494 :ナイ神父MK-2:2015/09/28(月) 23:05:33
日蘭世界 とある提督の日記

○月×日

アジア到着までは順調に進んでいたが、それ以降は踏んだり蹴ったりだ、オランダ周辺を
航行すればぴったりとオランダ船が此方を監視し、いつでも射程に収めることの出来る
距離で付いてきている。しかも此方のより2隻もフリーゲートを多く用意してだ、しかし流石に
表立って争えば負けるのはこちらだ、何よりも日本に親書を届けて開国させねば、いつまでも
植民地開発は他国の後を追うことになる。それだけは避けねばなるまい。

○月□日

今日は生きた心地がしなかった、オランダ支配下の海峡は要塞化されており、いざ通り抜けると
なると恐怖を感じる。おまけにオランダの船は止まる事無く此方を追いかけてきている。
更に海峡を越えるころには上空から飛行船まで目を光らせている。これではまるで敵国扱いだ、
本国に帰ったら国を通してオランダに抗議を入れよう。

□月○日

オランダの勢力下を越え、何とか琉球まで来ることが出来た。明日は琉球王の所へ出向き琉球を
通して日本に開国を促せないか聞いてみよう。しかし、オランダ所属の飛行船や艦船が今も付いて
来ているが、それに加えて見慣れないマーク※1を付けた飛行船が何隻か見られるようになった。
あれは一体・・・

□月×日

琉球の城では我々に対して菓子や珍しい南国産の果実で持成していたが、此処で交渉しても
意味はなさそうだ。此処はやはり日本の本国に我々の力を見せることによって恐怖させなければ
ならない。思い上がった未開の蛮族には我々白人がしっかりと躾をしてやらねばなるまい。
それにしてもオランダは何時まで付いてくる気だ、もう彼らが貿易に使っている港は過ぎた筈だ、
まさか、我々に便乗してオランダも条約を結ぶ気か?※2

□月△日

私は夢でも見ているのか?日本本土の沖合いで我々を待っていたのは、あの所属不明の飛行船と
同じマークを付けた多数の蒸気軍艦※3だった。しかもそのほとんどが、此方の乗ってきたサスケハナ
を越える大型艦達だ、一瞬オランダの物かとも考えたがそれも違うようだいくらオランダとはいえ
これだけの数の軍艦を集中させることは難しいだろう。となると答えは一つ、未開の蛮族である筈
の日本がアレだけの軍艦を整備して更に飛行船まで動かしていたことになるどうなっているのだこれは、
本国で聞いた話とまるで違うではないか、それとも本国も日本がこれだけ発達していることを、
知らなかったというのか?

□月Ω日

前日の驚きが収まらぬ内、上陸した我々を待ち受けていたのは更なる驚愕だった。日本の首都には
既に本国や欧州と変わらぬ鉄道網が整備されており、整列した侍たちは無数の肉食獣を従え、鎖の
付いていない猛獣の横にいながらもまるでそれに対して恐怖している様子は無く周囲を警備していた。
城に着いて客間に通されると既に、交渉役らしい男と、オランダの外交官らしき男が既に席についていた。
此処まで来て、私はようやく我が国はオランダと日本に嵌められたことに気が付いたが、既に時遅く、
まさか、此処まで近代化した国家に不平等な条約を結ぶわけにも行かず、何とか通常の貿易を可能と
することで精一杯だった。

△月○日

帰りはとても憂鬱な気分だった、帰りは本国の艦隊にも匹敵する艦隊二つに挟まれながらエスコートされ
満足な結果も持てず、ただ嵌められた事実に対する悔しさも引きずったままかえることになるのだから。
この航海で、私が決めたことは唯一つ、たとえ降格されても国の諜報能力※4の強化を進言することと、
こんな出鱈目な情報を渡した奴を殴ることだけだった。

※1:新設された幕府の飛行船で所有していた薩摩藩の家紋がしようされていた為、日本の物だとわからなか

った。

※2:アメリカにはフランス革命時に居た日本兵の情報が伝わらず、日本はオランダ以外とは鎖国している
国家としか伝わらなかった為、この機にオランダもアメリカ同様利益を求めて不平等条約を結ぶ気だと
勘違いを起こした。

※3:幕府がオランダと共同開発を続けてきた、近代化事業の一環で作られ、その後日本独自の改良が
加えられた新造艦である開陽型が、下関沖にてペリー一行を迎えた。

※4:既に欧州ではアンタッチャブルになっている日本の開国に都合の良い国を探した結果、
補給基地を探しているアメリカに当りを着け、日本に向かう様オランダが英国経由で工作した。
英国は英国で自身に痛手を与えた米国をあわよくばオランダと嘗て欧州で暴れた日本の力を見ようと
オランダの誘いに乗って工作を行った。

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最終更新:2016年02月29日 00:16