九曜ストパンアグレッシブルートの話となります。
TS表現があります。
ORETUEEEEがあります。
魔改造キャラが出てきます。
もしかしたら原作の世界観が損なわれているかもしれません。
スフィンクス作戦を元にしていますが資料が無い為、完全に妄想で作り上げています。
申しわけありません。
それでもよろしければお進みください
ストパン:マルセイユ誕生日記念SS ―第二次スフィンクス作戦前夜―
第一次スフィンクス作戦が失敗に終わった後、すぐに原因解明を進めた。
様々な要因が挙げられる中問題視されたのは、【ライトニング・フォックス】二名を投入していた事だという。
かの伝説的存在、九曜葛葉の薫陶を受けた教え子12人。
その内の二人・・・
【ライトニング・フォックス №1ハンナ・ユスティーナ・ヴァーリア・ロザリンド・ジークリンデ・マルセイユ 『パーフェクト・ガンナー』】
【ライトニング・フォックス №6 セシリア・グリンダ・マイルズ『ツイン・シールド・ソー』】
- この二人がいて奪還できないのはかなりのショックであった。
二人の戦果は通常のウィッチよりも遥かに高く、1人送り込めば戦局が有利になるとまで言われているのだ。
これは誇張でも無く事実。
げんに第504統合航空兵団に所属する二人・・・
【ライトニング・フォックス №3 ルチアナ・マッツェイ『エリア・オーバー』】
【ライトニング・フォックス №4 ドミニカ・S・ジェンタイル 『パンドラ・ボックス』】
は多大な戦果を上げているという。
他にもアンドラを守る・・・
【ライトニング・フォックス №10イリス・モンフォート 『ボーパル・バニー』】
【ライトニング・フォックス №12アイアネス・アッカーソン 『マンティス・ホッパー』】
両名も、完全に守りを固め。
時には反撃に打って出ている。
まあ・・・新たに現れたというピラミッドに封印されていたネウロイは、不機嫌なマイルズとこれまた不機嫌マルセイユ苛めるようにズタボロに破壊したから、問題ないのかも・・・しれないが。
それはともかく、原因を究明して思い至ったのは戦力不足であるという事。
確かに周辺から集めた戦力は“それなりの”大戦力ではあった。
しかし元来物量で圧してくるネウロイには、少々足りないモノであったことも否めない。
補給腺も問題があったと言うが、砂漠の大地での作戦・・・それは織り込み済みだったはずだ。
それでも無理だった。
そこでチャーチル首相は思い切った手を打つことにした。
手が足りないなら足せばいい。
2人で足りないなら?
―1945年某日―
マルセイユ一行は大空を飛んでいる。
先頭を切って飛ぶのはエースのハンナ・ユスティーナ・マルセイユ。
少し右後ろに相棒のライーサ・ペットゲン。
続いて記者隊長の加東圭子。
その後ろに扶桑からやってきた援軍のウィッチが3名と、最年少の弾薬係兼大砲屋兼皆の『間宮』稲垣真美。
以上が第31統合戦闘飛行隊「アフリカ」のメンバーたちだ。
他にも二名いるのだが、それはこちらにはいない。
陸上で移動しており、すでに先発隊として現地に赴いているはずだ。
「それにしても、またこの作戦をするとはね。」
「なんだケイ。不満なのか?」
愚痴るように呟いたのに、目ざといどっかの誰かさんが隣に並んだ。
チラリと視線を向けて再び前を向く。
「前が、前だったからね・・・」
「今度はそうならない事を祈るだけさ。」
「空戦では終始優勢でしたし。ティナも絶好調ですから問題ないですよ。」
自信家な魔女は真剣な表情だが、口元は笑っている。
その相棒も笑顔で言っていて頼もしい限りだ。
