932 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:37:54
島国で割を喰うのは…以下略。
1944年のサンタモニカ会談後、英国陸軍では大規模なリストラが進められていた。これは陸軍の膨れ上がった人件費削減のためでもあるが、英国産業界からの強い要請でもあった。荒廃した本土復興のために労働力が必要とされていたのである。陸軍上層部は、リストラの必要性は認めていたが、ただ兵力を削減するだけでは戦力の弱体化を招くだけであり、ドイツとの再戦に備えて知恵を絞っていたのである。
英国陸軍のリストラ策は、いわゆるスケルトン師団化であった。将官のポストや前線指揮官、さらに小隊指揮官や分隊長を可能な限り残しつつ兵士数を削減するものであった。ただし、即応性を持たせるために、除隊した男性(一部兵科では女性も)は定期的に軍事教練を受けることが義務付けられていた。兵員数が削減された結果、装備の充足率は満足すべきものとなり、さらに浮いた予算を兵器開発に向けることが可能になったのである。なお、枢軸側(イタリア除く)も同様のことを考えていたのであるが、新たに獲得した植民地のレジスタンス鎮圧や、強制収容所の維持のためには、どうしても一定数以上の人員を必要とするため、リストラを進められない状況であった。特にドイツの場合、陸軍と親衛隊で張り合っていることもあり、兵士の削減が必要なことは理解はしていても、口に出せない状況が続いていくことになるのである。
933 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:39:23
陸軍が最初に着手したのは、歩兵用小銃の開発であった。上述の理由によって、ステンガンの充足率は定数を満たしつつあったが、欧州枢軸側の盟主であるドイツが、MP44とその派生型である突撃銃を本国のみならず、フランス陸軍やイタリア陸軍にも広く配備し始めており、ステンガンでは火力の点で対抗するのが厳しかったためである。そのため英国陸軍ではステンガンを代替する新型小銃の開発に乗り出したのである。
新型小銃であるが、最初の段階である弾丸の選定で紛糾した。新型小銃には.280ブリティッシュ弾(7.2×43mm)の採用が内定していたのであるが、将来的に日本軍と共同作戦を取る可能性を考慮して、6.5mm弾を強く押す一派が陸軍内に多数存在していたのである。この問題は陸軍内を二つに割るほどの大論争となったのであるが、部品交換で6.5mm弾にも対応出来る互換性を保持させることを条件に、.280ブリティッシュ弾を採用することになった。新型小銃は極秘裏に開発が進められ、後年の陸軍軍事パレードで公開されることになるのであるが、その斬新な外見に見たものは目を疑ったという。
新型小銃の開発に着手したとはいえ、その完成には数年はかかるものと思われた。そのため現状ではステンガンが主力であるが、将来的には大量の9mm弾の余剰在庫を抱えることは目に見えていた。軍用拳銃に9mm自動拳銃を採用している軍隊なら、さほどの問題ではないのであるが、そこは英国である。なんと未だにエンフィールド・リボルバーが現役であった。
エンフィールド・リボルバーは、.38S&W弾を使用するトップブレイク式(中折れ式)リボルバーである。リボルバーであるため、そのままでは9mmパラベラム弾は使用出来なかった。新たに自動拳銃を開発する時間と予算が惜しかったので、シリンダーを削って、ハーフムーンクリップに対応させたモデルをエンフィールド・リボルバー No.2 Mk.2として制式採用したのである。
シリンダーの短縮とハーフクリップの採用によって、9mm弾を撃てる拳銃となったエンフィールド・リボルバーであるが、お世辞にも良い銃とは言えなかった。比較的低速で撃ちだす.38S&W弾と違い、9mm弾は高初速でハイパワーな弾丸であり、しかもステンガン用に装薬を増量した強装弾であるから、よけいに反動が強く撃ちづらい銃であった。しかし、英陸軍は軍用拳銃をサブアームと割り切っており、とりあえず撃てれば問題無いと判断していたためか、戦後になってから順次、既存のタイプと入れ替えていった。さすがに1960年代になると、頑固な上層部もヤバいと思ったのか、エンフィールド・リボルバーの後継銃のトライアルが開催されることになる。英国、日本、カナダに加えて世界各国の銃器メーカーから提出された自動拳銃が火花を散らすことになるのであるが、それはまた別の話である。
934 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:40:52
戦前から一貫して英国陸軍上層部が恐れていたのは、ドイツ機甲師団の本土上陸である。もはや異次元(英陸軍視点)レベルの鋼鉄の狂獣を水際で可能な限り叩くことは至上命題だったのである。いかに無敵の重戦車といえど、上陸舟艇から降りることが出来なければ、ただの鉄の塊なのである。幸いにして、戦後になって英国情報部によりゼーレーヴェ作戦の概要を入手することに成功していたので、上陸予想地点を絞ることが可能となり、戦力の集中配備が可能となった。それでも上陸候補地点は7ヵ所もあり、全てに万全の布陣を敷くことなど不可能であったが。
水際作戦で最大の効果を上げるには、無防備な揚陸時を狙う必要があった。この件に関しては、陸海空3軍の認識が一致しており、有事の際に備えて事前に入念な検討を行い、それぞれ役割が決められていた。簡略化すると以下の通りとなる。
- 海軍による『氷山障壁』と機雷による海岸の封鎖。
- 空軍による『新型爆弾』による攻撃。
- 陸軍による水際阻止作戦。
まず海軍であるが、上陸予想地点を氷山障壁と機雷で封鎖して揚陸作業を困難にすることにより時間を稼いで陸軍を支援する予定であった。氷山障壁はパイクリートの塊で、小型な船舶がまともにぶつかると転覆しかねないほどの質量があり、これを大量にばら撒いておけば、上陸舟艇を沈めることも可能であった。最悪でも回避行動を強要することにより、揚陸作業を遅延させることを期待出来た。嫌らしいことに、茶褐色で比較的目立つ氷山障壁といっしょに、洋上迷彩された機雷も敷設する予定であり、氷山障壁を避けても触雷して沈没する危険性を高めていた。これに加えて、虎の子のアリアドニ級重雷装艦を投入して、大量の酸素魚雷の一斉発射によって上陸船団を殲滅することを狙っていた。
氷山障壁は非常にローコストに数を揃えることが可能だった。しかし、水際阻止作戦で活用するためには極めて短時間に大量敷設する必要があった。そこで海軍が目を付けたのが捕鯨母船であった。捕鯨母船は冷凍設備を有しており、船尾には鯨を引き上げるスリップウェーが装備されていた。つまり、海水とパルプを原料にして船内の冷凍設備でパイクリートを作って船尾から放り出せば良いのである。
