804 :影響を受ける人:2016/03/07(月) 22:30:19
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
今回、原作に近いセリフを入れいています。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第八十六話 ―決戦前夜03 御前会議:前篇―



―扶桑某所:大本営会議室―

1938年8月18日。
原作よりも早く大本営会議が開催されることが決定した。
これは地道な情報収集が功を巣した事、現場レベルでの連携を重視した結果、早い段階での共通意識を持つべきとの判断だ。
主な出席者は・・・

【扶桑皇国海軍】
九鬼嘉明(くき よしあき)大将
毛利元影(もうり もとかげ)中将
連合艦隊司令長官:山本五十六中将
水瀬ササリ大佐
北郷章香中佐

【扶桑皇国陸軍】
柴田勝義(しばた かつよし)大将
佐久間利信(さくまと しのぶ)中将
杉山元中将
東条英機少将
田中ウメ大佐
江藤敏子中佐

      • である。もちろん堀井大将以下腰巾着もいるが、山本五十六を筆頭に幾人か出席出来ている。
対して陸軍側はほぼ夢幻会の人間で締めている
柴田大将はもちろん、東條英樹を高く評価している佐久間中将大将も夢幻会寄りだ。
中立の陸軍軍人もいるにはいるが、いい感じに回っている現状、何も言わないだろう。
そして山本は九鬼に対して一つの要請を行っていた。

「なぜ、かの御方が・・・」
「引退したのではなかったのか?」
「いったい誰が呼んだのだ?」

ざわめく堀一派を尻目に、車いすのままの竹井元少将が少し離れた位置にいる。

「九鬼大将・・・我々と本気で決別するおつもりか!」

皇女の近くにいる竹井元少将は、要請に応じてオブザーバーとして出席している。
すでに引退していて、自宅で安静にしていた筈。
完全に予想外であり、天皇陛下の信頼も厚い人物に小さく呟きつつも、憤りを抑えられない。
しかし会議が始まる前であり、いきなり怒鳴り声など上げられない。

既に一回失態を犯している手前、ここは自重すべき。
そう判断しつつ、歯軋りでもって怒りの鎮静化を図った。

(外道ポーズだったか・・・?
 怒りを隠しきれんとは、それほどまでに追いつめられているという事だな。)

目を誰にも会わせない様にしている堀井大将を、山本は冷静に観察する。
それは九鬼大将も同様で、これしきの事で動揺する腰巾着にも呆れ顔だ。

「それでは、時間となりましたので、御前会議を始めたいと思います。
 一同、宜しいですか?」

時計を確認した柴田大将が告げると同時に会議室を見回す。
誰も横に首を振らず、否定もしない。次に皇女の方を向き、

『よい。始めよ。』
「はっ!
 ・・・では初めに、現状の戦力状況を確認しましょう。」

そのまま視線を陸軍側に向けた。そして、一番手として佐久間中将が手を上げ、席から立つ。

「現在陸軍は大陸から帰還した部隊の編成を行っています。
 重点に置いているのは航空隊で・・・」

それからしばらくは部隊の再編状況。
訓練の進み具合など述べ、どの程度回復をしているかの報告となった。
此の間、堀井一派は神妙に聞いている様に見え、その実、どこに綻びが有るかを探っていた。
だが、夢幻会と一新された陸軍側の士官たちは優秀で、一部の隙も無く報告を終えた。
結局堀井大将等は何も言えず、そのまま海軍側の報告となってしまい、沈黙を続けるしかなかった。

805 :影響を受ける人:2016/03/07(月) 22:30:53
「では、海軍側からもお答えします。」

陸軍側が座ると同時に手を毛利中将が上げて立ち上がった。
無論こちらもほぼ完璧なモノであり。陸軍側からの指摘は無い。
しかし・・・

「機械化航空歩兵については、北郷中佐からお願いします。」
「はっ!
 では、ご説明します。現在、我が海軍が保持する機械化航空歩兵部隊は・・・」

この小娘が、“中佐”という地位にいるのが納得できない。
水瀬や陸軍の田中はそれなりの実力と年齢で、大佐と言う地位にいる。
しかしそれ以上にはなれなかった。させなかった。
古来からウィッチを活用してきたこの世界。
軍民分離でもって常備軍を作った織田信長公により、扶桑皇国軍はスタートしている。

その時から、一応ウィッチも専門職として軍隊に配備されている。
しかし、彼女等は部隊長にはなれても“将軍”にはなれない。
昔の巴御前ならいざ知らず。一軍を指揮する大将には程遠い存在であった。
任務の殆どが高空からの敵情偵察や、奇襲攻撃、後方工作などといった、あまり目立たない部署だったことが原因でもある。
しかしそれはもう過去の事。現在の仕組みからすれば、江藤敏子・北郷章香が初の“将”の地位に上がるかもしれない。

それほどの勢いで、二人は出世している。忌々しいうえに厄介だ。
更にいえばもう少ししたら二人は大佐になる。

「・・・以上です。」

報告が終わり、席を立っていた二人が着席する。
そして、少しの間の後。再び佐久間中将が立ち上がる。

「続いて、現在進行してきている通称“ヤマ”ついてです。
 現在目標は時速80~60kmで移動しています。
 目的地は浦塩であると目されており、地形を選びながら進軍しています。
 目標到着日時は今月の20日前後と予測されております。
 そして敵の戦力です。
 常に護衛の飛行型ネウロイを上空に待機させ、防空の傘を築いています。
 小型中型は交代で護衛にあっており、大型の“オニグモ”は離れず周囲を旋回しています。
 又、“ヤマ”の迎撃能力は高く、飛来する砲弾を撃ち落とすほどに精度が高い。
 レーザーの太さも、どのネウロイも比較にならないほど大きく。
 実験で敷設しておいたトーチカが、10秒も持たずに蒸発するほどです。」

