102 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:10:10
日本企業連合が史実世界にログインしたようです 幕間 - PA-N51の悪魔-


日企連はORCA旅団蜂起前にすべきことはたくさんあったのだが、その中でも特に重要だったのはリンクスの排除で
あった。
日企連になびくように説得や工作をしているものの、どうしても地位的に難しかったり、あるいは性格などの問題から
説得が難しいと思われるリンクスが多数いた。そういったリンクスは逐次リンクスを差し向けたり、襲撃してきた
ところを逆に包囲して潰すなどしてきている。そしていま会合で議題となっているのが、原作にもあったミッション
である『レッドラム+スタルカ撃破』という依頼であった。GAからの依頼であるそれは、日企連系のリンクスに
対しても呼びかけが行われていた。

「チャンスと見るべきなんですがね……」
「できる限りオーメルのリンクスは潰しておきたい。ウチのリンクスも結構突っかけられているようだし」
「どうします?首輪付きを送ってもよいですが」
「確かに彼に任せても勝手に勝利するでしょう。どうやら相当腕を上げているようですし。
 そもそもGAの依頼ならば勝手に受けるでしょう」
「しかしなぁ……」

そこまで話し合っている時、端末に連絡が入る。
議事録の作成を行う書記がそれを手に取って確認すると、一瞬にして凍り付いた。
そして、促されるままにその連絡メールの内容を読み上げた。

「レッドラムとスタルカの始末に……UnKnownが出ると」

UnKnown。その名前が出た瞬間に会合の場に戦慄が走る。

「え、あの気分屋が?」
「ちょ、おま、あいつが!?」

日企連所属のカラードランク23というのは表の姿。
その実態は超廃人ACプレイヤーの転生者で、人外の域に達したリンクスだった。
リアルドミナント、イレギュラー、黒い鳥、ナインブレイカー。それらの称号が最も似合うというのは
UnKnownだった。
ランク23というのも、カラードマッチに全くやる気を出さずに遊んでいるための結果だ。
まあリンクス戦争末期に天才と呼ばれた『セロ』をエグイ方法で撃破して以来、オーメルが『セロを撃破した
イレギュラー』をずっと探していることで、いいカモフラージュとなっているのだが。

「スタルカとレッドラムは死にましたな」
「ああ。むしろ運が悪かった……」
「あれは動く天災だからなぁ、運が悪かったな」
「バックアップは連れて行ったようなので、結果が出るまで待ちますか」
「そうだな」

会合の場には、しばし真摯な祈りの時間が訪れた。

103 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:11:20

PA-N51。
既に他の地域においては春を迎えていても、ユーラシアの北部に位置するこのPA-N51はいまだに雪に包まれていた。
ここにはコジマ汚染の拡大で廃墟と化した巨大都市がある。嘗ては、少なくともリンクス戦争以前においては近くに
ある資源地帯を財源として大いに発展していたのだが、リンクス戦争時に地下資源基地を襲撃するために現れた
ネクストによってコジマ汚染が拡大。放棄が決定された。今となっては、卒塔婆のように立つビルのみが面影を
残していた。

そして、その廃墟を有効活用するものもまたネクストを操るリンクスであった。
アルゼブラに属するリンクス『ド・ス』と『シャミア・ラヴィラヴィ』のチームである。
ランクこそ低いが、両者がとっているのは機体性能を補う戦術だ。常に天候が悪く視界が不確かで、おまけに隠れる
場所には困らない。搭載しているECM発生器を使いレーダーを阻害することで、自分達を決して捕捉させない。
ここには両者の機体が軽量四脚あるいは軽量二脚であることも追い打ちとなっている。
このような状況戦こそが強みであり、決してランクには表れない。

そこにのこのことやってきたのはローゼンタールの旧型標準機オーギルをベースと思われるネクストだった。
既にド・スとシャミアの両者はネクストの接近に気が付いており、どちらも戦闘態勢に入っていた。