後に行われたスカパフロー沖での実験では、ある程度の隻数があれば短時間で海岸の封鎖は可能という結論を海軍は出している。そのため、海軍では有事の際に徴発出来る捕鯨母船のリストアップと、政府に働きかけて新規で建造される捕鯨母船に対して補助金を出すなどして、その確保に追われることになる。
935 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:42:35
空軍の役割は上陸部隊に対する新型爆弾による爆撃であっが、その前に先駆けて侵攻してくる枢軸側空軍を撃退して制空権を確保する必要があった。そのために空軍は急ピッチで新型戦闘機の開発とレーダーサイトの整備を進めていたのであるが、当然ながら金がかかった。そのしわ寄せがどこにいったかは言うまでも無い。
新型爆弾はDMWD(Department of Miscellaneous Weapons Development:多種兵器研究開発部)で開発された。これはFuel-Air Explosive Bomb(燃料気化爆弾)と呼称される爆弾であり、揮発性及び引火性の高い液体(酸化エチレン・酸化プロピレン・ジメチルヒドラジンなど)を爆薬によって瞬間的に加圧・沸騰させて空気中に散布、適度な濃度で着火して爆風と衝撃波を発生させる爆弾である。既に配備は完了しており、先んじて旧北米の滅菌作戦で使用される予定になっていた。
この爆弾の最大の特長は、100mを越える広範囲に渡り、かつ比較的長く爆風が残留して人間や非装甲目標に多大な被害を与えることである。高熱と爆風・衝撃波による爆散・炭化を免れても高温高圧のガスが周囲に浸透し、内臓や精密機械を焼灼・圧壊させる効果もあった。
重戦車などの装甲目標に対しては、直接の被害を免れても大気中の酸素濃度が急激に低下すると共に一酸化炭素が充満し、生存者を窒息死させることが出来た。気密扉を装備した車両なら耐えられるのであるが、NBC防御を有した車両は史実では第2世代MBT以降であり、当然ながらこの世界には(極東のチート島国を除けば)ほとんど存在していなかった。唯一、積極的に毒ガス攻撃を考えていたフランス陸軍のみが毒ガス防御用に気密性を備えた車両を保持していたが、生産を開始したばかりでありその数は未だ少なかった。
なお、後に行われた北米における燃料帰化爆弾の実験であるが、巨大な火球と衝撃波による効果範囲の広さを目撃した枢軸側の兵士が核と勘違いして新たな騒動のきっかけとなる。当時の英国はあくまでも新型爆弾と呼称しており、原子爆弾であるとは一言も言及していない。実際、嘘は言っていないのであるが、何故か、日本が英国に原子爆弾を提供したのではないかと疑われることになる。当然、日本側は強く否定したのであるが、それを信じるか否かは別問題であった。
情報伝達手段が現代に比べてまだ未熟なこの時代、デマが拡大発展する傾向が強かった。いわゆる、噂に尾ひれがつく類のものであるが、噂に尾ひれどころか、背びれ、胸びれまで付いて滝を登ってしまうくらいの勢いで拡大してしまい、英国が開発した燃料帰化爆弾は、低威力の核兵器くらいの位置付けにされてしまったのである。その結果、列強各国は火消しに躍起となるのであるが、それはまた別の話である。
威力的に(政治的にも)極めて有効な燃料帰化爆弾であるが、運搬手段に問題があった。当初はランカスター爆撃機で高空から大量にばら撒く予定だったのであるが、制空権を確保出来なかった場合に爆撃を強行したらどうなるか。結果は言わずと知れていた。そのため、空軍では低空を高速飛行することによって、敵制空権内を強行突破可能なジェット攻撃機の開発を進めることになる。これには、先日発表された日本の新型ジェット攻撃機に対抗する意味合いもあった。当然、その(予算的な)しわよせは陸軍にいくことになる。
936 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:44:38
海軍と空軍の攻撃が終わった後は、いよいよ陸軍の出番である。とはいえ、陸軍は水際阻止作戦で直接迎撃することは基本的に諦めていた。理由は以下のとおりである。
- 砂浜の縦深が浅く、陣地構築に適さない。
- 同上の理由で戦車の機動に適さない。
- 火砲の不足。
- 枢軸側の艦砲射撃の脅威。
- 空軍の新型爆弾の影響下から逃れるため。
ドーバーの地形を見ると分かるとおり、沿岸部は切り立った断崖がほとんどである。そのため、上陸出来る砂浜も縦深が浅く、いったん上陸されてしまうと迎撃の時間がさほど稼げないのである。砂浜自体も広くないために戦車の機動にも適さず、それ以前の問題として上陸舟艇に有効な火砲が不足していた。縦深が浅くて狭い砂浜故に、枢軸艦隊の艦砲射撃の脅威も無視出来なかった。最悪、何もできずに一方的に壊滅する危険性があったのである。これに加えて、空軍の投下する新型爆弾の効果範囲の広さもあり、陸軍は砂浜で迎撃することを放棄していた。もちろん、何もしないわけではなく、木材やパイクリートで作られた障害物を大量に敷設するつもりではいたが、足止め目的以外の何物でも無かった。誤解無きように言っておくが、陸軍は水際阻止作戦自体を諦めたわけではない。陸軍は上陸してくる敵に対して獰猛な牙を研いでいたのである。
陸軍が水際阻止作戦のために必要としていたのは、安価で面制圧が可能な兵器であり、それすなわちロケット兵器であった。既にパンジャンドラム自走ロケット砲の配備が進められていたのであるが、貧乏神の呪いに憑りつかれていた陸軍では、さらに安価で大威力な面制圧兵器を欲していた。そのために、徹底的なコスト削減と量産性を考慮して構造を簡易化したコングリーヴ・ロケット砲を開発したのである。
コングリーヴ・ロケット砲は高度な照準装置は備えておらず、飛距離の調整もランチャーの角度変化のみであった。しかもランチャーの角度は人力で変更する必要があるため、その調整には多大な労力が必要であった。当然ながら即応性に欠け、正確な照準には事前の測量が必須であり、これだけなら欠陥兵器呼ばわりされてもおかしくないほどであった。しかし、このロケット兵器は、戦車運搬車を流用して荷台にロケットランチャーを大量に積んだだけの代物であるため、安価かつ量産性に優れていた。使用するロケット弾も新規開発は避け、既に信頼性が確立されていたRP-3ロケット弾を使用しており、発射機は角度調整機能が付いた土台の上に運搬用の木枠に入ったRP-3ロケット弾をそのまま積み上げるという簡易極まりない代物であった。このロケット弾(木枠)の積み上げと、電気点火線の接続にも労力を要したのは言うまでもない。
低コストで数を揃えるために、いろいろと割り切った結果、運用上の制約の多いコングリーヴ・ロケット砲であるが、その代償として得た火力は絶大なものがあった。コングリーヴ・ロケット砲はRP-3ロケット弾200発を発射可能であり、これは単純に当時の駆逐艦数十隻分の火力であった。複数台配置しておけば上陸地点のほほぼ全てを攻撃範囲内に収めることが出来たのである。
