529 :影響を受ける人:2015/12/28(月) 21:55:55
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第八十二話 ―翼を羽ばたかせて―



舞鶴基地に戻った坂本美緒達であったが、宿題が全て終わったわけではない。
一応わかる大人に聞いたりしていたし、ブリタニア語は(簡単ながら)小学生前から習っているから問題は無い。
問題は中学生以降に習うカールスラント語・ガリア語・オラーシャ語の選択だ。
国際社会に出るかもしれないウィッチには必須の項目と言える。
以前はガリア語が一番だったが・・・お察しである。

美緒達は小学六年生から中学一年になっていた事を完全に失念していた。
なので宿題自体もかなり簡単なモノであるのだが、それは飽く迄普通に授業を受けていることが前提。
知らない数式が出てくるともうお手上げ、本当に大人に頼るしかない。
多少少ないとはいえ、宿題との格闘はこの基地にまで持ち越されている。
流石にこれはまずいと文部省も大急ぎで動き、教育者を選抜して送り込んできた。

北郷章香等も彼女等の将来を憂いていたので快く教師派遣を受け入れた。
最も軍事訓練が中心となるので、そのバランスを取る話し合い、折り合いをつけるのが大変だったが。
それはともかく、美緒達学兵達は訓練に従事する。

―――――

美緒達は朝早くから起きて全員軽く運動をした後、滑走路に集合していた。
そこには陸軍所属のウィッチ達、江藤敏子率いる部隊の面々もいたのだった。

「なんだろう?」
「わかんねえ。」

美緒が疑問に思っても、若本徹子に答えが出るはずもない。彼女もわからないのだから。
横目でチラチラ隣を見ていた学兵組は、目の前に章香がやってくると全員しっかり前を見る。
章香の後ろには、見覚えのないウィッチ達が並んでいた。
誰だろうと内心で首をかしげていると、メガホンを手に取った章香がちょっとしたお立ち台に上がる。

「諸君! これより選抜を開始する!
 何を言っているかわからないモノもいると思うので、此処で説明しよう。
 現在、扶桑皇国は大陸からの完全撤兵、完全な民間人の退去を目指して動いているのは周知の事実だ。
 今までは広大な大陸に、多数の基地を設けてローテーションで敵の進行を食い止めていた。
 しかし退去してしまえばその戦法は使えない。なぜなら扶桑海が存在するからだ!
 海に基地は建設できない。出来るのは航空母艦の派遣だけだ。
 ならばどうするか? こちらが行う戦法は、実はそれほど変わってはいない。
 だが一部変更があるので説明する。
 第一段階。長距離偵察機を出す。これは変わらない。
 早期発見こそ、防御力を生かす一つの要素だからだ。
 第二段階目。これは航空母艦の通常戦闘機が最初に当たる。
 以前ならば、基地航空隊が受け持っていた。これを航空母艦の戦力で代用させる。
 第三段階目。ウィッチが対処するわけだが、これも航空母艦戦力で行う。
 後ろに並んでいるのは航空母艦【翔鳳】【瑞鳳】に乗り込んでいるウィッチだ。彼女等が対応する。」
「へぇ・・・」
「彼女達が海のエリート、か。」

陸軍側から呟きが聞こえた。

“航空母艦に乗り込んでいるウィッチはエリート”

これは半ば事実だ。当初正規空母にもウィッチを艦載する計画があり、実際艦載された。
だが原作を知る夢幻会が危惧した様に、正規空母に艦載機数は少なくせざるおえなかった。
まず女性乗員を乗せるスペースの確保。彼女等にもプライベートは必要だから隔離するように設けないといけない。
そして整備環境。小型機械と言っても良いストライカーは、通常戦闘機との共通部品が少なすぎて、専用工具も多数あった。
整備員も専門に乗せざるおえず、更に場所が狭まる。

更に発進の為には専用の固定台も必要となり・・・
これらの理由により、航空母艦に乗るウィッチは限られるようになった。
「少人数ならば、最精鋭を乗せよう。」こんな発言が出るのも、仕方がない事。
自然とエリートが選ばれるようになり、ウィッチ専用の航空母艦【翔鳳】【瑞鳳】が完成しても変わらないのだった。
ある意味、海軍を目指すウィッチの卵達にとっては、憧れの存在なのだ。