「ECMが濃い……お前さんか、シャミア」
『私じゃないわよ?こんな芸術性のないECMなんてやらないわ』

なんじゃそら、とド・スは呟いた。長い間チームを組んではいるが、ド・スにはどうにも趣味が合わなかった。
しかし、シャミアの言わんとすることは理解できる。ここまで節操なくECMを展開するのは展開している側にも
大きな障害となる。
それほどに、PA-N51には辛うじて通信がつながるレベルの濃いECMが展開されていた。二人ともオペレーターとの
通信が遮断されている。
襲撃してきたネクストの仕業か、あるいはネクストのバックにこれだけのECMを展開する装置を持ち込んでいるのか。

『ま、いずれにせよいつものように穴だらけにしてやればいいのよねぇ』
「そうじゃな」

やることはいつも通り。
バーラット部隊が到着する前であるが、向こうがやる気ならばこちらも相応にもてなす。

『仕掛けるわ』

104 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:12:10
無遠慮なシャミアの声。
ノイズ交じりのそれにため息をついたド・スも動き始める。
スタルカのメインの武器は右腕に装備された射突型ブレード『KIKU』。レッドラムが翻弄し、スタルカが
飛び込んで一撃を決める。
それが一つの戦術だ。防御が如何に硬かろうとも、射突型ブレードはPAごと抉る。ネクストであろうと例外はない。

先行したレッドラムがECMをばら撒きつつマシンガンとライフルで射撃を加える。
驚いたように所属不明ネクストが何回かQBするがいずれも稚拙。PAのおかげでダメージは小さいだろうが、
回避になっていない。
相手はこちらを捉えようとしているようだが、それは軽量なアセンブルの両者に見ればのろのろだった。
スラッグガンが立て続けに命中し、PAが一気に減衰していく。レッドラムが急速に通り過ぎているのを
見て取ったか慌てた動きで手にしたライフルを向けて発砲する。

『わざわざ狼の狩場に出てくるなんて、殊勝な羊ね』
「抉らせてもらうで」

スタルカは一気に加速していく。相手はシャミアの方を向いて射撃を行っており、隙だらけだった。PAも剥がれて
おり、攻撃にはもってこいだった。右腕に装備された射突ブレードが起動。最適な動きで突きだされた。

「は?」

しかし、手ごたえがない。
見れば、杭の部分がヒットしていない。
極めてわずかに動かれて、回避された。動いたことさえ分からなかった。
完全にブレードレンジを読まれ、かわされた。

「なっ……!」

直感的な恐怖から離脱しようとする。しかし、遅かった。
次の瞬間、スタルカの右腕が丸ごとレーザーブレードによって斬り飛ばされた。
ネクストのコンピューターがAMSを通じて搭乗者に影響が及ぶことを防ぐためにオートで接続を遮断。
激痛は一瞬で消える。しかし鈍痛が右腕に走り続けていた。そうしている間に目の前から敵の姿も消える。

『な、コイツ急に動きが……!』
「シャミア!」

レッドラムの赤い機体の色がちらりと見える。スラッグガンの射程に入っているなら、相当彼我の距離はない。
ただでさえ何者かによるECMによってレーダー更新さえおぼついていないのだから、急な動きをされると相手の
位置が分からなくなる。
天候が悪く吹雪いているのだから視界は最悪。あるとするなら音響センサーかサーモセンサーとなるのだが、
あいにくとアルゼブラはそこの技術が良いとは言えない。本来ならばこちらが翻弄するというのに、逆に
翻弄されている。

105 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:13:03
「くそ、どうなっとるんじゃ」

毒づくが、視界は相変わらず悪い。
しかし、相手とて同じはず。ECMでレーダーが使い物にならなくなったというからには、何らかの方法で位置を
探らないといけない。
その答えは、相手のネクストが放った閃光によって判明した。

「フラッシュロケット……まさか!」

本来ならば目くらましに使われる肩武装のフラッシュロケット。
だが、このような天候で使えばネクストの機影がくっきりと浮かび上がる光源となる。
連続してフラッシュロケットが発射されて視界に多数の発光が見えた。あまり広い範囲を照らしてはいないが、
それでも戦闘領域の一角が照らされたことでレッドラムとスタルカの姿は向こうにははっきりと見えただろう。

