- 856. earth 2011/11/04(金) 21:33:42
- ネタで憂鬱IFネタです。
『大英帝国の最期』
西暦1943年8月15日、大英帝国は終焉を迎えようとしていた。
大西洋大津波によって引き起こされた大西洋航路の壊滅、大英帝国を海洋帝国たらしめた王立海軍の事実上の壊滅、大英帝国の心臓で
あったインドの失陥、そしてトドメとして北米で大流行しているアメリカ風邪の上陸がこの帝国に引導を渡したのだ。
国威は失墜し、経済は破綻していた。国内では生活物資の不足による暴動が相次いでいた。
かつては世界の中心とも言われた大英帝国の帝都ロンドンも暴徒による破壊と略奪が起こり、無政府状態となっていた。
「……」
ハリファックスは首相官邸の自室で諦観した表情で外を眺めていた。
もはや彼に出来ることは何一つなかった。
「すでに陛下は脱出された。あとは……」
迫り来る荒々しい足音。それは警備を突破した暴徒達のものであった。
「植民地人の口車にのった挙句が、帝国の滅亡か……」
ケチのつき始めはアメリカの『強い』要求によって、大西洋大津波の発生前に対日戦争に加担したことであった。
イギリスは裏切り者の汚名を覚悟で日本を連合国から追放し、対日包囲網の構築に協力した。だがそれこそが悪夢の始まりだった。
1942年8月16日。あの日、発生した津波は大西洋の両岸を破壊した。それは米国を半ば崩壊させ、イギリスの生命線であった
シーレーンをズタズタに引き裂いた。
そしてその直後に始まった日本の大侵攻は、瞬く間に中華民国軍と在中米軍を撃滅してしまった。
フィリピンから脱出してきた米アジア艦隊と連携して英国極東艦隊は東アジアの植民地を守ろうとしたが、圧倒的打撃力を持つ日本の
機動艦隊の前に完敗を期した。
これに慌てたガーナーはドイツやイタリアなどの枢軸さえ巻き込み、欧米連合艦隊を築き、日本海軍を東西から挟撃しようとした。
ハワイとセイロン島から出撃した欧米連合艦隊は、数では日本海軍連合艦隊を上回っていた。
だがそれでも彼らは敗北した。インド洋とマーシャル沖で白人世界の威信を掛けた大艦隊は綺麗さっぱり消滅した。
それからは坂を転げ落ちるかのように欧米連合軍は敗北を重ねた。
「インドは落ち、ハワイも原子爆弾によって焦土と化した……我々は日本人の力を見誤っていた」
- 857. earth 2011/11/04(金) 21:34:25
- オーストラリアやニュージーランドは日本海軍の猛攻に恐れをなして降伏。
太平洋は今や日本の庭だった。
そして日本は欧米連合と対抗するために、天敵であったはずのソ連と同盟を結んだ。
東アジアの資源を存分に活用して量産された日本製兵器で武装したソ連軍は、各地でドイツ軍を押し返し、各地でドイツ軍を苦境に
立たせている。
だがそんな中、欧州にさらなるダメ押しが襲った。そう、アメリカとの交流を深めた故にアメリカ風邪の欧州上陸を許したのだ。
枢軸国は形振り構わぬ対策で何とか被害を最小限にとどめられたが、イギリスはそれに失敗した。この時点でイギリスの命脈は断たれた。
「全く、こんなことになるんだったら……いや、それを言うべきではないか。全ては私の責任なのだ」
近づいてくる足音。
そして扉が蹴破られる。扉の向こうには血走った目をした暴徒がいた。
「……先人達の偉業を台無しにした無能者には、相応しい最期だな」
そういった直後、ハリファックスは無数の銃弾を撃ち込まれ絶命することになる。
こうして大英帝国は、連合王国は滅亡した。もはやブリテン島に統一政府は存在しなかった。
アメリカ風邪を恐れる各国は、生き延びようと欧州に向かってくるイギリス人の侵入を実力で阻止したため、ドーバー海峡は血に染まった。
この悲劇は誤った指導者を選んだ国家と民族の末路として、末永く語り継がれていくことになる。
最終更新:2012年01月14日 18:54