和やかな雰囲気の中、後ろから質問が来た。
通常より二回りは大きな弾薬箱を背負った真美だ。
「でも、今回。だいぶ様相が違うって聞いていますけど・・・?」
「戦力なら前回よりもあるみたいね。他にも・・・なんか、サプライズがあるって聞いたけど。」
基地を出る前に仕入れた情報だが、誤魔化されてしまったのであやふやだった。
「サプライズ? なんだそれ??」
「さぁ?」
マルセイユが頭にハテナマークを沢山つけ、圭子はポリポリ頭を掻く。
相当凄い事なのか、通信先はかなり興奮状態だったという。
どうせなら教えてほしかった。
これは気にしてもしょうがない。そう割り切って編隊飛行を戻す様に言おうとした時、マルセイユが眼を鋭くさせて叫んだ。
「避けろ!」
「え?」
何が何だか解らない。
しかし体は動いてくれた。後続も慌てて真ん中を開ける様に飛ぶ。
すぐに別れたのが功を奏し、左右に分かれた編隊の間を何かが、一気に降下してきた。
「うわぁ!」
「な、なんですか!!」
ライーサと真美が驚いて叫ぶ。
気配に気がついていたマルセイユと、すぐに思考を切り替えた圭子は降下してきた物体に銃を向け・・・目を見開いた。
「・・・あれって、ウィッチ?」
「・・・」
降下して小さくなるシルエットは、間違いなく扶桑の標準戦闘服に身を包んだウィッチだ。
何故自国のウィッチに狙われたのかわからない圭子は混乱したが、そのシルエットに見覚えのある人物は黙ったままだ。
降下したシルエットは持っている“モノ”を素早く回転させると、あり得ない角度で旋回してきた。
持ってい“モノ”・・・巨大な刀剣を振り回すウィッチは、怒声と共に駆け上がる。
「・・・・・・ァァァァァァアアアアアアアリィリャアアアアアアアア!!!!!」
「うひゃぁ!」
再び至近距離を通過したウィッチは、マルセイユ達よりも上空に出るとようやく止まる。
敵対行動をとったウィッチに、戸惑いながらも全員が銃口を向け、
「射撃しても無駄だ。」
マルセイユが止めた。
「・・・久しぶりの挨拶にしては物騒だな。」
「へっ! 副委員長に怒鳴られて、落ち込んでんじゃないかと思ったんだよ。この野郎。」
上空を飛ぶウィッチは乱暴な言葉で答えると、巨大な剣を背中に戻してそのままゆっくり降下する。
既に一行はホバリング状態で待機しており、その中に彼女は降り立つ。
そしてマルセイユが手を出すと、快音と共に叩かれる。
そして拳を二三度突き合わせ、不敵に笑った。
「元気そうだなナオ!」
「おうよ! それが取り柄だからな!」
「さすが、ノウキンズとは違うな!」
「いや、それはやめてやれよ・・・・・・」
―――――
充分笑いあった二人はそのまま飛行を再開した。
話を聞くと、彼女の隣を飛行する少女は・・・
【ライトニング・フォックス №7管野直枝 『ノン・ストップ』】
圭子は何とか記憶から呼び出して思い出したが、噂だけ聞いていて姿や性格は想像していただけの真美以下3名は、乱暴な口調の直枝に大いに驚いた。
彼女のトレードマークである変重刀【斧割(ふかつ)】は、航空ウィッチでは彼女しか扱っていない。
そして彼女は迎えだという。
乱暴な迎えに、皆どう反応すればいいか困ってしまった。
しかし話してみると意外に話せる人物で、頭もいいようだ。
今回の作戦には相当な戦力が集められたという。
それを最初に確認したのは先行で来ていたマイルズだった。
出迎えで現れた陸戦ウィッチを見てどよめきが上がったので見てみれば、そこには懐かしい仲間がいた。
「友よ。久しぶりだ。」
「サラ!」
小柄なインディアン・・・