「シャミア、近づくな!」
『コ、コイツ……食らいなさい!』

コジマ粒子の収束する光と、発動したAAの緑色の光。
それは、この環境では自分の位置を自ら教えるような行為だ。
QBの噴射音が数回する。明らかにレッドラムの位置を把握し、背後に回ろうという動きだ。

『この……!』

シャミアは自分の失策に気が付いたのか、咄嗟にマシンガンをばら撒く。
AAのコジマ粒子残滓が残っているために普段は無視できるこの攻撃も無視できなくなる、本来ならば。
周囲の廃墟があらかた穴だらけになった中央で、レッドラムは敵を探していた。
目視頼りの警戒。音響センサーもビルの崩壊音であまり役に立たない。もしもの時に遅れる可能性がある。
連続するQBの噴射音。それらはすさまじい連続だ。

通常QBはあまりに連続させることはない。フィギュアスケートにおけるジャンプのようなものであり、
AMSを通じて負荷もかかるし、瞬間的に加速することでリンクスの体とネクスト本体に対しても物理的な負荷
がかかる。それが実現できるリンクスは恐らくランクの上位に食い込むようなリンクスの筈。

「何者じゃ……」
『どんな奴よ……こんな動きをするなんて』
「GAにはおらん。だとするとインテリオルか日企連かどちらかじゃな……」
『……日企連ね。多分』
「いったん離れるぞ、シャミア」
『了解……」

一度散開する。
ランダム移動を繰り返したうえで慎重に敵影を探す。未だにECMが濃い状況が続いているため、相変わらず目視だ。
QBの音が反響しながらも検出される。コンピューターが反射している音の到着時間の差から敵機の予想位置を
割り出そうとしている。
しかし、候補は絞られない。それほどにものすごい勢いで飛び回っているのか、それとも吹かしているふりをして
翻弄しているのか。

106 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:14:03
「近いところじゃな……」

慎重に探しながらも、ド・スは撮影した映像から想定されるアセンブリを解析していた。
オーギルベースだったが、頭部パーツと腕部パーツはそれぞれBFFとオーメルの物。レーザーブレードは刀身の
色から旧レイレナード系列と推測。あの短い噴射間隔のSBは日企連系列かオーメル系列と推測される。
だが、どれも古い型のパーツばかり。揃えようと思えばどの企業だって揃えられる。

あと残りの手掛かりはリンクスの癖なのだが、これも特定には難しい。
装備は背中に古い日企連のレーダーを背負い、残りはアルゼブラ系のアサルトライフルとレイレナード系のブレード。
あまりにも平凡なアセンブルだ。誰もがとりそうなアセンブルだ。むしろ素人がとりそうですらある。
事実ブレードを振るうまではまるで素人のような挙動を見せていた。だが、射突型ブレードを紙一重で回避して
のけたのはどう考えても素人ではない。ド・スとて素人ではない。ネクストのコンピューターによる補助もあって必
中の間合いに入り、ベストなタイミングでブレードを繰り出した。つまり相手はこちらに悟られることなく
間合いを外し、そうした上でブレードを振るったのだ。

(なんなんじゃ、コイツは……)

背中に寒いものが走る。
もし、もしだが、相手が自分の腕前を隠すことにとてもうまい相手だったならば。自分の腕前を完全に隠し下手な
不利ができるほど、相手が強い腕前を持っているとしたら?適当な装備でも、こちらの相手をするには十分すぎる
ほどの技量の面で圧倒しているなら?
考えれば考えるほど恐ろしいものが迫っている時のような、気持ちの悪さを感じていた。
その時、不意にECMが緩んだ。レーダーが更新され、敵機の位置が知らされる。