ちょっと感動してキラキラした目で彼女等を見つめる美緒に、竹井醇子は苦笑して隣を盗み見ると、徹子も同様に見ていた。
時折対立する二人だが、こういう所はよく気が合う。
そんな些細な事を気にせず、章香は続けて言い続けた。

530 :影響を受ける人:2015/12/28(月) 21:56:28

「そして第四段階目だが、これは二つ考えられている。“そのまま本国に進撃する”か、“敵の進路を読み取って航空母艦を襲う”かだ。
 どちらかによって対応が変わってくる。
 まず“そのまま本国に進撃する”だが、これは本土の防衛戦力で対抗する。
 そして戦闘に巻き込み、時間稼ぎをしている間に航空母艦戦力が後ろから襲撃、挟撃して殲滅する。
 次に“敵の進路を読み取って航空母艦を襲う”だが、航空母艦戦力もタダでやられるわけではない。
 まず緊急発艦で出せるだけ出せる戦力を出し、その後は退避行動をとる。
 そして本土の戦力はそれを支援する。退避できたと判断したら、殲滅に移行する。
 概ね決まっている方針はこんなものだ。」

一通り言い終わると、質問が無いか確認を取る。
一同の顔を見渡すが、誰も挙手はしない。

「よし。全員が理解したという前提で話を続ける。
 本日の訓練は、航空母艦に離着艦出来るかどうかの適正判断するための訓練だ。
 海上に出て戦うわけだが、飛行が困難になった場合どうするか?
 答えは航空母艦に着艦するしかない。
 陸上の基地とは違い、航空母艦の飛行甲板は狭い。
 そんな場所に降りるわけだから、訓練しないと大事故が起きる可能性がある。
 その予防のための訓練だ。そして発艦訓練も同時に行う。
 使える戦力はとことん使う。着艦してそれで終わりではない。
 一時的な補給の為に着艦する可能性も考慮せよ。
 そして、これらの訓練で成績が芳しくなければ陸上の基地で、最終防衛ラインの任務に就いてもらう事になる。
 最終防衛ラインは陸が見える場所での戦闘という事になる。
 もうほとんど本土の戦闘だ。」

ここまで言うと、さすがにざわめきが広がる。
章香と敏子にしてみれば、学兵等は全員最終防衛ラインにつけたいと思う。
しかし、最後の壁が学兵と言うのはさすがに心許ない。
故に、ある程度は前線に出さないといけない。
そして陸軍のウィッチも着艦できるか否かを調べる。

先も述べた通り、戦場は海上だ。呑気に退却できるなどは考えることは出来ない。
通常戦闘機は着艦装置が必要なので、航空母艦に降りられる機体は少ないから考える必要はない。
だがウィッチは違う。
着艦は飛行甲板全部を使えば楽にできるだろうし、発艦に関しても発射台は共通のモノを基地にいた時から使用している。
ウィッチだからこその荒業だ。

「説明は以上だ。これよりグループを決めて訓練を開始する。」

―――――

陸上で行う訓練は扶桑皇国独自と言っていいもの。
決められた距離で発進するのは変わらないが、結界士達が訓練に参加しているのが違う。
彼女等が張る結界は何時ものシールド結界ではなく、気圧変動シールド応用の“強風結界”だ。
この結界により、航空母艦が向かい風に向かって全速力で航行している状況と同じにしている。
滑走路の両側から祈祷している姿は何とも言えないが、効果は絶大。

疑似的とはいえ同じような環境で訓練できるのだから。
だが長時間展開はさすがに無理。なのでかなりのハードスケジュールでこなしていく。

「疲れた・・・」
「発進があんなに難しいなんて。」

へたり込む徹子の横に、醇子が倒れ込んで先程失敗した事を思い浮かべる。
目の前では別グループとなった美緒がタッチ&ゴーで再び上空に駆け上がっていくのが見えた。
その後ろからは、彼女の護衛となる【瑞鳳】のウィッチ二名が危なげなく飛んでいく。
まだ美緒の方は慣れていないから挙動が怪しいのだが、さすがにベテランのウィッチは綺麗だ。

「あれが“エリート”か・・・ 壁は高いぜ。」

徹子はそう言うと、そのまま芝生の上に寝転ぶ。
上空では順番待ちのウィッチ達が旋回している。
その中に目当ての人物がいた。

「お。委員長が行くか。」

飯島凛はベテランが眼下で着陸してみせて手本を見せたのを見て頷き、降下していく。
着艦と言うのは「計算された墜落。」といわれる。これはウィッチも同様だ。
と言っても着艦方法はちょっと違うのだが・・・
頭を下げて降下していき、ベテランと同様の位置で上体を起して、体全体を使ってブレーキを掛ける。
そしてそのまま滑走路に入って行き・・・見事に止ってみせた。

