624 :ひゅうが:2014/07/19(土) 03:00:24
小ネタ説明文――「11月のバレンタイン」


聖バレンタイン。
カトリックにおける伝説の聖人である。
彼が殉教したとされる2月14日はバレンタインデーとしてよく知られている。

だが、この世にはもうひとつの「バレンタインデー」が存在する。
11月1日。
この日に起きた出来事を称して、特に米国においては「聖バレンタインの虐殺」と称している。
1944年11月1日。
キリスト教世界では万聖節であるこの日、レイテ沖においてアメリカ合衆国陸海軍は史上最大の被害を被った。
日本海軍主力艦隊によるレイテ湾への殴り込み。
死傷者約9万名。わずか2時間あまりで生じたこの被害は、南北戦争以来の衝撃をアメリカ社会に与えることになった。

聖バレンタインは恋人たちの守護聖人である。
しかし、彼は「結婚を禁止された軍人の結婚を取り仕切った」のである。
いずれ生まれるはずであった幾万もの夫婦、これが永遠に失われたことは特に生き残った人々の心にこの聖人の名を思い出させたのだろう。

「聖バレンタインよ、この暗黒の日を嘆く人々にご加護を…」

万聖節の到来するアメリカ大陸に送られた凶報には、燃え盛るレイテ湾の光景とともに写真記者のそんなコメントが添えられていた。
これが、この「聖バレンタインの日」の由来である。
(キリスト教徒の火刑とバレンタインのエピソードから連想されたとも、彼を処刑したクラウディウス2世がクラウディウス1世と勘違いされたともいわれるがそれは俗説であろう)

この後、3か月前のマリアナ沖海戦同様に報復を叫ぶ米国民の声を受けた米陸軍航空隊は、日本の首都東京を丸焼きにする勢いでの都市無差別爆撃を敢行。
これをレイテ沖のとき同様に燃える都市の写真とともに公表する。
しかし、それは日本海軍の沖縄突入と、沖縄におけるすさまじいまでの抵抗で報いられた。
そして戦争が終わったときには米国民は少し冷静になっていた。
有り体にいえば、血に倦んでいたのだ。
聖バレンタインはそんな人々の心に残った。

11月1日、レイテ湾においては毎年日米両軍の艦艇がともに慰霊祭を行う。
そして万聖節を過ごすアメリカ国民やアメリカ在住の日本人は自然発生的に彼の姿をあしらったペンダントや「V」のマークをどこかにあしらうのだという。
最終更新:2016年08月13日 21:01