聞けば聞くほどキチガイじみた戦力。
今までの戦いが、まるでお遊びの様に思えるのだから頭が痛い。

「そして、敵の最終目標ですが・・・間違いなく本土を狙ってくるでしょう。」
「根拠は?」

九鬼大将が問うと、素早く佐久間中将が答える。

「小数ではありますが、扶桑海を抜けて飛来するネウロイがおり。
 彼等は偵察をしているモノと判断されています。」
「なるほど、わかりました。」

頷いて納得した事を伝えると、佐久間中将はそのまま防衛戦の為の説明をしようとし・・・

「異議あり。」

会議室の一角から声が上がった。
全員の視線が声の主に集まると同時に、声の主である堀井大将が手を上げた。

「なんでしょうか?」
「先程ネウロイが飛来し、偵察を行っているといったが・・・
 どのような根拠に基づいてか?」

その場にいた全員が「きたか!」と思った。
強硬派の堀井大将が、黙っているはずなどないと身構えていたので、佐久間中将はそのままこたえた。

「大陸戦線でもあった事です。」
「ほぅ・・・そのような報告がったかな?」
「小型ネウロイで編成されていた当初は偵察を行っているとわかっていませんでした。
 しかし“アホウドリ”が出現し始めた頃からそれは、顕著に表れ始めました。
 “アホウドリ”が一週間の間を空けて襲来していたのは覚えておられますか?」
「それは、覚えている。」
「その前日、ほぼ単独で“スズメバチ”が飛行しているのが確認されていました。
 無論普通に考えれば偵察だとわかります。しかし相手は怪異と呼ばれていたネウロイ。
 人間ではありません。
 そこに付け込まれた・・・ いえ、 相手が学習する という事を考えなかった此方の不手際と言えます。
 そして “アホウドリ”は、目標を選んで攻撃したものであったと、現在は分析されています。」
「ふむ。なるほど・・・
 “オニグモ”が小規模の基地を無視した理由も合わせてか?」
「はい。“オニグモ”の行動も、この根拠に基づく判断材料になっています。」
「よく分かった。有難う。」

806 :影響を受ける人:2016/03/07(月) 22:31:35

そう言って堀井大将は手を下げる。
一応陸軍側の不手際があったことをほのめかしたが、追求は無かった。
流石にここで切り込むのは無理と判断したのだろうか?
此処で考察する事は無いと思考を切り替えて続ける。

「現状“ヤマ”が浦塩で行軍を止めた場合。我々は敵勢力の航空戦力を数り続けることが肝要です。
 その為にも、海軍には機動艦隊による援護をお願いしたいと考えています。」

海軍側をちらりと見ると、毛利中将が頷いているのが見えた。

「無論だ。本土を守ることが先決。
 大陸への反攻作戦は陸軍の戦力が整ってから、ですな。」
「御協力、ありがとうございます。そして鋭意努力します。」

礼を述べ、次にうつる。
これこそが本命であり、先に述べた事は「こうなって欲しい」と言う甘い期待が有った案。
しかし、これをいえばまず間違いなく堀井一派が突っ掛ってくるだろう。

「ですが、我々は最悪も考えねばなりません。
 研究会にて考察された“ヤマ”が渡海行動をとった時。この対処を議論したいと思います。」
「渡海、行動?」
「はい。」

佐久間は唾を無意識に飲み込み、作戦内容を告げた。
それはほぼ原作に近い内容であり、規模は更に大きく拡大したものだ。
なかば艦隊を囮とする作戦に、堀井大将の取り巻き達は怒号を上げた。
曰く、

「こんなふざけた“共同”作戦があってたまるか! 恥を知れ!」
「貴官は我々を愚弄しているのか!?」
「この度の失態は陸の責任ではないか。」
「陛下より賜りし、栄えある皇国海軍の至宝を、“囮”として使うなど言語道断!!」

この怒りは予想されていた事だったが、その物言いに陸軍側の重鎮たちも顔を赤くしていく。
しかし・・・オブザーバーの竹井は堀井大将が黙っていることが不気味に思えた。
強硬派の頭である彼が黙っている。取り巻きが五月蠅く罵っている中で、だ。
陸軍側も我慢の限界にきている。柴田大将や佐久間中将の表情には出ていないが・・・
ここは、自分が抑えた方が良いと考えた。

「い「少々よろしいですかな?」」
「うぬ?」

ほぼ同時に声が聞こえたので視線だけ九鬼大将の方を向いてみる。
体を取り巻きの方に少し向けており、口も僅かに開いていたのを見ると、彼も止めようとしたのだろう。
それを割り込んでしまった。

(いかんな。後輩の顔をたてんといかんのに・・・)

心の中で反省すると、九鬼大将が申し訳ないという視線で答えた。
取りあえず非難は止めた。
肉体が衰え、立ち上がる事も困難だが杖を突いて席を立つ。
ここは 威 を見せる時だ。

「わたくしめはその作戦に賛成です。
 ですが、不安要素もあるのは事実。ここは詳しく聞くのが先決だと思われるが、よろしいか?」

未だ衰えを知らぬ眼光で一同を見回し、特に堀井一派の取り巻きを強く睨む。
彼等はそこにいるのがただの老いぼれではなく、歴戦の将兵であるという事を今さながらに思いだし、気後れしたように意気が下がった。
それでも取り巻きの一人が、自分を奮い立たせるように怒鳴ろうとして片手を上げた堀井大将に止められた。
そして堀井大将は静かに、しかし竹井に負けぬ気迫でもって言い放った。

「是非も無し。どのような回答が来るのか・・・
 どのように納得させるのか。話し合いましょう。」

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最終更新:2016年03月21日 21:02