荒廃した欧州の大陸
その大地の高高度を飛ぶのは1機の偵察機である
扶桑が開発したそれは高度1万2千mという遥かな高みで飛行をしていた
地上からのネウロイからのビーム攻撃を避けることができ、更に通常のネウロイも高度6千m付近で飛行することが多いから迎撃の心配がない。
見つかった場合も最高時速640kmの快足を活かして逃げれば良かった
だからこそ、偵察員も操縦員も下側ばかり見張っていればよかったのだ。
その油断が自分の最後となるとは知らずに・・・・・
彼らの頭上に閃光のきらめきがあったのはその時だった。
それは一直線に進んでいた偵察機の翼に赤い光が命中し大穴を開けると同時にバランスを崩す
続けざまに赤い光は複数の光となり、胴体・尾翼・機首・エンジンなど、無差別に命中し
大空で火球となって生を終えたのである。
勿論脱出したものはいなかった・・・・
―――数日後
「呼び出されて何事かと思えば、偵察機を撃墜してくるネウロイを撃破しろだなんて。我々は便利屋じゃないんだぞ!」
「まあまあ、落ち着きなさいよ美緒。偵察部隊も不安なのよ」
「しかし・・・・これは中々骨が折れるな」
軍司令部に呼び出された二人は、そこで新たな任務が告げられた
それはここ数日偵察機の未帰還が相次ぎ、辛うじて帰還出来た偵察機に衝撃的な報告がもたらされた
それは、迎撃不可能と思われた高高度よりも更に高い高度の上から攻撃が迎撃してきたことであった
このまま撃墜が相次ぐと情報が持ち帰れないので、501にネウロイを撃破しろという命令が来たのである
勿論、二人は任務外であると猛抗議したが、以前の戦艦ネウロイが発見できた事例を持ち出して
偵察機を護衛するのも501部隊の役目であると強引に取り組まされたのであった。
それだけなら分かるが、更なる条件が付けられた・・・・
「準備期間は三日間だと。これでは何もできないと同義語ではないか!!」
「そうね。・・・恐らくウィッチ達が活躍してほしくない人たちの妨害でしょうね」
「クソッタレが!!」
坂本は抑えきれなかったのか壁をドンと殴る。
さっそく501に帰還したミーナと坂本は今回の作戦を伝えたが、反応はさまざまであった
作戦に異議を唱えるもの、難色を示すもの、大声で騒ぐもの
そんな反応の中、沈黙を通していたバルクホルンが尋ねる
「状況は分かった。・・・だが、我々のストライカーユニットは高度6000mで全力で戦えるようにセッティングしてるんだぞ
このネウロイは高度1万m以上の高高度から襲い掛かってきたんだろ?1万mまでなら登れるが浮いているだけで戦闘なぞ不可能だ」
「ええ、分かっているわ。そこで宮藤博士をアドバイサーとして来ていただきました。博士、戦闘が可能なストライカーユニットありますか?」
その問いに宮藤博士は頭をポリポリ掻きながら答える
「今あるストライカーユニットだとそのままだと無理だねえ。でも、改造すれば1万m以上の高高度でも戦闘できるよ」
「改造できるストライカーユニットは何ですか?」
ミーナの更なる質問に博士は答える
「まずはエイラの飛燕だけど、本人がスオムスへの呼び出しでいないからムリだなあ
後はリネットさんのスピットファイアとバルクホルンさんのFw190だね
どちらも改造するのに比較的簡易で1万m以上の高高度での性能も保証できる。
……ただ、三日までに二つ同時に改造するのは、かなりギリギリだなあ」
「なら、私のFw190Dだけ改造してくれ」
バルクホルンが立ち上がりながら言う
「この任務は前代未聞の戦闘、高高度戦闘という任務だ。そのような所に未熟な新人を連れていくわけにもいかん。新人は何をしでかすか分からん
幸いにも私は戦闘経験こそ未経験だが、テストパイロットとして何度か1万mまでは飛び上がったことある。その経験を活かすことができるだろう
博士。一刻も早く改造を終えて出撃準備しましょう」
そう言って部屋から出ようとすると
「ちょっと待ってください!!」
宮藤芳佳が制止の声をかける
「・・・・なんだ?新人?」
「どうして、リーネちゃんをそう言うのですかあ!?リーネちゃんだって頑張っているんですよ!」
「言いたいことはそれだけか?・・・・新人」
「リーネちゃんを邪魔扱いしないで連れてったっていいじゃ「ドガッ!!」っ!!」
芳佳の言葉は途中で止まってしまった。何故ならバルクホルンが壁を殴ったからだ
「・・・便利な言葉だよなあ。新人だけど、頑張っているから連れてってください・・・・・
その言葉は数え切れないほど何度も聞いてきた・・・・。その結果を知っているか新人?」
「い・・・いえ・・・」
バルクホルンは顔を宮藤に向けて、睨むように言う
「死んだよ。みんな死んだんだ。訓練不足なのに気が立って、ネウロイの群れに突入して撃墜された者・・・・不意を打たれて防御できず撃墜された者・・・・
視野が狭くなって予想しない方向から撃たれて撃墜された者・・・・恐怖に固まってそのまま撃墜された者・・・みんな戦死した・・・」
血の底から吐き出すように紡がれる
「皆、故郷を守りたいという崇高な気持ちを持った素晴らしい娘だった。
- だが、気持ちだけでどうにかなるなら、この戦争はとっくに終わってる!!」
そして、体を宮藤に向けて咆える
「そのような死ぬかもしれない未知の戦場にお前の親友を差し出す覚悟があるなら、今すぐ言ってみろ!!宮藤芳佳!!」
その迫力に宮藤が何も言えずに立ち竦んでいると、バルクホルンはフンッと鼻を鳴らし、部屋から出て行った。
残るは気まずそうに頭を掻く宮藤博士に沈黙が下りたメンバーだけであった・・・・・
廊下を歩くバルクホルンの表情は
(よっし!女狐よりも頼りになるお姉ちゃんアピールできた!!
それに、妹の名前も合法的に言えたぞ!!
頑張るんだ!!妹が私にお姉ちゃんと頼る日は近いぞ!!おーーーーー!!)
最終更新:2016年03月21日 21:34