絶大な火力を誇るコングリーヴ・ロケット砲であるが、使用するRP-3ロケット弾は射程が2km足らずであり、これは上述のパンジャンドラム自走ロケット砲の1割以下の射程であった。当然であるが射程が短い分、前線に接近する必要があるため危険度が増大する。そのため、発射直前まで存在を秘匿する必要があったのであるが、そこで活躍したのがAフォース、通称マジックギャングである。戦後、アーチボルド・ウェーヴェル陸軍大将によって創設されたこの部署は、奇術師ジャスパー・マスケリンを筆頭とする建築家、絵画修復技術者、大工、化学者、電気設計士、電気技師、画家、舞台技師等から成っていた。 表向きは軍の慰安活動をしているが、本来の任務は欺瞞と防諜であり、その中には偽装工作も含まれていた。彼らの手により、コングリーヴ・ロケット砲だけでなく、水際阻止作戦に必要な施設も偽装された。直視すれば、すぐにバレる程度の偽装ではあったものの、上空からみれば判別不可能であり、実用上は問題無かったようである。
937 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:48:48
陸軍としては、コングリーヴ・ロケット砲による攻撃で上陸部隊に壊滅的なダメージを与えた後に、戦車部隊を主力とする機甲師団を突入させてケリを付ける算段であった。戦車部隊の主力は90mm砲を搭載したクロムウェル巡航戦車である。この戦車は車体のバランスが悪い上に、搭載砲弾数が少ないために現場からの評判は悪かったが、比較的軽量のため英国本土のインフラでも十分に運用が可能であった。陸軍期待の重戦車であるセンチュリオン歩兵戦車は、生産が始まったばかりであり未だ数は少ないものの、その性能は史実IS-3をベースにしているだけに、その性能は折り紙付きであった。
実際の運用であるが、重装甲であるセンチュリオン歩兵戦車を先頭にして後ろにクロムウェル巡航戦車、さらに機械化部隊が続く、いわゆる英国版パンツァーカイルとでも言うべき陣形を採用していた。この陣形には装甲の厚いセンチュリオン歩兵戦車を盾にすることで、側面装甲の薄いクロムウェル巡航戦車をより安全に運用できるメリットがあった。なお、これらの機甲師団も、マジックギャングの手によって徹底的に偽装されたことは言うまでもないことである。
ここまでやっても阻止し切れない場合は次善の策を用意していた。というより、ここからが本番である。英国は、国王陛下をカナダへ脱出させた後は、持久出血戦法を強いて徹底的に戦うつもりであった。伍長閣下によって示された新領土政策は、多くの国の中にあるドイツに対する隔意、あるいは敵意をより強固なものとしていた。敗北したら奴隷階級に落とされるかもしれないのであれば、当然の反応である。北欧諸国と同様に英国民にも対独不信が急速に広まり、徹底抗戦が叫ばれた。英国本土内に設定された対枢軸要塞線の名称が『チャーチル・ライン』と名付けられたのもその影響であろう。
938 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:50:08
上陸してきた枢軸軍を迎え撃つべく設定された要塞線は史実のパックフロントであった。これは陸軍がドイツとの血みどろの戦いを繰り広げたソ連陸軍(旧赤軍)の関係者を招いて戦術の研鑽を行った末に完成させたものである。当時の英国はソ連との交流を極秘裏に行っており、その中には軍人同士の交流もあった。実戦経験豊富な彼らの戦術を陸軍は貪欲に吸収していたのである。
英国版パックフロントの特徴は、本家に比べて対戦車火砲よりも戦車の割合が高いことである。対戦車火砲の代わりに戦車を多く配備することで、防御だけでなく攻勢にも使用して効率良く戦車部隊を運用することを狙っていた…と、いえば聞こえが良いのであるが、実際のところは火砲が不足していたのである。
対戦車陣地そのものは、地形効果を最大限を活かように多数配置されることになっていた。基礎部分やその他要所はコンクリート造りで、他はパイクリートで構成されていた。パイクリートは強化コンクリート並みの強度を持ちながらも、軽くて養生期間が短いので短期間に大量に施工するのに適しているうえに、後に撤去することが容易というメリットがあった。なお、大規模な対戦車陣地に使用される数メートル級の分厚さを持つパイクリート壁には冷却システムが組み込まれており、年間を通じて使用出来るように配慮されていた。
パイクリートの冷却システムであるが、パイクリート内に麻ホース(消防用ホースを流用)を通してポンプで冷媒を循環させることで冷却を行っていた。冷媒は不凍液(エチレングリコール40%)を使用しており、パイクリート内にマイナス10℃程度の冷媒を流し込むことで夏季にも溶けない、頑強なパイクリートを維持することが出来た。この方式の利点は、パイクリート壁が被弾して損傷しても、中の冷媒が無事ならば、材料を流し込むことで短時間に凍結、再生出来ることである。この方法は、ジェフリー・ナサニエル・パイク(Geoffrey Nathaniel Pyke)が構想していた氷山空母の冷却方法を彼自身が改良したものであった。
小規模な陣地には、組立型のパイクリートブロックが利用された。普段は冷凍倉庫に備蓄しておき、有事になったら輸送して組み上げる方式である。ブロックには凸凹が付けられており、ブロックどうしをはめ込むだけで、簡単にパイクリート壁を構成することが出来るようになっていた。なお、戦車用の掩体壕もパイクリートブロックで構成されており、厚さは1メートル以上で10センチ榴弾砲にも耐える構造となっていた。
パイクリートブロックそのものは、状況に応じた多数の形状が用意されており、組み合わせ次第で多種多様な物を作ることが可能になっていた。この方法は北欧を介してソ連へも広められ、現在でも仮設住宅などに用いられている。ちなみに、現在もっともパイクリートを利用しているのは、カナダのイヌイット族である。パイクリートブロックを用いた家は、湿度が高く長期居住には適さないイグルーとは違い快適に過ごせるので、本来の避難先や仮設倉庫としても目的だけではなく、定住しているイヌイット族も多いといわれている。
939 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:51:42
パイクリート大量に用いることにより、短期間(かつ安価)に陣地構築の目途が立ったわけであるが、クラウツどもの戦車を撃退出来なければ意味は無い。撃退するには火力が必要なのであるが、そこはPOWWWWWEEEEEEEEEEEEEEEERRRRRRR!!!!!!厨な英国紳士である。火砲の不足を戦車で補い、それでも足りないならばと別の手段を用意していたのである。