【ライトニング・フォックス №11サラディナ・レイノルズ 『ミュージック・エレメンタラー』】
「いつこっちに来たの!?」
「昨日だ。」
「もう。早く来てくれれば、前の作戦もかなり楽に進行できたのに!」
「友よ。」
「なに?」
言葉少ない仲間に首をかしげる。
それを自覚しているインディアンの少女は、視線で後ろを見ながら言う。
「待っている。」
「へっ・・・」
振り返ると、部下の少女たちとパットンガールズが呆然と見ていた。
瞬時に顔が赤くなる。
「えっと、これは・・・」
「嬉しかった。」
「うん、そうなんだけども・・・」
「ワタシも、嬉しい。」
「ありがとう。・・・で。」
深呼吸一つ。
「皆キリキリ動けぇ!!」
「「「「「了解!」」」」」
怒鳴ると全員敬礼してキビキビ動き始めた。
しかし・・・「あんな姿、初めて見た。」「あんな笑顔もするのね。」「いやぁ、若いっていいですな~」「年寄臭いわよ。アンタ。」・・・という声が漏れ聞こえるので、木端恥ずかしいには変わりない。
「友よ。」
「・・・なにかしら■■■■?」
仲間内のみでしか言わないようにした本当の名前で言うと、サラディナの顔は更に笑顔になる。
「皆が待っている。」
「皆って?」
「行こう。」
着いてくるように手招きするので副官に離れる事を言い、サラディナの後をついていく。
道中話すのは苦労話や楽しい話、ドコにいったか離れるのが嫌だったか・・・
尽きる事のない話は、目的の場所に来るまで途切れる事は無かった。
その間、サラディナは受け答えに専念し
相変わらず長く話すのを苦手としている少女(仲間内でないとわからない小さな困った表情)に苦笑いしつつ、先導で開いた先には扶桑の陸戦ウィッチ・・・
【ライトニング・フォックス №8佐藤華乃(さとう かの) 『ボンバー・キャノン』】
「お久しぶりでアリマス!」
「か、カノまできていたの!?」
「肯定でアリマス。ここまでの旅路は大変でアリマシた・・・」
「相変わらず海に弱いのね。」
「・・・船酔いは大敵でアリマス。」
同じ船に弱いサラディナも頷く。
「友よ・・・」
「海外遠征は辛いでアリマスなぁ・・・」
二人して若干涙目になり、マイルズは苦笑するしかない。
そしてここでようやく気がつく、もしかして・・・と。
「皆いるの?」
「肯定でアリマス。」
「うむ。」
あっさり頷く二人のを見て、マルセイユが喜ぶさまが浮かぶ。
あの時集まった12人は特別な12人だ。
最初こそ何処か余所余所しいというか、ギスギスしていたというか・・・
「なつかしいなぁ・・・」
昔の思い出を思い出していると、よくからかわれていた二人を思い出した。
最後までからかわれ、憤慨していた二人もいるのだとしたら・・・
「まぁ、いいか。」
「何でアリマスか?」
「こっちの話。」
「友よ・・・ 生きろ・・・」
サラディナは察したようだが、華乃は全くわかっていないようだった。
―――――
基地に到着したマルセイユを出迎えたのは・・・
【ライトニング・フォックス №2 ヘルミオーネ・ゲーリング『フィールド・コンダクター』】
- で、その顔を見た問題児はすぐさま逃げ出そうと回れ右をする。
が、鬼からは逃げられない。
襟首を捕まえられて拘束された。
「は、離してくれ!」
「この“馬鹿”が、ご迷惑をお掛けしているようで。」
「えっと、はい。」
マルセイユの講義を完全に無視し、隊長である圭子に深くお辞儀をする。
騒ぎ立てるエースを、冷や汗を垂らしながら見つつお辞儀をすると、ヘルミオーネは頭を上げた。
「ケイ、ケイ! 助けてくれ!」
「まずは報告をお願いしますか?