周りの学兵達から「おお・・・」と声が上がる。
凛は初めてにして綺麗な着陸をして見せた。
無様に着陸してしまっている徹子が悔しさに顔を歪ませ、親友の態度に醇子は苦笑いを浮かべるしかない。
視線の先ではホバリングしながら待機スペースに向かう凛が、ベテランに乱暴に頭を撫でられている
先導していたベテランに褒められてうれしいのか、凛は顔を赤くしている。

531 :影響を受ける人:2015/12/28(月) 21:57:07

そしてその傍に 山田里子 が近寄ってきて二人にタオルを渡す。
その際にからかったのか、拳を振り上げた凛から里子は逃げ出した。

「あいつ、戻ってこれたんだな。」

徹子がポツリとつぶやく。
もともと山田里子はウィッチの適正が低い娘であり、凛と共に過ごさなければウィッチになれなかった。
その所為で、途中で魔力欠乏症を発症させ、本土送りになっていた。
普通ならばそのままいなくなってもおかしくない。
しかし彼女は戻ってきた。他でもない友達の凛の為に・・・

「“これた”じゃないよ。“きた”んだよ。」
「・・・・ああ、そうだな。」

徹子は上半身を起こすと、もう一度視線を上空に向ける。
時間的に結界士達が強風結界を止める。その前に全員着陸する。
その中には美緒の姿もあった。

「よっ、こらしょ・・・っと。」

立ち上がり歩いていく、徹子に醇子も慌てて着いていく。
簡易テントに向かって行った二人は、用意されていたタオルとよく冷えた飲み物を取って親友が着陸するところに向かう。
ベテランが先に降りて手本を見せ、最初に陸軍のウィッチ・・・加東圭子と穴吹智香が着陸したのがみえた。
続いて二人の部下も着地する。
そして最後に美緒と【瑞鳳】のウィッチ二人が着地した。

「あ、わわわわ!!」

が、制御を誤った美緒はそのまま衝突緩和用マットに突撃していってしまった。

「あちゃぁ・・・」
「美緒ちゃん!」

手の平で顔を隠して天を仰ぐ徹子に対し、友達思いの醇子は大急ぎで駆け寄る。
現場では野次馬が集まっていて、「ああ。やっぱりやったか。」「一人ぐらい出るとは思っていた。」「最後まで無事故で行けると思ったのに・・・」「おお。良い御尻♪」などと言いたい放題言っていた。
嬉しそうに言言っていた人物は、北郷章香総隊長に「風間さん、こちらに・・・」といって引っ張られていくのが見えたが無視。
嬉しそうに「ああん♪ やさしくしてね~♪」などと聞こえたけど無視だ。

まだ結界士達が強風結界を解いていないので、滑走路に出ると体を持って行かれそうになる。
だがしっかり踏みしめて親友の元に駆け寄った。

「うう・・・」
「大丈夫?!」
「鼻、打った・・・」

呻きつつも顔を上げる美緒の顔からは、鼻血が一筋たれていた。
それを持っていたタオルで丁寧に拭いてあげていると、徹子がやってきて既に停止しているストライカーを掴む。

「片付けておくから、ちょっと見てもらえよ。」
「うん。そうする。」
「メガネは大丈夫?」
「大丈夫。取れてないし・・・ものすごく頑丈なんだよね。(三階から煉瓦の上に間違って落としたことがあるけど、煉瓦の方が負けたんだよね・・・)」

素直に応じた友を見た後、目配せで醇子を見るがもう彼女はついていくつもりだったのか、支える様にして立ち上がるのを補助する。
結界士達が祈祷を止めると、先程まで吹いていた風が止んで歩きやすくなった。
整備員達がすぐさま駆け寄り機材の撤収をはかる。
訓練の大変さに徹子は内心で溜息を吐きつつも、絶対に弱音を吐かない事を改めて誓う。
憧れは遠く、そして高い。それがいい。



以上です。
かなり遅くなってしまい申し訳ない。年内最後の更新となりました。
皆様良いお年を~(会話には参加するつもりだけどね。

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最終更新:2016年02月14日 22:14