安価に大火力を得る。それすなわちロケット兵器である。前述のパンジャンドラムロケット砲は、射程の長さを活かすべく後方の陣地に配備されることになっていた。コンクリーブロケット砲は水際阻止と最前線の陣地に集中配備することになっていたが、これは短射程という欠点だけでなく、基本的に一回しか撃てない使い捨て兵器としての側面が強いためでもあった。懸念すべき点は命中率であるが、命中を期するために着弾地点は念入りに測量し、偵察兵からの座標指示のみで命中出来るようにレベルにまで練度を上げることで解決を図ることになる。
ロケット砲は威力は抜群であるものの、近距離での対応に難があった。榴弾砲と違い、至近距離で直射など出来ないからである。そのため、掩体壕に入れた戦車や既存の2ポンド砲、さらに高射砲部隊から分捕った3インチ高射砲で対応するつもりであったが、戦車の90mm砲はともかく、2ポンド砲ではアニマル
シリーズ相手には側面を狙ってさえ、ドアノッカーと化す可能性が高かった。3インチ高射砲はさらに悲惨であり、砲弾に榴弾と榴散弾しか無いために対戦車戦闘そのものが不可能であった。そのため、少しでも貫徹性能を向上させるために、陣地に配置される2ポンド砲にはリトルジョンアダプターが装着される予定であった。
リトルジョンアダプターは、砲身に後付けするタイプの口径漸減砲である。口径を漸減させることで、砲弾が砲身から出るまでに装薬の燃焼によるエネルギーを最大限に与えて高初速と高い貫徹性を実現していた。憂鬱世界では、世界恐慌時に極東の島国が散々に世界中を荒したために、国力が悲惨なことになったチェコから亡命してきたヤナチェク技師により、史実よりも早くリトルジョンアダプターが完成していたのである。
お手軽に貫徹性能を向上させことが出来るリトルジョンアダプターであるが、当然欠点もあった。口径を漸減させるということは、弾体を変形させることである。当然、砲身には強い負荷がかかるために砲身寿命が短くなった。さらに問題なのは、発射時の衝撃と変形に従来の鋼鉄製の弾芯が耐えられないために、タングステン合金を用いる必要があった。リトルジョンアダプターを装着した時点で、従来の2ポンド砲弾は使用出来なくなるのである。
そもそも、タングステン自体がレアメタルであり、
アメリカ亡きこの世界では、英国にタングステンを大量かつ安定的に供給してくれる国家は存在しなかった。カナダから輸入しているものの、現状では不足気味でさらなる増産が必要な状況であった。ソ連からも極秘裏に輸入していたのであるが、その大半は日本に振り分けられており、輸入出来る量はごくわずかだったのである。そのような状況で、わざわざリトルジョンアダプターと専用弾を作る必要があるかと言われれば、当然否であった。
輸入されたタングステンの大半は、国内の工業用向けか、戦車用の硬芯徹甲弾(APCR)用の弾芯に使用された。結局、リトルジョンアダプターは計画のみで終わり、2ポンド砲は3インチ高射砲共々、ソフトスキン目標のみに用途を限定されたのである。
940 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:53:27
2ポンド砲で対戦車戦闘を行う無謀さを思い知った陸軍では、新たな対戦車兵器の開発に着手した。当然ながら、なるべく安く、短期間に大量に揃えられることが前提条件であった。複数の候補が挙がったものの、最終的に短期間かつ安価に開発出来ることが評価されて無反動砲が採用された。既に歩兵用対戦車兵器である25ポンド・ショルダーガンの配備が始まっており、それをスケールアップしたものを採用したのである。
25ポンド・ショルダーガンは、別名でバーニー・ガンと呼称されていた。これは開発者であるチャールズ・デニストン・バーニー卿(Sir Charles Dennistoun Burney, 2nd Baronet:第2代準男爵)が開発したことに由来している。総重量34kgという重量は、携帯用兵器としては限界ギリギリの重さであった。
重く取り回しに難のあるバーニー・ガンであるが、無反動砲であるために反動は比較的少ないうえに、その大重量がカウンターマスの効果を発揮するために、実際に撃った兵士からは撃ちやすいと高評価であった。少なくても以前使っていたPIATよりは確実にマシであることは確かであった。この無反動砲にあわせて新開発されたHESH(粘着榴弾)は、ホプキンソン効果によって装甲内側を剥離させることで破壊を行うために低初速な無反動砲に適していた。
紆余曲折の末に3.7インチ対戦車無反動砲として制式化されたわけであるが、単にスケールアップしたわけではなかった。より遠距離から命中させるために弾道特性を同じにしたスポットライフルが砲身上に取り付けられていた。最初にスポットライフルで狙撃を行い、着弾の火花を確認してから撃てば対象に命中するようになっていたのである。ちなみに、この二つの無反動砲は、独特の外観を持つことで
夢幻会関係者には別の意味で有名である。どんな外観かは逆行者のこの一言で充分であろう。
『ザク・バズーカかよjk』
外見上の特徴として、後部に4本のベンチェリ管が突き出しているのは、クロムスキット方式を採用したことによる薬室の大型化によるものである。初期生産分では、燃焼ガスによる腐食と磨耗がベンチュリ管周辺で発生して問題となるのであるが、これは後に改良型のMk.2で解決されることになる。なお、Mk.2は、その見た目から『ソユーズ』と逆行者達は呼んでいた。もちろん、史実のソユーズロケットが由来であった。
3.7インチ対戦車無反動砲は、主に対戦車陣地に配備されたわけであるが、その軽量さに目を付けた陸軍では軽車両に載せることで安価な対戦車自走砲を作ることを目論んだ。当時、陸軍からの要請でローバー・モーター社で開発されたランドローバーが量産に入っており、この荷台に無反動砲を装荷したのである。ジープの代替として開発されただけあって、頑強かつ走破性に優れるランドローバーは、安価な対戦車自走砲としてだけではなく、陸軍兵士の足として末永く活躍することになる。
941 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:54:18
部隊を維持するためには重要な要素の一つが士気である。正面装備に気を取られがちであるが、流石は英国陸軍。そこはしっかりと考慮されていた。もっとも、英国軍人の士気を維持するには茶菓子と紅茶さえあれば十分であった。よくネタにされているが、たとえ弾薬が切れても生き延びられるが、紅茶のタンニンが切れると死んじまうのが英国軍人なのである。
当時の陸軍における紅茶であるが、粉末ミルクティーと茶葉を使った紅茶が用いられていた。粉末ミルクティーは、ゆっくり飲む余裕の無い、最前線の兵士のためのものであり、余裕のある後方では可能な限り茶葉を用いた紅茶を飲んでいたようである。粉末ミルクティーは甘くないタイプであり、飲むときには練乳を入れて飲んでいた。なお、空軍では目に良いということでブルーベリージャムを入れて飲んでいた。お隣のカエル食いな料理大国はお下品呼ばわりしていたようである。
