- 780. ひゅうが 2011/11/02(水) 09:22:17
- ※ 支援SSとはちょっと毛色が違うのでここに投下します。
――西暦19XX年 大日本帝国 帝都東京 お台場 東京国際展示場
やぐら橋の前に立つ男たちは覇気に満ち満ちていた。
「J。いよいよだな。」
「ああ。D。徹夜組をあらゆる手段で排除し続け、仮眠はとった。この日のために日本ヒルトンを押さえてあるのだから当然だ。」
正装をした二人の男はニヤリと笑った。
その周囲には、数人の部下(同好の士)がおり、その周囲には背広を着た「参加者」たちがこの偉人たちを尊敬の目で見つめていた。
彼ら二人は、世界的な名士であるとともに、彼らの同志である。
忙しく世界を飛び回っているものの、夏と冬の7日間だけは必ず母国の日本へと帰り、私費でこの世界的なイベントに協力している。
警視庁湾岸中央署をはじめとした各署で作られる「統合警備計画本部」の指導のもとで運営参加者を指導し、あらゆる手段をもってこの富の塊を確保しようとする不届きもの――徹夜組みや転売ヤーと呼ばれる欲望に魂までも売り払った奴隷どもを駆逐する。
帝国宰相や各国の首脳クラスまでも平等にお忍びで参加するがためにうごめく情報機関に対しては情報提供と私設部隊による協力の両面で協力をしているが、それは決して表に出ることはない。
今年も、特徴的な巨大な建物の前には、始発列車に乗ってやってきた人々がすでに5万人近い列を作っているが、遠巻きに見守る警察官が介入しなくともうまく誘導が行われていたのは、彼ら二人や準備会の尽力により鍛え上げられた腕章持ち…「スタッフ」の努力の賜物であるといえた。
それを分かっているからこそ、人々は彼ら二人に「最初の入場者」である栄誉を与えるのだ。
「今年も、はじまるな。」
「ああ。今年もはじまる。3日間の熱い祭典――全世界から290万余の人々が集結する宴が。」
そのイベントは、3日間で300万近い人々をこの大日本帝国の帝都に呼び込む。
もとは、浜離宮近くで行われていた陸海軍合同文化祭に端を発する文化交流のイベントだった。
当初は士官などが忙しい課業の合間を縫って行っていた牧歌的――修羅場という名の――イベントだったのが、一気に規模が拡大したのは第2次世界大戦が理由だった。
働き盛りの国民の大半が軍隊で何らかの共同生活を送ったことで、それまではプロが行っていた同人活動は技術の進歩やテレビジョンの普及とあわせ、一気に数百万の賛同者を得ていたのだ。
終戦からほどなく行われた第1回から海外を巻き込みつつその規模は拡大し続け、お台場の埋め立て地に建設予定だった国際展示場は将来的なさらなる拡大を見越して当初の8倍という広大な総合文化スポーツセンターへと計画の変更を余儀なくされた。
無論、文化の庇護者である世界各国の資産家たちが莫大な寄付を行ったことは言うまでもない。
「そこ」では、年に2回、世界中の同好の士が集まり、交流する。
アフリカの音楽、ペルシャの神秘的な詩、ロシアの精緻な作品、欧州の作り上げた美しい絵、北米のどこか粗野ながらも牧歌的な作品、アジアの多様でエキゾチックな作品群。
そして―――日本が世界に誇る、「燃え」や「萌え」。
世界最大の同人誌即売会、コミックマーケット。海外ではブック・EXPOの異名をとる巨大な祭典が、はじまる。
「おはようございます!コミックマーケットを開催します!」
万雷の拍手が沸き起こった。
日本を代表する文化人の二人は、TV中継のカメラに微笑みつつ、どうやってな○はをはじめとした新作アニメブースと倉崎飛行機などの企業ブースを往復しつつ周囲2キロに散らばる目標群を入手するか、その優秀な頭脳を回転させていた。
最終更新:2012年01月02日 19:49