自分はこのアンポンタンに色々 O HA NA SI しなくてはいけないので・・・」
「了解しました・・・」
「いやだ! 委員長の話は長いんだぁ!」
「さぁ、逝きましょうか♪」
「なんか字が違うような気がする!! 助けて!!」
襟首をつかんだまま必死に助けを求めるマルセイユを、遠慮なしに引きずって行くのを呆然と見送る。
数秒後、気がついたライーサが慌てて後追うと、圭子も武器を真美に預けて直枝に司令室まで案内してもらうことにして別れた。
到着して飛行場からそんなに離れていなかったので整備員に荷物を置く所を聞き、皆で移動して武器と箱を置いていく。
少し賑やかな格納庫はいろんな声が響き渡る。
「いやぁ。ウィッチがこんなに集まって、俺達も眼福だな。」
「そうだな。でもよぉ・・・聞いたか?」
「あん? なんだよ。」
「倉庫の一角には他の荷物を入れるな!ていう話だよ。」
「いや、しらないが・・・なんだ、その指示?」
「俺、知ってる。一度見た」
「その一角にはもう荷物があるらしいんだが、その荷物・・・一人のウィッチが使う武器弾薬だそうだぜ?」
「はぁ! あそこ、大分広くとってあるはずだぞ?!」
「大体10トンくらいか? 一塊当たり。」
「三個あったから・・・30トン? 誰がそんなに使うんだよ。」
面白そうな話だった。
一回の出撃で使う弾薬の量はそれなりの多い。
戦闘するウィッチも弾薬は持って行くが、支障の無い量にするとそんなに多くない。
だが敵は多く、あっという間に足りなくなっていく。(マルセイユは一発必中なのであんまり関係ない。)
その為、弾薬係と言う特殊な兵種も生まれた。
真美は能力:怪力に分類されるウィッチであるが、それでも10トンは規格外過ぎた。
既に他三名は荷物を置いた後、どこかに行ってしまっている。
興味本位で整備員が話していた格納庫に向かう。
ちょっといけない気分になるものの、隙間を塗って移動していき・・・目的地に着いた。
「し、失礼しま~す。」
口で御断りを入れつつ、その場所を覗き込んでみる。
そこには、話通りの兵器の塊が三つ鎮座していた。
目の前にあるのは六つの銃身が飛び出した銃・・・ガトリング砲が重厚感たっぷりに黒光りし、隣にはこれまた巨大な大砲が置かれている。
まるで戦闘艦に取り付けられている高射砲の様だ。
「ふわぁ~「誰だ?」ウワヒャァァ!!」
後ろから急に話しかけられ、飛び上がって振り返る。
そこには二人の女性が立っていた。
「え、えっと。す、すみませんでした!!」
「大将・・・もうちょっと優しく話しかけないと。」
「ルチアナ、こいつは私の銃を奪いに来た泥棒かもしれんのだぞ?」
「誰も盗みませんよ。こんなに大きいの。」
慌てて謝ったが、二人はアウト・オブ・眼中なのか、そのまま話し始めてしまう。
まさか無視されるとは思っていなかった真美は、どうすればいいか困惑していると赤いズボンをはいた女性が話を切り上げて傍に寄ってきた。
「貴方は誰ですか?」
「わ、わたしは・・・稲垣真美と言います。」
「ん? もしかしてティナの所の子か?」
自己紹介をしたら。勝気そうな女性が問いかけてきたので頷くと「ふ~ん」と言って、そのまま銃器の方に行ってしまった。
「すみません。大将は興味がわかない事にはとことん無視してしまうので。」
「そうですか。」
「ああ、すみません。自分はルチアナ・マッツェイと言います。
あっちはドミニカ・S・ジェンタイルです。」
紹介されてようやく思い出した。マルセイユが持っている写真のメンバーだと。
「それで、あなたはなぜここに? ここは少々薄暗いから・・・まさか、自慰ですか!?」
「違います!」
真っ赤になって否定し、説明をする。
するとルチアナも顔を真っ赤にして謝った。
「申し訳ない。変な勘繰りをしてしまう事があるので・・・」
「いえ、きにしていませんk「ふむ、異常なしだ。戻ろう。」ら・・・・・・」
飽く迄もマイペースなドミニカに真美は茫然とし、ルチアナは溜息を吐く。
スタスタと格納庫を出ていく彼女の後を追う二人。
しばらく無言だったが、ドミニカの方から声をかけてきた。
「ティナの部下なのか?」
「いえ。加東隊長の部下になります。」
「ふーん。おおかた、面倒臭いからやりたくなったんだろう。」
「・・・そうです。」
「で、私に関して何か言っていたか?」
「とくには・・・でも、時折マイルズさんと『ウィルマ』さんの事で口論する事があります。」
「・・・そうか。」
一時的に沈黙が下りる。
「お前、学兵か? 小さいけど。」
「違います。」
きっぱり否定し、隣を歩いているルチアナが「えっ!」と驚いたので睨む。
「で、私の武器の、何が気になったんだ?」
「大きさ・・・ですね。自分も40ミリ機関砲を扱うので。」
「へぇ・・・そうなのか。」
今まで先頭を歩いていたドミニカが、初めて真美の顔を見るために足を止めて振り返った。
そしてそのまま数歩歩いて前に立つ。
「教えてやろうか?」
「な、なんでしょうか・・・?」
「あそこに置いてある奴だよ。
あれは20mmガトリングガンだ。
機関砲なんか目じゃない速度で弾丸を発射する。
こいつにかかれば小型ネウロイなんて一撃で粉砕だ。
中型ネウロイウなら大穴をあけ、大型ネウロイなら集中砲火でコアまで貫通させる!