当然のことながら、戦闘車両にも紅茶は積まれていた。1945年からは電気式の湯沸かし器が順次搭載され、車内でいつでも温かい紅茶が飲めるようになったのである。この電気湯沸かし器は、紅茶だけでなくレトルト食品を温めたり、部品を外すことによってトースターになったり、場合によっては暖房になったりと、非常に優れたものであった。しかし、その恩恵に預かれない車両も存在した。陸軍期待の重戦車であるセンチュリオン歩兵戦車である。徹底的に無駄を切り詰めてコンパクト化を図ることにより、軽量さと重装甲を両立するソ連式重戦車がベースとなっているだけに、車内スペースの狭さは特筆ものであり、湯沸かし器を設置するスペースどころか、食器を載せるスペースすら存在しなかったのである。そのため、センチュリオンの戦車クルーのみ、魔法瓶と紙コップで紅茶を飲まざるを得なくなったのであるが、当然ながら大不評であった。そのためセンチュリオンは、上層部の期待とは裏腹に兵士たちから嫌われており、クロムウェル巡航戦車を希望する戦車クルーが多かったのである。
942 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:55:38
いかに、陸軍がリストラして予算に(多少は)余裕が出来たとはいえ、やはり限度があった。上述の要塞構築や新兵器開発に予算が割り振られる一方で、当然しわ寄せのいった部門も存在した。真っ先に存続の危機に晒されたのは、オートジャイロの試験運用部隊であった。戦後になってから解体されたコマンド部隊であるが、戦時中から部隊内では、将来を見据えたオートジャイロの運用研究が行われていたのである。
生き残るのに必死な関係者達は、オートジャイロを武装化して対戦車兵器として用いることを陸軍上層部に提案した。戦車の薄い上面装甲を大口径機関砲で撃ち抜くことは有効であるし、さらにロケット弾攻撃も併用すれば極めて効果的がある。従来の対戦車兵器と違い、圧倒的な機動力を持つので戦場の火消しになり得ると陸軍上層部に必死のプレゼン攻勢をかけたのである。上層部からしてみれば、自前の航空戦力を持つことは極めて魅力的であった。航空攻撃が対戦車攻撃に有効なことは陸軍内でも既に認識されてはいたのであるが、いちいち空軍に頭を下げるのも癪だったのである。検討に検討を重ねた結果、現時点で戦力化するのは時期尚早とされたものの、研究そのものは有望とされ、陸軍からDMWDに移管されて研究が続行された。1944年12月7日に日本で発生した東南海地震において、暴徒化した大陸の住人達を鎮圧する際に3式汎用回転翼機が活躍したことが知れ渡ると、さらに研究は加速された。その成果は、後年の軍事パレードで白日に晒されることになる。
高射砲部隊も存続の危機であった。バトル・オブ・ブリテン中は空軍に戦果の大半を奪われうえに、ロンドン防空のためと称して戦時中は高射砲の転用を頑として拒否していた。このことが陸軍内で恨みを買ったのは言うまでもない。戦後になって、さっそく旧式化していた3インチ高射砲は分捕られて3.7インチ高射砲のみが残された。既にジェット機の時代に高射砲は時代遅れと高射砲無用論が陸軍内で声高に叫ばれる状況であり、残された高射砲部隊の運命も風前の灯火だったのである。
事態を打開するべく、関係者達が取り組んだのは高射砲の高性能化であった。そしてその方法が、パワー厨な英国紳士らしく発射速度の向上であった。コードネーム『Long Hand』として3.7インチ高射砲の一つに自動装填装置を搭載したのである。発射速度は60~75発/分という当時としては驚異的は発射速度であったが、陸軍上層部の反応は今一つであった。日本の疾風と富嶽を相手取るには能力不足と考えていたからである。それならばと、発射速度を維持したまま口径を5インチに拡大した高射砲の開発をスタートさせたのである。
新型高射砲はコードネーム『Green Mace』の名で進められたのであるが、計画には困難が予想されたため、まずは4インチの縮小版の開発に着手した。幸いにして、Green Maceは上層部の歓心を買うことが出来たので、研究は続行出来た。しかし、既にミサイルの時代が忍び寄っており、高射砲部隊の未来には暗雲が立ち込めていた。彼らが存続出来るのかは、また別の話である。
943 :フォレストン:2016/02/20(土) 14:58:08
あとがき
というわけで、憂鬱英国陸軍事情の第2弾です。相変わらず陸軍の懐事情は厳しいので、削るところは削らないといけないのですよね。史実の米帝様が羨ましいです…(泣
というわけで、ここからは解説です。項目ごとにちまちま書いていきます。
スケルトン師団
史実でも第1次大戦後のドイツがやってた手法です。スケルトンの名のとおり、組織の骨組みだけ残して肉を削ぐわけです。高度な教育や実戦経験が必要とされる部署は残しておいて、いざ有事に兵士を集めるやり方です。最近の軍隊だと、ただの一兵士にも高度な教育が必要になるので、現在ではあまりとられない手法です。
ステンガン
戦時中に必死に作っていたら、あれよあれよというまに軍縮になってしまい、一気に定数を満たしてしまいました。余った分はホームガードに回して、それでも余るならインド辺りに格安で売ってしまえばOKかと。なにせ、アホみたいに製造原価の安い銃なので、引く手あまただと思います。憂鬱世界では、ステンガンがAKの代わりになるのかなぁ?(汗
MP44
ドイツの主力小銃の描写なのですが、探しても見つからないので史実通りMP44としました。
多分、生産性を高めたモデルを大量生産して、ドイツ本国だけでなく周辺国にも配備しているのかも。
.280ブリティッシュ弾
史実では、メリケンに潰されましたが、憂鬱世界では健在です。
これで木製プルバップが実現出来る!(大歓喜
エンフィールド・リボルバー
何故、英国には9mmオートが無いのでしょうね…_| ̄|○
そりゃあ、トップブレイク式リボルバーはカッコいいですよ?廃莢時に『ハイヨーシルバー!』ごっこが出来ますし。所詮はサブアームなのだから、撃てれば良い。実に英国紳士は合理的です。でも、でも…!(´;ω;`)
とりあえず、無いものねだりをしてもしょうがないので、史実のM1917リボルバーを参考にしてみました。一応撃つことは出来ると思います。新規開発?そんな予算あるわけないやろ!?(逆切れ
ゼーレーヴェ作戦
伍長閣下とモルヒネデブはともかくとして、他の軍人達はイマイチやる気が無かったようです。結果、機密が甘くなって英国情報部にお仕事されてしまいました。実際問題として、旧北米に送る補給だけで手いっぱいな状況で英国に進撃とか無謀を通り越して蛮勇でしょう。シュペーアさんが血を吐いて倒れますよ?
