
逃げる事は恥ではない。怖いと思うのは、人間だれしもある事なのだから。
諸君等は正規兵に負けないくらいに頑張った。
ここで引いても誰も笑は無いし、笑わせはしない!
後ろ指をさされることもない!
そんな不敬な奴は私達が黙らせる!
諸君等はしっかり戦ったのだと! 私が反論してやる!
だから、元の日常に戻ってもいいのだ。
学友たち共に将来について学び、遊び、語らってもいいのだ。
家族の元に戻ってもいい。」
361 :影響を受ける人:2015/10/11(日) 22:42:27
「これは個人の問題。
相談しても良いが、決めるのは自分の意思であると思ってほしい。
最前線に出さない方針ではあるが、不確定要素により出てもらう可能性も考慮してほしい。
出すにしても補給部隊として編成し、なるべく前には出さないように計らう。
志願した際に優遇措置を取るという書面を覚えている者はいるか?
たとえ志願しなくても、その措置は必ず行うので安心してほしい。
北郷総隊長も言ったが、志願しなくとも恥ではない。
それもまた、勇気ある決断だ。誰それを咎めはしない。」
北郷章香・江藤敏子両名はそう言うと沈黙した。
言い終わると同時に学兵達は少し困惑した表情で、お互いの顔を見合うが口に出せない。
無理もない。たとえ本土に戻っても、戦争が収束しない限り除隊できるとは思っていなかったからだ。
それなのに途中で離脱しても良いという。
一応隊長陣の言い分もわかるつもりだ。
扶桑のウィッチである寿命が長い事は散々言っているが、それ故に徴兵が他国よりも遅いのも特徴だ。
中学において選ぶ軍学科により階級が与えられるのだが、それでも小学生である坂本美緒等は早すぎる。
大体中学卒業くらいから本格的に軍隊生活となるのが、扶桑としては常識。
基本的にウィッチは才女が多いのだが、精神年齢は幼いのを考慮し忘れる事がある。
いかに勇敢に戦おうとも子供。
多感なこの時期に、戦場で過ごすのは避けなければならない。
しかし、この世界はそれを許してはくれない。
当初は親友の若本徹子が心配で志願した二人は、お互いの顔を見て竹井醇子は気が付いた。
(・・・そっか。美緒ちゃんは残るつもりだ。)
坂本美緒の表情は、戦争に参加する前と比べて弱々し良い所が無くなっていた。
そしてその瞳にも以前よりも強い意思が宿っている。
恐らく、早良ミチルの代わりに戦争の行方を見届けるつもりなのだろう。
徹子は言うまでもない。彼女は最後まで戦うつもりだ。
対して自分はどうだろうか?
――あの言葉を聞いてまだ戦う気力はあるか?
――家族の元に帰りたいと思うか?
――平和な世界に戻りたいか?
確かに家族の元に戻りたくはある。
しかし、それよりも二人を見捨てる・・・
ちがう。そんな考えをしてしまう自分が許せない。
うん。自分はまだ戦える。
自分の気持ちをしっかり把握し少しだけ微笑むと、美緒はちょと心配そうな顔になったがすぐに苦笑する。
どうやら心配させてしまったらしい。
自分は大丈夫だからと意思を込めて前を見る。
前には少し俯く飯島凛と、右隣りの大久保小毬がいる。
前を向いているので表情はわからない。
凛は悩んでいるようだが、おそらくそのままだろう。
なんだかんだ言って面倒見が良いから、徹子を放っておくなどしないはず。
小毬はわからない。
それなりの付き合いをしているし、話もしている。
しかし彼女がどのような選択をしようとも、総隊長が言ったように責めるつもりはない。
除隊するなら、むしろ笑顔で送り出す。
けして戦闘が得意な彼女ではないが、素早い補給に助けられたことは何度もある。
補給中にフォローしてもらった事もある。
何気に整備に関しては同期の中で一番うまく、なんどか指導してもらった事も。
それぞれの思いを胸に仕舞い、彼女達は本土に帰る。
以上です。
不思議な事に、演説のセリフが旨い具合に出てきた。
なんでだろう?
最終更新:2016年02月14日 22:10