「後ろじゃ!」
『何ですって!』

敵ネクストはOBで一気にレッドラムの背後から接近していた。
レーザーブレードの一撃はレッドラムのレーダーを切り裂き、ついでに腕も斬り飛ばす。
PAと防御性が低いアルゼブラの機体故にレーザーブレードは面白いように貫通した。明らかにコアと頭部を狙っていた
一撃が肩とレーダーにあたったのは、シャミアの咄嗟の反応の為だ。辛うじて死ななかったのは非常に運がいい。
だが、それでも被害は甚大だ。一気に切り裂かれたレッドラムは既に半壊状態。PAの展開もできていない。
そして何よりもAMSを通じて搭乗者には腕が後ろから切り落とされるようなフィードバックが走った。
悲鳴を上げる相方のカバーをするために敵影にめがけてマシンガンを放つ。
敵は飛び上がるようにしてQB。白いカラーリングの機体を吹雪と霧の中に溶かし込むようにして逃げる。
動かないレッドラムの近くに移動し、死角をカバーするようにして周囲を警戒。

「シャミア、離脱できるか!」
『駄目、脚部をやられた!ブースターも潰されてる!』
「なっ……!」

107 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:15:45
見れば、レッドラムの脚部の後ろ側2本が潰されている。離脱する瞬間にまとめて切断したのだろう。
わざとレッドラムに止めを刺さなかった理由は明らかだった。それを理解できないド・スではない。
連続するQBの音。それは徐々に近づいてくる。

「つり出すためか!シャミア、さっさと離脱するんじゃ!」
『で、でも!』
「オーバードブースターは生きとる!」

普段は見せないような泣き言を言うシャミアに苛立ちつつも、ド・スは怒鳴る。
サイドブースターは潰されているが、恐らくメインブースターかオーバードブースターは生きている可能性がある。
この状況で手負いのレッドラムをかばいながらの戦闘は無理だ。

「急げ!」

そう叫びクイックターン。
残った腕武器のマシンガンがスタルカの死角から迫った正体不明機を捉えた。

(黒い……鳥?)

不思議と、ゆっくりと時間が流れているように見える。その機体の肩にかかれた鳥のようなエンブレムにド・ス
の目は惹きつけられた。エンブレムらしからぬ泥や炭などで汚れたような色をしたそれは、不思議と美しく感じた。
戦いに身を置いていると感じる、戦場における美しさ。それをそのエンブレムには感じてしまった。
が、トリガーを引くより早くレーザーブレードの光がド・スの視界を埋め尽くした。マシンガンが切断され、
マガジンの火薬に引火したのか爆発が起こる。

「くっ……!」

腕部の損傷が拡大。残った武器である拡散ミサイルと拡散ロケットに切り替わる。
だが、機体はバランスを失っており、どちらも発射できる状態ではない。それでも、と賭けたのだが銃撃がどちらも破壊してしまう。
背中武器の破壊の後すぐに、足に痛みが走った。レーザーブレードの一撃でPAがはがされており、その展開までの隙間を
狙い、脚部に集中して攻撃されたのだ。あっけなくスタルカは崩れ落ちていく。

「この街も終わりとはのう……」

体が、機体が倒れていくのを感じながらド・スは呟く。
四肢がもがれた以上、もはや抵抗の手段はない。
最期に見えたのは街の廃墟と、迫ってくるブレードの光だった。

「そんな……嘘よ、私のレッドラム」

身動きのできないレッドラムも、レーザーブレードの一閃によって沈黙。シャミア・ラヴィラヴィの体は高熱の
レーザーによって蒸発。レッドラムはがたりと力を失い、倒れ伏していく。
ただ一人生き残ったネクストはレッドラムとスタルカのコクピット周辺を入念に破壊して、OBを起動。一気に飛び去っていった。

108 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:16:19
「えー……レッドラム及びスタルカが撃墜されましたね」
「やっぱり」
「知ってた」
「予定調和」

夢幻会の会合において、居合わせたメンバーはド・スとシャミア・ラヴィラヴィの冥福を祈っていた。
一応これでORCA旅団蜂起前に企業側につきそうなリンクスは減っていた。それは日企連としては喜ばしいのだが、
メンバーの表情はむしろ暗かった。決して喜んではいない。同情さえしていた。