コングリーヴ・ロケット砲
昔、設定スレに投下したヤツです。史実のロケット砲艦が元ネタです。実は開発は英国がやってたりします。実際に運用したのが米海軍だったわけです。オリジナルは揚陸艇を改装してRP-3ロケット弾を1080発(!)を発射可能で、戦艦並みの火力を持っていました。コングリーヴ・ロケット砲は、これを荷台に搭載したものです。さすがにサイズに限界があるので200発がせいぜいですが、それでも駆逐艦数十隻分の火力はあります。木枠についてですが、これはドイツ国防軍のグランドスツーカをイメージしていだければと。あれを土台に積み重ねていくわけです。当然人力です。200発分です。信管の設置もおまけでついてきます。
スキャメル・パイオニア重回収車
6×4輪駆動のトラクタートラックです。史実では、砲兵トラクターや戦車運搬、戦車回収に使用されていました。この時点で既に旧式化しています。最終型でも積載重量は30tまでなので、輸送はクロムウェルが限界です。センチュリオンを輸送するには、後継のM19戦車運搬車が必要なのですが、あれはアメリカ製なんですよねぇ…。ソーニクロフト・アンタルの開発を前倒しするしかないかも。
944 :フォレストン:2016/02/20(土) 15:00:14
噂に尾ひれどころか…
元ネタは阿智太郎の僕の血を吸わないで…だったはず。
ドーバーの地形
真っ白い崖が続く中で、崖が崩れて砂浜になってたり、砂浜のすぐ後ろが絶壁だったり。ノルマンディーと違って、どう考えても水際阻止作戦には向かない地形なんですよ…。
Aフォース&マジックギャング
昔、投稿した設定を再利用。史実では、あれだけの実績を残していながら、晩年は不遇だったジャスパー・マスケリンですが、この世界では多少なりとも報われて欲しいと思ってます。
クロムウェル&センチュリオン
本編の設定をそのまま使わせてもらいました。
英国版パンツァーカイル、パックフロント
旧赤軍は、ドイツ陸軍と血みどろの戦いを繰り広げたので、パックフロントもですが、それに対抗してドイツが編み出したパンツァーカイルにも熟知しているでしょう。英国陸軍は、そういった実戦経験豊富なソ連軍人を講師に招いて勉強して、独自の戦術を編み出したわけです。
パイクリートの冷却システム
氷山空母ハボクックの冷凍機を用いた冷却システムの簡易版です。パイクリートの融点は比較的高いので、低出力の冷凍機とポンプでも冷やせるかと。麻ホースは当時の消防で使われていたものです。ゴムホースや塩ビ管だとマイナス温度は耐えられそうにないので、このチョイスに。不凍液ですが、エチレングリコール40%溶液だとマイナス20度が凝固点なので余裕です。
パイクリートブロック
イメージは、まんま○ゴブロックです。はめ込むというか、ハンマーで叩き込んで組んでいきます。極寒地なら、型さえあれば何でも作れそうです。実際に誰かやってくれないかなぁ…。
POWWWWWEEEEEEEEEEEEEEEERRRRRRR!!!!!!