隣に置いてあったのは高射砲だな。
あれを手持ち式にして、自動糾弾できるように改造したんだ。
こいつもパワフルでな。
大型用の装備だが、地上目標に対しても効果が有る。
二つとも、私が扱うにふさわしい武器だ。
総重量は二つ合わせて・・・弾薬込みで10トン近くになる。」
「そうなんですか・・・」
嬉しそうに一気に語るドミニカは楽しそうだ。
もっとも、真美は困惑しきりだったが・・・
怒涛の説明はその後も続きそれなりに楽しく話す。
そんな二人をルチアナは話に入れず、外側から寂しく見つめていた。
―――――
閻魔の説教から解放されたマルセイユは、今度は鬼に追われる羽目になっていた。
「マチナサイィィ!!」
「ゴウ・トゥ・ヘル・にゃァァァァァァ!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
部屋から出た途端、待ち構えていた脳筋コンb(ドコ!バキ!)・・・ではなく、イリスとアイアネスに反転した目で睨まれて追い駆けっこが開始された。
「なんで、追われるんだ!!」
「セキネンノウラミ、ココデハラサズデオクベキカァ!!」
「ニャハニャハハハハハハ!!」
「ヒィィィ!!」
尻尾と耳が出ていないので本気ではないとわかるが、西洋剣型木刀を振り回すイリス、脚力がおかしいアイアネスの攻撃を受けるなど、微塵も予想もしたくない。
遠くで悲鳴と怒号を聞いたマイルズは、「あ、やっぱり。」と呟いて無視を決め込む。
その後ろからライーサが追っているが・・・徐々に離されている。
何度も角を降り曲り、障害物を飛び越える。
しかし二人とも大地を駆け回るのが普通だった。
この程度の障害など全く問題ない。むしろライーサが追いていかれた。
顔が何だか黒く染まり、瞳がギラギラ輝いていて悪魔の様だ。
そしてとうとう追いつめられてしまう。
「あわわわわわわわ・・・・・・」
「ギヒッヒイッヒイヒィヒヒヒヒイヒッヒイィヒヒィ!」
「ニャガニャガガギウギギギギィィギギイィィ!」
もう二人の言葉は意味をなしていない。
「た、助けてくれ!」
「ノーダ!」「ノーダニャ!」
「御菓子黙って食べたの謝るから!」
「ユルスマジ!」
「寝ている時に悪戯したの謝るから!」
「シケイニャ!」
慈悲も無し。
もうだめだ。おしまいだ。
涙目の中、アイアネスが足を振り上げ、イリスが刺突の構えに入った。
覚悟を決めて目を瞑ると、
「駄目だよ。二人とも。」
「へっ?」
ここでは絶対に聞こえるはずのない声が耳に入った。
恐る恐る目を見開くと、いたのは・・・
【ライトニング・フォックス №5 ウィルマ・ビショップ『ブースト・インストラクター』】
【ライトニング・フォックス №9 リリーシャ・カステヘルミ・アホカイネ 『エアロ・ドクター』】
「あ、ウィルマさん。」
「ニャゥ・・・ウィルマがそう言うなら・・・」
流石にお姉さん各だった彼女の言葉には二人も弱い。
正気に戻り、渋々矛先を収めた。
「喧嘩するほど仲良いんですから、作戦も大丈夫ですね。」
))
相変わらずの天然を発揮するリリーシャに、その場にいた全員が内心で突っ込む。
腰ぬけて座り込んでいたマルセイユは、腰を抜かせた張本人であるイリスに引っ張り上げてもらい、そのままウィルマを見る。
「って言うかウィルマは何でここに?」
「私も一応増援かな?」
「戦闘・・・出来ない、だろ?」
拳を強く握る。
彼女が戦えなくなったのは自分の責任。
ドミニカも共犯だと言うが、発端は自分・・・今だに許せないでいる。
「ごめん・・・まだ、なんだ。」
俯いて力なくたたずむ姿は、普段の彼女を知るものならお驚く光景だ。
しかしこの場にはよく知る仲間達しかいない。
故に、小さく泣く彼女を見る者はいない。
ウィルマはそれを優しく抱きしめる。