「これでオーメル陣営のリンクスも減りました。自然災害で」
「ああ、自然災害だ」
「アーメン……」

彼らはUnKnownの気まぐれによって蹂躙されてしまった。
普段は殆どのミッションを他人に任せきりにしているUnKnownが何を考えてこの『レッドラム+スタルカ撃破』に
出たのかは誰にも分らない。UnKnown自身はORCA旅団蜂起に向けてのアップだとは言っていたが、まさかアップで
リンクス二人をホームグラウンドに殴り込んで撃破するとは。

「フラッグシップAF『イズモ』との戦闘シミュレーションで初見で撃墜と引き換えに致命傷にまで追い込んだ
 UnKnownですからね……」
「ダイナミック準備体操だな」
「報告によれば、あれでもまだつまらないとか」

報告書のあんまりすぎる内容にさしもの夢幻会メンバーも絶句せざるを得ない。
戦闘映像はUnKnownの視点からの物が提出され、その情報をもとに立体映像として再現されたのだが、
大体狂っていた。

「何で射突ブレードを見切ってんの」
「紙一重で避けるとかどんだけ狂ってんだ……」
「フラッシュロケットはそう使うんじゃない……」
「ECMが滅茶苦茶濃い状況でどうやって補足してんだ……」

マニュアルで補足を続け、派手な立ち回りをしてのけていた。
しかも戦闘中に明らかにふざけているのが見える。ビルの上でアクアビットマンのポーズをとったり、
ステップダンスをしたりと、あからさまにスタルカとレッドラムを煽っている。余裕綽々である。

「GAからの報酬はUnKnownに振り込んでおきましょう」
「情報封鎖は?」
「ジャミングを行う専門チームをつけてやったので恐らく問題ないです。機体についてもしっかり破壊したようなので、
 誰がやったかは不明なままとなるでしょう。念のためにUnKnownは東南アジアにいたことにしてあります」
「一応赴いたのは流星としています。彼は本当は史実側で休暇中ですが、丁度良いのでそうしておきました」

一応UnKnownがランク1を凌駕するマジのイレギュラーであることは秘匿事項だ。
明らかにミッションにおいても巧妙に手を抜いているし、ことあるごとに仕事をタケミカヅチや流星に押し付けている。
それでいて、腕前を鈍らせることがないという。

「ホント、ウチに所属していてくれてありがたいな」
「敵に回したらと考えると……いや、考えたくもないな」
「前世でどんだけ廃人だったんだよ」

口々に言いつつも、今後の対応を協議する。

109 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:16:58
「ところで、各企業の戦力ってどうなってます?」
「GAはランク24 ドン・カーネルを喪失しています。オーメルはマクシミリアン・テルミドールもORCAに
戻ったことで失い、フラジールが例によって逆流しました。同時にアスピナ機関の被検体も撃破されていますね。
アナトリアの傭兵と首輪付きがいい仕事をしてくれました。2対4でよく頑張ってくれましたね」
「なにそのカーパルス占拠状態」

日企連のオリジナルリンクスの一人であった『一目連』が原作同様の展開となったラインアーク防衛の様子に呟く。

「アスピナの被検体が多くいたようだな。ほら、プロジェクト・マグヌスというやつの被検体さ。
 どうやら手持ち戦力の中で潰せる奴をぶつけたんだろうな」

同じくオリジナルリンクスであり、転生者でもある『虎鶫』が原作でも少々マイナーな機体を挙げた。

「結果、オッツダルヴァは行方不明。CUBEも死亡。プロジェクト・マグヌスの被検体も死亡と」
「アナトリアの傭兵だが、やはり限界が近いぞ」
「駄目ですか?」
「ウチ(如月技研)の治療とケアをずっと受けていたからな、今までは問題なかった。だが、どうしても限界はある。
恐らくORCA旅団蜂起の後の戦争が最後の仕事になりそうだ」
「わかりました。では、彼の仕事は暫く首輪付きに代替してもらいましょう」