当然、ヨークシャーのドンカスター出身のあの人です。
3インチ高射砲
対戦車戦闘に使わせてもらおうと思ったのに、榴散弾と榴弾しか用意されていないって、どういうこと?_| ̄|○
わざわざ専用に徹甲弾を作るのもアレなので、ソフトスキン相手に用途を限定せざるを得ませんでした。
リトルジョンアダプター
英国版ゲルリッヒ砲です。通常弾が使えれば、まだ利用価値もあるのですが、タングステン弾芯の専用弾が必要で、アダプターを装着した時点で、榴弾も通常弾も使えないわけで…こんな産廃どうしろと?_| ̄|○
タングステン
高性能徹甲弾を作るには、こいつが無いとお話になりません。史実だとアメリカから供給されていたのですが、この世界だとアメリカからの供給は不可能です。アメリカ以外だと、中国、ロシア、カナダが有力候補ですが、中国は論外過ぎるのでロシアとカナダとなります。でも、憂鬱世界だとロシアの資源は、ロハ同然で日本に輸出されているんですよね。となるとカナダしか無いわけです。史実だと世界2位の生産量があるので、なんとかなるでしょう。多分。
945 :フォレストン:2016/02/20(土) 15:01:36
バーニー・ガン&3.7インチ対戦車無反動砲
史実ではバーニー卿によって、ほぼ同時期に製作されています。3.7インチは試作のみでしたが、この世界では量産されたという設定です。バーニーガンは、史実の1944年末に生産計画が持ち上がったのですが、ベンチュリ管周辺で燃焼ガスによる腐食と磨耗が反動の度合いが著しく変化させる問題の解決に手間取っているうちに終戦、少数生産のみに終わっています。少数生産のくせに、改良型のMk.2があるあたり、とっても英国面です。なお、バーニーガンは、通な人からはザクバズーカと言われて親しまれていますが、Mk.2の見た目は、まんまソユーズロケットです。
素敵な後ろ姿のバーニーガンMk.2の画像はこちら↓
h ttp://togetter.com/li/489901
バーニーガンとHESHについてはここが詳しいです。↓
h ttp://togetter.com/li/489901
粉末ミルクティーと茶葉
この時代の英国人が粉末ティーを飲んでいたのかと言われると、正直なところ自信が無いのですが。それでも飲めないよりはマシでしょう。保存性と携帯性を考えると、どうしてもインスタントは無視出来ません。英国レーションの試食レポートでは粉末ミルクティーは概ね高評価なのですが、英国人はどう思っているのでしょうかねぇ?英国人が書いた試食レポートがあるなら見てみたいものですが…。
電気湯沸かし器
正式名称は、『British Army 24v Electric Boiling Vessel(BV) / Stove Cooker No.1 Mk.2』です。名前の通り直流24vで駆動する電気式湯沸かし器です。現在でもチャレンジャー戦車に搭載されていて、エンジンをかけていなくてもお茶が沸かせるとか。紅茶だけでなく、レトルト食品を温めたり、一部部品を取り外すことでトースターになったりと大活躍。電源の問題さえ、なんとかなるのであれば、おいらも欲しい…!
オートジャイロ
武装を積んで戦闘ヘリ化。火力不足に悩まされている英国陸軍にとっては、極めて魅力的な提案です。とはいえ、無い袖は振れないので、戦力化はもう少し後になります。
3.7インチ高射砲
史実で英軍の高射砲が活躍したという話を聞いたことが無いのですよね。バトル・オブ・ブリテンと言えば空軍の奮戦ばかりが目につきます。そんなわけで、高射砲部隊には冷や飯を食わせることにしました(酷
『Long Hand』&『Green Mace』
Long Handは、3.7インチ高射砲に自動装填装置を付けて発射速度を向上させたものです。60~75発/分なので、秒辺り最大で1.25発。94mmの大口径砲弾をこれだけの早さで撃つというのは相当なものです。史実では、戦後になってから開発されたのですが、これでも火力不足と感じたのか、発射速度を維持したまま大口径化(5インチ)した新型高射砲を計画しました。それがGreen Maceです。ただし、開発に困難が予想されたので、4インチの縮小版から製作が始まりました。なお、史実では1954年に4インチ版が完成しています。憂鬱世界では、それまで高射砲部隊が生き延びられるか大分微妙ですけどね…(汗
いや、個人的には好きな砲なので、是非とも生き延びて欲しいのですが、この手のお化け対空砲は、暗闇を必死に模索する中で生まれた一種の仇花みたいな存在ですからね。憂鬱世界では、生き延びるのは厳しいと言わざるを得ないのですよ…。
素敵高射砲のグリーンメイスを詳しく知りたい方はこちらをどうぞ↓
h ttp://togetter.com/li/876178
946 :フォレストン:2016/02/20(土) 15:07:18
以下、登場させた兵器のスペックです。
.280ブリティッシュ弾
薬莢形状:リムレス、ボトルネック
弾丸径:7.2mm
首径:8.0mm
肩径:11.4mm
薬莢長:43mm
全長:65mm
英陸軍の次期制式小銃として制定された小銃用弾丸。史実ではパワー馬鹿なメリケンの手によって握りつぶされたが、この世界では健在である。
エンフィールド・リボルバー No.2 Mk.2
重量:760g
全長:260mm(本体のみ)
使用弾薬:MKⅡ-Z弾(9mmパラベラム強装弾)
装弾数:6発
作動方式:シングルアクション
9mmパラベラム弾に対応させたエンフィールド・リボルバー。リボルバーで9mmパラベラム弾を撃つと確実な撃発が出来ないため、ハーフムーンクリップの使用が前提となっている。Mk.1との違いはシリンダーの厚さのみであり、ハーフクリップの厚さだけシリンダーが短縮されている。大量に作りすぎたステンガン用の9mm弾を活用するために開発されたモデルであるが、従来型のシリンダーを交換しただけであり、新規生産分よりも部品交換された物が多かった。オリジナルの.38SW弾に比べてパワーのある9mm強装弾を発射するため発砲時の反動がきつく、ライフリングの消耗が早まるなどの問題もあり、兵士たちからの評判は悪かった。しかし、あくまでも緊急用のサイドアームと割り切った英軍上層部の方針により戦後しばらく使用された。
コングリーヴ・ロケット砲
全長:13.11m
全幅:2.59m
全高:1.49m
全備重量:14.6t
武装:RP-3ロケット弾×200
※荷台のみのスペック。
RP-3(Rocket Projectile 3 inch:ロケット発射体3インチ)
口径:76mm(3インチ)
全長:1400mm(55インチ)
重量:21kg(本体)+11kg(徹甲弾)
+27kg(半徹甲弾/ホローチャージ)
銃口初速480m/s
有効射程1600m
英国陸軍が開発した水際阻止作戦用の面制圧兵器。RP-3ロケットランチャーを荷台の正面方向に200基搭載している。
史実では上陸作戦の際の海岸砲撃に使用されたロケット砲艦(Landing Craft Tank (Rocket):LCT(R))のランチャーを戦車運搬車の荷台に搭載したものである。この目的のために荷台は再設計されてロケット弾を積載するのに都合が良いように高床フラット式に改められている。これには大量のロケット弾発射時の炎熱からタイヤを守る目的もあった。トラクター無しでも水平を保てる機構になっており、基本的に運搬時のみトラクターで牽引して運用は荷台のみで行われた。