「うん、わかってる。」
待っているからね?と耳元で言うと、優しく、あやす様に背中を撫でる。
それを見ていた三人は、そのままそこから離れた。
これは二人の問題だし、マルセイユが泣く姿を見られるのは好きではないだろうからの配慮だ。
「ところで、リリィ達はどこから来たニャ?」
「すぐそこの食道からですよ。」
「追い駆けたらお腹がすいたなぁ。何か食べようか?」
「あ、お腹が空いたんですか?ちょうどピロシキ作ったんですよ。」
「・・・中身、変じゃニャいよね?」
「普通だと思いますけど?」
「アイネ、私が見ておくから。」
―――――
マルセイユはその後、【ライトニング・フォックス】全メンバーがいるのを見て、驚愕するとともに確信を得る。
これはいける!と・・・
たった12人、されど12人。
一騎当千のウィッチで、ここに呼び寄せるのにどれだけの多大な苦労があったのだろうか。
それを知るのは一部しかいないが、少なくとも前線の兵士の士気は向上した。
作戦を説明するヘルミオーネは、今回に限り【ライトニング・フォックス】全員を指揮下に入れて作戦をとり行うという。
「・・・私達は、敵軍に対して破城鎚の役割を持ちます。」
「むぅ・・・ウィルマは戦えないぞ?」
『ティナ安心して、基地にいて私の・・・私達の精神安定のために来てくれたから。』
「飛行可能な【ライトニング・フォックス】は基本的に単独行動ですが・・・」
「なあ、ナオを私につけてくれないか? 暴れたいんだけど?」
『はいはい、そのつもりよドミニカ。ナオもいいわね?』
「問題ねえ。何時もの通りだ。」
「と、いうわけでむしろ弾薬の補給が要と言えるでしょう。そして・・・」
「地上攻撃は足りますか? ドミニカとナオ、ティナぐらいしかできませんけど?」
『リリィ、作戦に参加するのは私達だけじゃない。今回限りだけどティナのいた部隊にやってもらうわ。』
会議中、魔力の無い男性陣には目の前で説明している人物を無視して質問したかと思えば、いきなり答えが別の方からやってくる。
説明を続けつつも時折補足を入れるが、疑問の回答はしていないのにすんなり進む会議に男性陣は困惑していた。
まさか能力を駆使して、念話による即時回答をこなしつつ同時多目的に、平行思考しているとは考えられなかったのだ。
だが、同様に驚く女性陣もいる。
マイルズの部下たちとパットンガールズ、そして加東圭子たちだ。
「噂には聞いていたけど・・・凄いわ。」
「全くです。」
『これぐらいしないと、この子達が納得できる説明ができないんですよ。』
「「は、はぁ・・・」」
【ライトニング・フォックス】の異常さを、噛み締める一コマだった。
この後、佐藤華乃が大きな陸戦ストライカー【ティーガー】を見させてもらったお礼とし、己の特技を披露してとある三名を唖然とさせ。(戦艦クラスの攻撃を見れば当然)
パットンガールズが、アイアネスの特殊ストライカーの加速性能に度肝を抜かれ。
手合せをした圭子が、イリスの一撃の重さに感心し。
ガトリングを試射させてもらった真美がドミニカと更に仲良くなり。
ヘルミオーネがライーサに、マルセイユが迷惑を掛けていないかを聞き。
サラディナはマティルダと共に精霊を感じ取り。
マイルズは副官と装備の点検を怠らず。
直枝とウィルマが料理を作って男性陣を唸らせ。
リリーシャはルチアナと服に関する話しをして盛り上がり。
マルセイユは一杯飲んで寝ていた。
作戦前とは思えない賑やかで、楽しげな雰囲気。
しかしひとたび戦場に出れば、彼女等は戦乙女となって戦場を飛び回る。
ただわかっているのは、彼女等【ライトニング・フォックス】全員が参加した今作戦は、大成功したといことだけだ。
未確認の大型特殊ネウロイを撃破した彼女等は、まさに伝説である。
最終更新:2016年02月15日 01:52