如月技研に属するメンバーの報告に神崎は頷いた。

「彼もまたイレギュラーの一人。ここで潰すわけにはいきません。ところで、原作で結構削られたORCAは?」
「ラスター18およびPQが撃破されていますが、残りは生存。こちらの戦力をあわせれば容易に覆せます。
 二人とも首輪付きに付き合いすぎたのが運の尽きというべきでしょうか」
「え、ブッパ生き延びたのか?」
「さっさと撤退したらしい。曰く『獲物と狩人が関係を誤ったらお終いだ』だそうで」
「マジかよ……」

猟師パネェという結論を下した会合メンバーは、今後のスケジュールへと話題を移す。

「そろそろタケミカヅチも呼び戻しましょうか」
「ええ。PTSDの疑いがありましたが、案外図太いメンタルの持ち主です。大食いをしてすっきりしたようですよ」
「UnKnownもすごいが、タケミカヅチも大概だな」
「一旦リュウグウノツカイも呼び戻しますか……東南アジアからアルゼブラ本社の中東まで一気に殴り込むには必要です」
「史実側の戦力は一時的に減るな。ウチで派遣可能なのって何かあったか?」
「試作されたサブベースがありますね。あれなら一時的にでもゲートと日本列島を守るには十分でしょう。
 あちらのギガベースと交代で、ミドルベースを一基付けて送り込みましょう」
「史実の連合艦隊は?」
「現在、技術指導も兼ねてアシハラナカツクニにおいて改装中です。当面の主力はやはり史実の艦艇を利用せざるを
得ません。
まあ、改装でかなり化けていますからね。計算上の斉射の命中率が10倍になったようだが……まあ、構わんな」

110 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:18:02
命中率が10倍。それは戦艦にしては異常なものだった。
少なくとも史実世界においての斉射の命中率というのはそれほど高くない。そもそも統一された大口径砲による
斉射というシステム自体命中率と火力の観点から導入された物なのだ。次なるブレイクスルーはレーダーの搭載で
起こるが、電探の搭載・改良と砲の改装までしてのけた。そして射撃管制システムをアームズフォートなどの
それによる経験を経てきた日企連製のそれに置き換えれば、艦艇の搭載砲の命中率の向上など朝飯前であった。

「そんなに上がりましたか」
「ネクストの動きに比べれば史実の艦艇の速力なんて亀よりのろまですからね」
「あとは対空砲の射撃管制装置も改善の目途が立っています。これで航空機の大量投入が起こっても七面鳥撃ちに
してやれます」
「……100年単位で先行する世界の対空砲とか、米軍涙目ってレベルじゃないな」
「巡洋艦以上は順次砲を取り払い艦対空及び艦対艦ミサイルの搭載を行います。少なくとも航空機の発達を軽く
追い越す程度を目標として艦艇の改装と船員の教育を行います」
「で、財務部としてはこの超兵器のオンパレードとなった改装案について聞きたいのですが」

財務部部長 辻堂が放った言葉に俄かに場の緊張が高まる。順調な議論が進んでいたのだが、誰もがそれに
手を付けられずにいた。
何しろ辻堂の言う改装案とは、世界観をどこか間違えたかのような兵器を搭載した史実の艦隊の改装案であった。
ぶっちゃければ鋼〇の咆哮も真っ青な改定案である。

「話は聞かせてもらった!大建造の時間だ!」

その問いに答えたのは、大日本企業連合海軍の技師水沢だった。
少々メタい話になるのだが憂鬱本編においては海軍の金田秀太郎中佐の中の人であった人物だった。
大艦巨砲主義者筆頭を豪語する彼は、日企連においてはAF建造に携わった技術者である。やたらと大口径砲を
積みたがる悪い癖はあったのだが、それでも設計技師としては非常に優秀で、防御性を決して損なわず多数の砲を
配置した設計図を仕上げるというありがたい人物でもあった。そして何よりも、閻魔より恐ろしい財務部さえも
黙らせることができる人材だった。
辻堂が名乗りを上げた人物の顔を見て露骨に顔をしかめる。