ロケットランチャーは事前に地形を測量して、人力で距離と角度を調整するようになっている。これは低コスト化と量産の簡易化のためでもある。駆逐艦数十隻分という絶大な火力を誇るが、発射後の再装填は、一つずつ人力で装填するものであり、戦場での再装填は事実上不可能であった。ロケットの発射は遠隔コードとタイマーの2つの手段が用意されており、遠隔コードは200m、タイマーは最長で1時間であった。
スキャメル・パイオニア重回収車
全長:6.7m
全幅:2.6m
全高:2.97m
全備重量:8.4t
エンジン:ガードナー 6気筒ディーゼル 102馬力
最大速度:28.9km/h
航続距離:692km
武装:非武装
英国陸軍のタンクトランスポーター(戦車運搬車)であり、コングリーヴ・ロケット砲やクロムウェル巡航戦車の運搬に使用された。
センチュリオン歩兵戦車を運搬するには非力であり、後に専用のトランスポーターが開発されることになる。
クロムウェル巡航戦車
全長:8.5m
全幅:3.0m
全高:2.6m
全備重量:29.9t
乗員:4名
エンジン:ロールス・ロイス ミーティア 4ストロークV型 12気筒液冷ガソリン 600馬力
最大速度:50km/h
航続距離:180km
武装:60口径90mm戦車砲(29発)
7.92mmベサ機関銃×1
装甲厚:31~90mm
砲塔前面:80mm
車体前面:90mm
側面:34mm
背面:31mm
本編登場済み。
スペックもそのまま。
947 :フォレストン:2016/02/20(土) 15:10:14
センチュリオン歩兵戦車
全長:9.83m
全幅:3.07m
全高:2.44m
全備重量:45.8t
乗員:4名
エンジン:V-2-IS 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 600馬力
最大速度:37km/h
航続距離:150km
武装:60口径90mm戦車砲
7.92mmベサ機関銃×2
装甲厚:20~220mm
砲塔上部全周:110mm
砲塔下端最厚部:220mm
砲塔上面:20mm
車体上面:20mm
前面:110mm
背面:60mm
底面:20mm
車体側面上部:90mm+30mm
車体側面下部:90mm
同上。
25ポンド・ショルダーガン(バーニー・ガン)
口径:87.6mm
全長:1.74m
重量:34kg
最大射程:900m
使用弾種:対戦車成型炸薬弾、HESH、煙幕弾など
PIATの代替として開発された、携帯用無反動砲。 重量が重く、長大なために取り回しに難点があったが、比較的高初速で発射されるため弾道が安定しており、命中率は高かった。無反動砲のため反動は比較的少なく、これにプラスして大重量がカウンターマスとして働くためか、実際に撃ってみると反動が少なくて兵士からの評判は悪くなかったらしい。外見上の特徴として、後部に4本のベンチェリ管突き出している。これはクロムスキット方式を採用したことによる薬室の大型化によるものである。初期生産分は、燃焼ガスによる腐食と磨耗がベンチュリ管周辺で発生し、反動の度合いが著しく変化する問題が発生したのであるが、採用を急ぐ英軍は、定期的な部品交換でこの問題に対応している。後に改良型のMk.2でこの問題は解決されている。なお、Mk.2であるが、ベンチェリ管が従来型の上下4本から6本に増やされており、その見た目から夢幻会関係者は『ソユーズ』と呼称していた。もちろん、史実のソユーズロケットが元ネタである。
3.7インチ対戦車無反動砲
口径:94mm
重量:170kg(本体のみ)
初速:305m/s
砲弾重量:10.2kg
弾頭:HESH
英国で戦後に開発された無反動砲。歩兵用対戦車兵器PIATの後継として開発されたバーニー・ガン(25ポンド・ショルダーガン)を大口径化したものであるが、こちらは車載もしくは専用砲架に設置しての運用が基本となっている。バーニー・ガンとの相違点は、口径と照準用のスポットライフルの有無である。弾頭はHESH(粘着榴弾)のみである。初速305m/sで発射される22.5ポンド砲弾(10.2kg)は254mmまでの装甲に有効であり、当時の英軍対戦車砲の中では最強であった。7.2インチ版(183mm)も開発されており、こちらはトータス重突撃戦車用であった。1門のみ試作され、実際に搭載されて運用試験に供されたのであるが、詳細は不明である。英国陸軍では、3.7インチ無反動砲をランドローバーの荷台に搭載したものを制式化しており、不足しがちな対戦車火力の穴埋めのために大量に生産された。
948 :フォレストン:2016/02/20(土) 15:13:56
ランドローバー(2ドア ピックアップ)
全長:3353mm
全幅:1549mm
ホイルベース:2032mm
エンジン:1.6L I4エンジン
変速機:マニュアル4速
最高速:80km/h
英陸軍では、かねてより戦場における小型四輪駆動車の有用性を認めており、当初は供与されていたジープ(アメリカン・バンタム)をそのまま生産する予定だった。しかし、巨大津波とアメリカ風邪による米国の崩壊で、設計図面や生産治具の入手が不可能となったために、代替としてローバー・モーター社で開発されたのがランドローバー(史実シリーズI)である。1943年の第一次北米侵攻に間に合うように開発が急がれたが、量産が開始されたのは1944年であり間に合わなかった。ランドローバーの頑丈なシャーシ構造と、短い前後オーバーハング等のオフローダーとしての優れた特長は、無改造でも軍用として使用に耐えうるものであった。BOBで荒廃した英国本国の交通インフラに適していたため、軍用だけでなく民間向けにも大量に生産されることなる。軍用としては兵員輸送や、荷台に重機、無反動砲を搭載して、永らく英陸軍の足として活躍した。SAS用の特装車など、配備された場所や任務によって数々のバリエーションがあるのが特徴であり、空軍向けに空挺用に改造された車両も少数存在した。
フェアリー FB-1A ジャイロダイン
全長:7.62m
全幅:5.38m(機体+主翼幅)
全高:3.07m
ローター径:15.768m
機体重量(自重/全備):1829kg/2377kg
飛行速度(最大):250km/h
上昇限度(実用/限界):3150m/2180m(地面効果なしのホバリング限界)
航続距離:不明
エンジン:ロールス・ロイス ダート Rda.1 軸出力1250馬力
武装 AN-M3 20mm機関砲(機首) 対地ロケット弾ランチャー×2(主翼兵装架)
積載量 パイロット1名 兵員4~5名or貨物1060kg
戦時中に、コマンド部隊で試験運用されていたジャイロダインの改良型。対戦車兵器としての有効性を示すために機首に機関砲を追加し、主翼にもロケット弾が搭載可能になっている。上層部からは高い評価を受けたが、予算難のため本格的に少数生産で終わっている。
最終更新:2016年02月21日 14:19