722. ひゅうが 2011/10/28(金) 02:09:07
>>716

寝ようとしたら面白いのがあったので、カッとなって書いた。今は反省している。
というわけで支援。品質はご容赦のほどを…


――西暦1948年8月12日  北極圏


その艦は、長い間待機状態にあった。
英連邦領である南アフリカ共和国産のウラニウム235を80パーセント含んだパワープラントは、黒鉛で中性子の奔流の速度を減速させながら、快調な連鎖反応を生んでいたし、その結果発生した熱を蒸気に変え、これも快調にタービンに伝えていた。

2基の日本特殊造機・三菱重工製の加圧水型動力炉(秘匿名称ゲ号発動機)は、日本帝国が世界に誇る1万8000トン級超大型反応動力潜水艦「イ‐401」を30ノットの高速で駆動することができるが、今現在、北極海の薄い氷の下で「彼女」は速度を絞りに絞っていた。

いくら小さいものはゴム挟型揺架装置、大きなものでは無反響タイルにゴムタイル、そして12枚スキュードプロペラといった音を外へ漏らさない対策を施されているとはいっても、この北極海  ノヴァヤゼムリャ諸島のはるか沖合はドイツ第3帝国の勢力圏だ。
いつ、哨戒型のXXXI型閉サイクルディーゼル潜水艦やヴァルタータービンを積んだXXI型の高速潜水艦がやってくるかも分からない。
もっとも、それを警戒しているからこそ彼女は氷の下にいたのだが。

「艦長。」

赤い戦闘灯に照らされた発令所の中で、速水洋平艦長は腕を組んでいた。
その後ろから、小声で南郷副長が声をかける。
発令所の全員は無言だった。
全員がある思いを共有しているためだ。

「統合軍令本部からです。」

速水は、黙って南郷が手渡した紙を手にとった。
そこには、簡単なカタカナでいくつかの単語が連なっていた。

「ついに、やる時が来たのか。」

「では?」

暗い感情に満たされた表情で、南郷と速水は頷きあった。


「報復の時はきた。広島と長崎の敵討ちだ。全艦浮上用意!」


――1948年8月6日。
大日本帝国がドイツ第3帝国に宣戦布告文を手交する3時間前、はるばる南米チリ沖から小笠原諸島沿岸に接近したUボートの手により帝国本土に対し史上2度目となる核攻撃が実施された。
目標となった都市は、大日本帝国の強大な海軍力の源泉である海事都市、呉、および長崎。
しかし、水中発射された大型弾道ミサイルは誘導不良から広島市上空には達したものの、呉を外れて広島市上空で炸裂した。
威力200キロトンの強化型原子爆弾「爆発単位200」は、二つの都市と58万の人々を蒸発させるか焼き殺し、残る30万あまりの人々や周辺住民にも目に見えない傷を負わせていた。
同日、グロス・ベルリンからは、甲高い声で黄色列島民族に対する聖戦と大ドイツ千年帝国の勝利が宣言された。

反応は迅速だった。
ドイツ側は、お得意の縦割り型の複雑怪奇な官僚主義によって、極東の島国がこの年に彼らの秘匿名称マルニが完成しつつあるという情報を察知していながら総統府へと伝えきれておらず、またその数についても予測を誤っていた。
数日のうちに、カナダ沖に浮かぶバイキングがはじめて北米に足を下ろした島には彼らがようやく実用化した巨大な噴式爆撃機部隊が展開を完了。
ベーリング海峡からは巨大な鉄の鯨たちが配置についていた。

そしてさらに数日が経過した後、大日本帝国宰相はテレビジョンカメラの前に立ち、国民に重大な発表を行った。

その瞬間、すなわち日本時間8月15日正午、北極海の4か所から合計24発の7式艦対地弾道弾が大ドイツ帝国国内めがけて飛翔しつつあり、また北米バンクーバー航空基地およびアラビア半島のジブチ航空基地からは、7式超長距離陸上攻撃機「飛鳥」182機が地中海を超えて復讐の刃を放ちつつあった。

このうち、30の弾頭は、通常のものではなかった。

ババリアの伍長は、彼のいう「文化模倣民族」を侮ったツケをいやというほど味わうことになる。
なお、第3次世界大戦においてその兵器が使用されたのは、この日が最後となった。

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最終更新:2012年01月02日 19:04