「こういう兵器は向こうだとあまり実用性がないと思われるんですが」
「いや、意味はある」

落ち着き払った水沢技師は用意していた資料を配り始めた。

「史実側でもAFを支障なく動かすための布石だ。技術的に見てもあちらに合わせすぎるとこちらの行動が阻害される。
ならば艦艇の武装をこちらに合わせることであちらに技術蓄積を促すのだ」
「しかし、それでは技術発達の系統樹がゆがむのでは?」
「だからこそ、あちら側でも需要のある兵器、例えば速射砲やロケット兵器などを優先する。使用する砲を統一しつつ、
陸海軍における武器の差異などを取り払うのにも丁度良い。どっちにしてもあちらが必要とする分をこちらでのみ
作るのは、輸送量の拡大を招いて非効率だ。ならば、多少背中を押してやる必要がある」
「うむむ……」

狂ってはいるが真面目な意見に辻堂もうならざるを得ない。確かに自助努力をしてもらわなければ、出資を続ける羽目になって、下手をすれば大赤字になってしまう。そういう方面での投資は確かに優先すべき事案であった。
陰謀渦巻くACfA世界の渡っていく夢幻会の会合は今日も遅くまで続いた。

111 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:19:18
以上となります。wiki転載はご自由に。

リアルドミナントがアップをはじめました(白目)。
どうして補足できたかといえば、カメラ性能とFCSを長射程対応にして敵を捕捉しやすくしてました。
そのため、アルゼブラのリンクスチームを捕捉し続け、有利な立ち回りが出来ましたわけですね。
下手糞なふりが上手なUnKnownは、こうしてまたリンクスの撃破記録を伸ばしましたとさ。
ゲームとは少々仕様が異なる、いわゆるフロムマジックが効いた戦闘となっています。
今回のUnKnownに勝者インタビューをしたところ、

「わざわざ羊の狩場に出てくるとは殊勝な狼」
「速さが足りない」

との言葉をいただきました。ええ、意味不ですね。

あと史実側の戦艦はシミュレーター上ではありますが命中率がひどいことに。
え?軍縮条約?何それ、おいしいの?排水量マシマシしつつ電探やら管制装置の搭載が行われています。
はてさて、どういうロマン兵器を積みましょうか。大体のロマンは実現できんじゃないかなぁと思ってます。
さて、あとは前のスレで上げた烈風改二を登場させるネタを書きましょうかね……。

照美が水没することになったのは、ラインアークにいるアナトリアの傭兵の撃破を目論んでの戦闘ですね。
首輪付きがアナトリアの傭兵と組んで迎撃にでました。で、被検体たちが全滅、王子も水没。しかしアナトリアの
傭兵は無理がたたって長期離脱という結果になりました。日企連側は情報を改竄して流しましたので、
オーメルはてっきりアナトリアの傭兵がドロップアウトしたと誤認しました。

今回の作業BGMは『名前のない怪物』でありました。
では次をお楽しみに。

112 :弥次郎@帰省中:2016/08/10(水) 19:20:10
今回登場したリンクスの紹介です。オリジナルさんですね。

一目連: ACネーム:斬月
ゲーム内紹介文
『日企連のオリジナルリンクス。とある剣術の流派の宗家の出身であり、本人も相当な腕前の剣士。
 独自の戦闘メソッドから繰り出される一撃は容赦なく敵対者を切り裂く』

転生者リンクスにして日企連 ムラクモ・ミレニアムのオリジナル。軽量二脚機を操っていた。
前世における愛機はブレオン機で、いわゆるブレーダーだった。4シリーズは未経験だったが、レイヴンだった。
名前の由来は天目一個神から。現在は年齢的な問題から引退し、技術アドバイザーとして活動している。
ナインボールやラスジナをブレオンで撃破したと豪語する。

