182 :taka:2015/03/14(土) 14:46:50
月光 それは夜間戦闘機
斜銃という珍しい銃器を使用する事により、大型爆撃機の迎撃に活躍した

だが、転生者は考えた……そのままの扱いだけでいいのかと?
海軍の佐官である彼が出した答えとは……

「ヒャッハー! 魚雷艇は消毒だー!!」

夜間戦闘用の塗装ではなく、洋上迷彩の月光はフィリピン諸島の海面を低く飛んで行く
尾翼に☓マーク付きのサメが6匹描かれた月光はするすると加速しながら襲撃体勢を整える
向かう先には時速70kmという船舶としては最大速の機動力で回避行動をとっている魚雷艇
そこからは自衛用と思しき12.7mmと20mmの機銃弾が飛んでくる
だが、何度か米空母艦隊への攻撃を体験しているパイロットからすれば小便弾のようなもの
速度が早く蛇行するように回避行動を取れば照準の正確さもお察しの通りという事である

「ぎぇぇぇぇ逃がすかぁぁぁ死ねぇぇぇぇ!!」

艦船捜索用電探を弄っていた後部乗組員がビクつくような奇声を上げ、素早い操縦で相手を補足した男はトリガーを押し込んだ
まずは20mm1丁と7.7mmの機銃が魚雷艇めがけて撃ち込まれる
相手もよく回避していたが、数発が船体に命中し大きな火花を散らす
ぐねぐねと蛇行する魚雷艇は、まるでまな板の上で必死に暴れる魚のよう
発煙が船体から伸び、その姿を隠そうとするが風が強い事と船体の速度のせいで隠しきれてない

「機長ー、連中に襲われかけてた陸の大発達が逃げてくけど連絡するか?」
「うるせぇ! 今敵追ってんだ見ててわかんねぇか!?」

殺気に満ちた怒号を吐き、月光はぐんぐん距離を詰めていく
いくらPTボートが早くとも、それはあくまで船舶の中で
島影に隠れようとも距離を詰められていては隠れようもなく、近寄らせまいと必死に弾幕を張るのみ
海面スレスレを周囲に弾着の水柱を上げながら、月光はPTボートをフライパスするように接近し……

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」

固定式の機銃弾が船体に吸い込まれた後で……本命の銃器がPTボートを襲う
夜戦部隊が使用している上部に向けたものではなく、下部に向けた20mm機関砲2門
当初想定しやがて上部が標準になった夜間用ではなく、小型船舶攻撃用の斜銃
船上を通過するわずか数秒の間、押し切られた2本の20mm機関砲の弾幕は魚雷発射管を貫通
数秒後に誘爆して搭載していたボートを爆竹を詰めた鰯の缶詰の如く木っ端微塵に吹き飛ばした……

見事勝利した月光は爆沈したPTボートが吹き上げた黒煙をゆっくりと旋回して確認後
まるで凱歌する騎兵の如く、颯爽と北側……レイテ島の方へと飛び去っていった


「行ったか?」「ああ、やっと行きやがったあのモノ狂いのアーヴィングめ」

島影に隠れていた、1隻の魚雷艇の上で水兵たちが話している
彼らの魚雷艇はかなり破損しており、普段通りの調子で帰還するのは不可能のようだ

「しかし、あのように追い回されては日本軍の輸送を妨害する事は出来んぞ」
「ああ、この二週間で3隻食われた。俺らも危うかった」

史実に置いては防備の薄い海域で日本軍の艀や大発相手に猛威を振るったPTボート
勿論これらの存在を後出しジャンケンで転生者達は察知し対抗策に出ていたのである
あの小型船舶襲撃用の月光はその一例と言えるだろう
なお、この世界ではPTボートは史実ほどの活躍はできていない
脅威が知るものが対応していた事、更に戦線の縮小で被害が抑えられ戦力の密度が濃くなり
各地の日本軍の警戒と哨戒が厳重になっていたからだ

「艦長、もう直ぐ迎えが来ます」
「ああ、この艦を廃棄して潜水艦に乗り移ろう……また、海に投げ出されるのはコリゴリだからな」

数年前、この海域で乗艦を沈められ海に放り込まれた士官は頭を掻きながらぼやいた
彼は知らない。あの月光のパイロットによって、終戦までにもう一度乗組員共々レイテの海水をたらふく味合わされる事に……


やおい
最終更新:2016年08月09日 11:26