812. ひゅうが 2011/11/03(木) 08:43:32
ネタSS「飛んじゃった」

――1944年某日

「本当にやるんですか?」

「ああ。むしろこの日のために鍛えに鍛えてきたといっても過言ではない。」

「心配しないで下さい。私たちは、まだ若い。」

はぁ・・・と、太田正一統括所長は、目の前の与圧服を着たバカたち(目はギラギラ輝いている)に溜息をついた。
弾道ミサイル計画で実験用とされた機体に見慣れない改造がされていることに気付いたのが3日前。
倉崎から「カプセル」が納入されたのが昨日。

それで分かった。
3式弾道弾の開発指揮が終了するまで疑問だったこと――目の前の20代の技術者が過剰ともいえるトレーニングを積んでいた理由が。


「軌道はまわれないが、ちょっと行ってみてくるだけだよ。」

いつもは立場をわきまえ、無理強いはしない糸川英夫の猛禽のような目に、太田はゴーサインを出すしかなかった。


――人類初の宇宙飛行士が誰か。それは多くの人間が知っている。
だが、1944年の輝けるあの日。糸川英夫とヴェルナー・フォン・ブラウンは確かにその目で青く輝く地球を見た。
高度に関しては記録が残されていないし、100キロを超えたのかどうかわからない弾道飛行ではあったが、それだけは確かである・・・。


追記  この飛行がバレた太田は、大蔵省に連行され一週間帰ってこなかった。
814. ひゅうが 2011/11/03(木) 09:15:20
>>812

大蔵省に連行されたあわれな太田さん。だが夢幻会員はそんなときでも・・・

――大蔵省  主計局

「おかしいな・・・どうしちゃったのかな?」

ガクガクブルブル。
主計局長室では、哀れな巻き添えを食らう大蔵官僚たちが肩を寄せ合って震えていた。

「練習(計画時)だけちゃんとやっていても、本番(実機製作)で無茶したら・・・練習の意味、ないじゃない・・・(国家予算の無駄使い的な意味で)。」

大蔵省の魔人、辻正信は、北海道から強制連行した太田正一の前で一枚の書類を手にして俯いていた。
最近出はじめたカラー写真で映し出されていたのは、窓の向こうの青い地球を前にピースサインをする糸川英夫とヴェルナー・フォン・ブラウン。
与圧服の向こうの顔は、なぜかつやつやしていた。


「わ、私は・・・もう、後悔したくないから・・・(有人宇宙船ふじ計画の中止的な意味で)なくしたくないから・・・(日本の有人宇宙計画的な意味で)」

「太田さん・・・」

主計局で、3式弾道弾の発展計画を力説していた太田正一統括所長を知る主計局員がほろりとなる。
だが、メガネをぎらつかせた辻は、容赦なかった。

「少し頭・・・冷やそうか・・・(予算的な意味で)」

「うわああああ・・・パン○めくれええええっ!(謎)」


――後に、大蔵省主計局には伝説が残った。
真の意味で国家財政を重んじる官僚は、レーザーを撃てる。と。

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最終更新:2012年01月02日 20:02