虎鶫: ACネーム:水破兵破
ゲーム内紹介文:
『日企連のオリジナルリンクスの一人。軽い性格であるが、狙撃に関しての技術はBFFも注目するほど。
 単独での戦闘は少なく、専ら支援用装備を積んで前衛機とのチームで活動する』

中の人は転生者で、ACシリーズだけでなくFPSゲームを好み突砂をやっていた。
愛機は中量四脚の支援型で、スナイパーライフルかスナイパーキャノンを背負い、残りはミサイルやレーザーキャノンを
搭載している。支援機ということでレーダーも背負い、全体を俯瞰しながら狙撃支援を行う。現在リンクス業は引退。
VシリーズのACのテスターを務めている。曰く嫁のために長生きしないといけないとのこと。
因みに嫁さんはどこかで見たようなメアリーさん。どこかで見たことがあるようだけど気にしてはいけない。
具体的に言うとAC4のチャプター4のミッションに出てきた女王様。
タイマンで撃ち合いになり、二重の意味で撃墜したらしい。爆発しろ。

他にも日企連は6、7人くらいオリジナルがいるとしています。

アナトリアの傭兵(中量二脚を基本に不定形)
霞スミカ    (中量二脚 エネルギー系)
アックスブロウ (重量二脚 実弾系重火力)
一目連     (軽量二脚 ブレード)
ワカ(社長?) (タンク  実弾系重火力)
虎鶫      (中量四脚 狙撃支援機)
モブ1     (逆関節)

日企連の規模を考えればこんなもんかなぁと。

465 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 20:11:14
JPAF-107『イズモ』

日企連のフラッグシップAF。重装甲の6角形の機動要塞。全長25km。全高1.6km。
単純なアームズフォートと異なり、複数の海上航行ユニットを連結することで構成される一種の海上都市でもある。
食料工場はもちろんの事、兵器の生産を行うための工廠も内部に存在しており、これが単独で自給自足をしていくことも
可能となっている。非常時においては居住区画を内蔵したユニットを連結することで日企連関係者全員を避難させることも可能。

複数のネクストを用いた奇襲を警戒し、武装は対ネクストを重点に置いている。しかし武装自体はパッケージ化された
ユニットの接続によって交換できるために、対AF能力を高めることも容易である。
主な兵装は大口径レールガンとマザーウィルの主砲を超える大口径砲。副兵装として数えるのも馬鹿らしいほどの
数の対空レーザーキャノンとミサイルセル、そしてレーザーキャノンを搭載したプルートオービットである。

このプルートオービットはトーラスの開発したソルディオス・オービットを改良したもので、アサルトアーマーの機能をオミットし、
コジマ技術によらない自立飛行を実現した浮遊砲塔である。QBも可能なこの浮遊砲塔は、オリジナルに比較してコジマ汚染を
無秩序にばら撒くこともなく、環境への負荷が非常に小さくなっている。このプルートオービットは最低でも60基は搭載され、
ネクストが接近してきた場合にはこれが迎撃に出る。艦載機として搭載するハイエンドノーマルやMTなどをあわせることで
まさに難攻不落のユニットと化している。

弱点となりうるのがコアとなるAF『アマノウキフネ』を潰すことであるが、巨大な都市のどこかにあるアマノウキフネを
探し出し破壊するには極めて長い時間を必要とし、リンクスにも負担をかけているため、先にリンクスが根をあげる
可能性があるため、ほぼ攻略不可能。兵装自体もユニットの換装で極めて柔軟に変更可能であり、襲撃を繰り返しても
パターンが読めなくさせることで防御性を長期的に見ても維持しているのも特徴。しかもコアとなるアマノウキフネを潰しても
他の管制室が生き残っていればイズモは活動を継続するという理不尽ぶりである。

しかしUnKnownは運がよかったとはいえ幾多の攻撃をかいくぐり、アマノウキフネを発見し、大破しつつも致命傷を与えた。
これを初見でしてのけるのだから、UnKnownはイレギュラー。

建造数は2。リンクス戦争後には海外の環境修復のために1隻が派遣予定である。

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最終更新:2016年08月31日 10:20